第一回

新生ハングマン組織結成.暴力団組長と結託する警察署署長の悪事を暴く.
令嬢を情婦に堕した悪徳署長

脚本:柏原寛司 監督:永野靖忠

新生ハングマン組織誕生

朝靄が煙る高原の林の中を車が走っていた.車は大きな別荘に到着した. 車を運転していたのはこの家の執事の園山. 園山は屋敷で主人のゴッドに報告した. ゴッドが園山に人選を依頼していたハングマンの面々が決まったというのだ. まず園山は一人の若者の写真を取り出した.
園山「結城五郎.32歳.コードネームはE・T.大学を中退後, 十数年間海外を放浪し1ヶ月前に帰国したばかりです.ラオス,カンボジャ, パレスチナなどの戦火の中を生き抜いてきました. 雇われればどんなに危険な戦場へでも出向いていく,つまり彼は傭兵でした.」
E・Tの肩には大きな刀傷の痕があった. 続いて園山はもっと若い男の写真を取り出した.
園山「前島アキラ.23歳.コードネームはヌンチャク. 小学生時代から武道を始め,拳法,空手,合気道, 柔道など現在所有している段数の合計は25段.それに前科5犯. 全て傷害事件です.異常なまでに正義感の強い男で, そのためついついやり過ぎたあまりの結果ってわけです.」
最後に園山は警官服を着た中年の男の写真を取り出した.
園山「小出英樹.42歳.コードネームはチャンプ.元関西某警察署署長. 優秀な署長ではあったのですが,やることなすことが型破り.それだけに 風当たりが強かったようです.部下がサラ金の借金を踏み倒した事件が起き, 幹部はこれ幸いにと小出の管理責任を追及して半ば強制的に彼を退職させました. 小出は大の女好きの上に盗聴が趣味でして, そんな小出に愛想をつかした女房は子供を連れて実家に帰り, 小出は一人で東京に住み着いたというわけです.」
ゴッドに園山が報告する.
園山「少々世の中の企画から外れてる連中ですが,お役には立つと思います. カモフラージュの意味も含めて3人に旅行代理店のオフィスを持たせました. 過去のハングマンに比べても決して見劣りはしません. いや,今度のメンバーこそ史上最強です.」
(ここでオープニングがスタート.)

今週のギャラ交渉

園山がチャンプに東京タワーでゴッドの指令を伝えた.エレベータの中で.
園山「これが君達の初仕事だ.」
園山はチャンプに資料を渡した. チャンプはエレベータの中で葉巻を吹かしていた.
園山「タバコはやめたまえ.」
チャンプ「何で?」
園山「ここは禁煙だぞ.それにタバコなんて百害あって一理なしだ.」
チャンプ「あんたが嫌いやってことか.わては好きや.」
そう言ってチャンプは構わず吸い続けた.わても園山同様タバコは嫌いだが, チャンプのこの台詞,わては好きや.園山は「ふん.」と機嫌が悪そうだ.
チャンプ「で,報酬は何ぼや?」
園山は封筒を渡した.
園山「450万.」
園山とチャンプはエレベータを降り,東京タワーの鉄骨の上に立った.
チャンプ「あんた何ぼ儲かってまんのや?」
園山「何?」
チャンプ「いやあ,その,ゴッドとか言うおっさんから仕事を受けて, 何ぼかピンハネしてわてらに渡してまんのやろ.」
園山は激怒した.
園山「なあんてことを言うんだ,君は.」
予想が当たってチャンプは笑った.
チャンプ「ほんまのこと言われたゆうて慌てんでもよろしいがな.」
園山「私はゴッドの代理人だぞ.」
チャンプ「アホやなあ.商売で中間マージンとるのは当たり前だっせ.」
園山「マージンなど取ってはおらん.」
チャンプ「そんなこと言わんと, あんたの取り分ちょっと削って,わしに回したってえなあ.」
園山「取っておらんと言ってるだろうが.」
チャンプ「この際はっきりいうときますけど,労使関係はきちんとしとかんと. いざっちゅうときにストになると,あんさん,これ(首のポーズ)になりまっせ.」
仕方なく,園山はお金を上乗せした.
チャンプ「あ,言うときますけど,この分領収書出ませんで.」

調査開始

新宿のアロハツーリストではヌンチャクがE・Tを挑発していた.
ヌンチャク「外人部隊に雇われるってことは, かなり武道かなんかやってるんだろう.」
E・Tはヌンチャクを無視した.
ヌンチャク「俺と組み手しないかい.」
E・Tはヌンチャクを相手にせず,新聞を読んだ.
ヌンチャク「優秀な傭兵さんの腕を見たいんだよ.」
ヌンチャクはラムネの瓶を右手で握りつぶした.それでもE・Tは無関心.
ヌンチャク「どうした.おじけづいたのか.」
E・T「自分の腕は仲間に見せるもんじゃない.」
ヌンチャクはE・Tを睨みつけた.
E・T「敵に見せるものだ.」
にらみ合う二人.そこへチャンプが帰ってきた.
チャンプ「アロハ.初仕事,初仕事.別室へいらっしゃい.カメハメハ.」
3人はロッカーの中に入った.ロッカーの反対側にアジトへの隠し扉があるのだ.

メンバーは3人しかいないのに隠し扉は4つあるぞ.まあそれはともかく, チャンプは園山から渡された資料を説明した.
チャンプ「この男がわしらのターゲットや.三沢これゆき.55歳. 城西警察署署長.一言で言えば警察マフィアや. 去年頃からポーカーゲーム機賭博が囁かれたが, なぜか銀龍会には手が伸びなかった. というのも三沢と銀龍会がつながっていたからや. 三沢はその地位を利用して銀龍会関係の全ての証拠を握りつぶした. 見返りは当然,銭や.だが,三沢と銀龍会が直接つながっとるという証拠はない. まあねえ,ゲーム機賭博で雑魚をぱくったところで直接の大物を叩かんことには, どないにもならんわいな.」
ヌンチャク「世も末だよな.警察の署長が悪の上前はねてるようじゃ.」
チャンプ「わしもそれ言われると耳が痛い.わしも結構悪の署長やったけどなあ, ここまでえぐいことはやらんかったでえ.」
ここでチャンプはギャラのことを思い出した.
チャンプ「あ,そうだ.忘れとった.銭や.今度の仕事は450万で引き受けた.」
E・Tは札束を受け取ったがチャンプを疑いの目で見た.
チャンプ「なんや,その目は.かなわんなあ,わしはピンハネなぞせんで. そんな男やないで.え.」
嘘をつけ.
チャンプ「ハンギングするには経費がかかる. それをこん中から差し引いて残りを3等分する.まあ, 経費と日数を切り詰めたら,それだけ我々の報酬も多なるっちゅうことや.な.」
ヌンチャク「じゃあ,直接三沢を押さえて締め上げましょう.」
呆れたチャンプはヌンチャクの頭を叩いた.
チャンプ「単純やなあ,お前の構造は. 三沢ほどの大物がそう簡単にゲロするわけないやろう.」
E・T「銀龍会に探りを入れよう.」
チャンプ「アロハ.そこや.」
チャンプはE・Tの意見に同意した.そしてヌンチャクに札束を渡して言った.
チャンプ「おい,坊や.これ金庫入れとけ.」

さて銀龍会の組員は一人の男をドラム缶に入れた. そしてドラム缶にコンクリートを入れて固めた. そのドラム缶はクレーンで吊り上げられ,海の中へ沈められた. 男は水原という中小企業の社長で,東光信用組合から金を借りていた. 水原の債権者が水原の妻に押し寄せたが,水原の妻はおろおろ泣くばかり. そこへ銀龍会の組員がやってきた.抵当権は銀龍会が押さえているのだ.
チャンプ「あのう,にいさん,にいさん,にいさん. わての分,3万8千円ですけど,どないなりまんのや.」
債権者に化けていたチャンプは組員に追い返されてしまった. アジトでチャンプが報告する.
チャンプ「何度もつこうとる手や.銀龍会の口利きで銀行から融資を受け, 社長が現金ごと姿をくらます.」
ヌンチャク「殺されたんですか?」
チャンプ「アホ.生きとったら事件にならんやないかい.社長の蒸発は偽装だ. 殺しといてその金を取った上に担保の家や会社まで取り上げおった. あとは署長の三沢がうまくもみ消すって段取りや.」
資料には1億円の融資を受けた直後に行方不明になった雨宮商事社長雨宮靖や, 不動産会社社長の山下一夫の記事もあった.
E・T「不動産会社社長が消えた後に三沢の息子が私立医大に入学. そして商事会社社長の後には家を新築か.」
チャンプ「そ.三沢は銀龍会に金を要求し,そしてこのざまってことや.」
ヌンチャク「ひでえ野郎だな,三沢ってのは.」
E・T「銀龍会に一人潜り込んだほうがいいなあ.」
ヌンチャク「その方が確実にネタがつかめますね.」
そこでチャンプはヌンチャクに潜り込めと言った.
チャンプ「あ,お前,行け.わしと結城はインテリ過ぎていかん.」
ヌンチャク「どういう意味ですか!」
チャンプ「別に意味ないよ.」
チャンプは園山に電話して関西暴力団の紹介状を手に入れるように依頼した. そしてヌンチャクの歯に小型のモールス信号発信機を取り付けた.

こうしてヌンチャクは銀龍会に潜り込んだ. その頃,E・Tとチャンプは銀行の方を見張っていた.
チャンプ「支店長の桜井(江見俊太郎)や. 消えた水原に水原に1億融資したのは奴だ.もちろん, 銀龍会と桜井がつながっとる.銀龍会は桜井を通じて水原に1億融資させ, 挙句に金を奪って殺しおった.」
チャンプはE・Tに水原を任せ,ヌンチャクの様子を見に行った. ヌンチャクが掃除していると組長の井上(名和宏)と組長の情婦が出てきた. ヌンチャクが車に発信機を取り付けたのを情婦は見逃さなかった. 情婦は発信機を取り付けられたことを井上に報告. 確かめると発信機がついていた. ヌンチャクは発信機をつけたことをチャンプに電話で報告したが, その最中に銀龍会に捕まってしまった. その後,井上,三沢,井上の情婦の3人は料亭で会った. 井上は三沢に見返りとして情婦を差し出そうというのだ.
情婦「吉田礼子です.」

E・Tと情婦の対決

その晩.E・Tはヌンチャク救出に向かった.E・Tは銀龍会のビルとは通りの 向い側にあるビルの屋上に上り,ヌンチャクからのモールス信号を受信した.
E・T「4階東南の角.よーし.」
E・Tは鍵縄つぎの縄を投げ,銀龍会のビルに縄を張った.そして縄を伝って 銀龍会のビルの屋上へ渡った.さらに屋上から縄を下ろし, ヌンチャクの閉じ込められている部屋へ向かった.その頃, ヌンチャクのところへリボルバーを手にした井上の情婦がやってきた.
情婦「あなた,警察の犬?」
ヌンチャク「二本足で歩くよ.」
情婦「女に冗談は通じないのよ.何が狙いで入り込んだの.」
降りてきたE・Tはその様子を目撃.
情婦「話す気がないのなら生かしておいてもしょうがないわね.」
そのとき,物音がしたので情婦はヌンチャクの口にガムテープを貼った. そして物陰に隠れた.E・Tに気がついたヌンチャクは一生懸命,合図したが, E・Tは意に介さず,ガラス切りで窓ガラスを切り,窓の鍵を開けて窓を開け, 部屋の中に入った.そしてE・Tの背後から情婦がリボルバーでE・Tを狙った.
情婦「動かないで.警察ではなさそうね.」
E・T「まあね.」
情婦「何が狙いなの,あなた達.」
E・T「それを聞いてどうするんだ.」
情婦「質問しているのはあたしなのよ.」
E・T「慣れないことはするもんじゃない.リボルバーで相手を倒す時は, ハンマーを起こしてシングルアクションでやるものさ. ダブルアクションではコンマ5秒はロスする.それが命取りになるんだ.」
E・Tは情婦に近づいた.情婦はリボルバーを構えた. そして情婦が撃とうとした瞬間, E・Tはハンマーに指を入れてリボルバーの発射を阻止し, さらにリボルバーを奪った.そしてヌンチャクを悠々と救い出していった.
ヌンチャク「何であの女,ほっといたんですか.」
E・T「彼女は声をあげなかった.組の若い者がごろごろしてるんだ. 奴らを呼べば我々を捕らえることは簡単だろう. それをしなかったのは何か理由があるからだ.」

情婦の正体

情婦はリボルバーを持って井上の部屋に乗り込んだ. 眠っていた井上はリボルバーのハンマーの音を聞いて目を覚ました. 情婦は三沢を呼べと要求したが,井上の部下に捕まってしまった.
井上「お前,いったい誰なんだよ.誰なんだよ.」
その頃,アジトではE・T達が週刊誌を広げていた.
チャンプ「これは3年前の週刊誌や. これが商事会社を経営していた雨宮という男.彼の妻だ.それから,彼の娘.」
ヌンチャク「覚えてますよ.ゴッドからの資料にもありましたね. 1億円の融資を受けた後,金とともに姿をくらました.」
チャンプ「その後,女房は自殺.娘さんは行方不明や.」
ヌンチャク「悲惨っすね.」
E・T「この娘があの女ってことか.」
チャンプ「そ.」
ヌンチャク「しかし変わるもんですね,女って. 化粧っけはないし,ちょっとわかりませんよ.」
E・T「どうやら彼女の目的は我々と同じらしいなあ.」
チャンプはうなずいた.
チャンプ「彼女が危ない.」
E・Tは一人で出ようとしたが
ヌンチャク「俺も行きます.」
E・T「その体じゃ無理だ.休んでろ.」
ヌンチャク「そのう.すいませんでした.この前,腕を見せろなんて, その,偉そうな口きいちゃって.」
E・T「気にするな.」

井上の情婦こと雨宮礼子は組から連れ出されるところだった. E・Tはそれを発見した.井上は礼子に三沢の命令で雨宮を殺したことを言った. そして礼子を車ごと港に落とした.井上が車が沈んだのを見届けて去った後, E・Tは海中から礼子を救出した.

アジトで礼子は目を覚ました. チャンプは井上が早田という貿易会社社長を狙っていることを, 礼子から聞き出した.東光信用金庫で融資の話をするというのだ. そこでチャンプはE・Tとヌンチャクにこの日に決着をつける作戦を発案した. そこへ
礼子「あたしにも協力させて欲しいの.井上はあたしの父を殺したのを認めたわ. 三沢の命令で.それをつかむために私は井上の女になったのよ. 三沢と井上を殺すためによ.」
チャンプ「ちょっと待った.君,なんぞ,誤解しとる.我々の仕事はねえ,警察ではどないにならん悪に制裁を 加えることやねん.決して我々は殺し屋やない.たとえどんな悪でも決して 殺しはせん.その代わり,彼らに徹底的に社会的制裁を加えてやる. ダメージを与えてやる.それがほんまの死刑執行や思うてる.
E・T「多少の協力はしてもらうさ.」
そしてチャンプはギャラを分けた.
チャンプ「必要経費ね,それから,失業保険,社会保険, それから社内旅行の積立金,全て引かせてもろうて, 一人分の手取りが120万6236円.端数は赤十字に寄付させてもうたから.」
E・T「赤十字ねえ.」
こうしてチャンプ達はアロハツーリストを閉店し,ハンギングに出動した. ヌンチャクはオートバイに乗り,E・T,礼子,チャンプは二台の車に分乗した.

ハンギング

信用組合に井上と早田がやってきた.そして三沢の所に電話が入った.
礼子「三沢さんね.」
三沢の顔色が変わった.
礼子「あたしの声がわかったようね.」
三沢「だれだ.」
礼子「井上からは私を始末したって連絡が入ったのでしょう. でもあたしは生きてるわ.」
三沢「なんのことだかさっぱりわからん.」
礼子「しらばっくれるなら,それでもいいのよ. あなた達のやってることをマスコミに話すだけだわ.テープにとってあるのよ. 料亭での話を.」
三沢「なんだと.」
礼子「今すぐ,東光信用組合に来てくださらない. ちょうど井上もいるし,そこで話をしましょ.」
三沢「もしもし.もしもし.」
電話は切れてしまった.
チャンプ「はい,ご苦労さん.」
チャンプは礼子の胸をつついた.
チャンプ「行こう.」

泡食った三沢はタクシーで東光信用組合にやってきた.
三沢「井上!」
井上「どうしたんですか,署長,こんなところへ.」
三沢「どうしたも,こうしたもあるか.」
途端に銃声が.仮面を被った二人組の男, すなわちE・Tとヌンチャクが銀行強盗に入ってきたのだ. 銀行の中には客の振りをして入り込んでいたチャンプがいて, 非常ベルを押そうとした銀行員をさりげなく制止した. E・Tとヌンチャクは銀行員を外へ出した.そして三沢,井上,井上の部下達, チャンプ,礼子を中に残した.
青木「金なら出す.出すから,許してくれ.」
E・T「そう焦るな.」
チャンプ「すんません,にいさん.わしだけ助けてくんなはれ. 家で女房と子供が5人待ってますねん.」
ヌンチャク「うるせえ.」
警察,そしてマスコミが集まってきた.
警官「お前達は包囲された.人質を解放してでてきなさい.」
チャンプ「ワンパターンだね,説教の台詞は.」
三沢「わしが誰だか知っとるか.城西署の署長三沢だ.」
E・T「知ってるよ.」
三沢「悪いことは言わん.銃を捨てて投降したまえ. 銀行の外は警官が固めておる.逃げられやせん.これ以上,罪を重ねるな.」
チャンプ「あ,そや.署長さんのいわはる通りや.あんたらまだ若いやないかい. 人生これからやないかい.ね.今からでも遅うない. 署長はんに身柄預けて更生しなさい,更生を.」
チャンプはE・Tにつきとばされてしまった.
三沢「投降するんなら悪いようにはせんぞ.」
E・T「銀龍会のように見逃してくれるってわけか.」
三沢「何の話だ.」
E・T「実はそのことを聞きたくて皆さんに集まってもらったんだ.」
E・Tは仮面を脱いだ.
E・T「貴様は自分の地位を利用し,銀龍会の動きには目を瞑った. 見返りは金だ.」
三沢「何を言うか.」
E・T「話さなければ撃つ.」
三沢「そんな脅しに乗る私ではない.」
E・T「あんたは意思が強そうだ.この男をやれ.」
ヌンチャクはチャンプを狙った.
E・T「その次が井上.そして最後があんただ. それまでには話す気になってるだろう.」
三沢「脅しはきかんと言ったはずだ.」
E・T「やれ.」
ヌンチャクはチャンプにせまった.
チャンプ「そんなアホな.や,やんだったら署長をやってくれ.わしはここへ, ちびっと,ちびっと,貯金しに来ただけなんやから,おい.」
ヌンチャク「逃げても無駄だよ.無駄.」
チャンプ「そんなこと言わんと,おい.な,頼むわ,おい.あの,あのなあ, 何でもやる,君.表にある車やろ.月賦残ってるけど.な,撃たんといて. 撃たんといてくれえ.子供おんのやから,5人も.5人も.」
中の音をマイクが拾い,外のスピーカーで外へ筒抜けだった.
チャンプ「頼む.頼む.撃たんといてくれ.頼むで. 家のローンかて残ってるんや.おい,頼む.」
E・T「撃て.」
ヌンチャクの弾はチャンプに命中し,チャンプは腹から「血を流して」倒れた.
リポーター「中から男の悲鳴と銃声が聞こえました. 店内は異常な状況になっているようです.」
E・T「次はお前だ.」
井上「い,やめてくれ.」
ついに井上は喋り始めた.
井上「俺は三沢さんに頼まれただけなんだ.うまい儲け話があるからって.」
三沢「何を言うか,井上.それ以上喋るんじゃない.これは罠だ. 罠に決まっとる.」
井上「俺はいやだ.俺は.三沢に騙されてやっただけだ.言うこと聞かなけりゃ, 組を潰すって.」
三沢「井上.」
井上「あんた,言ったじゃないか.邪魔な組は俺が潰す, だから博打でも売春でも好きなだけ稼げ,俺がついてりゃ, 心配ないって言ったじゃないか,三沢さん.」
三沢「うるさい.」
E・T「銀龍会の売春,覚醒剤に賭博.それに融資に絡む殺人.全て三沢, お前の指示だったってわけだなあ.」
井上「そうだ.」
三沢「わしは知らん.みんな出鱈目だ.」
そこへ礼子が登場した.
E・T「これでも知らんと言うのか,三沢.」
三沢「井上君,お前は殺したって言ったろ.」
井上「確かに死んだんだ.車ごと海へ落としたんだ.確かに殺したんだ, 三沢さん.」
三沢「嘘をつけ.お前は女に目がくらんでわしが言う通りに殺さなかったんだ. この女を殺していれば,こんなことにはならなかったんだ.」
井上「俺があんたを裏切るわけがないだろう. 今まで持ちつ持たれつでやってきたじゃないか.」
三沢「黙れ.女一人殺さないで何が銀龍会だ.役立たずのダニ野郎. 何のために,今まで甘い汁を吸わせてやってきたと思ってるんだ.」
テレビのレポーターがカメラに向かって喋った.
レポーター「驚くべき展開になってまいりました. 現役の警察署長と暴力団が手を結んだ犯罪の実態が, 本人達の口から語られております.」
E・T「ようやく話してくれたね,三沢さん. これでやっとパーティーはお開きだ.」
三沢「なんだと?」
E・T「あんたらの声は全て外へ筒抜けだあ.動くな.そのまま.動くなよ.」
チャンプと礼子がテレビのレポーターの目をひきつけている間, 警官に化けたE・Tとヌンチャクが去って行った. そして三沢達は本物の警官に連行されていった.
チャンプ「さあ,行こう.」

雨宮礼子加入

歩道橋の上でチャンプ達が話した.
チャンプ「まあねえ,これであなたのご両親も浮かばれるやろ.」
礼子「ありがとう.」
ヌンチャク「これから,どうするの?」
礼子「井上の女にまでなったんだもの.何やったって生きてゆけるわ.」
チャンプ「待てや.わてらの仲間に入らんか?」
ヌンチャク「え?」
チャンプ「第一,女性がいると職場が明るうなるしね. いや,これは仕事だけじゃないよ.ま,いろんなことに力になれると思う. (胸に手をやって)何センチくらい? どない思う,E・T.」
E・T「特技はあるか?」
礼子「コンピュータかしら.これでも昔,オペレータだったのよ.」
チャンプ「へえ,いいねえ.手先が器用なんやね.」
礼子はHなチャンプから離れ,E・Tに近寄った.
礼子「仲間に入れてもらえる?」
E・Tは右手を握り,右手の親指を上に伸ばした.
チャンプ「よっしゃ.歓迎会やろう.」
こうして雨宮礼子ことマリアはハングマンの仲間入りしたのであった.

解説

こうして新しいメンバーでハングマンが生まれ変わりました. 園山とチャンプのやり取りなど,お笑いの要素も取り入れられましたが, それでもハングマンの精神が変わらなかったのはチャンプが 復讐に燃える雨宮礼子に語った台詞からも明らかです.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp