悪徳商法一味をハンギング
女ハングマン・夫のルスに連続殺人犯と対決!! 意外やボスは?

脚本:中村勝行 監督:小澤啓一
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一味の黒幕判明

栗絵は自宅で夕食の支度をしていた.善次郎はトイレに入って鼻歌を歌っていた. そこへ電話がかかってきた.電話はケイからのもので, 盗聴テープに黒幕らしき人物の声が入っていた,と言うのだ. マロンはアジトへ向かうことにした.
マロン「お義父さん.」
善次郎「はーい.」
マロン「あのう,婦人会の集まりがあるんでちょっと出かけてきます. テーブルの上に夕飯の支度してありますから,すいませんけど, ご自分で召し上がって下さい.」
善次郎「はい,はい,わかりましたよ.」
マロンはアジトへ向かった.
善次郎「いよいよ大詰めが来たな. ゴッドからギャラを受け取っておかなくちゃな.」

ケイは盗聴テープを再生した.
会長(粟津號)の声「もしもし,権藤です.あ,社長.」
男(菅貫太郎)の声「いやあ,君にはすっかり世話になってしまってえ. お陰で仕事の方も順調に進んでるよ.」
権藤の声「こらあ,どうも.」
男の声「ところで,今度築地の胡蝶で一席設けたんだが, 久しぶりに一杯どうかね?」
権藤の声「ありがとうございます.せっかくのお招きですから,是非.」
以上がテープの内容だった.
ケイ「この電話の相手,ひょっとして今度の事件に何か関わりでも?」
マロン「社長って言ったわねえ.」
ケイ「ええ.」
クロック「会社の社長が企業ゴロを料亭に誘ったりするなんて, どう考えたっておかしいわ.」
ケイ「何かあるわね,この二人.」
ピンキー「探ってみる?」
マロン「ええ.今度はあたしがやるわ.」

さて良介は佐山と一緒に夜の築地を警邏していた. すると栗絵によく似た芸者が歩いてくるのが見えた. これはマロンの変装なのだが,良介はこのことを知らない.
良介「栗絵!」
佐山「どうかしたのかね?」
良介「いや,ちょっと.」
芸者姿のマロンをじっと見る良介を見咎めて佐山はこう言った.
佐山「芸者なんかに見とれてないで,さあ,行こう,行こう.」
マロンは良介の前を平然と歩いて行った.唖然として見送る良介.
佐山「浜野君.なにやってんだ.行こう,行こう.」
良介「え?」
良介は佐山に引きずられていった.

一方,善次郎はあのときの扮装でホテルに現れた.
善次郎「浜野というもんだがね,神山さんから鞄が届いとるはずだ.」
フロント「はい,お預かりしております.少しお待ちくださいませ.」
フロントはアタッシュケースを持ってきた.
フロント「こちらでございます.どうぞ.」
善次郎「うん.ありがとう.」
善次郎はアタッシュケースを持ってホテルを出て行った. その頃,良介は佐山と警邏の途中,こんなことを話していた.
良介「世の中には自分にそっくりな人間が3人はいるって言いますけど, あれホントなんですねえ.」
佐山「いきなり何を言い出すんだね,君は.」
良介「いやまあ.」
とそのとき.
良介「あれえ.」
今度は善次郎がアタッシュケースを持って歩いてくるところに出くわした.
良介「親父!」
佐山「親父?」
良介「まさか?」
良介は口をぽかんとあけてしまった.
佐山「おい,浜野君.今夜の君はちょっとおかしいぞ.」
良介「はい,はい.自分でもそう思います.睡眠時間足りてるはずなんですが, 時々幻覚症状が…」
佐山「え? 幻覚症状?」
良介はムンクの叫びの絵のように両手で顔の横を押さえていた. その前を善次郎は悠々と歩いて去って行った.
良介「うっそー.はー.」
唖然として善次郎を見送る良介.
佐山「おい,浜野君,浜野君.」

クロックが何かを作っている頃,マロンは築地の料亭胡蝶についた.
社長「権藤君.」
権藤「は.」
社長「あと一月もすれば大台の500億に乗りそうだよ.」
権藤「そうですかあ.そりゃなによりですなあ.」
社長「世間が騒ぎ出した頃,我々はその金持ってヨーロッパへ飛んでる. 投資家どもが泣こうがわめこうが後の祭ってわけだ.」
二人は笑いが止まらない.そのとき,何か気配がしたので社長は秘書に合図し, 襖を開けさせた.すると芸者姿のマロンが登場した.
マロン「こんばんわ.」
社長「部屋間違えたんじゃないのか.芸者なんぞ呼んだ覚えはないぞ.」
マロン「おかみさんに申し付かってきたんです. いつも御贔屓にして頂いてるお客様なのでお酌だけでもと.」
この出任せを社長は信用したらしい.
社長「おう,そうか,そうか.じゃあ,せっかくだから注いでもらおうか.」
マロンは社長のおちょこにお酌した.
社長「この店にはよく来るんだが,あなたのような美形を見るのははじめてだ. 新顔かね?」
マロン「最近ですの.こちらに来ましたの.以前は赤坂におりました.」
社長「赤坂芸者か.道理で垢抜けしてると思った.ああ,そうか.」
マロン「どうぞ,そちらさまも.」
権藤「ああ,どうも.はい.」
マロンは権藤にも酌をした.社長は秘書に合図した. マロンを完全に信用したわけではなかったのだ.
秘書「失礼.トイレはどこかね?」
マロン「はい,ご案内します.」
廊下でマロンは秘書に詰問された.
秘書「お前,俺達の話を立ち聞きしてたんじゃないだろうな.」
マロン「何のことです?」
秘書「正直に言え.」
マロン「乱暴,おやめになってください.あたくし,何にも聞いてません. 本当です.」
そこへ仲居が通りかかった.
マロン「まあ,ネコちゃん.あのね,こちらのお客様, なんだか御気分が悪くなったみたいなの.どうぞ,どうぞ.ネコちゃん, いらして.」
仲居は去って行った.
マロン「乱暴はおやめになってくださいね.誤解されると困りますわ.」
秘書「もう一度念を押す.本当に何も聞かなかったんだな.」
マロン「ええ.」
秘書「そうか.いやあ,手荒な真似して済まなかったな.」
マロン「お荷物,お持ちいたします.」
秘書「ああ.」
秘書はマロンに鞄を持たせてトイレへ向かった. その隙にマロンは鞄の中から丸秘のマークのついた封筒を取り出し, 懐に入れてしまった.

社長と秘書は日本投資研究社の者だった. 封筒の書類には一口100万円で投資家からお金を集め,それを株式投資や債券, 商品相場,ドル相場などに運用して5年後で元金の5倍にする, という触れ込みのことが書かれていた. そうやって集めたお金が今日現在で四百数十億円. ところが償還期限が来ても実際にお金が戻ってきたお客は一人もいない. 詐欺同然だ.投資とか財テクとか言うのは元々リスクを覚悟してやるものだし, 株や債券が下がっているから換金できなければそれまでだ. 結局客は泣き寝入りと言うわけだ. そういった苦情が生活情報センターの方に殺到したのだろう. それで田代や奥村や山口が日本投資研究社の実態を調べようとしたのだ. そして奥村と田代が殺されたのだ. 今度の事件の黒幕は日本投資研究社の山形社長. 山形から殺しを請け負ったのが亜細亜総業の権藤. そして実行犯が野木.標的は決まった.ハンギングだ.
マロン「クロック,例のものは出来てる?」
クロック「はい.」
クロックは武器を3つ作ってきた.まずケイ用の武器は
クロック「強力瞬間催眠スプレー.相手の至近距離で使ってね. 強力だから自分に効いちゃう危険があるから.」
続いてピンキー用の武器は指輪だ.
クロック「これはピンキー用.手出して.」
クロックはピンキーの右手の中指に指輪をはめた.
クロック「指輪を回すとフックが外れて小さな針が飛び出す. そこに麻酔薬が仕込んであるわ.」
これはエジソンも作ってパピヨンが使った武器 でもある.
ピンキー「すごーい.」
最後にクロックはマロンに棒状の武器を渡した.
ピンキー「なーに,それ.」
マロン「ハングショックガン.」
マロンがスイッチを入れると棒の真中の部分が青く光った.
クロック「棒の先の部分が敵の体に触れると高圧電流が流れて, 一瞬のうちに相手は気絶してしまうわ.」
早い話がスタンガンと言うわけだ.
マロン「ピンキーは殺し屋の野木.」
ピンキー「はい.」
マロン「ケイは亜細亜総業の権藤.」
ケイ「はい.」
マロン「クロックとあたしは日投研の山形をやるわ.」
ハングマンはハンギングに出動した.

ハンギング

ピンキーは野木のマンションに権藤に頼まれてやってきたと称して乗り込んだ. ピンキーはベッドに座り,
ピンキー「ねえ,ここ来て.」
野木「ちょっと待てよ.君,どっかで…」
警戒する野木にピンキーは抱きついた.
ピンキー「もう,そんな恐い顔しないの.うふん.」
そして指輪を回し,野木の首筋に針を刺して眠らせてしまった.

さて胡蝶で権藤と山形達は別れた.車に乗る山形と秘書を権藤は見送った. そして別の車がやってきたので権藤はその車に乗って去って行った. しばらく車は走っていたが,
権藤「おい,道が違うぞ.全くどこへ行くつもりなんだ.おい,君.おい.」
工事現場の脇で車は止まった.運転手が振り返ると,それはケイだった.
権藤「な,なんだ,お前は?」
答えの代わりに催眠スプレーが噴射され,権藤は眠りこけてしまった.

一方,山形達の車はガード下で対向車がランプをともして目をくらませたので, 止まってしまった.対向車から出てきたのはマロンとクロック.
秘書「なんだ,君.」
秘書はクロックに押さえ込まれた.そしてマロンはドアを開けた.
マロン「山形さん,降りてもらいましょうか.」
山形は車を降りて言った.
山形「なーんだ,お前達は?」
マロン「闇の死刑執行人,ハングマン.」
山形「なんだって?」
マロン「安らかに眠ってもらいます.」
これを聞いて「ザ・ハングマンV」の名調子を思い出した人も多いはずだ. 権藤はハングショックガンの餌食になった. 秘書もハングショックガンで倒された.

気がつくと3人は断頭台に縛り付けられていた.もう一つ断頭台があり, それにはマネキンが置かれていた.
山形「なーんだ,これは.」
権藤「断頭台?」
野木「くそー.ふざけやがって.誰だ,こんな真似しやがったのは.」
スピーカーからマロンの声が響く.
マロンの声「お目覚めのようですね.さてこれから, あなた方に死刑を執行いたします.まずこれをご覧下さい.」
余談だが,「ザ・ハングマンV」でパピヨンがこういう役割を演じたことは, 「ザ・ハングマンV」#23 「人妻パピオンが拳銃屋をラブハントする!」のみ. だから山本陽子さんがこういう役割をするのはこれが2回目だ. とは言っても前回は悪事を暴かれていると知った悪党達に呼びかけ, さらに視聴者の皆さんに悪事を説明したと言う役割だったので, 実質的にははじめてと言っても良い.それはともかく, 突如装置のスイッチが入れられ,導火線に火がついた. 導火線はどんどん燃えていく. 導火線はマネキンの置かれた断頭台に向かって燃えていった.
マロン「導火線の火が断頭台のロープに燃え移るまでの時間は約1分.」
導火線の火がマネキンの置かれた断頭台のロープに燃え移った. ロープが焼ききれると同時に断頭台の刃が落ち,マネキンの首は胴体から離れた. それを見た悪党達は顔色が変わった.
マロン「こんな無残な死に方をしたくなければ, あなた方は全ての罪を悔いて過去の悪行を告白しなさい.」
だが悪党達は白を切った.
山形「あ,悪行だと? なんだ,一体,なんのことだ.わーしゃ,知らん, 知らんぞー.」
権藤は笑った.
権藤「こんなこけ脅かしに乗ってたまるか! 無駄な真似はやめろ.」
マロン「どうしても白状しないって言うなら仕方ありません. ただちに死刑を執行いたします.」
ビデオカメラが用意された.そしてスイッチが入れられ, 3本の導火線に火がついた.導火線は3本とも燃えていき, 悪党達の断頭台へと火が向かっていく.
野木「会長,奴ら,本気ですぜえ.」
権藤「ま,待て.ちょっと,待ってくれ.しゃ,喋る.何もかも喋る.だから, 火,止めてくれ,おい.おい.」
山形「権藤.きさーまー.裏切る気か,このー.」
悪党達の様子はどこかの映画館のスクリーンにも映し出された.
権藤「あんたと道連れはごめんだ.冗談じゃない.おい,聞いてくれえ. この山形社長はな,インチキ商法で500億,金集めて, 高飛びするところだったんだ.」
山形「黙れ.黙れ.権藤,黙れ.」
権藤「それが暴かれるのが恐かった.だから金で俺達を抱き込んで, 奥村弁護士や田代理事長を殺させたんだー.あー.あー.おい,野木, そうだろ.え.そうだ.はやく言ってやれ.そうだろー.」
野木「その通りだー.俺は金で雇われただけだあ.」
だが導火線の火は消されなかった.
権藤「あー,洗いざらい吐いたぞー.はやくー,はやく火ー消してくれー. おい.ロープが切れるー.」
山形「馬鹿めー.もう手遅れだー.」
権藤はわめいた.
権藤「助けてくれー.」
そしてロープが切れ,刃が落ちてきた.山形達の首は胴体から…離れなかった. すれすれのところで刃が止まったからだ.ちなみにこの仕掛けの原型は 「新ハングマン」#18 「服役者の妻を犯す警察署長」に出てきたもの.
野木「いっぱい食わされたー.」
権藤「くっそー.人をこけにしやがって.」
山形「ああ,そうか.これは奇術で使うギロチンだ.」
と言った途端,戸が開いて警官隊が入ってきた.警官隊の中には良介もいて, カメラを覗き込んだ.
マロン「わかったって.」
それを聞いたピンキー達は失笑した.悪党達は連行された. そして良介は敬礼して
良介「このようなものを発見いたしました.」
悪党達の自白が録音されたテープの入っているラジカセを刑事に見せた.

そして

ハンギング終了後,マロン達はアジトで乾杯した. そろそろ代理人がギャラを持ってくる頃だと話しているところへ代理人が現れた. ゴッド代理人の顔を見たマロンは驚いた.善次郎によく似ていたからだ.
善次郎「この度の皆さんのご活躍,真にお見事でした.ゴッドも大変, 喜んでおられます.ちょっと,失礼.」
善次郎はテーブルにアタッシュケースを置き,
善次郎「では,お約束のギャラを.」
そしてアタッシュケースを開けた.
善次郎「一人1千万と言うことで.」
それを聞いたケイ達は驚いた.ちなみにこの額はハングマン史上最高額だ. マロンは額よりも代理人の顔を見,声を聞いて驚いていた. ゴッド代理人の正体は善次郎ではないのだろうか?
善次郎「じゃ,私はこれで.」
ケイ達は去って行くゴッド代理人にお辞儀をしたが, マロンはお辞儀をするのも忘れて唖然としていた.
クロック「ほら.」
クロックに促されてマロンはギャラを分配した.
ケイ「これでヨーロッパへ行って豪遊するぞ.」
クロック「私,フォルクスワーゲン買って東名ぶっ飛ばすー.」
ケイ「ピンキーは?」
ピンキー「もちろん,貯金.」
クロック「しっかりしてるー.」
そしてマロンは言った.
マロン「あのー,私,ちょっと用事思い出したの.これで失礼するわ.」
ケイ「マロン,これでお別れなの?」
マロン「一応,ハングマンはこれで解散ね.」
クロック「でもまた会えるわよねえ.」
マロン「いつかどこかでまたお会いしましょう.」
ピンキー「さよなら,マロン.」
マロン「最後に,ピンキーに一つだけ頼みたいことがあるの.」
ピンキー「なんでしょう?」
マロン「新聞記者の山口さん,濡れ衣を着せられたままじゃかわいそうだから, 何とかしてあげて.」
ピンキー「あ,わかりました.」
マロン「じゃ.」
4人は握手して別れていった.

栗絵はゴッド代理人を追いかけた. そして隅田川の桜橋のところで代理人に声を掛けた.
栗絵「お義父さん.」
善次郎「ついにばれたか.」
栗絵「やっぱりお義父さんだったんですね.」
善次郎は笑った.
善次郎「いやあ,栗絵さん,騙して悪かったよ.」
善次郎はつけひげをとった.そして二人は笑った.
善次郎「ゴッドと私とは現役時代からの付き合いでね,そう, あれでかれこれ40年くらいになるかなあ.付き合って. そういう関係で今回是非にと頼まれてね.」
栗絵「そう.そうだったんですか.」
善次郎「いやあ,しかし私も驚いたよ. 良介の嫁が昔ハングマンのリーダーをしていたなんてなあ.」
栗絵「ごめんなさい.私も良介さんと結婚するとき随分悩んだんです. 打ち明けるべきかどうか.でも…」
善次郎「わかってる,わかってる.そのことであんたを責めるつもりはないさ. 別に悪いことをしていたわけじゃないんだからなあ.ところで栗絵さん, 今度のことはお互い内緒にしとこう.な. その方が良介にとって幸せかもしれん.」
栗絵「お義父さん.」
善次郎は笑った.
善次郎「じゃ,私は先に帰ってるから.あんたは買い物でもして, しばらく時間を潰してから帰った方がいいよ.じゃあな.」
善次郎はスーツの上着を脱ぎながら去って行った.

その頃,中沢千明は良介に暴行事件が嘘だと言うことを伝えていた.
千明「ごめんなさい.あたしね,演劇やってるんですけれども, 自分のお芝居がどれくらい通用するかどうかちょっと試してみたかったんです. そしたら,あのう,あんな大騒ぎになっちゃって, ついホントのこと言いそびれちゃってえ.」
良介「今更君,そんなこと言われたって.いや,参ったなあ.」
千明「一緒に警察署行きますので,あの人釈放してあげてください. お願いします.」
良介「そりゃ,被害者の君がそう言うんだから間違いはないだろうけど, それにしても参ったなあ.」

その晩.良介は手柄がふいになったとぼやいていた. 結局山口は無罪放免になったのだ.
栗絵「それにしても,近頃の若い子って恐いわねえ.」
栗絵は白々しくそう言ったが,良介は気づくはずもなかった.
良介「恐いよー.人の迷惑なんて考えていないんだから. 教育が悪いんだよ,教育が.」
栗絵は友人に銀行の支店長の妻がおり, 1千万円なら無担保で融資してくれると言い, 冒頭で当たった分譲住宅の購入に申し込もうと言っていた. 良介はこのことをすっかり忘れていた.そこで書類を調べてみたが,
良介「3日前に期限切れだよー.」
落胆する良介.
栗絵「そんなあ.あー.あー.」
栗絵も落胆して椅子に座った.
栗絵「やっとお金ができたと思ったら,これだもん.もう嫌ーだー.」
良介「お金が出来た?」
良介は不審に思ったが
栗絵「いいえ.金策の目処がついたと思ったら.」
この言い訳を良介は信じた.
良介「栗絵.あきらめよう.一戸建てばかりが人生の幸せじゃないんだから. 狭いながらも楽しい我が家.君がいて,俺がいて,父さんがいて, 3人仲良く暮らせれば,それで十分だ.な,そうだろ.」
この台詞は「ザ・ハングマンV」でも出てきた言葉を焼き直したものだ. それはともかく,栗絵はうなずいた. そのとき,善次郎がどこかへ電話をかけにやってきた.
善次郎「ああ,こちらねえ,勝どき団地306号の浜野だがね,幕の内弁当20人前, 至急届けてくれたまえ.うん.」
慌てて良介は受話器を奪い取った.
善次郎「20…」
良介「あ,すいません.うふん.今の電話は間違い電話ですから. 取り消してください.どうも.」
良介は電話を切った.
善次郎「良介!」
良介は本当にあきれ返った調子でこう言った.
良介「お父さん.何を考えてるんだよ.え. 幕の内弁当20人前も誰が食べるんだよ.」
善次郎「は? 言わなかった,お前に.」
良介「え?」
善次郎「今夜,我が家で刑事局長の激励会を催すことになっとるんだよ.」
良介はあきれ返ってしまった.
良介「また始まっちゃったよー.あのねえ,父さんはー,3年前に退官したんだ.」
善次郎「退官?」
良介「そうだよー.だから,今はただの人なんだ.な.わかる? ただの人だ.」
善次郎「馬鹿を言うな.こう見えてもわしは…」
良介「わかった,わかった.わかったよー.父さん,あっちでね, 詰め将棋でもやってなさい.え.俺が相手しようか? あ? おいで,おいで, おいで.」
善次郎は栗絵に目配せしながら部屋へ帰って行った.
栗絵の声「ちょっとやりすぎじゃないんですか,お義父さん.」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp