第二十三回

拳銃密輸を独占しようと企む組織を吊るす.
人妻パピヨンが拳銃屋をラブハントする!

脚本:鴨井達比古 監督:井上梅次

仕事開始

夜の港.一人の男(谷隼人)がサングラスを掛け, タバコを吸いながら船から降りた. そこへ赤い車がやってきた.車からパピヨンが降り, 白い服を着てサングラスを掛けたバニーも降りた.
バニー「さあ帰るんだよ.」
パピヨンは男の陰に隠れ,男に頼んだ.
パピヨン「お願い,助けて.」
バニー「連れて帰れと命令されてるんだあ.」
抵抗するパピヨン.連れて行こうとするバニー. 男は,はじめは無視して歩き去ろうとしたが,結局戻ってきて, バニーを殴り倒した.
男「この車,あんたのかね?」
パピヨン「はい.」
男「東京まで行く.便乗させてもらおう.助手席に座って.」
そして男はパピヨンと一緒に去って行った.それを見届けながら
バニー「すっげえ,パンチ.(無線機で)作戦終了.」
アジトにいたエジソンはそれを聞いた.その頃,車の中では, パピヨンが礼を言っていた.名前を聞くパピヨンに男はジョニーと答えた. だがジョニーは身元を詮索されることを嫌い, それ以上のことを言おうとしなかった.そして車は東京に着いた.
ジョニー「じゃあな.」
パピヨン「待って下さい.あたし,行くところがないの. お金も持ってないんです.」
ジョニーはカードを渡した.
ジョニー「ホテルならどこでも大丈夫だ.」
さらにパピヨンは
パピヨン「ああ,すいません.あのう,お返しするにはどこへ連絡を.」
ジョニー「いい.」
パピヨン「お願い.教えて.」
ジョニー「六本木のクラブカーニーでたまに飲んでる.」
そう言ってジョニーは去って行った.

翌朝.蝶子は雅則が出張する支度をしていた.
蝶子「あなた,セーター持ってきますか?」
雅則「いらないよ.フィリピンだぜ.泳ごうかってくらいだよ.」
全くの余談だが,僕ちゃんの初海外出張はマニラだった. 確か,9月に行ったのだが,非常に蒸し暑かった.閑話休題. 蝶子は海外出張をうらやましがっていた.
雅則「あのねえ,遊びに行くんじゃないの. 我々のような2流の商社マンの仕事はねえ,ジャングルをかき分けて, 缶詰や日用品を売り歩く.悲惨な商売ですよー.」
全くの余談だが,僕ちゃんの仕事はそういう仕事ではなかった.閑話休題. そう言っているうちに支度が出来た.
蝶子「ねえ,悪い遊びなんかして,病気なんかしちゃ嫌よ.」
雅則「何を言ってるんですか.こんな真面目な男を捕まえて, 毎晩安ホテルで枕抱えて寝てますよ.」
蝶子「あ,そういうこと言ってる人に限って危ないんだってよ.」
雅則「亭主を信じなさい.信じるものは救われる.テレビつけて.」
テレビをつけるとモーニング情報デスクというニュース番組が流れた. 庄司アナウンサーが,拳銃密輸事件で警視庁が内偵を進めていた, 自称岡本均と言う33歳の男が拳銃の弾を3発腹に撃ち込まれて死んだと報じた. 警察では武器密売に絡む仲間割れと見ていた.と言っている間に10時になった. 飛行機の時間が近いのだ.
蝶子「気をつけてね.」
雅則「わかってるよ.君こそ,浮気しないようにね.」
蝶子「馬鹿,何言ってるんですか.」
雅則「じゃあね.」
蝶子「ちょっと待った.」
雅則は振り返った.
蝶子「忘れ物.」
雅則はキスして出て行った.

さて CLUB CAGNE にパピヨンはきよみと名乗ってホステスとして潜入していた. 早速ジョニーがやってきた.ジョニーは国籍不明だった. パピヨンはジョニーと会った. パピヨンは水商売ならジョニーと会える店がいい,と言った. そして車を売り,マンションに移ったと言った.
パピヨン「マンション見つけたけど,まだ何にもないのよ. でもいいのよ.もう一度人生やり直せそうだから.」
ジョニー「やり直しかあ.うらやましいなあ.」
どうもこれは本音だったらしい.そこへママがやってきた. ジョニーの連れがやってきたのだ.ジョニーはパピヨンのところを離れた. 早速パピヨンは化粧室でエジソンに無線で連絡した. 外に止まったワゴンの中で待機していたエジソンとバニーも, ジョニーが中に入るのを確認していた.
エジソン「ミイラ取りがミイラになんないように気をつけてよう.」
パピヨン「あたしには主人がいるのよ.」
エジソン「だから余計危ないのよ.」
パピヨン「大丈夫よ,あたしに限って. とにかくお店じゃ素性が探れそうにないわ.ホテルに乗り込んでみるわ.」

というわけでパピヨンはジョニーのホテルの部屋に乗り込んだ. パピヨンはジョニーのキスをやんわりと拒否し,もっとお酒を飲みたいと言った. ジョニーがシャワーを浴びるためにシャツを脱ぐ時, パピヨンはジョニーの背中に銃弾の傷痕があるのを見た. そして服を探り,パスポート,財布を探った. 財布から一人の男(浜田寅彦)の写真が出てきた.
パピヨン「この人.」
さらに鞄を探ろうとしたが, ジョニーが浴室から出たのでパピヨンはメモを残して退散した.

英家に戻った蝶子は雅則と二人で写っている写真に語りかけた.
蝶子「あなた,マニラで何をしてますか? 浮気をしちゃあ,許しませんよ.」
蝶子は「雅則の顔」を指で弾くのであった. と言いながら,蝶子は布団の中でジョニーのことを思い出すのであった. 気がつくと10時になっていた.思わず
蝶子「あ,いけない.あなた.ああ,そうか.出張中か.」
そのとき,呼び鈴が鳴った.
蝶子「はい.」
玄関へ行ってみると
マネージャー「恐れ入ります.毎朝新聞の集金ですがあ.」
蝶子「集金? だって10日ほど前に…」
蝶子は怪訝な顔でドアを開けた. ご丁寧にもマネージャーはティッシュの箱を抱えていた.
マネージャー「おはようございます.」
思わず
パピヨン「(小声で)ねえ,少し大胆すぎません? もし主人に見つかったら…」
だが
マネージャー「(小声で)旦那さんがフィリピン出張中なのを承知の上. (大声で)は,は,は.そうでした.」
大胆にも,マネージャーは通りかかった近所の奥さんにも挨拶した.
マネージャー「(普通の声で)あ,ところで奥さんねえ,えー, 契約が今月一杯なんですが,引き続き御購読願いたいと思いまして. ね,これを.ほんのつまらんもんですが, (口調を変えて)今回のギャラと追加資料.」
ティッシュの箱はそのために持っていたのだ.

アジトでパピヨン達は追加資料を見た. 3ヶ月前,神戸港の近くの駐車場で殺されたのは田丸まさるで39歳. 2ヶ月前に多摩川で吉本まさるという59歳の男が, 38口径の拳銃で心臓を一発で撃ち抜かれていた 西新宿のマンションの裏で死んでいた岡本均33歳は,腹に3発撃たれていた. 3人とも海外から拳銃を密輸している大手の業者だった.それぞれマニラルート, 香港ルート,ハワイルートを代表する業者だった. 国内の暴力団に流れている拳銃の90%は,この3人の手によって入っていた. この殺人は全てジョニーの仕業だった.それぞれの事件の直前に入国し, 直後に出国していた.バニーは, 拳銃密売人を殺した男がハンギングの対象になっていることに納得行かない様子.
エジソン「そこなんだよね,坊や.よく聞きなさいよ. 去年から続いてる暴力団の抗争で,どこの組織も血眼になって拳銃, 買い漁ってる.性能のいいハジキをさ, 1丁100万近い値段で取引されてるって話だぞ.」
パピヨン「そんな時期に大手の密輸業者が全部消されたらどうなる?」
バニー「ますます値が跳ね上がりますねえ.」
パピヨン「単価が100万として100丁なら1億,1000丁なら10億円.」
エジソン「とんでもない,いい商売だなあ.」
マネージャーの調査によると,この殺人事件の狙いはそこにあるらしい. つまり,新しい密輸ルートを作って市場を独占するのが狙いなのだ. ジョニー島田と言う男は殺し屋だけではなく, 拳銃を送り出す香港側の売人だと言う訳だ. 15年前にハイジャック未遂事件で指名手配され, 国外に逃亡したと言われている過激派の活動家島田健一がジョニーの正体だった. とは言っても顔を整形して香港の犯罪組織に潜り込んだらしいので, 島田健一の顔とジョニーの顔は微妙に違っていた. まるでハングマンのような人だ.マネージャーの狙いは,ジョニーをマークし, 国内の拳銃密売市場を独占しようとしている組織を探し出し,叩き潰すこと.
エジソン「当分,恋愛ごっこ続くわけだ.」
パピヨン「ふーん.そうなるわねえ.」
バニー「あのう,恐くないんですか?」
パピヨン「不思議ねえ.ちっとも恐くないの.」
パピヨンはエジソン達にジョニーの身元を調べるように指示した.
パピヨン「同じ臭いがするのよ.過去を捨てた.」

カーニーでパピヨンはジョニーと話していた.
パピヨン「また身元調べって叱られるかもしれないけど,お父さん,お母さん, いるの?」
ジョニーの手が止まった.そしてコップを持つ手が怒りで震えていた. 勢い余ってジョニーはコップを握り壊してしまった. その後,カーニーのママがやってきた.ママはジョニーと耳打ちした. その隙にパピヨンは盗聴機をジョニーの持つタバコに仕掛けた.

ジョニーは以前カーニーにやってきた男に神戸の山中と博多の広田を紹介された. ジョニーは二人に拳銃を見せた.そして試し撃ちをしてみた. その性能に驚く山中と広田.その取引の様子をエジソンとバニーが盗聴していた. カーニーにやってきた男はジョニーに拳銃を持ってくるようにと頼んだが,
ジョニー「まだだ.」
男「ん?」
ジョニー「最終的な契約はそっちのボスに会って確認してからだ.」
男「なぜだ.上どうしの話は済んでるはずだ.」
ジョニー「香港のボスは俺の判断に任してる.嫌ならやめよう.」

カーニーにジョニーが戻ってきてパピヨンと一緒に飲んだ. その時,ジョニーはタバコの箱を握りつぶした.握りつぶすのが好きな人だ.
パピヨン「今夜は送ってね.」
その頃,マンションの空室では
エジソン「急げ,急げ,急げ.」
バニー「でもホントにこれだけでいいんですか?」
エジソン「車売ってねえ,やっと住む部屋借りたって設定でしょう. 家具がいっぱいあったらおかしいでしょう.」
部下二人が部屋の準備をしていた.
バニー「額,ここでいいですか?」
エジソン「んなの,どっちだっていいよ.大した問題じゃない.」
エジソンは赤と黒のパンティーを手にとり,悩んでいた.
エジソン「この人,どっちがタイプかなあ.しかし複雑だなあ.広げるかな.」
それを見て
バニー「不潔.」

パピヨンは自分の部屋にジョニーを案内した. ベッドの上に黒の下着があるのを見て
パピヨン「ああ,行き過ぎよ.」
パピヨンは黒の下着を片付けた.
ジョニー「何?」
パピヨン「なんでもない.ごめんなさい.ちらかしてて. いつも,薔薇の花を飾っておくんだけど.」
ジョニー「薔薇は嫌いだ.」
とか言いながら,ジョニーは強引にパピヨンの腕を取り
ジョニー「あんた,何もんだ.」
パピヨン「女よ.ただの.お風呂入る?」
ジョニー「今日は君が先だ.」
パピヨン「そう.じゃあ,お先ね.」

その頃,部下2名はワゴンの中にいた.
パピヨンの声「帰っちゃ,やあよ.」
バニー「ホントに大丈夫ですかねえ.」
エジソン「何が?」
バニー「だって,あんな男と二人っきりですよ.」
エジソン「あのねえ,パピヨンはねえ,お前みたいなガキじゃないの. それにいいじゃないか,1回ぐらい.減るもんじゃなし.」
バニー「どうなるか心配だなあ.」
エジソン「どうなるか楽しみだなあ.」

浴室から出たパピヨンはジョニーが浴室から出るのを見届けてから, ジョニーのアタッシュケースを開けた.中には拳銃が入っていた. そしてボールペン型の盗聴機をアタッシュケースに仕掛けた.そうしている内に, ジョニーがバスロープを羽織っただけの格好で浴室から出てきた. パピヨンは酒をついでやった.
パピヨン「今度は何に乾杯しましょうか?」
ジョニー「俺は15年間,まともな女を抱いたことがなかった. 君に乾杯だ.」
パピヨン「ありがと.」
二人は乾杯して酒を飲んだ.ジョニーがパピヨンを抱き寄せ,キスしようとした. パピヨンは一回,拒否したが,ジョニーは諦めずにキスしようとした. そこへ電話がかかってきた.パピヨンは電話に出た.
パピヨン「ジョニーという男が来てないか,ですって.」
慌ててジョニーはバスロープから服に着替えた. 警戒したジョニーは出て行こうとした.
パピヨン「待って.三度目の正直ってあるのかしら?」
ジョニー「お互い,生きてたら,多分.」
そう言ってジョニーは去って行った.

外へ出たジョニーを運転台に座っていたバニーが見送った. そこへパピヨンがやってきた.
パピヨン「もう遅かった.危ないとこだったのよ.」
電話はエジソンからのものだったのだ.
エジソン「僕ちゃん,心配してねえ,パピヨンの様子が芝居とは思えないって.」
パピヨン「馬鹿なこと言わないで.」
続けてパピヨンはアタッシュケースの中身が予想通り拳銃だったことを報告した. エジソンとバニーはジョニーの身元調査の結果を報告した. ジョニーの母親は5年前に病死したが1回も結婚歴がなかった. つまりジョニーは島田弥生の私生児だったのだ. 島田弥生は元々は赤坂で芸者をしていた.さらに, 島田弥生の芸者仲間に聞き込んだ結果, ジョニーの父親が今泉三郎(浜田寅彦)と言う大物政治家らしいことがわかった. 今泉は3回も大臣に就任した政界の古狸. もっとも最近は自分がオーナーだった建設会社が倒産して資金源が絶たれ, 力を落としていた.
パピヨン「そう.この男がジョニーのパパなの.」

今泉はクレイ射撃の練習をしていた.そこへジョニーがやって来た. 直接話をしたいというのだ.
ジョニー「俺は全てを知ってるんだぜ.今度の取引の黒幕は今泉三郎, あんただってことをな.」
今泉は白を切った.その会話の様子をハングマンはしっかり盗聴していた.
今泉「わたしゃ,この久保田が香港と商売したいと言うから, 知人のミスター・ヤンに紹介しただけだ.」
久保田「香港からの品物を買うのはこの私だ.今泉先生には関係ない! 君はヤンの依頼を受けて商売敵を消しに来たのだろう. その仕事は終わったらしいな.」
ジョニーは拳銃で脅し,今泉と久保田を連れ出した. 早速追いかける今泉の部下とハングマン. 今泉達を乗せた車は山の中で停まった.
ジョニー「あんたには子供が何人いる.」
今泉「なんのことだ.」
ジョニー「言え!」
今泉「娘が一人だ.もう嫁に行った.」
ジョニー「記憶力が悪くなったね.息子がもう一人いるはずだ.」
今泉「息子?」
ジョニー「もっともとっくに死んだ.いや,殺したと思ってるだろうがな.」
ジョニーはサングラスを外した.
ジョニー「顔を見てもわかりっこないか.お袋の話によると, 俺が小学校に上がる時に一度だけ会って頂いたことがあるそうだ.」
それを聞いた今泉の表情が変わった.
今泉「まさか.」
ジョニー「15年前,俺が日本を脱出してマニラへ逃げた時, 向こうで何度も殺されかけた.あんたの差し向けた殺し屋にな.」
今泉「知らん!」
ジョニー「とぼけるな.はじめに大臣の椅子を目前にしたあんたは, ハイジャック未遂事件で国外に逃亡した犯人が自分の隠し子だと, 世間にばれるのを恐れて,殺し屋をさしむけたんだ.」
今泉「く,くだらん作り話はやめろ.」
ジョニー「背中に3発ぶち込まれたよ. しかし俺は奇跡的に生き延びて香港へ逃げたんだ. 10年経ってお袋が死んだことを風の便りに聞いて, もう日本に戻る気はなくなっていたんだが, この仕事の話でボスの口から今泉の名前が漏れた.気が変わったんだ.」
それをハングマンも聞いた.
エジソン「てめえの息子,殺そうとしたんだ.ひでえ話だ.」
パピヨンは沈痛な表情だった.
今泉「何が望みだ? 言ってみろ.」
ジョニー「今回の仕事の前払い金として, ヤンに支払う金1億円が用意してあるはずだ.そいつを頂く.」
今泉「そんなことをしてヤンが許すと思うか.」
ジョニー「俺はもう香港に戻るつもりはないんだ.」
ジョニーは車に乗って去ろうとした.
久保田「もしいやだと言ったら.」
ジョニー「あんたの正体がマスコミにばれるだけだ.金用意しとけ. 明日,連絡する.」
そう言い残してジョニーは立ち去った.今泉はヤンに連絡を取るように, 久保田に命じた.

その日の夕方,ジョニーは島田弥生の粗末な墓に花を供えた. そして次の日.パピヨンは港の堤防にいたジョニーのところへやって来た. 脇にいたワゴンからエジソンとバニーが様子を伺っていた. 堤防にはジョニーとパピヨンの他に人はいない様子だった.
ジョニー「よく来てくれたなあ.」
パピヨン「電話,待ってたのよ.」
ジョニー「結局は他人のままだったなあ.」
パピヨンは無言だった.ジョニーが言った.
ジョニー「これ,返す.」
ジョニーは盗聴機が仕掛けられていたのをお見通しだったのだ.
パピヨン「知ってたの.」
ジョニー「最初で港で会った時,芝居だと気づいた. かと言って警察関係でもない.少なくとも敵じゃないと思ったのさ.」
パピヨン「なぜそう思ったの?」
ジョニー「臭いさ.国籍も持たず, 15年間生き延びてきた人間の本能って言うもんだよ.」
ジョニーはパピヨンと同じことを感じていたのだ.
パピヨン「臭いねえ.じゃあ,盗聴も承知の上で.」
ジョニー「誰か一人くらい,聞いてて欲しかったのかもしれない.」
ジョニーはサングラスを取った.
ジョニー「明日,日本を発つ.一緒に行かないか.」
この言葉を聞いたパピヨンは動揺した.
パピヨン「どこ行くの?」
ジョニー「どこでもいい.海の向こうで三度目の正直ってのも悪くない.」
パピヨンは無言だ.
ジョニー「間もなくある男が金をここに届けに来る.1億ある. 一生楽に暮らせるぜ.」
このとき,緑美園のワゴンからは死角になっているところに車が止まっていた. 車の中にいる男はジョニーをライフルで狙っていた.
パピヨン「お父さんを殺しに来たの?」
ジョニー「ああ.でも,実際に顔を見たら殺す気になれなかった. どうしてかなあ.」
その瞬間,ジョニーは背中をライフルで撃たれた. そしてジョニーは海の中に落ちてしまった.「谷隼人」さんは大変だ. パピヨンもライフルで狙われたので,パピヨンは伏せた. 呆然とするバニー.
エジソン「狙撃だ.おい,行くぞ.」
エジソンはワゴンを走らせ,車の前まで走ったが, タイヤをパンクさせられてしまった. ちなみにこの話の元ネタはこれと, これだ.

アジトでパピヨン達はこの事件を報じるテレビニュースを見た. ジョニーが所持していたパスポートは香港製の精巧な偽造品だった. 警察はジョニーが何らかの犯罪組織に所属していたと睨んでいた. パピヨンはテレビを消させた.
エジソン「パピヨン.」
パピヨンは立ち上がった.
パピヨン「やるわ.許せない.」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「ファルコンの分も働くのよ.」
エジソン「俺,一人前しかもらってませんので.」
パピヨン「降りますか?」
エジソン「行きます.」
パピヨン「Let's go!」
エジソンとバニー「Hanging!」
エジソンもバニーも両手を伸ばした.
エジソン「お前,二人前働け.」
ちなみに二人の格好は初期と同じ.バニーはワゴンの中でバンダナを巻いた.

ハンギング

バニーはエジソンの指示に従い,今泉の事務所の電話線に細工をした. 早速盗聴を開始するエジソンとパピヨン. 今泉のところにいた久保田に酒井と言う部下から電話がかかってきた.
久保田「何,手配完了した? 取引は8号倉庫だ.客には当日まで場所を言うなよ. いいな.」
久保田は電話を切り,今泉に言った.
久保田「先生,間違いなく明後日,荷物は入るんでしょうな.」
今泉「ヤンは約束は守る男だ.しかし,いいな.わしゃ,ヤンを紹介しただけだ. 取引とは何の関係もない.わかってるな.」

当然のことながら,8号倉庫に緑美園のワゴンが先回り.
エジソン「カメラどうだ?」
バニー「準備OK!」
エジソン「ライト,スピーカー,ライト.引き揚げるぞ.」

夜になった.
バニー「奴ら,来ましたよ.」
エジソン「はい,はい.いつでもどうぞ.」
拳銃取引の客と久保田達が現れた.
久保田「皆さん,遠いところをありがとうございます. 代金は用意してこられたんでしょうな.」
客の山中達は銀色のアタッシュケースを取り出し,中を見せた.
山中「物見せてんか.」
久保田は木箱を開けた.洋酒が詰まっている…と思ったら,それは上だけ. 拳銃が何丁か出てきた.
エジソン「ぼちぼち代議士先生の記者会見,始まる頃だよ.」
パピヨン「スタンバイ.」
エジソン「了解.」
アンテナが準備された.

その頃,「今泉三郎特別記者会見」が始まっていた. 今泉は自分が束ねる今泉派を率いて党を割って出るつもりだったのだ. 偉そうに今泉が喋る頃,
エジソン「準備OK!」
パピヨン「ライト.」
バニーの操作により,8号倉庫に設置していたライトが点灯された. 久保田達は大慌て.スピーカーからパピヨンの声が響く.
パピヨン「面白い光景ねえ,拳銃の密輸取引と言うのは.」
山中「なんや,あの声は.」
久保田「さ,酒井.どうしたんだ,これは.」
酒井「さあ,何も知りませんよ.」
大慌ての悪党達を見ながら,パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
パピヨンがスイッチを押すと同時に拳銃密売現場が各地のテレビに映し出された.
久保田「おい,酒井.」
酒井「はい.」
久保田「誰かいるんじゃないのか?」
山中「見張られとるねん.」
狼狽する悪党達を映しながら,パピヨンが言う.
パピヨン「皆さん,この取引の影のボスを御存知? 面白い会話を聞かせてあげるわ.」
今泉の声「何の用だ?」
ジョニーの声「俺は全てを知ってるんだぜ. 今度の取引の黒幕は今泉三郎,あんただってことをな.」
今泉の声「わたしゃ,この久保田が香港と商売したいと言うから, 知人のミスター・ヤンに紹介しただけだ.」
エジソン「おい,カメラ,久保田,追え.」
バニー「はい.」
ジョニーの声「それが拳銃密輸であることは百も承知の上なんだよ,あんたは.」
久保田にカメラがよっていく.
久保田「おい,酒井.やめさせろ.」
酒井「はい.」
この様子は「川崎市・多摩区 三益寿司」のテレビなどにも映し出されていた. 三益寿司の客も板前もテレビを見ていた.
久保田の声「ちょっと待ちたまえ.私は南洋通商の久保田だ.」
すかさず,テレビに「今泉氏の元秘書 久保田勇作(50歳)」という字幕が入る.
久保田の声「香港からの品物を買うのはこの私だ.今泉先生には関係ない!」
自分が喋った声を聞き,右往左往する久保田がテレビに大映しにされた.
久保田の声「君はヤンの依頼を受けて商売敵を消しに来たのだろう. その仕事は終わったらしいな.」

今泉が偉そうに喋る脇に設置されたテレビにも, 久保田が右往左往する姿が映っていた. 記者は今泉の言葉を聞かず,テレビの方に釘付けになった.
久保田「やめろー.知らん,知らん.今泉先生は関係ない. 今泉先生は関係ないんだあ.」
やっと今泉も気がついたが後の祭.
山中「久保田,妙な芝居するなあ.」
広田「おめえらの仕組んだ罠じゃないのかい.」
久保田「とんでもない.酒井,今夜の取引は中止だ.皆さん,どうぞ, お引き取りください.」
だが
山中「何抜かし取るんじゃ.ハジキはもろうとくで.」
久保田「いや,いや.取引は後日.」
山中「何が取引や.黒幕はわかったんや. 久保田の後ろに今泉がいるとわかった以上,今からサツに垂れこむだけや.」
撃ち合いをはじめようと拳銃を構える連中にパピヨンが衝撃の事実を告げた.
パピヨン「皆さん,もう一つ教えてあげるわ.久保田と酒井は, 今泉の命令を受けて,香港のバイヤーの手先,ジョニー島田, 実は今泉の世間に知られたくない子供まで殺したの.」
今泉に記者の質問が殺到した.今泉はわからんとごまかそうとしたが, 記者の目はごまかされなかった.8号倉庫の壁に蝶のシルエットが映し出された. 薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
山中「誰や?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.」
パピヨンが手に持つ薔薇を放り投げると, いつの間にか床に落ちていた薔薇が爆発. 悪党達は催眠ガスの餌食になった.
パピヨン「安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,久保田も眠らされた. そして第8倉庫にパトカーが駆けつけた.

事件解決して…

緑美園で
エジソン「やっぱりパピヨンはあの男に惚れてたな.」
バニー「冗談じゃないですよー.あの人はねえ, (びっくりしてエジソンが振り返った)そんな浮気な人じゃありませんよー.」
エジソン「あ,お前,急に剥きになって…」
エジソンはあることに気がついた.
エジソン「あ,わかった.お前,パピヨンに惚れてるな.」
図星だったのか
バニー「からかわないでくださいよ.」
エジソンは冷笑した.
バニー「ファルコンから手紙です.帰ってくるんですって.」
エジソンはファルコンから届いた絵葉書を読んだ.
エジソン「ん? なんだ,これ.何! 永住しようと思ったが, 東京の仲間のことを思うとあまりにも頼りないので帰ることに…」
バニー「そうだろうなあ.」
バニーは自分のことを棚にあげて呟いた.
エジソン「帰ってくんな,もう.」

エジソンの読み通り,蝶子はジョニーと過ごした日々を思い出していた. そこへ雅則が帰ってきた.雅則は成田の税関で散々調べられたとこぼした. 例の拳銃密輸事件で取締りが厳しくなったのだ. お陰でポルノ雑誌が全て没収されてしまったと言う.
蝶子「それより,あなた,浮気しなかった?」
雅則「え? するわけないだろう.」
蝶子「嘘.」
雅則「嘘? どうして.」
蝶子「男のあなたが1週間も独りでいて,浮気しないはずがないでしょう.」
雅則「そんなこと,勝手に決めないでくれよ.」
蝶子「いいえ.さあ,白状しなさい.」
蝶子にネクタイを引っ張られ,雅則は困惑した.なんと
雅則「知ってたのか,君.」
脇に置かれた新聞では今泉が来週にも逮捕されると言う記事が載っていた.
蝶子「やっぱり,してたの!」
雅則「してませーん.」
蝶子「え,ホント.」
蝶子は雅則に抱きつくのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp