第二十一回

みどり市の市政を私物化する悪徳市長一味を吊るす.
悪徳市長にハングマンが逮捕される!

脚本:柏原寛司 監督:井上梅次

新宿駅西口の地下を一人の男がアタッシュケースを持って歩いていた. だが男は二人組の男に声を掛けられた.
サングラスを掛けた男「上田さん.」
上田「なんだね,君達は?」
サングラスを掛けた男「お話があるんですよ.」
アタッシュケースを持っていた男上田は拉致され,アタッシュケースを奪われた. そしてある通りで車から落とされ,その車に轢き殺されてしまった.

調査開始

さて蝶子は亀戸天神にお参りしていた. その帰り,境内を歩いていると
マネージャー「はい,はい,勝てば三倍ねえ.四角四面の詰め将棋. お,奥さん,奥さん,ちょっと.」
テキ屋の格好をし, 詰め将棋屋を営んでいたマネージャーはパピヨンを呼び止めた.
マネージャー「どうぞ.勝てば三倍,詰め将棋.」
呆れた顔をしながらも,パピヨンは詰め将棋をすることにした.
マネージャー「へ,へ.さあ,さあ,さあ.奥さんは将棋好き.顔に書いてある. ね.持ち駒は銀.はい. どうぞ.」
パピヨン「2四銀.」
この時点では先手が3五金,4四飛,1三歩,4三桂. 後手は2三玉,3二歩,1五歩,4二歩,5二歩.
マネージャー「ほう.いきなり,銀打ちですかい.はい. 1四の玉だ. ねえ,今度のプロジェクトは少々厄介なことになりそうだよ.」
パピヨン「3三銀不成.」
マネージャー「ほう.じゃあねえ,1三の玉と. みどり市の市会議員が轢き逃げされたのは知っとるね.」
パピヨンはうなずいた.
マネージャー「実は殺しだ.詳しいことは(ファイルを渡しながら)この資料に, (懐から封筒を取り出して渡しながら)それから,はい.お楽しみのギャラだよ. (口調を変えて)は,は,は.それじゃあ,詰む訳ないですねえ.」
だが
パピヨン「詰んでますよ.」
マネージャー「え?」
パピヨン「1四飛車.」
マネージャー「ほな,取っちゃうよ.ほい.」
つまり,1四玉.
パピヨン「2四銀成で, 終わり.」
呆気に取られるマネージャー.
パピヨン「ね.」
悠々と去って行くパピヨンを見ながら
マネージャー「詰む訳ないんだけどなあ.夕べ寝ないで考えたんだけどねえ. 麻雀だけじゃないんだよ,ねえ.」

アジトでパピヨンが指令を説明した. 冒頭で殺されたのはみどり市の市会議員上田順司. 冒頭の事件は10日前に起きた.上田は市政の腐敗を見るに見かね, 地元出身の衆議院議員を訪ねる為,上京したのだ. アタッシュケースも現場に捨てられていたが空だった. 市政の腐敗を証明する書類が中に入っていたに違いない. 中央の議員に知られると困る連中が上田を殺し,証拠書類を奪ったのだろう.
バニー「困る奴らって?」
エジソンは写真を映し出した.
エジソン「市長の飯岡(武藤英司).このおっさんが悪のトップだってよ.」

ファルコンとバニーは車でみどり市にやって来た. みどり市は酷く寂れていた.昔は掘り物の町だったが, 今はほとんどやめているそうだ.
バニー「ディスコなんかないんだろうなあ,これじゃあ.」
呆れたファルコンが大声で言った.
ファルコン「お前は誰だ?」
バニー「え? 若月清志です.」
ファルコン「ばーか,お前.偽名で乗り込むと言っただろうが.」
バニー「あ,そうか.えーっと,(名刺入れを探りながら)誰だったっけな. (名刺を出して)あ,山菱不動産の高木清です.」
ファルコン「いつまで経っても子供だなあ.よく頭に叩き込めよ.け!」
バニー「(小声で)自分だって変わんないくせに.」
そんなことが言えるのか,バニー.ファルコンはバニーをジロっと睨んだ. そんなことを言っているうちに車は山梨県みどり市役所の前を通過.
バニー「中心部を外れますとだいぶ寂れますねえ.帰りたくなった,俺.」
呆れかえったファルコンがこう言った.
ファルコン「お前ねえ,遊びに来たんじゃねえんだぞ.」
そのとき
ファルコン「おい,面白い喫茶店があるじゃねえか.」
ファルコンが見つけた喫茶店の名前は「純喫茶 ゾンビ」だった. 早速二人は車を止めた.
ファルコン「コーヒーでも飲んで作戦練るか.」
バニー「純喫茶ゾンビ.これで喫茶店.」
ファルコン「贅沢言うなよ.」
二人は中に入って行った.

中には誰もいなかった.
ファルコン「すいませーん.お客さんですよ,お客さーん.」
バニー「コーヒーくださーい.ひっでえ店.」
奥からマスター(上田忠好)が出てきた.
バニー「きゃー,出たー.」
確かにマスターの顔はゾンビみたいな顔をしていた. マスターはどこから来たとか,何しに来たとか,聞いた. ファルコン達は東京から不動産会社の営業で来たと答えた.

その頃,ゾンビの前を1台の車が通りかかった. その車に乗っていたのは上田を殺した男達だ. 男達はファルコン達の車が止まっているのを見, さらに品川ナンバーの見慣れない車だったのでゾンビの中に入り, 様子を伺った.何も知らないバニーは
バニー「ちょっと,テーブル拭いてよ.」
マスター「自分で拭きな.」
テーブルは埃だらけだった.そして出されたコーヒーの味はと言うと
バニー「うっ.」
ファルコン「どうした?」
バニーはコーヒーを指差した.ファルコンも飲んでみたが
ファルコン「これ,コーヒーかよ.」
マスター「うまいって言う奴もいるぞ.ここじゃあなあ, 不動産は商売にならねえ.」
ファルコン「何で?」
マスター「ここの地権は全部飯岡市長が握っているからさあ.」
ファルコン「この飯岡って市長は商売にまで首を突っ込んでくるのかい?」
マスター「ここを守るためだ.昔, 大手の百貨店がここに進出しようとしてきたことがあった.」
ファルコン「結構なことじゃないの.その百貨店が進出して来りゃ, こんなに寂れなくて済んだだろう.」
マスター「でも市長はそれを阻止したんだ.飯岡市長はなあ, 地元の利益は地元の人間に渡るべきだって主義でな.」
ファルコン「それじゃあ,俺達をそのまま受け入れてもらえねえってわけだ.」
マスター「そう.帰った方がいいよ.」

ファルコンとバニーの動きは先程の二人組が全て調べていた. そして宮下不動産で社長の宮下(宗方勝巳)にそのことを報告した. 二人組は宮下不動産の社員だったのだ. ちなみにファルコンは吹山賢と名乗っていた. 二人組はファルコン達が街外れの旅館に泊まっていることも調べ上げ, 旅館の電話に盗聴機を仕掛けていた.すると早速動きがあった. ファルコンが東京へ電話するのを宮下不動産の連中は盗聴した.
ファルコン「そうだ.この町は完全に市長に牛耳られている. 大手百貨店の進出拒否から, 市長の飯岡は経済の隅々まで握るようになったらしい.」
エジソン「ああ.権力を利用して私腹を肥やしてるって訳か.」
ファルコン「だろうなあ.」
エジソン「殺された上田のかみさん(鈴鹿景子)に会ったのか?」
ファルコン「メインディッシュは明日に取ってあるんだ. なんたって,上玉だからなあ.」
エジソン「はーん.俺だったらメインディッシュを先に食うぞ.」
ファルコン「まあ,人生観の相違だなあ.そいじゃあ.」

その晩.雅則と蝶子は花札でこいこいをやっていた. もう12時だと言うのに雅則はやめようとしなかった. しかし蝶子が猪鹿蝶を作ったため,雅則は大負けしてしまった. その頃.旅館で寝ていたファルコンとバニーは不意を突かれてしまい, 二人組に拉致されてしまった.

翌朝.英家に電話がかかってきた.蝶子が取ろうとしたが,切れてしまった. また電話がかかってきた.
雅則「なんだよー.朝っぱらから.」
また切れてしまった.
雅則「何だ,いったい.」
パピヨン「いや,あのう,この頃なんか悪戯電話凄く多いのよー.」
雅則「悪戯電話ってのは普通夜かかってくるもんじゃないんですか?」
と言いながら雅則は大便をするためにトイレに入ってしまった. それを確認してから,パピヨンは緑美園に電話を掛けた.
エジソン「おはよう.」
パピヨン「(小声で)何よ.まだ主人がいるんですからね.」
エジソン「どうもすいませんね.緊急事態なんですよ.」
パピヨン「緊急事態?」
エジソン「さっき二人が泊まってる旅館に電話したんだ. ところが泊まってないって言うわけ.」
パピヨン「どういうこと?」
エジソン「何.何かあったってことじゃない.」
パピヨン「あたし達も行きましょう.主人を送り出したら,すぐそっち行くわ.」

困ったことに
雅則「今夜もやるからな.」
花札をやるつもりだったのだ.
パピヨン「申し訳ないけど今夜ダメなのよ.」
雅則「ん?」
パピヨン「みどり市行かなきゃなんないのよ.」
雅則「何で?」
パピヨン「あのねえ,学生時代の友達が交通事故に遭って, 危険な状態らしいのよー.」
雅則は不服そうな顔.
パピヨン「すみません,あなた.」

その頃,ファルコン達は地下室で拷問されていた. 電話のことをネタにされたのだ.
ファルコン「上田さんにはさあ,だいぶお世話になったから.」
男「いい加減なことを言うな.」
ファルコンは殴られた.
ファルコン「15!」
男「なーに?」
またファルコンは殴られた.
ファルコン「16発殴られたぞ.」
宮下「お前達はサツじゃないってことはわかってる.」
ファルコン「よく調べたねえ.それも飯岡って市長のお力ですか?」
男「この野郎!」
またファルコンは殴られた.
ファルコン「17.覚えとけよ,この野郎.17発だぞ.」

パピヨンとエジソンもみどり市へ行った.とりあえず上田の妻に会うことにした. パピヨンの車をゾンビのマスターも見た.パピヨンは週刊ビッグタイムスの記者, エジソンはフリーカメラマンと名乗った.パピヨンは上田が殺された理由と, 上田の妻が教師を休職した理由を尋ねた.上田の妻は校長に, 生徒に対する指導に問題がある,父兄からも抗議が殺到している,と言われ, 休職させられたのだ.だが本当は
パピヨン「市長の圧力ですか?」
上田の妻は無言だ.
パピヨン「我々の調べたところによると,お宅のご主人は, 市長がこの市を私物化しているのを見るに見兼ねて中央に直訴しようとした. そして殺された.」
思わず上田の妻は上田の遺影を見た.
パピヨン「となれば,今度は奥さんを追い出す必要がある.違いますか?」
上田の妻「どうして,それを?」
図星だったのだ.その頃,宮下不動産の連中がパピヨンの車が, 上田の自宅の前に止まっているのを発見.早速監視を開始した.中では
上田の妻「市長の飯岡は五星銀行支店長の加藤,宮下不動産の宮下を使って, この市を牛耳るとともに私腹を肥やしてるんです.」
上田の妻は広報を渡した.飯岡のフルネームは飯岡誠. 五星相互銀行の支店長のフルネームは加藤良介. 宮下不動産社長のフルネームは宮下信次. 加藤が不正融資をし,宮下が賄賂を贈ると言う構図になっていたのだ.
上田の妻「議員達にも賄賂を贈り, 市政を自分の思うままに動かしているんです.」
エジソン「それであなたのご主人はそれを暴こうとした.」
上田の妻はうなずいた.
上田の妻「主人は飯岡からの賄賂を拒否しました.」
パピヨン「警察には話したんですか?」
上田の妻「警察なんか当てになりません. 飯岡から金品を受け取っているものだっているんです.」
エジソン「最悪ですね,それは.」
上田の妻は立ち退くように圧力を掛けられ,荷物をまとめていた. パピヨン達は上田の妻に書類のコピーがないかどうか尋ねた. 上田の妻は口篭もったが
パピヨン「話してくれませんか.それがあればご主人の仇が取れるんです.」
上田の妻「五星銀行と宮下不動産の証拠書類です. あの人がある人を通して手に入れた物なんです. 万が一のことを考えてそのコピーを私に渡していきました.」
エジソン「どこにあるんですか,それは?」
上田の妻「隠してあるんです.取りにいけないんです.」
エジソン「どうして?」
上田の妻「見張られてるんです.きっと,今も.」
3人が外をうかがうと
上田の妻「宮下不動産の社員です.飯岡の手足になって,動いている男達です.」
3人は机に戻った.
エジソン「どこにあるんです.その書類のコピーは?」
上田の妻「中学校のロッカーの中です.」

その頃,地下室では
ファルコン「お前,ボケーっとしてないで,手伝ってくれ.」
バニー「何を?」
ファルコン「ロープだよ.」
バニー「無理ですよー.俺だってきつく縛られてるもん.」
ファルコン「学校の先生に言われなかった? 不可能に挑戦してこそが,素晴らしい結果が得られるんだよ.」
バニー「僕の先生はこう言ってましたよ.人間諦めが肝腎だって.」
ダメだこりゃ.
ファルコン「お前,妙に悟ったこと言うね.」
そこへゾンビのマスターがやってきた.
マスター「飯だ.食べな.」
ファルコン「じいさん,あんたも市長の仲間だったのかい.」
マスター「ここで暮らしてる者はみんな仲間さ.」
そう言ってマスターはピラフを二皿置いて去ろうとした.
ファルコン「どうやって食ったらいいんだよ.」
マスター「考えるんだな,てめえで.」
なぜかピラフの皿にナイフがついていた.

市役所では宮下と加藤が飯岡にまた二人組のよそ者が来たことを報告していた. 宮下は始末しましょうと言ったが, 加藤は上田をやったからこうなったとびびっていた. 飯岡も始末を指示した.

バニー「俺達,殺されるんですかねえ.」
ファルコン「お前よー,女にもてないだろう.」
バニー「ん?」
ファルコン「諦めが早すぎんだよー.」
バニー「ああ,お腹すいた.死ぬ前にご飯食べよう.」
鈍感なバニーはナイフを口にくわえた.それを見たファルコンはピンと来た.
ファルコン「おーい,ちょっと,ちょっと.今,何くわえたんだ?」
バニー「ナイフです.」
ファルコン「ナイフだろう.なあ,そのナイフでさあ, 俺のロープを切ろうかなあって思わないかな?」
やっとバニーも気がついた.
バニー「あ,そうか.ピラフにナイフなんて. あのじいさん,馬鹿じゃないの?」
バニー,お前が馬鹿じゃないの.マスターの魂胆を見抜いていたファルコンは, こう言った.
ファルコン「ここの人達はねえ,こうやって食うんだよ.速くしろ.ああ,痛い. 痛い.」

夜になったが
エジソン「まーだいる.根気のある人達.」
パピヨン「あの連中はあたしが引き付けるわよ.(上田の妻に)支度出来た?」
上田の妻はうなずいた.早速パピヨン,エジソン,上田の妻は車に乗った. そしてある通り(上田が殺された場所と同じだと言う事に突っ込んではいけない) に差し掛かったが
エジソン「あーあ.まだついてくるわ.」
パピヨンはカーブを曲がり, 悪党達の死角に入ったところでエジソンは飛び降りた. 悪党達の車を見送りながら
エジソン「いやあ.こんな仕事.危険手当,割増だ.」

やっとバニーがファルコンの縄を切った. ファルコンはバニーの縄を解こうとしたが,宮下不動産の連中が戻って来たので, 元の位置に戻って縛られている振りをした. そして隙を見てファルコン達は連中を倒し,服を着替えて脱出に成功した.

パピヨン達はパトカーにスピード違反と言う名目で止められた. 警官は警察署まで連れて行くという.飯岡の息がかかっていたのだ. 宮下不動産の連中はうまく行ったとほくそえんだが, すぐに一人足りないことにきがついた.だが後の祭. エジソンは例の書類のコピーを手に入れていた.

逃げ回るファルコンとバニーはゾンビに入り込んだ. マスターはファルコン達に猟銃を向けた.だが…

パピヨンと上田の妻はファルコン達がさっきまでいた地下室に監禁されていた. ここは宮下不動産が持っている倉庫なのだ.そこへ宮下達がやってきた. パピヨンは市長に会わせろと居直った.

ゾンビでファルコンとバニーは飯を食べていた.
ファルコン「じいさん,ナイフ,ありがとよ.」
バニー「え? わざと置いてってくれたんですか?」
ファルコンの手が止まった.
ファルコン「ホントに鈍いな,お前.」
マスター「はじめは飯岡絡みの人間かと思っちまってなあ.」
だからマスターは警戒していたのだ.
マスター「殺された上田,あいつとは気が合ってなあ. わしの入れたコーヒー,うまいって言ってくれたあ.いい男だったあ.」
ファルコン「なかなかいねえよなあ.じいさんが入れたコーヒー, うまいなんて言う奴はよー.」
マスター「助けてやったのに.失礼だぞ.」
ファルコン「すんません.」
マスター「それにさあ,似てるのさあ,上田のかみさんが. 死んだわしのばあさんの若い時に.ばあさん,いい女だった.」
バニー「じいさんにも若い頃はあったんですね.」
マスター「当たりめえだい! もてたもんだぞ.」
ファルコンとバニーは苦笑した.
マスター「何がおかしい.」
ファルコン「いやいや.おかしくなんかないっすよ.清,お前, 老人に対して笑うってのはどういうことだ,この野郎.」
自分のことを棚に上げて言うファルコンに対し, マスターは意外なことを言い出した.
マスター「上田が死んだのは,わしにも責任があるんだあ. 上田が飯岡と宮下達の不正の書類が欲しいって言うもんだから, つい持ってきてやったんだよ.」
バニー「え? 上田が持っていた書類ってのはそれですか?」

翌朝.宮下不動産の連中が町を歩き回っていた.
エジソン「あーあ.」
エジソンは物陰に隠れながら歩いていた.そしてある所で, 後ずさりするエジソンは誰かの背中にぶつかってしまった.慌てて振り返ると
エジソン「お前か.」
バニー「(大声で)エージソーン.」
慌ててエジソンはバニーの顔を押さえつけた.
バニー「(それでも大声で)会いたかったー.」
エジソン「ちょっと待て.変わったなあ.変なこと覚えやがって,この野郎.」

その頃,パピヨンのところに宮下が飯岡を連れてきた. パピヨンは書類を1千万円で売ると持ちかけた. 飯岡は手を打つと答え,加藤に命じて用意させることにした. パピヨンはエジソンに無線で連絡した.エジソンはゾンビにいた. パピヨンは国道沿いの宮下不動産の倉庫まで書類を持って来いと命じた.
ファルコン「どこだかわかるか?」
マスター「おお.」

早速エジソンがタクシーでやってきた.後ろにはファルコンも着いていた. ファルコンの車の後ろを富士急行の電車が走るのが見えた. パピヨン達と飯岡は金と書類を交換した.そして
飯岡「燃してしまえ.」
書類が燃えるのを見ながら
飯岡「1千万,灰にしてしまうのは惜しいが,これも安全のためだ.」

パピヨン達は赤い車に乗って去って行った.宮下は何かを作動させた. それをファルコンも見届けた.上田の妻はパピヨン達をなじっていた. しかしエジソンが渡したのは偽物だった.そこへファルコンの車がやってきた.
ファルコン「そのまま突っ走ってくれ.信号が赤でも止まるな.」
エジソン「どういう意味だ,おい?」
ファルコン「車に素晴らしいプレゼントがついてるんだよ. スピードメーターにダイナマイトがセットされてるんだよ. スピードが0になれば爆発する.後ろのバンパーについてるんだ.」
エジソン「じゃ,どうするつもりだあ.」
ファルコン「バニーに処理させる.絶対に車止めるな.」
とそのとき
パピヨン「ああ,赤,赤,赤.」
ご丁寧にも赤信号だったが,そのまま突っ走った. ファルコンはトランクを開けさせ,バニーをトランクに乗り移らせた. 「松下清志さん」は身軽だ.そしてバニーは爆弾を処理し,川へ放り投げた. と同時にダイナマイトは爆発した.パピヨンは車を止めた. エジソンはバニーの頬を叩いた.そしてエジソンとバニーは輪を作って, ファルコンに合図.それを見てファルコンは微笑んだ.

ファルコン達がゾンビへ行くとマスターは背中をナイフで刺され, うつぶせになって倒れていた.ファルコンはマスターを起こした.
マスター「やられちまった.」
ファルコン「誰に?」
マスター「宮下の手下に.書類かっぱらった,ばれちまった.」
ファルコン「今,救急車,呼ぶからな.」
エジソンが外へ走ろうとしたが
マスター「無駄だよ.もうあんたの顔も見えねえ.」
ファルコン「な,じいさん,しっかりしろよ.」
マスター「わしの入れたコーヒー,うまかったか?」
ファルコン「最高だよ.」
マスター「そうか.」
それが最期の言葉だった.パピヨンが呟いた.
パピヨン「Hanging!」
蝶の舞うCGが流れた.今回は出張仕事なので,いつもの出動シーンはなし.

ハンギング

その夜.みどり市役所の市長室で飯岡達は, 市有地2万坪をある会社に売る商談をしていた. 市長室の外で見張っていた宮下の部下二人は, まずバニーの投げ縄に動きを封じられた. そして一人はエジソンのモップで倒され,もう一人は
ファルコン「17発だったな.」
ファルコンにしこたま殴られた.そして市長室の明かりが消され, パピヨンが中に入った.ファルコン達も乱入し,全員倒された. ちなみに飯岡を仕留めたのはパピヨンの指輪.

上田の妻優子のところに手紙が届けられた. B.G.M.は「ザ・ハングマンII」で使われていた物と同じ曲.
パピヨンの声「あなたの御主人を死にいたらしめ, 市政を牛耳り,私腹を肥やしていた悪徳市長一派に正義の裁きが下されます. 明日の午後1時,テレビを御覧下さい.」

明かりがつくと,飯岡は縄で縛られて椅子に座らされていた. 飯岡の前にはテーブルが置かれており,上にはダイナマイトが置かれていた. 他の連中は四台の自転車に分乗させられ,二列に並んでいた. パピヨンに行なわれた仕掛けの復讐をしようというのだ.とは言うものの, この仕掛けの原型はこれだ.
ファルコン「諸君,前を見たまえ.」
スピードメーターにスポットライトが当てられた.
ファルコン「諸君がやってくれたスピードメーターが0になれば…」
ダイナマイトが爆発した.
飯岡「うわあ.」
ファルコン「この通り.市長の目の前のダイナマイトが爆発しますよ.」
市長の真後ろに設置されていた二つのスピードメーターの明かりが点灯した.
ファルコン「当然,皆さんは粉々になるってわけだ.さあ, スイッチを入れるぞ.メーターは0だ.早くしないと爆発するぞ.」
飯岡「何をしてるんだ.早くこげ! 速くこがんか!」
飯岡以外の悪党達は一生懸命こぎ始めた.
ファルコン「スイッチを入れたぞ.止まればドカンだ.」
速くこげ,と叫ぶ飯岡.よさんか,と叫びながら自転車をこぐ他の悪党.
加藤「もうやめてくれえ.」
ファルコン「いつでもスイッチを切ってやるぜ. お前らが自分達のやったことを喋りゃな.」
自転車をこいでいない飯岡はこうほざいていた.
飯岡「言うな.これは単なる脅しだ.」
ファルコン「ただの脅しかどうか,止めてみりゃわかる.」
スピードが下がると
飯岡「止めるな.もっとこげ.速くこげ.」
宮下「おい,こげ.こぐんだよー.」
加藤「こいでるよー.」
ちなみに宮下と加藤は同じ列で自転車をこいでいた.
ファルコン「よーし,坂道にかかったよー.」
自転車が傾けられ,ブラシが車輪につけられた.スピードが落ちて行く.
飯岡「と,と,止めるな.こげ.こ,こげー.」
だが
加藤「もう,もうダメだあ.」
ファルコン「喋ればスイッチを切ってやるよ.」
加藤「言います.」
飯岡「喋るなあ.こげー.」
加藤「言います.」
それを聞き
ファルコン「バニー,どうだ?」
飯岡「こげー.」
バニーは親指と人差し指で丸を作った.
ファルコン「実況開始して頂戴.」
パピヨン「スタンバイ.」
アンテナが準備され,実況中継開始. 上田優子は上田の遺影とともに悪党達が自転車をこぐ様子をテレビで見た. この姿は「みどり市? 渡辺酒店」のテレビなどにも映し出されていた.
飯岡「こげ.こげ.もっと,しっかり,こげ.ほら.しっかりこぐんだ. もっと.」
部下「もうダメだあ.」
飯岡はこげと言うが,他の悪党達は全員息が上がっていた.
加藤「何もかも喋るー.」
飯岡「馬鹿者.喋っちゃ行かん.喋っちゃ行かん.」
部下「そんな,無茶な.」
加藤「足が,もう動かない.喋りまーす.みんな市長が悪いんです. わーたしの銀行に不正融資させたのもこの飯岡市長ですー.」
飯岡「な,な,な,な,何を言うか,加藤!」
部下「やめてくれえ.上田市議を殺したのは,うちの宮下社長の命令なんだあ.」
宮下「馬鹿.俺じゃない.俺は市長の命令をお前達に伝えただけだ. ホントだー.」
飯岡「宮下ー.この裏切り者.恩知らずめー.」
思わず優子は遺影に向かってこう言った.
優子「あなた,見て.」
部下「ゾンビのじいさんを殺したのもー,社長の命令なんだあ.」
思わずファルコンはこう呟いた.
ファルコン「じいさん,仇は取ったぜ.」
部下「何もかも喋ったじゃないか.」
宮下「スイッチ切ってくれえ.」
加藤「ダメだあ.」
ついにスピードメーターが0になった. 飯岡の前に置かれたダイナマイト…の偽物から煙が上がり,造花が登場. 呆気に取られる悪党達.部屋が真っ暗になり,蝶のシルエットが映し出された.
飯岡「なんだあ,あれは?」
薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
加藤「あれえ,あの女…」
宮下「ああ,お前は?」
飯岡「貴様の仕業か!」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. 悪党達は蝶の描かれたダンボールにつめられ,山梨県みどり警察署へ届けられた. 宮下や飯岡は署長を呼べとほざいたが,署長は県警本部に呼び出されていた. そして悪党達も県警本部に引き渡された.

事件解決して…

雅則は蝶子を相手にこいこいをやっていた.蝶子はやめたかったのだが, 自分がなかなか勝たないので雅則はやめようとしなかった. 仕方がないので蝶子はいかさまを使って雅則を勝たせた.しかし
雅則「やろう,やろう.もう一回やろう.負けてあげるから,今度は.」
蝶子はうんざりした様子で雅則を見るのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp