第十八回

無理矢理転職させ強請りも働く一味を吊るす.
マル秘取材のお嬢さん記者が襲われる!

脚本:日暮裕一 監督:井上梅次

あるホテルのレストランで男が女(飯干恵子)に挨拶を交わした. そこへサングラスをした二人組の男達(粟津號ら)が席を立って近づいて来た. それに気がついた男は逃げた.
女「西沢さん?」
だが女と挨拶を交わした男西沢は一目散に逃げ,エレベータに乗ってしまった. 男達は階段を降りて追いかけた.西沢はシングルレコードを買い, レコードを抜いてファイルの中身をジャケットの中に入れ, 送り先を指定して店員に金を渡して去って行った. そして車に乗り込んだが,二人組の男達に麻酔薬で眠らされた. その後,西沢は首吊り死体となって発見された.

蝶子妊娠?

この事件は新聞で「エリート技術者,自殺」「新開発競争の犠牲」と報じられた. 記事を見ながら
雅則「わかるなあ,この気持ち.仕事,仕事でわき目も振らずにいると, ある日,ふと魔が差すんだよ.他人事とは思えんなあ.」
雅則はそんなに一生懸命働いているのだろうか? それはともかく,その傍らで蝶子は体温計で体温を測っていた. 雅則が,日本人は働きすぎだ,とか,これからは趣味に生きる, とほざく声も蝶子には上の空だった.蝶子は体温の記録を見ていた.
雅則「どうしたの?」
蝶子「悪いけど,先に休ませてもらいます.後片付けは明日やりますから.」
蝶子は寝室に入ってしまった. 雅則は蝶子がつけていた体温の記録と体温計を見た.

調査開始

翌日.蝶子は笠間産婦人科医院の前を行ったり来たりしていた. そこへタクシーがクラクションを鳴らしてやってきた.
マネージャー「乗りませんか?」
蝶子「いいえ,結構です.」
マネージャー「そんなこと言わない.お宅までお送りしますよ.ね, お代は要りませんから,ね.へ,へ.」
蝶子は運転手の顔を見て,やっとマネージャーの扮装だと言うことに気がついた.
マネージャー「は,は,は.いいから,乗りたまえ.無理しちゃ行かん. 大事な体なんだから.ね.」
パピヨンは口をあんぐり開けていた.

さて車中で
マネージャー「隠さなくてもいい.できたんだろう.ベイビーちゃんが.」
パピヨンは顔を赤くした.
マネージャー「ひょっとすると今回の仕事は無理かな?」
パピヨン「いえ,仕事は仕事.きちんとやらせてもらいます. それにはっきりそうだとは…」
マネージャーは忠告した.
マネージャー「いや,無理は禁物だよ. 君もこれがラストチャンスかもしれんからなあ.」
マネージャーは笑った後,仕事の話をした.
マネージャー「さて,君はヘッドハンターという言葉を聞いたことがあるかな?」
パピヨン「いえ.」
マネージャー「最近急成長した職業でねえ,一種の引き抜き屋, マンハンターだ.」
パピヨン「マンハンター?」
マネージャー「うん.つまり,A社と言う会社がB社の優秀な人材を欲したとする. そこでA社の依頼を受けてB社のその人材を引き抜くのが, ヘッドハンターという訳だ.」
パピヨン「そんな職業があるんですか?」
マネージャー「うん.優秀な人材というのは企業にとって, 億単位の価値があるからな.まあ,例えば企業がプロジェクトを組んで, 何かを開発しようとする.まあ,それには何十億, 何百億という金がかかるのが常識だ.しかも必ず成功するとは限らん. ところが,そのノウハウを既に得た人材がいたとしたら,どうなる?」
パピヨン「研究開発費が大幅に削減されるわけね.」
僕ちゃんのところにもヘッドハンターから電話がかかってきたことがある. 断って失敗したかもしれない.
マネージャー「うん.そこでヘッドハンターが必要になるわけだ. さてと,今回の資料とギャラだよ.はい.」
マネージャーは運転しながらファイルと封筒をパピヨンに渡した.

アジトでパピヨンが指令を説明した. 川瀬しょういちという男は東西化学研究所所長から丸川重工に移籍. 次に大森科学製作所で主任だった西沢文男,つまり, 冒頭で自殺した男の写真が映し出された.この男は極東電子工業に移籍していた. 二人とも原因不明の自殺をしていた.そして二人の共通点は, 新開発プロジェクトの責任者だったこと, 移籍の勧誘を最初は強固に跳ね除けていたこと. マネージャーの調べでは二人とも新プロジェクトに打ち込んでおり, しかも成功すれば多額の報酬が出ることになっていた. さらに,二人が受け取ったはずの数千万もの移籍料が消えていた. 二人の移籍の影で動いたのはJIC, ジャパンインテリジェンスカンパニーの社長工藤こういち. いわゆるヘッドハンターだ.
バニー「何かあくどい手を使ってるんですか?」
エジソン「それを探るのが今回のテーマじゃないの?」
パピヨン「そう.はい,ギャラ.」
パピヨンはギャラを分配した.突然,ファルコンが言った.
ファルコン「今回はパピヨンは休養.俺達に任してもらいましょうか.」
パピヨン「どうして?」
エジソン「マネージャーから連絡あった.おめでただって.」
パピヨンは微笑んだ.
ファルコン「今が一番大事な時期でしょうから, うちで休んだ方がいいんじゃないですか.」
パピヨン「でも,まだお医者さんに診てもらったわけじゃないし…」
エジソン「ほら早く行った方がいいよ.こんなおめでたいことなんだから. でもさあ,マルコウ出産って照れくさいのもわかるな.」
ファルコンは苦笑い.パピヨンは「いいじゃない.」と照れてエジソンを叩いた. だが一人だけ鈍感な男がいた.
バニー「なんです,マルコウ出産って?」
エジソンとファルコンは合図しあった.

JICオフィスで工藤は激怒していた.先程の二人組, すなわち工藤の部下が持ってきたファイルの中身が空だったからだ. 二人組は西沢が後生大事にファイルを抱えていたので持ってきたのだ.
工藤「例のルポライターに渡ったって事はないんだろうな?」
そんな暇はなかった,と二人組は答えた.

さてファルコンがJICの真向かいのビルの屋上からJICを探ろうとしていると, 冒頭の女が望遠レンズで写真を取っているところに出くわした. ファルコンは後ろから女を覗き込んだ. 女が振り返るとファルコンは振り返った.その後
ファルコン「風が強いですねえ.困ったなあ.」
と言って去って行った.怪訝な顔でファルコンを女は見た.

仕方がないのでファルコンは緑美園のワゴンに戻った. 待っていたエジソンにファルコンは,自分達の他にもJICを探っている者がいる, と報告.
エジソン「お巡りさん?」
ファルコン「いんや.でもね,探ってみる価値はありそうだなあ.」
エジソン「よろしく.」
ファルコン「何?」
エジソン「尾行は性に会わない.男のケツ追っかけまわすのは.」
ファルコン「あ,そう.後で文句言わない?」
エジソン「言わない.」
ファルコンは念を押した.
ファルコン「ホントに言わない?」
エジソン「言わない.」
ファルコン「だーれが野郎だって言ったの.」
タバコを吸うエジソンの手が止まった.
ファルコン「おう,出てきた.」
出てきた女を見て
エジソン「あれなの?」
ファルコン「あれ!」
エジソン「あ,じゃあ,俺行ってあげる.」
ファルコンはエジソンを止めた.
ファルコン「いらない,いらない.それじゃ,ね.」
ファルコンが尾行を開始した.
エジソン「どうも役が一つ悪いなあ.」

女はファルコンの尾行に気がついた.それでもファルコンは追いかけた. 女はレストランに入った.女はマスターに,変な男に追われているので, 何かあったら助けて欲しい,と頼んだ.そこへファルコンがやって来た. ファルコンは強引に女の隣りに座り,ミルクを注文.
女「奴らに雇われたの?」
ファルコン「奴らって?」
女「とぼけないでよ.それとも,殺せって言われたの,工藤に?」
ファルコン「何? 自分は命狙われる覚えはあるの?」
女「あたしが聞いてるのよ.」
ファルコン「勘違いだよ.俺がそんな凶悪人物に見える?」
女「見える!」
ファルコンは女に一目惚れしただけだと出任せを言った.
ファルコン「だから君のハートにこう矢を差し込みたいなあ,と思ってね.」
ファルコンは女の胸を指す振りをして発信機を女の胸ポケットに入れた. これは効き過ぎ,ファルコンは痴漢と間違えられて女にビンタされた. さらにマスターに襲われたが,マスターを撃退.
ファルコン「あ,ミルク,もういいや.」
その隙に女は出て行った.でもファルコンは涼しい顔で受信機を作動させ, 悠々と後を追っていた.

その頃,バニーは西沢の家に忍び込もうとしていた.だが
近所のおばさん「何してんの,坊や?」
バニーは西沢に用があると言ったが,西沢はずっと留守だった. 確かに新聞がポストから溢れていて,門柱の上にまで置かれていた. バニーはおばさんに聞き込みをした.おばさんは家に招き, 玄関先だったが,チーズケーキと紅茶まで出してくれた. なんと西沢の妻は中央病院に入院していた. 近所では薬物中毒という噂が流れていた. 発作を起こして入院して以来,意識が戻らないらしい. バニーは私立探偵と名乗ったらしく,おばさんは不倫調査は多いの,と聞き, 主婦の浮気は多いだろう,と怪しげなことを言ってから, バニーの体をなではじめた.おばさんの手が股間に達したのでバニーは退散した.

その足でバニーは中央病院へ行き,西沢の妻洋子の病室の前まで行った. 面会謝絶の札を無視して中に入ると確かに西沢洋子は物々しい様子で眠っていた. バニーはカルテを写真撮影した.

さて蝶子は育児書を読んでいた.そこへ電話がかかってきた. 電話はすぐに切れた.そこでパピヨンはアジトに電話した. バニーは西沢の妻が薬物中毒で植物人間になっていることを報告. 余談だが,このときは植物人間という台詞がカットされずにちゃんと放送された. その後,「ザ・ハングマン」をファミリー劇場で放送した時, 植物人間という台詞がカットされていた. 何でカットするのか私には全く理解できない.閑話休題. 西沢洋子はヘロイン中毒の疑いがあり,川瀬の妻も薬物中毒で入院していた.
パピヨン「そう.これで彼らの手口が見えてきたわね.」
バニー「どういうことです?」
エジソン「馬鹿! これよ.こんないいネタ仕込んできて, まだその辺わかんないの? つまりね,ヘッドハンティングに応じないものに, 金が必要な理由をこさえたの.」
それに対するバニーの応えは
バニー「は?」
エジソン「あ・の・な.植物人間の治療には莫大な金かかんだろう.」
バニーはうなずいた.ブラックもこれが理由でハングマン第6号になったのだ.
エジソン「ましてペイ中じゃ保険利かないし, 普通の勤め人には払いきれないだろうが. そこへ莫大な移籍料をポンと積まれたら,どうなるよ.」
やっとバニーも理解した.これは仕組まれた薬物中毒なのだ.
バニー「(大声で)許せない!」
エジソンはパピヨンに「あの方」を確認したが, どうも違ってたみたいだったとパピヨンは答えた.
エジソン「あ,そう.残念だったねえ.」
パピヨン「明日からまた仕事に戻ります.気を使わせてごめんな…」
そこへ雅則が帰ってきた.
蝶子「あのう,それじゃ,奥様.また今度.」
蝶子が風呂の湯加減を見に行っている間に雅則は
雅則「赤ちゃんバイブル.妊娠と安産.」
蝶子が見ていた育児書に気がついていた.

女の正体は日本ルポライター協会員辻本明子. ファルコンは辻本のマンションを探り当てていた. 辻本はオリエンタルレコード店から荷物が届いているので怪訝な顔. 開けてみると都はるみの「裏町ごころ」というレコードが出てきた.
辻本「なーに,これ.」
辻本はレコードを放り投げてしまった.そのとき,
工藤の部下「西沢から受け取った物を渡してもらおうか.」
部下達は部屋中を探したが見つけられなかったのだ. そこで部下は注射器を取り出した.辻本の叫び声を聞き,ファルコン登場. 部下を退散させた.
ファルコン「大丈夫か?」
辻本はうなずいた.そして
辻本「ありがとう.」

とあるバーに場所を移し,ファルコンは辻本から話を聞いた. 辻本は半年前に転職というテーマで西沢を取材した. そのうちに西沢の妻のことがわかった. 西沢洋子がヘロイン中毒だと知った辻本は不審を抱いた. 辻本は自分が襲われたことから西沢が工藤にはめられたと確信した. それに西沢は何かに脅えていた様子だったという. 辻本は真相を話すよう,西沢を必死に説得していた.冒頭の事件は西沢が決心し, JICを告発する資料を渡すために西沢と辻本が待ち合わせをした時に起こった. 西沢は工藤の部下達に殺されたに違いない. 辻本は,自分が西沢を殺したようなものだと悔やんでいた.
ファルコン「弔い合戦やんなきゃなあ.」
辻本「そう.西沢さんが渡してくれる筈だった資料さえ手に入れば, 奴らの正体を暴けるのに.」
ファルコン「ねえ,手,組まないか.」
辻本「あなた,何者? どうして私の部屋がわかったの?」
ファルコン「あのね,(辻本の胸を指して)ハートの矢がさ,」
辻本は腕を組んで胸を防御.
ファルコン「導いてくれた訳よ.」
ファルコンは辻本の胸ポケットから発信機を取り出していた. ファルコンは事件屋だと称した.辻本は快諾.二人は握手した. 辻本は編集室に篭る事にした.常時人がいるので安全だからだ.別れ際, ファルコンは「フリールポライター 伊吹賢吾」と書かれた名刺を渡した.
辻本「ありがとう.」
ファルコン「何が?」
辻本「助けてくれて.」
タクシーで去りながら,辻本は手を振った.ファルコンも手を振った.

工藤は部下達から報告を受けた.工藤は失敗は許さんと言明. その頃,ファルコンは部下達が注射しようとしていたアンプルの中身を分析.
ファルコン「やっぱりヘロインだな.」
これで工藤達の手口はわかった.西沢の資料さえ手に入れば確証はつかめる. 工藤達も必死になって探しているはずだ.

ワープロで原稿を打っていた辻本は5インチのフロッピーディスクを見て, レコードのことを思い出した.早速辻本は「伊吹賢吾」のところに電話した. 電話はアジトに設置されたもの.電話番号は 03(4822)2827. 「フリールポライター 『伊吹 賢吾』 専用 他の者,出るべからず」と言う, 貼り紙が貼られた電話が鳴っていた.
エジソン「はい,はい.ガールハント専用お電話ですよ.デートのお約束ですか? うらやましい,うらやましい.」
ファルコン「でしょう.はい,もし,もし.」
辻本は例のものが自分の部屋にあるかもしれない,と言い, これから取りに行くから来てくれ,と言って切ってしまった.
ファルコン「資料が見つかったらしい.」
ファルコンは出て行った.
パピヨン「エジソン.」
エジソン「はいよ.」
慌ててエジソンも追いかけた.

辻本は自室に帰った.しかし,工藤の部下が辻本の部屋を見張っており, 辻本は連れ去られてしまった.その後, ファルコンとエジソンが辻本のマンションにやって来た. ファルコンが呼び鈴を鳴らしたが,誰も出ない. 後からエジソンがやって来て,工藤の部下が辻本を連れ出したのを, 管理人が見ていたことをファルコンに伝えた. 資料があるかもしれないのでエジソンとファルコンは辻本の部屋に忍び込んだ. なかなかみつからなかったが
エジソン「都はるみ?」
一度はエジソンもレコードを放り投げた.
エジソン「俺は島倉千代子の方が…」
ピンと来たエジソンがレコードを探ると
エジソン「おい.フロッピーが出てきたぞ.西沢, コンピュータ技術者じゃなかったか?」
この頃のフロッピーは5インチの黒いもので, 確かにシングルのレコードくらいの大きさだった. 今ではどちらもあまり見かけない.閑話休題.
ファルコン「これだよ.」
アジトでエジソンがフロッピーを解析した.すると文章が出てきた. 以下,西沢の声が流れる中,コンピュータの画面と工藤達の悪事が映し出される.
西沢の声「私は新プロジェクトの推進に追われ, 全く家庭を顧みることをしませんでした. そんなところに工藤は付け入ってきたんです. 妻の用は私の留守に二人組の男に襲われレイプされました. そして私が気づいた時には洋子はもう重度のヘロイン中毒になっていました. 妻がヘロイン中毒である事が知れれば私の社会的地位は失われる. そんなとき以前から私に移籍のオファーを出していた工藤が現れました. 私は移籍をOKしました.人知れず妻を治療する金が欲しかったんです. 私は会社を移り,全てを忘れてやり直そうとしました. しかし再び私の前に現れた工藤は妻の秘密をばらすと私を強請って来たのです. レイプもヘロインも工藤の仕業でした.しかし,今更全てを失うことは出来ない. 愚かにも私は言いなりになって, 移籍の時に会社から受け取った金を工藤に渡したんです. 私は消されるかもしれません.その前に私は全てを告発しようと, JICのオフィスコンピュータから証拠になるようなものを盗み出しました. 工藤達がヘッドハンティングした人物から脅し取った金の流れです.」
フロッピーには銀行口座も入っていた.振込先はJICの口座ただ一つ. これが公表されれば工藤は確実に捕まる.
パピヨン「とにかく速く彼女を助け出さないと.」
ファルコン「乗り込みましょ.」
エジソン「あれで行くか?」

工藤達は辻本を拷問していた.辻本は口から血を流していたが,吐かなかった. 工藤は部下に辻本の監視を命じ,事務所に戻った. するとファルコンが工藤の椅子にデンと座っていた.
ファルコン「眺めのいいオフィスだねえ.ゴキブリどもの巣にしちゃ. よっぽど儲かるんだなあ.ヘッドハンター,いや,人殺しってのは.」
ファルコンは例のフロッピーを持ってきて買ってくれと吹っかけた.
工藤「もらうのはこっちだ.」
ファルコン「私,何も持ってませんけど.」
部下「命をもらう.」
工藤「あの女と一緒に消えてもらう.」
ファルコン「それ酷いなあ.ねえ.」
ファルコンは拳銃を突きつけられてなすがままにされていた. そして車で連れ出された.勿論,エジソンの尾行付. ファルコンの腕時計が発信機になっているのだ.
エジソン「魚は餌に食いついた.よろしく.」
パピヨン「了解.」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「Let's go!」
バニー「(手を挙げながら)Hanging!」
なぜかバニーはいつものように誰かの手を叩こうとしていた.
バニー「心細いなあ.二人ともちゃんと来てくれるんだろうなあ.」
パピヨン「何か言った?」
バニー「あ,いえ別に.何も.」
今日はパピヨンの赤い車にバニーが乗って出動.
パピヨン「バニー,今日は頼もしく見えるわよ.」
バニー「え! 任しといてください.」
バニーは張り切るのであった.

ハンギング

ファルコンは辻本が閉じ込められている倉庫へ連れて行かれた. エジソンはそれを見届けた.
辻本「どうして!」
ファルコン「約束したでしょう.何かあったら飛んでくるって.」
部下「随分と粋がるじゃねえか.」
ファルコンはぶん殴られた.
ファルコン「効かねえんだよ.」
なおもファルコンは殴られ,それを見て辻本は悲鳴を上げた.
ファルコン「錆びたパンチだぜ.」
なおもファルコンは殴られた.その間にエジソンは工藤の部下達の車に細工した.

その頃,工藤がフロッピーを入れるとゲームが起動された.驚く工藤.そこへ
パピヨン「ゲームオーバーね.」
工藤「何だ君達は?」
バニーがバズーカ砲(?)を構えて言った.
バニー「ランボーだ.」
呆気に取られる工藤.バニーが近づくと
工藤「よせ.そんなもん,ここで撃ったら,お前ら,やられるぞ.」
パピヨン「試してみる?」
バニーがバズーカ砲(?)を発射.だが出てきたのはおもちゃのロケット. しばらく工藤はロケットを手に取っていたが,突如, ロケットから催眠ガスが噴射され,工藤は倒れてしまった.
バニー「さーすが,エジソン.」

工藤の部下はダイナマイトを仕掛けていた.
部下「三分間でドカンだよ.」
部下「あの世でたっぷりデートしな.」
部下達は去って行った.導火線を火が進んで行く.
辻本「ねえ.何とかならないの?」
ファルコン「あの世でデートだってさ.馬鹿じゃないのかね,あいつら.」
慌てる辻本に対し,ファルコンは余裕の表情.
辻本「なにのんびりしてんのよ!」
ファルコン「そう見えます?」
その頃,工藤の部下達が車のキーを回した瞬間,催眠ガスが車内に充満し, 部下達は眠りこけてしまった.倉庫の中では
辻本「ちょっと,ちょっと.」
さすがにファルコンもびびってきた.
ファルコン「は,は.俺もねえ,焦ってきたんだよ.何やってんのかなあ, もう.」
辻本「もう,駄目ー.」
ファルコン「大丈夫だって.いいもんてのはね, 最後に必ず勝つことになってるでしょ,映画ではさあ. ちょっと,ほっといてんのかあ.ちょっと.おい,エジソン. 借金,棒引きにすっからよー.頼むよー.おい.」
やっとエジソンが登場したが
エジソン「鋏忘れた.」
と遊んだ後,あと数センチに火が迫ったところで導火線を切った. ホッとするファルコンと辻本.
ファルコン「あのなあ.何やってたんだよ.最後に来ればねえ, 目立つってもんじゃないんだからねえ.」
ファルコン,似たような状況でパンとタミーは文句言わなかったぞ
エジソン「用事ありまんがな.」
エジソンはファルコンの髪を切ろうとした.
ファルコン「違う,違う,違う,下,下,下.」
やっとエジソンは縄を切った.
ファルコン「ああ,この人? これでも一応仲間なんだよね. 素直じゃないのがたまに傷だけど.」
エジソンは悪党の車で去り,ファルコンは緑美園のワゴンに辻本を乗せた.
辻本「どうしたの,この車?」
ファルコン「さっきの味方のおっちゃんがねえ,置いてってくれたんだよ. さあ,乗った,乗った.」
ファルコンは本物のフロッピーを辻本に渡した.驚く辻本.
ファルコン「君の部屋で見つけたんだ. これが公表されれば奴らの息の根が止まる.」
辻本「早く見たいわ.」
ファルコン「その前に,きっと前夜祭があるだろう.」
辻本「前夜祭って?」
ファルコン「ん? この世の中にはねえ, 悪党を絶対に許せない人間だっているんだよ.きっと制裁が下されるさ. そうなれば君の記事はもっと売れるってわけだ.」
辻本「お礼しなきゃ.」
ファルコンはにやりと笑った.
ファルコン「そんなもん,いらないよ.」
辻本はそんなファルコンを見つめていた.そしてワゴンがマンションに着いた.
辻本「いつも助けてくれるのね.」
ファルコン「楽しかったよ.今度の仕事.」
辻本「色々ありがとう.どうして,お礼がいらないの?」
ファルコン「美人から金取るってのは,男の沽券に関わるからな.」
辻本「また会える?」
ファルコン「多分な.」
去って行くファルコンを辻本はいつまでもいつまでも見送っていた.

さて悪党達はパンツ一丁の姿にさせられていた. 悪党達は上に穴の開いた箱の中に閉じ込められていた. 箱の中は高音で,下から75,100,125,…と書かれた電飾看板が設置されていた. アングルが変わり,箱の上側が映った.箱の上には丸い穴がたくさん開いていた. 大きさは人の頭が出る程度.悪党達は大粒の汗をたくさん出していた.
ファルコン「どうかね.特製サウナの具合は. お宅らの中に入った毒を出してやろうと思ってねえ.」
ふざけるなーと叫ぶ悪党達.
ファルコン「ふざけてもいないし,ましてや冗談でもないんだなあ. それじゃあ,そろそろゲームを始めようか.」
ファルコンがスイッチを押した.
工藤「ゲーム?」
ファルコン「諸君らはもぐらたたきゲームを知っているか? 頭を出したモグラを人間が叩くんだが, 今日はちょっと趣向を変えてモグラが人間を叩くんだ.」
気がつくとモグラのロボットが悪党達の箱の横に立っており, 悪党達に向かってハンマーを振り落としていた. その威力は強力でマネキンも粉砕してしまうほどだった.
ファルコン「いつも叩かれてるモグラちゃんはなあ,復讐に燃えて, 段々強く叩きだすよ.ほら, 今の人形みたいに諸君らの頭は潰されちまうって訳だ.」
悪党達は頭を引っ込めたが,あまりの熱さに頭を出した. だがモグラのハンマーが飛んだので頭を引っ込めた. これが何度も何度も繰り返された.
ファルコン「お前らの悪事を吐けば,ゲームは終わりだ.」
部下「俺達は何も悪いことをしてないー.」
だがついに
部下「喋るー.喋るからやめてくれえ.」
工藤「何を言うんだ.喋ったら行かん.」
エジソン「そろそろ行きましょか.」
アンテナが準備された.パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押した. 悪党達の姿が「東京・調布市 西村照子さん宅」のテレビなどにも, 映し出された.
部下「ああ,ちょっと待ってくれ.話すー.俺達は工藤に命令されて, ヘッドハンティングの手伝いをしただけだ.」
部下「ああ,ああ,待ってくれえ.俺も喋るー. 移籍を渋る技術者の女房をペイ中にしたのも全て命令だったんだあ.」
工藤「黙れ.黙れー.」
すかさず工藤にハンマーが飛んだ.これを辻本もテレビで見た.
部下「俺達はただ手伝っただけだあ.強請りは工藤が考えたんだあ.」
部下にハンマーが飛んだ.
部下「技術者を自殺に見せかけて殺したのも工藤の計画だあ.」
この部下にもハンマーが飛んだ.
工藤「わしは直接手を下してない.殺したのはこの二人だあ.」
悪党達は右往左往した.箱が開いて悪党達が這い出た瞬間に, 薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
工藤「は,は,お前は誰なんだ?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. 翌日.蝶の描かれたダンボールにつめられ,警察署へ届けられた.

事件解決して…

あの時のバーで辻本は「伊吹賢吾」の名刺を手に持ち, ピンク電話の方を見ていた.アジトでファルコンも辻本のことを思い出していた. ファルコンは例の電話の前に座っていた.後片付けをしていたエジソンは
エジソン「あ,そうか. 彼女からまたデートのお誘いのお電話かかってくるかもしれないからね. わかった.失礼しましたあ.」
ファルコンは貼り紙を手にとり,辻本との日々を思い出した. だが,貼り紙を捨ててしまった.
エジソン「何? もういいの? ♪さようなら〜ちゃん,ちゃん,ちゃん,ちゃん, と」
ファルコンは上を向いた.
エジソン「遊び行くか?」
ファルコン「おごってくれる?」
その頃,辻本も「伊吹賢吾」の名刺を燃やし,バーを出て行った.

雅則がおもちゃのゴルフクラブを買って帰ってきた.
雅則「いろいろ考えたんだけどねえ, 生まれてくる子供はプロゴルファーにしようと思ってねえ.」
蝶子は妊娠していなかったことを言った.がっかりする雅則. 風邪気味だったので蝶子は勘違いしていたのだ.
雅則「まあいいじゃないの.考えてみれば親になるって言うのも, なかなか大変なことらしいし,どうしてもって言うなら,また頑張れば.ね. 頑張りなさい.」
蝶子「でも,あたし独りで頑張ってもダメなのよー.」
一生懸命迫る蝶子に
雅則「ああ,そうだ.明日,早いんだ.おやすみ.」
さっきと矛盾したことを言って雅則は寝てしまった.
蝶子「逃げてばっかりいるんじゃないの!」
怒った蝶子は雅則の尻をクラブで叩くのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp