第十六回

主婦の職業意識につけ込む売春&強請り屋組織を吊るす.
逆転夫婦の主夫がキャリア妻の仇を討つ!

脚本:柏原寛司 監督:永野靖忠

今朝も雅則は新聞を読むのに夢中になりながら朝食を取っていた. そしてコーヒーカップを取ろうと手を伸ばしていた.
蝶子「(雅則がおかずを取ろうとしたので)あ! (コーヒーミルをつかんだので)もっと右です.」
雅則は蝶子の胸を触ってしまった.仕方がないので
蝶子「はい.」
蝶子は雅則の手をコーヒーカップのところへ導いてやった. コーヒーを飲みながら,なおも夢中になって新聞を読みつづける雅則.
蝶子「なんか面白い記事でもあるんですか?」
雅則「統計が出てるんだけどさあ. 何らかの形で仕事を持っている女性が59.3%いるんだって. で働いてない主婦の約半分がねえ, チャンスさえあれば仕事をしたいと思ってるんだって.」
蝶子「当然ですよ.子供がいなかったり, もう子供から手が離れてる主婦だったら.共稼ぎをすれば, それだけ貯金もできるわけだし.」
雅則「お前も働きたいのか?」
蝶子「ええ.あなたさえOKしていただけるならば.」
雅則「だめだ.絶対にダメだ.」
蝶子がハングマンとして活動していることを知ってか知らずか, 雅則はこう答えた.
蝶子「どうしたの? むきになって.」
雅則「男のプライドが許さん! とにかくだな, 生活費と言うものは男が稼ぐものなんだ.なぜならばだな, それが男に与えられた指名と言うもんなんだ.」
蝶子は苦笑しながらこう言った.
蝶子「生活費をお稼ぎになるんなら,もう会社に来た方がいいんじゃないですか? (時計を見て)8時半を過ぎてますけど.」
雅則も腕時計を見た.
雅則「遅刻だあ.」
雅則は出て行こうとしたが,
蝶子「上着.」
雅則を上着を取りに入口から戻り,出て行こうとした.
蝶子「鞄.」
雅則を鞄を取りに入口から戻り,出て行った.

調査開始

さて蝶子が買物から帰る途中,紙芝居屋の太鼓の音が聞こえてきた.
マネージャー「そこで桃太郎はあげましょう,あげましょう, これから鬼の征伐についてくるならあげましょう,と言いました.」
マネージャーは紙芝居屋に扮装し,神社の前で桃太郎をやっていた. 子供達と一緒にパピヨンはしばらく紙芝居を見ることにした.
マネージャー「はい.(太鼓を叩いて)お供します. 犬さんと猿さんは桃太郎さんの家来になりましたー.ねえ.」
マネージャーは太鼓を叩いた.
マネージャー「そこへ雉さんも飛んできて,ケー,ケー,ええ,私もお供します, ときびだんごをもらいましたー.」
マネージャーが太鼓を叩いた途端
男の子「だっせえなあ.」
男の子「猿が言葉,話すわけねえじゃねえか.」
パピヨンもうなずいた.
マネージャー「いやいや.」
男の子「きびだんごで命にみあうことできるかよ.」
男の子「だっせえよなあ.うち帰ってファミコンやろうぜ.」
男の子「いいね,それ.」
子供達は去ってしまった.笑いながらパピヨンが言った.
パピヨン「ねえ,もう少し考えた方がいいんじゃない?」
マネージャーは苦笑した.
マネージャー「いやあ,ダメだねえ.へ,へ,へ,へ.はー.食べる?」
マネージャーは煎餅をパピヨンに渡した.そして
マネージャー「あ,特別ロードショー.」
マネージャーが一枚抜くと, 桃太郎の顔と緑の鬼の顔が女の顔写真になってる紙が出てきた.
マネージャー「(桃太郎をバチで指して)太田あやこ,28歳. (鬼を指して)衣笠麻里子,32歳.二人とも主婦だ. 太田あやこは1ヶ月前御主人とともに自殺.衣笠麻里子は現在行方不明だ. 二人に共通して言えることはな,ワーキングワイフ, つまり職業を持った主婦だと言う事だ.」
さらにマネージャーが一枚抜くと, ビルの写真の絵が3枚くらい重ねられた絵が出てきた. この絵にも女の写真が貼ってあった.
マネージャー「そして, ミセス人材オフィスを通してる仕事を紹介されてることだ.」
さらにマネージャーが一枚抜いた. 桃太郎が家来にきびだんごをあげている絵が描かれていたが, 桃太郎の顔が女(佐野アツ子)の顔写真になっていた.
マネージャー「そして,この女性がミセス人材オフィスの社長,坂本みどりだ.」
パピヨンはうなずいた.
パピヨン「職業主婦を食い物にしてる組織があるってことですか.」
マネージャー「ああ.その組織を暴き,ハンギングするのが今回の仕事だ. はい.」
マネージャーは資料一式を渡した.例の紙芝居も一緒だ.
パピヨン「少し,凝り過ぎですよ.」
マネージャー「いや.」

坂本みどりは35歳.ミセス人材オフィスを始める前,みどりもただの主婦だった. 今は仕事一筋で家事は夫がやっているらしい.
エジソン「へー.」
バニー「何ですって!」
エジソン「なかなかナウいじゃない.」
バニー「ナウくなんかありませんよ.女性と言うのは家庭に入って…」
エジソン「わかった,わかった.お前は古風なの.顔と一緒なの.」
ファルコンは二人を無視し,パピヨンにこう言った.
ファルコン「とにかく,主婦の職業意識を利用して, 悪事を働く奴らを捕まえなくちゃならないですね.」
パピヨンは同意した.自殺の件も行方不明の件も裏があるに違いない. ファルコンは衣笠麻里子と太田あやこを追うことにした.
バニー「僕も.」
パピヨンはミセス人材オフィスを当たることにした. エジソンは坂本みどりの家庭を当たることになった. パピヨンはエジソンにさえない男(うえずみのる)の写真を渡した.
エジソン「おっさんか.誰,これ.」
パピヨン「ご主人,坂本みどりの.」

坂本みどりの夫坂本は八百屋で「長ねぎと大根のいいとこ」などを買っていた. その後,パチンコ屋に入って行った.しかしすってしまった様子.そこで
エジソン「苦しい時はお互い様.気にしないで使って.」
エジソンは弾を入れてやり,隣りの台に座った.すると
坂本「来た.い,やったー!」
777の大当たり.坂本は大喜び.エジソンは坂本のために箱を出してやった.

こうしてエジソンは坂本の気をひくことに成功.坂本の家に上がりこんでいた. エプロンをつけた坂本がキャベツをきざむのを見て
エジソン「へー,うまいもんだなあ.」
坂本「へ,へ.ハウスハズバンド,もう長いことやってるから.」
エジソンは坂本の息子と一緒にテーブルに座っていた. 坂本の息子は幼稚園に通うくらいの年齢だ.
エジソン「はい,おまちどう.ねえ,かみさん,何やってんの?」
坂本「うーん.渋谷で会社経営してるんだ.座って,座ってよ.」
坂本はハンバーグを息子の皿とエジソンの皿に入れてやった.
坂本「ミセス人材オフィスって言う職業斡旋屋だよ. (息子に)ほら,いただきますしなさい.」
坂本の息子は手を合わせた.
息子「いただきまーす.」
坂本「(エジソンに)ほら,いいから.これで勝手にやって.」
エジソンも手を合わせた.
エジソン「いただきまーす.」
坂本は自分の作った料理を試食して
坂本「うん,いいでき.」

夜になり,坂本は自分の息子をベッドに寝かしつけた.その後,
エジソン「ふーん.ねえ,あんた競輪の選手だったの?」
坂本はレースの最中に事故を起こし,骨折してしまった. リハビリが長くかかり,その間にみどりが仕事を始めたと言うわけだ. その後,坂本も復帰したが成績は下がる一方.逆にみどりの会社は繁栄の一途.
エジソン「で,あんたが家事専業になって,かみさんが仕事一筋.」
坂本「うん.しかしねえ,家事ってやつ,やってみるとなかなか面白いんだ. いや,実に創造性に溢れた芸術的な仕事だよ.うん.」
エジソン「そうね.」
坂本「料理一つとっても,これ微妙でねえ,味付けがちょっと違うと, ガキ,食やしない.ところが,逆にいいとさあ, これがとってもおいしそうに食ってくれるんだよ.」
エジソン「わかる.よーくわかる.実を言うとね, 俺もあんたとおんなじ立場なの.ヒモなの,ストリッパーの.」
坂本「あら.ホントかよー.」
そこへ
坂本「帰ってきた.」
坂本がみどりを出迎えている隙にエジソンは盗聴機を仕掛けた. そしてエジソンはみどりと坂本と玄関で挨拶してから帰っていった.

その頃,ファルコンは衣笠麻里子の友人である,バーのママに聞き込んでいた. 衣笠麻里子は自分がやっていることが夫にばれてしまい, 自宅に帰れないと困っていたと言う.それにとても脅えている様子だったと言う. ファルコンは衣笠麻里子が東興ホテルに潜伏していることを聞き込んだ. しかし一歩遅かった.衣笠麻里子は部屋に鍵をかけ,チェーンロックもしていた. だが何者かに破られてしまった.ファルコンはエレベータで二人組とぶつかった. そして衣笠麻里子の部屋に入った時, 衣笠麻里子はトイレで首を吊って死んでいた. ピンと来たファルコンは窓から外を見た. すると例の二人組が黒い車に乗って去るのが見えた. 仕方なく,ファルコンは写真を撮りまくるのであった.

その事件の新聞記事を見ながら,ファルコンは悔やんでいた. そこへバニーが現像した写真を持って来た. 例の車のナンバーは「品川33 て 10-35」だった. ファルコンはこの二人組を追うことにした.
エジソン「そうしてくれますか.」
バニー「やる気ないんですか?」
エジソン「そうじゃないよ.ただ俺は感動してるんだ.」
ファルコン「何?」
エジソン「愛する妻のために自ら家庭に入った男の姿に.」
ファルコン「今と大して変わんないじゃない.」
すかさずバニーが叫んだ.
バニー「ひとーつ.私生活は絶対に仕事に持ち込まないこと.」

その頃,パピヨンは建築家の西原の妻優子と称し, ミセス人材オフィスに乗り込んでいた. 履歴書を見たみどりは奇術が得意とあるのを見てパピヨンに確かめた. パピヨンは大学時代にマジック研究会にいたと答えた. そこへみどりの所に山口(北原義郎)という男から電話がかかってきた.
山口「一人回してもらいたいんだがねえ.」
だがみどりはしばらく答えなかった.
山口「どうした?」
みどり「あ,いえ.今日の新聞,御覧になりました?」
山口「自殺した女のことか?」
みどり「ええ.」
山口「勝手にやめていった女のことは知らん.人は当たり外れがある. 家庭に重点を置きすぎる女は仕事には向かんなあ.」
山口は山口金融と言う会社の社長だった.
みどり「御主人と一緒に自殺した太田あやこさんだって.」
山口「他の女性達は何のトラブルもなく仕事をしている. みんな割り切ってやってるんだ.誰のお陰でその会社を開くことが出来たんだ. 私が無利息の金を融資してやったからだろう.一人回してくれ.いいな.」
山口は電話を切り,戻ってきた二人組の男,すなわち, 前の晩に衣笠麻里子を殺した男達に坂本みどりの監視を命じた. 電話を切ったみどりは何か考えこんでいた.

さて隅田川の川岸でエジソンは坂本とたたずんでいた. ブルマー姿の女子高生が「ファイトー」と掛け声をかけながら走るのを見て
坂本「だーめだー,こんなのばっか見てると.」
エジソン「ん?」
坂本「ムラムラしちゃって.」
エジソン「どうして?」
みどりが相手にしてくれないからだ.仕事で帰りが遅いので, 帰ると疲れたと言ってさっさと寝てしまうのだ.
エジソン「お宅はさあ,スポーツ選手だったから, あっちの方も人一倍強いんだろうね.」
坂本は苦笑した.妻に養ってもらっているので浮気をするわけにはいかない.
エジソン「俺もねえ,ヒモはあっちの方も仕事のうちだから, それはそれでも辛いのよ.」
坂本「うーん.いかんなあ.ハウスハズバンドになってから, どうも愚痴が多くなったよ.」
坂本は全く飲めなかった酒も飲めるようになったという.
エジソン「一般の主婦にアル中が増えるって言うのもわかるね.」
坂本「ああ,なるほどなあ.」
そのとき,坂本は腕時計を見て気がついた.
坂本「あ,しまった.ガキ迎える時間だよ.」
慌てて坂本は走り始めた.後を追いかけるエジソン.
エジソン「ファイトー.(変な振りつきで)プリン,プリン.ファイトー. (変な振りつきで)プリン,プリン.」

坂本が幼稚園(ロケ地は武蔵境の浄水場の辺り)へ行くと, すでにみどりが息子を出迎えていた.早退きしてきたという.
坂本「そうか.今晩は3人で飯が食えるぞー.何がいいか.すき焼きか?」
楽しそうに歩く親子3人を見ながら
エジソン「3人ですき焼き食べんの? 俺何食べんの?」
とそのとき,エジソンはあの黒い車が止まっているのに気がついた.

その頃,山口金融にパピヨンが来ていた.みどりに紹介されたのだ. パピヨンは高名な建築家の西原春樹の妻と称していた. 西原は仕事で3ヶ月間スペインへ行っているので, その間独りで家にいても仕方がないし,社会勉強のつもりで働きたいと言う. 山口は取引先の社長がマジックを習いたいと言っているとパピヨンに言った. 週一度教えると月20万円払うと言う.パピヨンは契約金一万円を受け取り, 奇術の腕を披露.まず一万円札を筒状にし,水の入ったコップに傾けると, あら不思議,金魚が出てきた.続けて火の着いたタバコを筒の中に入れ, 一万円札を元に戻すとタバコは消えてしまった.驚く山口. さてパピヨンが山口金融から出てくると,外でファルコンが待っていた.
パピヨン「偶然の一致かしら?」
ファルコン「いや,必然って奴ですよ. 例の男達の車の名義はこの会社なんです.」
山口は西原の事務所に電話し,西原がスペインに出張に行っていることと, 西原の妻の名前が優子であることを確認.さらに「西原の自宅」へ電話.
パピヨンの声「西原でございます.只今外出しております. ピーっと言う発信音の後,あなた様のお名前と御用件を1分以内にお話し下さい.」
山口は電話を切った.

ファルコンの車の中でパピヨンは建築家の西原の妻に成りすましたと言った. 「自宅の電話番号」は緑美園にしていた.そこへエジソンから無線が入った.
パピヨン「はい,こちら,パピヨン.」
エジソン「あら.なんでパピヨンが出るの?」
パピヨン「用件をどうぞ.」
エジソン「あ,そうか,3人してさぼってるわけ.俺一人に仕事させといて.」
後部座席に座っていたバニーが乗り出してきて大声で叫んだ.
バニー「こっちだってちゃんと仕事してますよ.」
耳元で大声を出されたファルコンは一瞬嫌な顔をし,バニーの頭を叩いた.
エジソン「ファルコン君, 君達が調べるはずの二人組まで俺がやってるんだけどねえ.」
パピヨンとファルコンはお互いの顔を見合った.
エジソン「二人の車に発信機付けといたから,ちょっと,お仕事して頂戴よ.」
ファルコン「そう言うなって.今度,一杯おごるから.」
エジソン「おーい,動き出したぞ.後,頼むわ.」
ファルコン「了解.」
山口の部下の一人はどこかのレストランの窓際の席で誰かと密会していた. ファルコンはパチンコで盗聴機を窓に打ち込み,盗聴開始. 部下が会っていたのは衣笠麻里子の夫. 部下は衣笠麻里子の売春の写真をネタに夫を強請っていた. 会社に衣笠麻里子の売春がばれれば夫の地位も危うくなる. それをネタに部下は夫を強請り,新製品の図面を盗ませていた. さらに部下はもう一度やるように強請っていた. 会社が開発したICの図面を盗むのだ.

その晩.早速山口から電話がかかってきた.翌日の3時に客と会えと言うのだ. 部下は衣笠が三栄社の開発したICの図面を翌々日まで持ってくると報告. この図面は億単位で売れる.さらに部下は坂本みどりの様子がおかしいと報告. 会社を早退したと言うのだ.山口は坂本みどりの始末を示唆.

さて蝶子と雅則が夕食を取ろうとしていると電話がかかってきた. 雅則が取ろうとすると,2回ベルが鳴って切れてしまった. またかかってきた.慌ててパピヨンが取ろうとしたが,雅則は制止し, 取ろうとした.しかし,また切れてしまった.
雅則「なんだ,この電話は!」
パピヨン「ああ,そうだ.ドレッシングがなかったんだ.急いで買ってくるわ.」
そして公衆電話から
パピヨン「うちには電話しないでって言ったでしょう.」
バニー「すいません.山口から電話があったもので. 明日の3時,先方に会わせるので電話をくれって.」
パピヨン「ひっかかったわね.」

その頃,坂本邸を見張るエジソンにファルコンは強請りの件を報告していた. 売春した妻の弱みをつかんどいて,それをネタに夫を強請る.逆らうと, 秘密保持のために自殺に見せかけて殺してしまうと言うわけだ.
ファルコン「主婦の職業意識につけこんで売春やらせた奴らだ. ま,それを納得しちゃう主婦も困ったもんだけどねえ.よいしょっと.」
エジソン「もう行っちゃうの?」
ファルコン「行っちゃうよ.パピヨン姐さんに報せとかないとさあ, あれ納得しちゃったら困るじゃん.」
エジソン「あれ納得しちゃうの?」
ファルコン「うん.あれ納得しちゃったら,凄いことになっちゃうよ.」
エジソン「なるほどね.」
仕方なくエジソンはファルコンを見送った.
エジソン「納得してもいいんじゃねえの?」
エジソンは坂本邸の盗聴を開始.みどりは坂本に, 自分が会社を辞めたらどうする,と聞いていた. 坂本は家のローンが残っているし,自分も競輪に戻れないから困る,と答えた. だがみどりの様子が変なことに気がついた.
坂本「会社でなんかあったのか?」
みどり「疲れただけよ,仕事に.」
坂本「そんなことぐらいで仕事辞めんなよー. 何のためにハウスハズバンドになったんだー,俺は.」
エジソン「悩み事は一緒だねえ,男と女が入れ替わっても.」
坂本「健太郎だって,これから金かかるぞー. 大学までやらせなきゃなんないんだから.」
だがみどりの決意は固かった.
みどり「でももう嫌なの.会社,たたむわ.」
二人ともしばらく無言だったが
坂本「わかった.働くよ,俺が.またやりたくなったらやればいい.」
みどり「そう.ありがとう.」
坂本「なんだよー.お前らしくないぞー. リアルでクールな女性実業家なんだろう.」
エジソン「顔に似合わねえ,気障な事言ってんな,あいつは.」
みどり「会社に行くわ.整理しなくちゃならない書類もあるし.」
坂本「うーん,今からか.」
エジソン「お出かけ,お出かけ.」
エジソンはカーテンを閉めた.出発するみどり. その後を例の黒い車が追いかけていることにエジソンは気がついた. エジソンは黒い車の後をワゴンでつけた. 部下が自動車電話をかけるのを見てエジソンは盗聴開始. 山口は部下に始末も示唆した.慌ててエジソンは, アジトに帰っていたファルコンに無線で連絡.
ファルコン「(ボーっとしているバニーの頭を叩いて)何ボーっとしてんだよ.」

みどりが会社に着いた.そして棚から書類を出し,「西原」のところへ電話した.
みどり「もしもし.山口金融の仕事は受けないで下さい. 実は仕事と言うのは売春なんです.私はそれを知っていて紹介してたんです. 会社を興す時,山口が無利息でお金を貸してくれたので…」
それを山口の部下達が聞いていることにみどりは気づかなかった. ミセス人材オフィスへと車を走らせるファルコン.しかし遅かった.
みどり「だから,その仕事は受けないで下さい.お願いします.」
部下「どこへ電話してたんだ?」
慌ててエジソンは中へ入ろうとドアを開けたが, 拳銃をぶっ放されたのでひるんでしまった. その隙にみどりは腹を撃たれ,部下達は逃走してしまった. 苦しむみどりはエジソンに言った.
みどり「棚の…書類.」
エジソン「ん? 書類がどうした?」
やっとファルコン達が到着した.
エジソン「遅いんだよ.非常口,あっち.」
ファルコンとバニーは非常階段を降りたが, 車を虚しく見送ることしか出来なかった. 報せを聞いた坂本は病院へ駆けつけた.手術室へ入ろうとする坂本と, 坂本を制止する看護婦をエジソンは沈痛な表情で見ることしか出来なかった.

翌朝.ハングマンは留守番電話のテープを再生した.
みどりの声「西原さん.山口金融の仕事は受けないで下さい. 実は仕事と言うのは売春なんです.私はそれを知っていて紹介していたんです. 会社を興す時,山口が無利息でお金を貸してくれたので逆らえなかったんです. それに売春などなんとも思わない人が増えていたのも事実です. でももう耐えられません.他の方にもやめるよう電話するつもりです. だから,その仕事は受けないで下さい.お願いします.」
部下の声「どこへ電話してたんだ?」
ファルコン「彼女は強請りの件は知らなかったようですね.」
パピヨン「奥さんの売春をネタに御主人を強請ってたんですからねえ.」
ファルコン「衣笠は産業スパイをやらされてた.他の連中も大同小異でしょう.」
エジソン「彼女の言い残してた書類ってのは山口に紹介した女のリストだろう.」
ファルコン「そいつが知られちゃあ,具合が悪い奴らが, それを奪ったって訳だ.」
バニー「許せませんよ.どうします?」
パピヨンは決断した.
パピヨン「山口の誘いに乗るわ.もちろん,そこでハンギングよ.」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「Let's go!」
ファルコン「Hanging!」
ファルコンは手を出した.
バニー「(ファルコンの手を叩きながら)Hanging!」
エジソン「(ファルコンの手を叩きながら)Hanging!」
ハングマンは出動した.

ハンギング

思いつめた表情の坂本は包丁を手にとり,何事か決意. 外へ出た坂本に
エジソン「かみさんは?」
坂本「まだ助かるかどうかわからねえ.」
エジソン「ご一緒させてもらうわ.」
坂本はエジソンと一緒に歩いて行った.
坂本「山口って野郎に決まってるんだ.女房が前に言ってたんだ. 会社を作った時,協力させてもらった恩はあるけど, 手を切りたいって言ってたんだ.」
エジソンは坂本をたしなめた.
エジソン「あんたが刑務所に行ったら健太郎はどうなる?」
坂本「ガキのことは言うな.」
エジソン「かみさんだって悲しむぞ.」
坂本「ご一緒するって言ったろう!」
興奮する坂本にエジソンは御一緒していった.

さてパピヨンは客と酒を飲んだ.するとグラスからハンカチが. さらにパピヨンが客のネクタイを手にとるとステッキが出てきた. ステッキからは花が出てきた.さらに台付の金属製のお皿に火をつけ, 蓋を閉じて開けると花が出てきた.客は上機嫌.早速情事を開始しようとした. 抵抗するパピヨンを別室から撮影する山口の部下は撮影に夢中で, 後ろにファルコンが来ている事に気づかなかった.
パピヨン「私はマジックをしに来たんです.」
客「黒岩君.話が違うぞ.」
黒岩は一回くらいどうってことないでしょう,とやんわりと説得したが, パピヨンは拒否.そこへ女装したバニーが乱入した. バニーは赤いドレスを着ていた.
バニー「ちょっとごめんなさい.あたしが代わりましょうか?」
呆気に取られる客.
黒岩「おい.なんだ,お前.」
バニーは黒岩に投げキッス.さらに黒岩の急所を膝蹴りした. 写真撮影していた部下も呆気に取られているうちに,ファルコンに殴り倒された.
ファルコン「(バニーを見て)結構かわいいじゃない.」
客は呆気に取られ,バニーは黒岩に襲い掛かったが,
バニー「やめて.やめて.」
バニーは劣勢.黒岩はパピヨンの指輪で眠らされた.客にバニーが迫る.
客「私は何にもしてないんだよ.いや.ホントに何もしてないんだから.」
バニー「待って,ダーリン.待ってよ.」

山口金融の入っているビルの階段を昇るとき,坂本はこけてしまった. しかし何とか山口金融に坂本とエジソンは到着. 坂本は包丁を懐から出して山口に襲い掛かったが,交わされてしまった. しばらくエジソンは様子を見ていたが,坂本を気絶させ, 礼を言う山口も気絶させた.そして机を漁って書類を発見した.

さて悪党達が気がつくと,彼らは胴にベルトをさせられて吊るされていた. さらに悪党達は鉄板の上に立たされていた.明かりが着くと, 鉄板の上に生卵が割られて上にいくつも置かれているのが見えた. 生卵は手前から悪党達の方へ一列に並んでいた.
ファルコン「さて主婦を食い物にしてきた皆様方を材料にして, 料理でも作ろうか.」
山口「誰だか知らんが,何の真似だ! このロープを解け!」
ファルコン「うるせえ! 説明最後まで聞け.これからガスをつける. それも手前から徐々にだ.もちろん,どんどん目玉焼きが出来てきて, 最期にはお宅らが目玉焼きになるって言うわけだ.」
バニー「お好み焼きです.」
細かいことをごちゃごちゃ言うバニーを睨みつけてから, ファルコンはリモコンスイッチを押した.ガスバーナーが点火された.
ファルコン「ただし,お宅らがやった悪事を全部話せば助けてやってもいいぜ.」
山口「馬鹿を言うな.何もやっちゃいない.」
ファルコン「ほー.いつまでそう言ってられるか,楽しみだよ.ホントに.」
黒岩「社長.」
目玉焼きがどんどんできていった.バーナーも移動する.本当に熱がる悪党達.
ファルコン「パピヨン,お願いします.」
パピヨン「スタンバイ.」
エジソン「了解.」
アンテナが準備された.なおも熱がる悪党達.目玉焼きもたくさんできていた.
山口「馬鹿な.こんなことして何になるんだ.」
悪党達は足をどたばたさせていた.
ファルコン「それじゃあ,行きますか.目玉焼きを.」
バニー「お好み焼きです.」
ファルコン「はい.」
上から水でといた小麦粉が掛けられ,悪党達は真っ白になった.
ファルコン「OK.実況中継開始.」
パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押した.

その頃,坂本は健太郎に起こされ,手紙を渡されていた.
エジソンの声「本日午後9時.テレビを御覧下さい. あんたの恨みも晴れるはずです.」
坂本がテレビをつけると熱がる悪党達の姿が映っていた.この醜態は 「東京・狛江 ミルキーハウスキッチン」というホカ弁屋のテレビなどにも, 映し出されていた.
部下「助けてくれえ.」
黒岩「やめろー.」
ファルコン「だから悪事を吐けばやめてやるって.」
部下「主婦に売春させてたことか?」
ファルコン「他にもあるだろう.」
山口「あ! 高木,よせ.」
だが部下の高木はよさなかった.
高木「話すー.話すー.全部話すー.」
山口「黙れ.」
高木「主婦の職業意識を利用して売春させていたんだあ.」
山口「馬鹿もん.」
なおも熱がる悪党達.
黒岩「おい,売春をネタに亭主を強請ってたのも, あれもこれも山口さんの命令だあ.」
山口「黙れ.」
ファルコン「まだあるだろう.」
黒岩「太田あやこの心中も衣笠麻里子の,あー,つ,つ,つ,つ. 衣笠麻里子の自殺も,みんな俺たちが殺したんだあ.」
山口「黙れ.」
部下「熱い.熱い.」
黒岩「それもこれも悪いのは,山口さんだあ.」
山口は白を切り,部下達は熱がった.そのとき, 坂本の所に中央病院から電話がかかってきた.坂本みどりが意識を回復したのだ. そして部屋が暗くなった.

また部屋が明るくなり,悪党が吊るされたまま, 薔薇の花を持ったパピヨンが登場.
黒岩「あれ?」
山口「お前は?」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は眠りに入った. 翌日.蝶の描かれたダンボールにつめられ,城西警察署へ届けられた.

事件解決して…

夕刊で例の事件の記事を見て,雅則は「俺の言った通りだ.」とほざいていた. 得意になって「お前も考え方を変えろよ.」と言う雅則.しかし
蝶子「あなた.今月も赤字なんですけど.」
頭をかく雅則.
蝶子「このままですと,あたしが働かないとやってけませんよ.」
すでに働いているではないか.
雅則「そりゃあ,まずいよー.なんで赤字なんだ.」
これが墓穴を掘ることになった.
蝶子「あなたのゴルフをもう一回ほど減らしていただいて, その分,もう少し麻雀に勝っていただければ黒字になると思いますけど.」
雅則は苦い顔.
雅則「ゴルフを減らすわけにはいかんしなあ.」
というわけで麻雀の特訓開始.で結果は
蝶子「当たり.ロン.」
雅則「は?」
蝶子「ダブル役満.大三元.」
口をあんぐり開ける雅則.
雅則「うーそー.」
蝶子「これが積み込みって言うのよ.はい,練習して頂戴.一に練習,二に練習, 三に練習よ.」
これでは赤字になるのも無理はない.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp