第十三回

ファッション業界の黒い霧を暴く.
ファルコンが戦争ゲームの標的にされる!

脚本:田上雄 監督:松井昇

この回の監督松井昇さんはハングマンシリーズの演出助手から助監督になり, 今回がシリーズでの初監督作.だから今回は凝ったカットがよく見られる.

ここは森の中.「ラオス北方 20Km」という字幕が出ている. 機関銃を持ち,迷彩服を持った外国人の男達が歩いていた. 「- 1973 -」という字幕が出た.舞台はベトナム戦争真っ最中. 先程の男達をアジア人が待ち伏せしていた.戦闘が開始された. 激しい打ち合いの末,「ゲームオーバー」という声が響いた. 実はこれは雅則の会社が作ったサバイバルゲームのビデオ.
蝶子「あら,これ本物の戦争じゃないの.」
雅則「本物のサバイバルゲームだよ.」
蝶子「サバイバルゲーム?」
雅則「コンバットゲームとも言ってね, アメリカで始まって今や我が国でも密かにブームが始まってるんだ.」
蝶子「要するに大人の戦争ごっこか.」
蝶子は台所へ向かった.
雅則「そう言ってしまったら,身も蓋もないよ. 身につけるものは勿論,使用する武器まで本物そっくりに作ってあるんだから. ほら.」
雅則が銃を撃つとタバコに当たってタバコが倒れた.
蝶子「あら,弾も出るの?」
雅則「BB弾と言ってね,材質はプラスチックだ. これを専用のガスや圧縮空気で発射するんだ.当たれば結構…」
そう言って雅則は弾を手に持ち,蝶子に当てようとした.
蝶子「男の人っていくつになっても子供なのねえ.」
雅則の会社では,東南アジア向けにサバイバルゲーム用のソフトエアガンを, 輸出することになっていた.冒頭のビデオゲームはその販促用のもの.
蝶子「もっとましなものを売りゃあいいのに.」
雅則「本物の武器を輸出するよりましですよ. サバイバルゲームで死ぬ奴なんて一人だっていやしないんだ.」
雅則は蝶子の尻にBB弾を撃って当てるのであった.

今日もどこかでサバイバルゲームが行なわれていた. 迷彩服を着た男達がジープに乗って「逃亡した捕虜2名を追跡」していた. 逃げる二人の男達.しかしゲームにしては様子が変だ. ジープに乗った男達は二人を発見.機関銃をぶっ放して威嚇した. そして男達は車から降り,捕虜を追い詰めた.
捕虜A「やめてくれえ.頼む.助けてくれえ.」
捕虜B「こんなゲームはやだ.俺は死にたくない.」
だがこの願いは聞き入れられなかった.捕虜の一人は撃ち殺され, もう一人にも銃が迫る.

調査開始

ここはお台場の公園.双眼鏡でカップルを誰かが覗き見していた.
マネージャー「お! いいぞ.」
卑猥な笑い声をあげるマネージャー.だが双眼鏡の前にパピヨンが立ち塞がった. マネージャーは咳払いして覗くのをやめた. マネージャーは黒っぽい服を着ていた.
パピヨン「何を見てらっしゃるの?」
マネージャー「お,は,は.だから野鳥の生態に決まっておる.」
パピヨン「それにしては随分ものものしい格好ですこと.」
マネージャー「ん? 目立たなくていいだろう.え.」
パピヨン「野鳥にカモフラージュが効くんですか? アベックを覗き見するなら別だけど.」
マネージャー「いや,馬鹿な.お,それより,これを見てくれ.」
マネージャーは三脚に固定した望遠鏡を指した.パピヨンが覗くと, 海の上を水鳥が泳ぐのが見えた.それが二人の男の写真に変わった.
パピヨン「いい感じじゃない.一緒にお酒でも飲んだら楽しそうだわ.」
マネージャー「それは無理だな.二人とも1週間前に蒸発してしまった.」
パピヨンはマネージャーの方を見た.

蒸発したのは松浦しげおと柴田こういちの二人. 二人とも某服飾デザインスクールの卒業生.現在ニューモードカルテット, 略してNMQという会社の共同経営者だった. NMQは原宿でちょっと話題になっている店で,いわゆるアパレル産業だ. 5年前に資本金200万円で創業し,前の年の年商は20億円以上だった. その金額に驚くファルコンとエジソン.
エジソン「ファッション業界ってのはぼろいねえ.」
バニー「NMQの服は最高ですよ.デザインが斬新でキャラクターが明確. 時代を先取りしてますよ.」
それだけ人気のある会社の経営者が二人もいなくなったのだから何かある筈だ. マネージャーはそう見ていたし,パピヨンも犯罪が絡んでいると考えた. NMQの残りの共同経営者は立花進と斎藤理恵(芦川よしみ). 立花,斎藤,松浦,柴田の4人で創業したのだ.
パピヨン「今回のギャラは一人80万ね.」
エジソン「並だな.」
パピヨン「いつものことだけど,領収証を忘れないでねえ.」

ここは原宿.デザイナーマガジンの記者と称してNMQにファルコンが乗り込んだ. ファルコンは斎藤にNMQの経営者について特集を組むと言った. そこへ立花が現れた.宣伝担当なので自分が相手をすると言って, ファルコンを連れ出した.
ファルコン「女性の方がいいんだけど.」
ファルコンはNMQ設立の動機を尋ねた. 立花は人に使われるのが嫌だったと答えた.それでテント張りの店を作り, 自分達が作った服を売り始めたのだ.最近は若いデザイナーを雇って経営に専念. 斎藤は商品開発を担当し,松浦と柴田は営業と経理を分担していた. ファルコンが松浦と柴田が蒸発した理由を尋ねると,立花の動きが止まった.
立花「君はどこでそれを?」
ファルコン「業界では噂になってますよ. ひょっとして4人の間で何かトラブルでもあったんじゃないかってねえ.」
立花は躍起になって否定した.二人は共通の趣味を持っているから, 示し合わせて海外旅行へ行ったのだろうと立花は答えた.
ファルコン「でなんですか,その共通の趣味ってのは.」
立花はエアガンを持ち,ファルコンを狙って撃った…と思ったら, BB弾はその先の空缶に命中.
ファルコン「おもちゃにしちゃ,よくできてますねえ.」
立花「柴田も松浦もこういうのを何丁も持っていてねえ, サバイバルゲームとやらに熱中しているんだよ.」
ファルコンはBB弾の命中した空缶を手に取った.
ファルコン「ホントによい御趣味だ.」

なぜかハンバーガーを投げながら, NMQの前に止まっている緑美園のワゴンのそばで, ファルコンとエジソンが話をしていた. 今までもよく二人は会社をサボって遊びに行っていたと言う. だから今回もあまり気にしてないと立花は答えていた.
エジソン「嘘言ってんじゃないの?」
そのとき,ワゴンの中から手が伸びて,エジソンの頭を叩いた.
バニー「始まりましたよ.」
エジソン「何で俺殴るの?」
ファルコンとエジソンはハンバーガー…型の受信機を耳に当てた.
ファルコン「聞こえる?」
エジソンはうなずいた.念のため, 斎藤がファルコンの渡した名刺に書かれていた電話番号のところに電話したら, 「その番号はつかわれていません」だった.つまりファルコンは偽記者. それを聞いた立花は警察じゃないかと懸念していた.
斎藤「警察? どうしてそんなこと考えるのよ. あなた,ひょっとして松浦君達がいなくなった理由,知ってんじゃないの?」
立花は否定した.斎藤はむきになって警察を恐がる理由を立花に尋ねた.
立花「とにかく,僕達と松浦君達の間に意見の相違があったことは, 誰にも言わないほうがいい.下手をすると会社の信用に傷がつくからね.」
そう言って立花は出て行った.斎藤は空缶をゴミ箱に捨てた. 実は空缶に盗聴機が仕掛けてあったのだが, 斎藤はそのことに気づいていなかった.

ファルコンは経営方針に関する対立があったのだろうと考えた. すると立花が出てくるのが見えた.早速3人は尾行開始.結果は
エジソン「なんだ,昼飯かよ.」
ファルコン「昼飯にしちゃ遠出しすぎるなあ.誰かと会う気かもしれねえ.」
バニー「俺,確かめてきます.」
ファルコンの読み通り,立花は初老の男(有馬昌彦)と会っていた. 立花は彼を先生と呼んでいた.先生が松浦達の居場所を知っていると考えたのだ. 先生は否定したが,立花は松浦達が「例の計画」に反対していたので, 先生と関係あると考えたのだ.先生はこの際「あの話」は一切なかったことに, と言うと立花は慌てた.先生の力が必要だと考えていたからだ. それならそういうくだらない考えはすっぱり捨てることだと先生は立花に言った. そこへバニーが花を持って登場した.花を注文されたと言うのだ. だが先生に心当たりがあるはずがない.バニーは店を間違えた振りをして帰った. 実は花には隠しカメラが仕込まれていた.

先生の素性をパピヨンは知っていた.服飾評論家の中沢しんいちろうで, 若い世代のファッションリーダーだった男だ.ファルコン達は全然知らなかった. それもその筈.中沢が一世を風靡したのはパピヨンの学生時代. アイビーだのコンチだのと騒ぎ始めた頃だった.
ファルコン「その過去の亡霊がなんでまたしゃしゃり出てきたの?」
それが今回の糸口になるかもしれない. パピヨンは自分が中沢に当たってみることにした.

乗馬クラブでパピヨンは中沢に声を掛けた.中沢は怪訝な顔. パピヨンは中沢が顧問をしていた会社でモデルをしていたので, 何度も会ったことがあると言った.これで中沢は納得. パピヨンのよいしょにより,若者向けの会社の経営に関わる話が来ていることを, 中沢は話してしまった.だが中沢は社名は明かさなかった. だが急成長したのがたたって,その会社の業績が横ばい状態だと中沢は言った. 長年の経験で集めたノウハウを注ぎこめばすぐ上向くと思うと中沢は付け加えた. 中沢はさらに口説こうとしたが,パピヨンは用事があると言って断った. 中沢はグラスを置いた.

ファルコンがグラスを置いて,斎藤に声を掛けた. 斎藤はファルコンが雑誌社の記者じゃないことはわかっていると言うと, ファルコンは名刺に書かれているところに電話をしたら使われていなかった, と応えた.驚く斎藤にファルコンは盗聴機を仕掛けたことを明かした. ファルコンは私立探偵社の者と言い, 蒸発した家族に依頼されて行方を探していると付け加えた. ファルコンは「意見の相違」について聞いたが斎藤は答えなかった.
ファルコン「ま,おおよその見当はついてるけどね. 服飾評論家の大先生を経営に迎えるかどうかでもめてたんだろう?」
図星だったらしく,斎藤の手が止まった.そして話し始めた. 松浦達は中沢を呼ぶことを強硬に反対していた. 他人を入れれば仲間の結束が崩れると考えたのだ.斎藤は二人を一笑にふした. 学生じゃあるまいし,マイナーな感覚だ,と. ファルコンは松浦達が中沢に始末されたのではないかと言うと, 斎藤は,まさか,と言って取り合わなかった.

斎藤と別れた後,ファルコンは二人の恐いお兄さんに襲われた. 二人ともナイフを使用.ファルコンは二人を撃退し, 誰の差し金かと聞こうとしたが,そこへジープが乱入. 二人を取り逃がしてしまった.しかし,ナイフを拾うことには成功. そのナイフの種類は
バニー「(エジソンの顔の真ん前にナイフを出して)許せませんよ. (ファルコンの顔の真ん前にナイフを出して)こんなもん使うなんて. (エジソンの顔の真ん前にナイフを出して)これは本物のミリタリーナイフ. (ファルコンの顔の真ん前にナイフを出して) それもグリーンベレー専用の奴ですよ.」
危ないのでファルコンはバニーからナイフをもぎ取った.
エジソン「お前,そういう知識だけはいっちょまえにあるね.」
バニー「あ.実はサバイバルゲームに凝っている友達がいるんですよ.」
ファルコンは松浦達もサバイバルゲームに熱中していたことに思い当たった.

バニーは聞き込みをするためにサバイバルゲームをしていた. それを小田急の多摩川の鉄橋の堤防の上に止まる, 緑美園のワゴンの屋根の上から見ながら
エジソン「本気になって遊んでるんじゃないの,あいつ.」
そこへ
バニー「ただいま.」
エジソンはバニーの鼻にソフトクリームをつけ, ファルコンはバニーの頭にソフトクリームをつけた.
エジソン「馬鹿野郎.いつまで待たせるんだ.なんだ,その顔は.」
散々待たせただけあって収穫はあった. 松浦達はもっと高度なクラブに移籍していた. 金持ちだけが集まって実戦さながらのゲームが楽しめるところだ.

早速ファルコンがそのクラブの入会手続きができる新宿射撃場へ行った. ファルコンは全弾同じ所に弾を撃ち込んで銃の腕前を見せた.入会金は
ファルコン「20万! 必要経費オーバーだぜ.」
主人は怪訝な顔.
ファルコン「ああ,いや,いや.こっちの話.」
さらに今月の会費が5万円かかると言う.
ファルコン「あの,領収証いただけますか?」
主人はうなずいた.実際のゲーム場は神奈川県大山郡の山の中にあった. 広さは5万坪で宿泊設備も完備していた.早速ファルコンはそこへ向かった. 実戦さながらのテントが設営されていた. ファルコンは隊長の金森(片桐竜次)に声を掛けた. 金森は無線でファルコンが着いたと言う連絡をすでに受けていた. まるで前線基地だというファルコンに
金森「ゲームの面白さはリアリズムの追及から生まれると言うのが, 俺のモットーでねえ.」
ファルコン「それじゃあ,実際に人を殺すのが, 最高のサバイバルゲームとなりますか.」
金森「君,装備は持ってきた?」
ファルコン「いやあ.今日はとりあえず見学と言うことで.」
金森「なるほど.じゃあ,手近なところから案内しよう.」
金森はゲームの行なわれる場所を案内した. 川原で二人の男がロシアンルーレットを強要される場面を見た.
ファルコン「どっかで見たシーンだなあ.」
金森「実際にやってみるとねえ,結構緊張するもんだよ. 一度心臓麻痺で死にかけた奴がいたよ.」
銃声が響き,男の一人が頭から血を流して倒れこんだ.
金森「BB弾に血糊が仕込んであるんだ.」
すると実戦ゲームが始まった.爆弾が爆発したり,機関銃で銃撃をしたり. さらに救護兵が敵軍に陵辱されたりしているのをファルコンは見せられた. その後,テントで感想を求められたファルコンは
ファルコン「しかし武器がこれじゃね.」
金森「本物を使うわけには行かないさあ. 当たればホントに死んでしまうからね.」
ファルコン「遊び心で人を殺す.たまんない快感だと思いますけどね.」
金森「冗談は困るなあ.」
ファルコン「俺は本気ですよ.そんな快感が味わえるなら, 金はいくらつぎ込んでも惜しくないと思ってる.一生に一度でいいから, 味わってみたいなあ.」
金森「君は俺と同じタイプの人間らしいなあ.」
挑発しといてファルコンは怪訝な顔.
金森「実はね,そういうガッツのある男を集めてるんだ. 完全なゲームを追及するための仲間をね.」
ファルコン「それじゃ,できるんですか.ホントの殺人ゲームが.」
そのとき,通信が入った.通信を受けた後,戻ってきた金森は
金森「話の続きをしようか.」
金森はファルコンに拳銃をつきつけた.
金森「断っておくが,これは本物のコルトガバメントだ. まともに当たれば頭の半分は吹っ飛ぶ.後ろを向け.」
ファルコン「待ってくれよ.一体なんだって.」
金森はこの問いには答えなかった.
金森「後ろを向けと言ってるんだ.」
ファルコンは後ろを向いてパチンコを出そうとしたが, 金森の撃った弾によってパチンコは弾き飛ばされた. そしてファルコンは金森に殴り飛ばされてしまった.

近くには緑美園のワゴンが止まっていた. エジソンとバニーがファルコンからの連絡を待っていた. しかし連絡は一切なし.

ファルコンがテントから出されると,
斎藤「また会ったわねえ,探偵さん.」
射撃場のマスターと斎藤はグルだったのだ. マスターは商売柄ファルコンを警察か何かと睨んだらしい. そしてさっきの無線は斎藤からのもの.
ファルコン「君の目的はなんなんだ.立花と二人で会社を牛耳ることか?」
斎藤「立花君.は,は,は,は.あんな青臭い男問題外よ. そのうち会社から追い出してやるわ.」
ファルコン「本命は評論家の大先生って訳だ.」
斎藤「あたりー.ぶっちゃけた話,今度の作戦は全部彼が考えたの.」
金森「中沢さんと僕は昔からのハンティング仲間でねえ. サバイバルゲームの流行に目をつけてクラブを始めたのも彼のアイデアさ.」
斎藤「さすが60年代をリードしただけあって,頭はさえてるわあ.」
ファルコン「あんなヒヒ爺のどこがいいのかねえ.君も相当の変態だなあ.」
斎藤は笑い出した.
斎藤「ヒヒでも狸でもただのネズミよりましだと思わない? しかも罠にかかったネズミ.」
金森「望みどおり,殺人ゲームの快感を味わってもらう.ただし, 殺される側でな.」
ファルコン「あ,それ勘弁してよ.俺,殺す方でさあ.」
金森はこの冗談に取り合わなかった.
金森「さあ,早く走れ.30秒経ったら俺達が追跡を開始する.」
ファルコン「しかし.」
金森「あと29秒.28,27,26,25,24,…」
仕方なくファルコンは逃走を開始した.ジープが走るファルコンを追いかける. ファルコンは車で逃げようとしたが,機関銃で撃たれて車が故障. 仕方なくファルコンは車を捨てて逃走した.山の中を逃げるファルコン. その頃,エジソン達は故障した車を発見.さらに銃声も聞いた. ファルコンは糸をつかって罠を仕掛けたり, コートを囮にしたりして一人一人倒していったが,多勢に無勢. 一生懸命逃げ回るしか手がなかった. そしてエジソン達はファルコンのコートを拾った.
エジソン「この分だと,まだ生きてるな.」
ついにファルコンは崖に追い詰められた. ファルコンに兵士が迫る.銃声が響いた.

斎藤はなかなか決着がつかないのでいらいらしていた. そこへ連絡が入った.
班長「こちらパトロール班.」
金森「どうした.奴の始末はついたか.」
班長「はい.やっと片付けました.ただ,小島と笹本が負傷しましたので, 治療を済ませてから帰寮します.」
金森「そうか.ご苦労さん.」
実際はどうかというと
エジソン「やればできるじゃない.上手よ,上手.大丈夫なの,あんた.」
ファルコン「ちょっと遅かったけど許してあげる.」
ファルコンは間一髪助かり,パトロール班は全員エジソン達に捕まっていたのだ.

アジトで
パピヨン「それじゃあ,間一髪で助かったってわけ?」
ファルコン「へえ.ホントにあの時エジソンが撃つのが一秒でも遅れてたら, 俺の命はなかったかもしれないなあ.」
バニー「それにしてもエジソンがあんなに射撃がうまいなんて, 今でも信じられない.」
機関銃を握っていたエジソンが答えた.
エジソン「俺だって信じられないよ. 狙いつけないで撃ったら当たったんだもん.」
ファルコン「何?」
パピヨン「でもファルコンが危険を冒してくれたお陰で. 事件の全貌が明らかになったわ.後は仕上げをするだけ.」
バニー「待ってました.」
エジソンは新しい武器を持ってきた.
エジソン「とまあ,普通のブレスレットでしょう.ちょっと見て. この留め金の黒いのがあるでしょう.これをこうしてこう押すと」
針が出て液が噴射された.液がかかった黄色いチューリップから白煙が上がった.
パピヨン「最高ね.ハンギングスタート.」
エジソン「よっしゃ.」
蝶の舞うCGが流れた.衣裳部屋からパピヨンが登場.
パピヨン「用意はいいわね.」
3人は小道具を出した.
パピヨン「Let's go!」
ファルコン「Hanging!」
3人は手を叩きあった.その際,ファルコンはエジソンの頭を叩こうとしたが, かわされてしまった.そしてハングマンは出動した.

ハンギング

中沢と斎藤は一緒に酒を飲みながらほくそ笑んでいた. そこへパピヨンが登場.慌てる中沢.斎藤は出て行ってしまった. その後,中沢はブレスレットの餌食になった.

さて出てきた斎藤のハンドバッグにバニーが飛ばした竹とんぼが命中. ハンドバッグが落ちてしまい,中身がこぼれてしまった.
エジソン「あーあ,手伝いましょう.」
斎藤「結構です.」
拾い終わって立ち上がった斎藤に
エジソン「お嬢さん,これも落としましたよ.」
斎藤「あたしのじゃありません.」
エジソン「いえ,落としましたよ.」
バニー「俺,落とすの見ました.あなたんですよ.」
エジソン「よく確かめてください.ほら.」
斎藤は催眠ガスの餌食になった. どさくさに紛れ,倒れこむ斎藤とエジソンはキスしようとしたが, バニーに邪魔された.

夜道を歩く金森に
ファルコン「このゲーム,あんたの負けだなあ.」
預言通り,このキックボクシングはファルコンの勝利に終わった.

さて悪党達が気がつくと,テーブルに座らされていた. 真中でエアガンが回っていた.
ファルコン「諸君,お目覚めの気分はどうかな. これから始めるのはロシアンルーレット.諸君がお好きな殺人ゲームだ.」
銃口が中沢に向けられた.
班長「このリボルバーはソフトエアガンだ. こんなおもちゃで俺達を脅迫するつもりか.」
ファルコン「さすがによくわかってるなあ.だがそのBB弾には, ちょっとした仕掛けがある.」
銃口が班長の方を向いた.BB弾が当たり,班長の顔は血糊塗れになった. 斎藤はびびった.
金森「たかが血糊ぐらいで驚くと思ってるのか.」
金森も血糊塗れになった.
ファルコン「その銃はコンピュータに接続されててね, あんまり怒らせない方がいいよ.プライドが高いからねえ.」
中沢「私は関係ないんだ.こんな連中と一緒にしないでくれえ.」
中沢は粉塗れになった.
ファルコン「そいつは嘘も嫌いでねえ.」
斎藤「ちょっと,冗談じゃないわよ.こんな茶番ごめんだわ. いい加減にしてよー.」
斎藤はに撃ち込まれた弾は蝶が三匹ついた吸盤が仕込まれていた. 物凄く間抜けな姿だ.
ファルコン「どうやら諸君は, このゲームの本当の恐さをわかってないようだなあ. 茶番かどうか,こいつを見てもらおうか.」
銃口がマネキンに向けられた. BB弾の当たったマネキンの頭は爆発して吹き飛んだ. 思わず中沢は目を瞑り,斎藤は顔をそむけた.
ファルコン「少しは驚いたようだなあ.そう. その弾にはニトロが仕込んであるんだ.そしてニトロの弾はもう一発残ってる. そう.諸君らの誰かにプレゼントするためにねえ.さあ, ルーレットは回転を始める.そして人形と同じ運命をたどる人の前で止まる.」
中沢に銃口が向けられた.
ファルコン「と同時にバキュン.では始めようか.」
回転が始まった.銃口が向けられる度に悲鳴をあげる悪党達.
パピヨン「スタンバイ.」
アンテナが準備された.
ファルコン「どうかな.少しはスリルを味わえたかな. そろそろスピードも落ちてきたようだけど.」
ゆっくり回転するエアガンを見て悲鳴をあげる悪党達.
ファルコン「やめてほしければ,諸君の犯した罪を白状することだ. そうすればコンピュータも情けをかけてくれるぜ.」
金森「(偉そうに)それが目的だったのか.俺は絶対に,絶対に, (銃口が向けられて)喋りますが速くどいて.」
斎藤「いやあ,あっち行って.あたしじゃないわ. 何もかも中沢さんが悪いのよ.中沢さんが計画したんだわ.」
中沢「やめろ.黙らんか.」
パピヨンは秒読み開始.
パピヨン「5,4,3,2,1.キュー.」
エジソンがスイッチを押すと同時に「ON AIR」開始.
中沢「何を言ってるんだ,馬鹿者.話を持ちかけたのは君の方じゃないか.」
斎藤「あたしは殺人には無関係よ.やったのはそいつらよ. そいつらが遊びで殺したんだわ.」
班長「違う.俺達は殺す気なんかなかったんだ.むしろ反対だったんだ.」
中沢「いい加減なこと言うな.」
この醜態は「神奈川県・厚木市 和田花火工場」のテレビなどに, 映し出されていた.
班長「嘘じゃない.ホントのことだ.」
斎藤「今更とぼけないでよ.やったものはやったって認めなさいよ.」
金森「わかった,認める.だが俺は中沢さんに頼まれて, いやいやながらやったんだ. それもみんなあんたと理恵さんが仕組んだことじゃないか.」
中沢「馬鹿な.殺人ゲームと聞いて喜んで協力する気になったくせに. ひ,卑怯者.」
エアガンの銃口が中沢に向けられた.悲鳴をあげる中沢.引き金が引かれた. そして花が出て,おしまい.呆気に取られる悪党達.部屋が暗くなった.

また急に明るくなり,薔薇の花を持ったパピヨンが登場. 悪党達は4人一くくりに縛られていた.
中沢「いったい,君は誰だ.」
パピヨン「闇に舞う蝶,パピヨン.安らかに眠っていただきます.」
薔薇の花から催眠ガスが噴射され,悪党達は再び眠りに入った. そして蝶の描かれたダンボールにつめられて警視庁大高警察署へ送られた.

事件解決して…

蝶子が帰ってくると,雅則がエアガンを自分の額に向けていた. エアガンを輸出する話が流れたのだ.向こうでは本当の戦争が日常茶飯事なので,
雅則「(外国語訛りで)あーそんでる場合ではありませーん.」
蝶子「(外国語訛りで)おー,そーれもどーりねー.」
部長には怒鳴られ,同僚には笑われ,部下からは白い目で見られる, と散々だったらしい.蝶子は自分がついてると慰めた. 風呂に入って嫌なことを洗い流そうと言い,
蝶子「そしたら,あなた,あっち.」
蝶子は布団を指差した.だが雅則は何にもしないで寝ている時が一番と言って, 布団に入ってしまった.怒った蝶子はエアガンを撃ち,雅則は叫び声を上げた.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp