第二十二回

新種の麻薬に群がる悪党を吊るす.
検察官が新種の麻薬づくりを強要する!

脚本:和久田正明,帯盛迪彦 監督:帯盛迪彦

ここは東都農業大学.作物学研究室の助教授岩田国昭の所へ, 東京地検の特捜科の者と名乗る二人組の男がやって来た. 容疑は麻薬取締法違反.驚く岩田を尻目に男達は捜査を開始した. だが岩田は男が見つけた薬品を見てぐうの音も出なくなってしまった. 岩田は男達に連れられて大学を出た. そして連れてこられたのは東京地方検察庁新宿分室という看板の掲げられた建物. 取調べが始まった.岩田は玉葱の品種改良に取り組んでいた. だがあるとき,岩田は玉葱の一種から副産物として特殊な物質を発見した. その物質はモルヒネと同じ効力を持つ新しい麻酔薬だ.男が見つけたのは, その試作品だった.それを岩田も認めた. だが半年前にその試作品ができた段階でその研究が急に中止されることになった. 男はその理由を尋ねた.岩田は山本教授からの命令で中止したと答えた. 山本教授は新製品の悪用を恐れた.モルヒネより強力な薬利効果があるからだ. 動物実験は終わっているが,人体実験は未だだった. ここで男はとんでもないことを言い出した.
男「ところで岩田先生.今日ご足労願ったのは,この新しい麻酔薬の研究を, 我々の元で完成品にしていただきたいということなんですよ.」
大量生産しろというのだ.男達は検察官ではなかった. 拒否する岩田に男は,亡くなった妻のことで色々と物入りだろうから, 報酬は充分に考えると言ったが,岩田は拒否した. そこで男達は例の新薬を岩田に注射してしまった.だが薬は効き過ぎ, 岩田は死んでしまった.その晩,男達は岩田の死体を海へ投げ込んだ.

調査開始

早速ゴッドはサファリを屋敷に呼び出した.
サファリ「今日は何をご馳走していただけるんでしょうか? 私は毎回これが楽しみでして.」
?女が食事を持ってきた.
?女「大変長らくお待たせしました.」
ゴッド「ご苦労さん.」
今日のご馳走は玉葱をスライスしたものだった.
サファリ「玉葱?」
ゴッドは玉葱を食べた.
ゴッド「うーん.実にうまい.うん.結城君.遠慮なくやりたまえ.」
サファリ「はあ.」
呆気に取られるサファリにも玉葱が出された.
サファリ「あのー,今日はこれだけなんでしょうか?」
ゴッド「これだけなんでしょうかって,君ー.野菜を馬鹿にしちゃいかんよ. ん! 野菜は神秘そのものですよ.一粒の麦ーもし死なずば…」
サファリ「お言葉ですが,麦も野菜の仲間なんでしょうか?」
ゴッドは苦笑した.
ゴッド「ま,ともかく, この野菜は地中のあらゆる栄養素を直接私たちに届けてくれる. あーん.ビタミン,ミネラル,カルシウム.うん.エトセトラ,エトセトラ. 特にこの玉葱はだな…」
ふとゴッドがサファリを見ると,サファリはハンカチで目を拭いている.
ゴッド「そんなにうまいか?」
サファリ「いえ.あの.この玉葱の香りが目にしみまして. どうも失礼しました.」
ゴッド「そこなんだよ,そこ.」
サファリ「そこ? どこでしょうか?」
ゴッド「その玉葱の刺激.これはね, チオアルデヒドハイドって言う成分の働きによるもんなんだが, 実はこの玉葱の仲間に, ある種の植物にある種の化学反応を起こさせることによって, 全く新しい種類の麻酔薬を作ることが可能とされとるんだ. この新薬はだな,モルヒネよりも強力で,しかも安く手軽に作ることができる.」
ゴッドは封筒を取り出した.
ゴッド「これ見たまえ.」
サファリは封筒の中の資料を見た.

サファリがタイガーキャブに戻った.
サファリ「仕事だ.」
クレイ「オショウは?」
ジャッキー「出張中.」
クレイ「じゃあ,3人で山分けだ.」
アジトでサファリが指令を説明した.冒頭で殺された岩田は38歳. 前前日に東京湾で水死体となって発見された. 岩田は死んだ妻まちこの長期にわたる療養費捻出のため, 研究費の一部を着服した疑いがもたれており, 警察ではそれを苦にしての自殺と断定した. 岩田の所属していた東都農大品種改良グループが新しい麻酔薬の原料を発見した. サファリは一人の男の写真をスクリーンに映した.山本まさお58歳. 元東都農大教授.新麻酔薬の原料を発見した品種改良グループのリーダーだった. しかし化学の進歩は人類の悪魔の思想を育てることになると判断し, 新麻酔薬の研究中止を命じ,現在は引退して東都農大付属農業研究所で, 無農薬野菜の研究に没頭していた.
クレイ「よっしゃ.このおじいちゃん,俺が引き受けましょう.」
さらにサファリは岩田の娘で中学3年生のけいこの写真をスクリーンに映した. 死んだ岩田の一人娘で岩田の死後近所の主婦がとりあえず面倒を見ていた. 岩田の死が自殺でなければ,けいこが何か知っているかもしれない. ジャッキーがけいこに当たってみることにした. こうしてオショウ欠席のままで捜査が始まった.

クレイは東都農大付属実験農場で山本に会った.山本は野菜の世話をしていた. だが山本は例の研究のことを話そうとはしなかった.仕方なくクレイは帰った. ジャッキーは岩田の家を訪れたが,誰もいなかった.近所の主婦の話では, 前日に沖田と名乗る人物に引き取られていったという. 沖田は岩田の大学の先輩で農政省の役人だと言っていたと言う. そこでサファリが「月刊21世紀への農業」編集部の者と称して農政省を訪れた. 沖田は農政技官だった.沖田は岩田の2年先輩だった. 岩田の死によりけいこが天涯孤独の身になり, それまで岩田と親戚づきあいをしていたので,けいこを引き取ったと言う. サファリは岩田が大学の研究費を横領していたことを知っていたかと聞いた. 沖田はそのことを知っていた.岩田の妻は治療費のかかる難病だった. 岩田は立派な人間だったが気が弱いのが欠点だと沖田は言った. 続けてサファリは新麻酔薬のことを持ち出したが沖田は知らないと答えた. 兄弟みたいに付き合っていた沖田に岩田が話さないのはおかしい, とサファリは言い,さらに, 農政技官の沖田が岩田に対して圧力をかけやすい立場にあったのではないか, と聞いた.沖田は血相を変えて怒った.サファリは電話を借りたいと言い, 電話をかける振りをして盗聴機を仕掛けた.そして去って行った.

アジトで3人は調査結果を報告.サファリは沖田が何か知っていると睨んだ. クレイもサファリも山本や沖田の反応から新薬の存在を確信した. さらにクレイは松永えいじという男の写真をスクリーンに映した. 彼の年齢は35歳で東都農大技師. 松永は山本や岩田と同じ品種改良グループの一員だった. グループ解散後は研究室に閉じこもって穀米の研究に没頭していた. それを受け,サファリは松永も見張る必要があると判断した. そこへ沖田に電話を使っているという信号が入った.早速盗聴開始.
女(桜井浩子)「はい,小宮山です.」
沖田「沖田です.今晩,会えないかなあ.」
小宮山の妻「急なのねえ.今日はお客さんが来るのよ.」
沖田「じゃあ,明日は?」
小宮山の妻「明日ならいいわ.何かあったの?」
沖田「うん.ちょっと妙な動きを感じたんでね.」
小宮山の妻「どんなこと?」
沖田「詳しいことは明日会った時に.じゃあ,3時にいつものところで.」
小宮山の妻「3時ね.じゃ.」

岩田の家から例の二人組が出てきた.早速クレイが尾行開始. 男達はあるマンションの3階の部屋に向かった.
クレイ「探偵屋さんね.」
男達は根津興信所と書かれた看板がドアに貼られた部屋に入ったらしい. 一方,ジャッキーは岩田の研究室で働いていたと称して, 学校から出てきたけいこに接触した.沖田も沖田の妻も優しくしてくれると言う. ジャッキーは花束をけいこに渡した.その頃,サファリは沖田を尾行. Hotel OZというホテルに沖田が入るところと, 小宮山の妻らしき女性の顔を確認した.
サファリ「なるほど.昼下がりの情事か.」
沖田と小宮山の妻は情事を開始.情事終了後, 沖田は偽記者(サファリのこと)が来て例の新薬のことを聞いたことを話した. 沖田と小宮山の妻は例の新薬で儲けることを考えていた. 沖田は「小宮山さんに頼んで二,三百万回してくれないかな.」と頼んでいた. また相場に回すつもりらしい.その代わりに沖田は情報を流していたのだ. ホテルから小宮山の妻が出てきたところへすかさずサファリが登場. 松涛にある屋敷まで行った.屋敷の主は小宮山孝二(根上淳). 早速サファリがアジトで報告した.小宮山孝二の年齢は60歳. 彼は関東では名の通った総会屋だが,商法改正後商売がやりにくくなり, 新しい麻薬に手を出して来たらしい. 沖田と小宮山の後妻あつこは高校の同級生で若い頃同棲していた仲だ. あつこが銀座のクラブにいた頃,小宮山と知り合い,結婚したというわけだ.

さて,あつこは小宮山が金策を願っていたことを伝えた. 小宮山は時間がかかりすぎるので渋っていたが,翌日に金を振り込むことにした. 翌日,根津興信所の連中が山本のところへやって来て新薬の件を話せと脅した. 山本は蹴り倒されたが,それでも話さなかった. 一方,ジャッキーはあつこが通っているエアロビクスクラブに潜入し, あつこに接触した.タイガーキャブへ電話したジャッキーはサファリの指示で, 6時に六本木のマギーへ行くことになった.
サファリ「クレイ,お前の出番だ.」
クレイ「わかりましたよ.」
そこへ黒いつなぎを着て黒いマスクを被った人物が乱入した. その人は細長い包丁を持っている.サファリもクレイも念のため,後ずさりした. だがしばらくしてサファリはその人物のマスクを脱がせた.
?女「あら,わかりました?」
サファリもクレイも予想が的中して呆れた顔.
?女「強盗の格好でお金を運ぶなんていいアイデアでしょう. これが皆さんの経費とギャラです.どうぞ.」
サファリ「はい.」
サファリは包みを受け取った.

その晩.ジャッキーはディスコのマギーへ行った. 音楽はマリアがエアロビクスをしているときによくかかっていた曲だ. そのディスコにあつこも来ていたのだ. あつこの前でチンピラのけんちゃんに扮したクレイがジャッキーに薬を要求.
クレイ「松永さんによろしくね.」
クレイは薬を「打って」去って行った.すかさず,あつこがジャッキーに聞いた.
あつこ「松永さんって誰? 言わないんならいいわよ.警察に今のこと話すから. いいのね,警察に話して.」
ジャッキー「兄貴の友達で東都農大の松永先生.」
あつこ「東都農大の松永.」
ジャッキー「お願い,誰にも言わないでね.」
そう言ってジャッキーは去って行った.引っかかったあつこは小宮山に報告. 小宮山は沖田に探らせるよう命じ,沖田は根津に調べさせると答えた. 早速松永に冒頭の二人組,すなわち根津達が接触した. 根津達は東京地検の者と称してあの時の建物に松永を拉致した. 地下室に根津達が松永を連れて入ると
サファリ「根津.猿芝居はその辺でやめとくんだな.」
クレイもグローブをはめて待っていた.
クレイ「松永さん,こっちに返してもらいましょうか.」
根津「なにもんだ,お前達は.」
サファリ「正義の味方とでも言っときましょうか.」
根津「ふざけんなよ,この野郎,おい.」
と言うやいなや,根津達はクレイに殴り倒された. 松永はサファリ達に協力して囮になったのだ.
サファリ「クレイ,トラトラトラだ.」
クレイ「了解.」
タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

小宮山の屋敷にジャッキーがやって来た.出てきたあつこに, 松涛公園で松永が会いたいとジャッキーは答えた. あつこは沖田のところに電話.沖田は根津から電話がないことに不審を抱いたが, 行くことにした.ジャッキーはあつこを連れて「松永」に会った. だが彼はサファリの変装.サファリは例の新薬の話を持ち出した. 騙されたあつこはサファリの話に乗ってしまった.
あつこ「ねえ,松永さん.あなた,新しい麻酔薬の製造に成功したって本当? さっき,あの女の子が言ってたけど.」
サファリ「俺,金が欲しいんだ.大金がね.」
あつこ「あなた,あたし達の仲間になってくれるわね? 報酬はいくら欲しいの? 5千万? それとも1億? あたし,小宮山に話して, あなたの欲しいだけのお金を用意させるわ.ねえ,いくら欲しいの?」
サファリは場所を変えて会おうと答えた.そこへ沖田が現れた.
沖田「違う.そいつは松永じゃない.」
あつこは麻酔薬を染み込ませたハンカチを口に当てられて眠らされ, 逃げ出した沖田もクレイに殴り倒された. そして小宮山総業にいる小宮山の元をサファリとクレイが訪れた.
サファリ「小宮山孝二さんですね.東京地検特捜課の者です. ちょっとご足労を.」

さて下校するけいこのところへ友達がやって来た. どこかのお姉さんが手紙を渡してくれてと言うのだ.
サファリの声「あなたのお父さんを陥れ, 死に追いやった悪党共のハンギング・パーティを開きます. 是非ご出席ください.」
日時は10月20日土曜日午後3時から.場所は東京地方検察庁玄関前. 地下鉄霞ヶ関駅が最寄駅だ.

大胆にもサファリとクレイは東京地方検察庁の中に小宮山を連れて行った. そして階段を上がって行った.廊下でジャッキーが清掃員に扮して掃除している. ある部屋にサファリとクレイは小宮山を招きいれた. すかさずジャッキーが「使用禁止」の貼り紙をした.
サファリ「小宮山さん.洗いざらい喋ってもらいましょうか.」
小宮山「そんなこと言われたって, わしには何のことやらさっぱりわからんねえ.」
クレイ「とぼけんな! ネタ全部わかってんだよ.」
サファリ「こんなものが特捜課に送られてきましてねえ.」
サファリはテープを再生した.
あつこの声「ねえ,松永さん.あなた,新しい麻酔薬の製造に成功したって本当? さっき,あの女の子が言ってたけど.あなた, あたし達の仲間になってくれるわね? 報酬はいくら欲しいの? 5千万? それとも1億? あたし,小宮山に話して, あなたの欲しいだけのお金を用意させるわ.ねえ,いくら欲しいの?」
さすがに小宮山の表情が変わった.
サファリ「これはあなたの奥さんの声に間違いありませんね.」
小宮山「あつこ!」
小宮山はテープを奪い取ろうとしたが,サファリに邪魔された.
サファリ「大物なら大物らしく潔く往生したらどうなんです?」
小宮山は怒りで震えていた.そこへ職員がやってきたが, サファリは取調べ中だと言ってごまかした.
サファリ「さあ小宮山さん.本当のことを喋ったらどうです?」
小宮山はタバコを吸ってこう言った.
小宮山「実はこのことを最初に持ち込んだのは農政技官の沖田だ. あいつは悪い奴でねえ, 東都農大の山本教授グループが新しい麻酔薬を発見したことを知ると, そのときのグループの一員である岩田助教授を脅迫しようと, 根津と南雲を使って岩田助教授を拉致し,監禁した.」
テープに録音されているとも知らずに小宮山はぺらぺらと喋っていた. その頃,東京検察庁の玄関前にクレイがトラックを止めた.
小宮山「これが真実だ.」
サファリ「ご苦労さん.今夜はゆっくり拘置所で休んでもらいましょ.」
小宮山は麻酔薬を染み込ませたハンカチで口を押さえられ,眠らされてしまった.

さて気がつくと小宮山達5人はは両手を縄でつながれていた. 彼らはクレイが止めたトラックの荷台の中にいたのだ.
クレイ「さ,どうしましょうか?」
サファリ「まずは,これだ.」
幕が開けられ,悪党達がさらされた.
サファリ「お目覚めかな,皆さん.もっといい景色を見てもらおうか.」
トラックの荷台が傾けられた.悪党達は縄につかまり,やめろーと叫んだ. この仕掛けと似たものをその前も見たことがあるぞ. そのときに比べれば大した高さではない.それはともかく,それを山本,松永, けいこも見た.
サファリ「ここに小宮山の自白テープがある.聞いてもらおうか.」
サファリがテープを再生した.小宮山の声がスピーカーから響く中
沖田「小宮山さん,あんた,なんてことを.出鱈目だあ. 最初に話を持ってきたのはあつこなんだあ.」
あつこ「嘘よ.あなたじゃない.」
沖田「主犯は小宮山だ.小宮山があつこを使って俺を巻き込んだんだあ.」
小宮山「いい加減なことを言うな.博打狂いの貴様が借金返済のために, 仕組んだ仕事じゃないか!」
沖田「一番の悪党は小宮山だあ.」
小宮山「人殺しを命令したのは貴様じゃないか.」
沖田「俺は知らん.あれは根津達が勝手にやったことだ!」
根津「沖田さん,何てこと言うんだい.」
南雲「貴様,岩田を殺せと言った.」
根津「そうだ.貴様は人殺しだ.」
沖田「命令を出したのは小宮山だあ.俺は何も知らん!」
悪党達がお互いをののしりあった.
クレイ「どうする?」
サファリ「もちろん.」
あつこ以外の縄が切られた.悪党達は滑り落ちてしまった. そこへパトカーと救急車が駆けつけた.

さてゴッドの屋敷ではテーブルに色々な野菜が並べられていた.
?女「御前,これが全国各地から集めました無農薬野菜でございます. ほら,長くて色のいいの.」
ゴッド「ほう.」
ゴッドは細長いナスを持って感心した.
?女「ねえ.」
ゴッド「なるほど.」
?女「いい艶でございましょう.」
ゴッドはきゅうりを持って言った.
ゴッド「科学よ奢るなかれ.なあ.しばし自然に帰るか.」
ゴッドはきゅうりをかじった.その頃,ジャッキーはバイクに乗り, クレイやサファリはそれぞれの車で帰って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp