第二十一回

サファリ,傭兵仲間と対決する.
美人秘書の(秘)情報が連続殺人を生む!

脚本:中村勝行 監督:帯盛迪彦

テクノ・Aという会社の総務課に速達で手紙が届いた. 宛先は全て新聞の字を切り抜いて貼り付けたもの. 社長が開封すると「あんたのビルにリモコン爆弾セットした 三じまでに1億円をよおいしないとドカンだ ミスターX」と新聞の字を切り抜いて貼られている紙が入っていた. 早速警察に通報された.そして駆けつけた警官が「リモコン爆弾」を発見. しかし,リモコン装置は精巧にできていたが中身は発煙火薬だった. その後,犯人からの連絡は無かった.

調査開始

さてサファリはイチョウの木の立ち並ぶ通りを歩いていた. そして落ち葉の下からゴッドの指令書を探し出した. 放送日は2月だったが,撮影されたのは秋だったのだろう. それはともかく,アジトでサファリが指令を説明した. これまでにミスターXと名乗る人物から脅迫状が送られてきた企業は5社. 要求金額はいずれも1億円. 要求を拒否すれば会社に爆弾を仕掛けるという脅迫をしていた. しかしその後,犯人からは何の連絡も無く,実際に行動を起こす気配も無かった. 警察は単なる悪戯か愉快犯の仕業だと見ていた. クレイは,本当に金を奪うつもりなら, その後犯人から必ず何らかの反応があるはず,つまり, 日時を指定して金を持って来いと要求したり, 約束を破ったら本当の爆弾を仕掛けるなどの動きがあるはずなのに, それが今まで何の連絡が無いことに不審を抱いた. 本当に金が目的なのだろうか.ゴッドも同じ意見だった. ただ世間を騒がして喜ぶだけなら脅迫状だけで充分目的を果たしているはずだ. 危険を冒してまで偽爆弾を仕掛ける意味は無いはずだ. だから,この一連の事件の裏には何か途方もない陰謀があるはずだ. それを聞いたジャッキーは
ジャッキー「いんぼう?」
クレイ「わかってるの?」
ジャッキー「失礼ね.わかってるわよ.どうせやらしい意味なんでしょう. もうみんなスケベなんだから.あたし,お茶入れてきます.」
突飛な事を言ってジャッキーは去って行った.呆気に取られる男3人.
クレイ「話に水差す奴だなあ.」
サファリが話を続けた.テクノ・Aは社長をはじめ経営陣は全て技術畑の出身で, コンピュータソフトの開発技術は業界でも高く評価されている. この数年,急速な成長を遂げたベンチャー企業だ.社長は三宅昌英. 専務は寺沢真二.技術開発部長は北山進. この3人は元々新栄電子産業という会社の有能な技術部員だった. ところが5年前に揃って退職願を出し,退職してしまった. これは新栄電子産業の笹島社長の独裁体制に対するクーデターだった. 三宅達は優秀な技術員をごっそり引き抜いてテクノ・Aを設立. それが今では新栄電子産業のシェアを脅かすほどの会社に成長していた. そこでクレイは新栄電子産業の笹島社長を見張ることになった.

クレイが笹島を見張っている頃, 車の中で一人の男(倉田保昭)がライフルを組み立てていた. そして狙いを定め,北山を射殺した.すかさず男は駐車場から車で逃走した. これを新聞でハングマンも知った.警察はこれをミスターXの犯行と睨んだ. つまり,会社側が犯人の要求に応じなかったために, その報復として幹部を殺されたというのが警察の見解だ. オショウは,金だけが目的なら人殺しはしないはずだと睨んだ. クレイの報告によると,北山が射殺された頃,笹島には特に変わった様子は無い. おそらく笹島の指示で誰かが動いているはずだ.サファリは手がかりとして, テクノ・Aに仕掛けられた偽爆弾を挙げた. リモコン起爆装置に特徴的な電子部品が使われていたのだ. リモコンの周波数エリアに他の電波が侵入してきて誤爆する場合があるのだが, それを防ぐために電波を選別するためのICが取り付けられていた. つまり,このICは一種の暗号解読装置になっていた.
オショウ「はー.偽の爆弾にしちゃ,手が込んでるねえ.」
サファリの話によると,中東の特殊工作部隊がこれと同じ技術を持っていた. さらにサファリは狙撃事件についても疑問を抱いていた. 白昼人ごみの中で確実に標的を撃ち殺すにはかなりの腕がいる. 爆弾の製造技術と射撃の腕.この二つを併せ持った人物となると, 殺しのプロ,しかも相当の実戦を積んできた男ということになる.
クレイ「まさか.」
サファリ「断言してもいい.こいつはプロの戦争屋の仕業だ.」
ジャッキー「戦争屋? ねえ,ねえ,それどういうこと?」
オショウとクレイはサファリが元傭兵であることを説明した.
ジャッキー「かっこいい!」
本当にジャッキーは能天気だ.
オショウ「心当たりでもあるのか?」
サファリ「ああ.レバノンのキャンプにもう一人日本人がいたんだ.」
オショウ「日本人?」
サファリ「ベイルートで別れたまま消息を絶ってしまったが, ひょっとしたらそいつが…」

サファリは原宿にあるあるブティックを訪ねた. そこの女主人(奈良富士子)がサファリが目星をつけた男, 田代英司(倉田保昭)の恋人なのだ. サファリは田代が日本に帰っているかどうかを聞いた. 女は近々帰ってくるという手紙がエルサルバドルから届いたと答えた. サファリは田代とは7年前に別れたきりなので再会を楽しみにしている, と言って店を出て行った.サファリは表参道に止まっていた3号車に乗り込んだ. サファリは待っていたオショウに,田代が日本に帰っている筈だと言った. オショウはそのまま張り込みを続けることにした. 早速女が店から出てきた.サファリはクレイに無線で連絡し, 女の乗ったタクシーを尾行させた.だが女はすぐにタクシーを降り, 反対車線で別のタクシーに乗り換えてしまった.尾行をまくためだ. そこでオショウが追いかけることにした. オショウとサファリは女の降りた場所を確認した. やはり田代の恋人,なつこは田代に会っていた.田代は用心深く潜んでいた. なつこは結城五郎が来たことを田代に伝え, 結城は田代が帰国していることを見抜いているらしいことも伝えた. なつこは田代が日本に戻ってきた理由を尋ねたが,田代は答えようとしなかった. なつこはもう危険な仕事はやめてくれと言って抱きついたが, 田代はあと1年待ってくれと頼んでいた. その頃,オショウは管理人に田代の車が当て逃げしたらしいと出任せを言い, 話をしながら田代の車に発信機を仕掛けた. 田代の次の標的は三宅か寺沢に違いない.アジトで
オショウ「どうかね.昔の傭兵時代の仲間と闘う心境は.」
サファリ「ま,複雑って言えば複雑だな.だが仕事だ.」

田代はなつこに自分とお揃いのペンダントを渡した.なつこは喜んだ. そしてなつこは帰って行った.出て行くなつこを窓から田代は見送っていた.

しばらく経って動きがあった.明治通りを渋谷方向へ動いていた. サファリはクレイに追わせたが,それらしい車は全然見えなかった. 田代はマネキンに発信機を付け替えたのだ. 急いでサファリは警察の者と称してテクノ・Aに電話した. 寺沢は出かけていた.商談が終わるのは2時半.もう間に合わない. サファリの読み通り,田代は寺沢を狙っていた. そして車に乗っていた寺沢は田代に一発で撃ち殺された.

サファリは田代とサシで会うことにした.オショウはハングガンを渡したが, サファリは返して出て行ってしまった.その頃,松崎(黒部進)という男から, 田代に電話がかかってきた.松崎は一両日中に方をつけて欲しいと伝え, 電話を切った.その直後,サファリが田代のマンションを訪れた. 田代はピストルを持ってドアを開けた.
田代「結城!」
サファリ「しばらくだなあ.」
田代「どうしてここがわかった?」
サファリ「とぼけるなよ.知ってたんだろう.女が尾行されていたのを.」
田代「まあ,入れよ.」
サファリは部屋の中に入った.
田代「俺に何の用だ?」
サファリ「田代,ここは戦場じゃないんだ.れっきとした法治国家なんだぜ.」
田代「説教しに来たのか?」
サファリ「いや.警告しに来たんだ.昔の仲間としてなあ.」
田代「警告?」
サファリ「これ以上,人殺しはさせん.」
田代「お前,いつから警察の手先になったんだ? まあいいだろう. 俺には何のことかわからんが,お前がそう言うんだったら, この場で捕まえてもいいんだぜ.ただし証拠は見してもらうがな.」
サファリは無言だ.
田代「結城.つまらん正義感は捨てろよ.俺達はな, 金のために命をさらして戦って来たんじゃないのか?」
サファリ「それとこれとは別だ.」
田代「いや,同じだ.どんな大義名分があっても人殺しは人殺し. 敢えて言うなら合法か非合法の違いだけだよ.」
二人はしばらく無言だった.
田代「俺はな,来週日本を発つ.アフリカのソマリアで一仕事待ってるんだ. それが終わったら,足を洗うつもりさ.そんときはゆっくり会おうぜ. 友達としてな.」
サファリ「友達として会うのは,おそらくこれが最後だ.」
田代「何?」
サファリ「今度会うときは刑務所の面会室になるだろう.」
田代「大した自信だな.だが,俺はそれ以上に自信がある. 何しろ現役の戦争屋だからな.」
田代はダーツを投げ,見事に的に当てた.
田代「まあ,いずれお前とは決着をつけるときが来るだろう. そのときを楽しみにしてるぜ.」
田代は右手を出した.だがサファリは握手もせずに去ってしまった.

レストランで田代が来週日本を発つと聞いてオショウは驚いた. あと3日しかない.田代はその間に三宅を殺すつもりだ. オショウは警察が身柄を保護して三宅が病院の特別室の中にいるので, それは無理だろうと言った.ということは田代を捕まえる機会もない, と慌てるオショウに,サファリは不審に思っていることを言った. 田代はハングマンの監視を見破ってまるで測ったように狙撃地点に到着している. そんな離れ業ができるのは, 事前に寺沢のスケジュールを知っていたからに違いない. ということは,テクノ・Aに内通者がいるのかもしれない.

その晩.クレイが見張っていると花売り娘…に扮装した?女がやってきた.
?女「すいません.銀座までやってください.」
クレイ「すいません.これ待ちメーターなんですよ.」
?女「そんなこと言わないで下さい.遅れると親方に叱られるんです.」
クレイ「親方?」
?女「私は哀れな花売り娘なんです.」
クレイ「(大声で)そう! それじゃあねえ, (車から降りて)俺がこの花全部買うから,ちょっと付き合わない?」
?女「え?」
クレイ「ホテル行っていいことしようよ.」
?女「困ります.やめてくださーい.」
クレイ「たまにはいいんじゃないですか,カメレオンおばさん.」
?女「あらー,わかりました?」
クレイ「わかんない方がおかしいでしょう.」
?女「あたくしは真面目にお仕事してるんですから,からかわないで下さい.」
いつもメンバーの邪魔してるのは誰だ? クレイは皮肉を言った.
クレイ「それはどうも御苦労様です.」
?女「皆様のギャラと経費でございます.それからゴッド様からのお土産, 沖縄の豚の耳.」
クレイ「豚の耳!」
?女「元気が出ますわよ.じゃ,よろしく.」
去って行く?女を見ながら
クレイ「もう若作りして.やり過ぎなんだよ.」
また張り込みを開始した.すると女秘書がタクシーを拾いに出たところを目撃. すかさず,クレイが登場し,秘書を乗せて赤坂へ向かった. 秘書は「ホテル ギンモンド 東京」の前でクレイの車を降りた. 秘書は先程田代に電話した松崎と情事を繰り広げた. 松崎は秘書をたぶらかしてスケジュールを探り出していたのだ. 松崎は元総会屋で新栄電子の笹島とは10年来の付き合いだ. アジトでクレイから聞いたオショウ達はからくりを見抜いた. 情報を流したのは秘書のあさだけいこだ. そこでサファリはあさだを使って田代を引っ掛けることにした.

まずオショウが医者に化け,看護婦に化けたジャッキーを連れて, 三宅の篭っている病院へ潜入した.そして三宅の病室に入った. すかさずあさだから松崎に,三宅が病院を出て湯河原の別荘へ行く, と連絡が入った.3時になった.サファリはハングガンを持ってアジトを出た. 病院の前のビルの屋上から三宅を狙う田代.そのとき
サファリ「三宅社長は出てくるわけはないぜ.」
田代が振り向くとサファリがいた.田代はライフルを持ち, サファリはハングガンを持ち,睨みあった. そして田代はハングガンによってライフルを撃ち飛ばされてしまった. 田代は逃げようとしたが,サファリに追いつかれてしまった. そして田代とサファリはナイフで格闘を開始. 激しい白兵戦が続いた後,田代はビルの中に入って逃走. サファリは非常階段を降りた.車で逃げる田代をサファリは虚しく見送ったが, ペンダントの破片を発見した.マンションに戻った田代は松崎と会った. 三宅殺害に失敗したことを田代は報告し,手を引くといった. だが松崎は納得するはずがなく,田代を撃ち殺してしまった.

その晩.採石場で田代の死体が発見された. 次の日.歌舞伎座の前で朝日新聞を買ったサファリもそのことを知った. 慌ててサファリは1号車に戻り
サファリ「緊急指令トラトラトラ.」
タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

笹島のところに松崎がやって来て話をしていた. 幹部二人を殺したので80%成功だと笹島はほくそ笑んでいた. そのとき,明かりが消えた.そしてクレイ,オショウ,サファリが登場.
笹島「何だ,貴様は.」
松崎「誰だ,貴様ら.」
笹島「な,何者だ.」
サファリ「ワイルドキャット.貴様達を討伐に来た.」
笹島「何.」
松崎「ふざけやがって.」
2人は呆気なく倒されてしまった.

なつこの店に手紙が届けられた.手紙の中にはペンダントの破片も入っていた. なつこはペンダントの破片を握り締めた.
サファリの声「本日午後3時,新宿三井ビル505号広場に来られたし. 田代英司氏を殺害した犯人に社会的制裁が加えられます.」
なつこは自分のペンダントも握り締めて涙を流した.

というわけでここは新宿三井ビル505号広場.
サファリ「さーて.これから面白いゲームを始めよう. その木箱には布団乾燥機の熱風が送り込まれる仕組になっている.」
笹島と松崎はその木箱の中に入れられ,頭だけ出ている状態になっていた. この仕掛け,どこかで見たような気がするぞ.
サファリ「貴様達の犯罪行為を洗いざらい告白すれば直ちに熱風を止めてやる.」
ちなみに「布団乾燥機」には下から順に青地に白字で「ギルティー」, 緑地に白字で「低温」,赤地に白字で「高温」と書かれた電飾看板がついていた.
サファリ「それを拒否すれば木箱の中の温度がどんどん上がり, やがて貴様達は脱水症状を起こし,ミイラのようにかさかさの体になる. 名づけて人間燻製マシン.」
それは燻製とは違うのではないか?
サファリ「スタート.」
スイッチが入れられ,熱風が送り込まれた.野次馬が群がる中, 低温のところから高温のところにランプが切り替わった.
松崎「ちきしょう.誰がこんなこけ脅しに乗るものかあ!」
笹島「それにしても熱いなあ.」
温度が300度近くに達した.悪党達は汗だくだ.どんどん野次馬が集まってきた.
笹島「駄目だ.わしゃ,もう我慢できん.」
松崎「社長.頑張ってください.」
そういう松崎の顔も苦痛にゆがんでいた.
笹島「止めてくれー.止めてくれー.」
松崎「社長.」
笹島「わしは何にも知らん.本当だ.松崎が勝手に殺し屋を雇って, テクノ・Aの幹部をやったんだあ.」
松崎「嘘だあ.何もかも笹島社長の差し金なんだあ.ちきしょう.」
笹島「お前が勝手にやったんじゃないか!」
松崎「社長もやったんじゃないかあ!」
サファリ「田代を殺したのもお前達だったんだなあ.」
笹島「松崎だあ.松崎がやったんだあ.」
これをなつこも聞いた.
松崎「違う.社長だ.仕事が終わったら奴を消せって言ったのは, 社長なんだあ.」
悪党達は熱さでうめき声を上げていた.
笹島「水を,水をくれえ.」
ジャッキー「水をくれって.」
クレイ「どうする,オショウ.」
オショウ「御仏の慈悲だ.」
サファリ「たっぷりやるか?」
オショウはうなずいた.そして上から悪党達に大量に水がかけられ, 悪党達はずぶ濡れになった.それを見てハングマンは去って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp