第六回

偽装殺人のからくりを暴く.
人材バンクが殺人犯を仕立てる!

脚本:柏原寛司 監督:永野靖忠

調査開始

サファリが客を降ろすと無線が入った.
オショウ「現在地を教えてください,どうぞ.」
サファリ「日比谷公園の前だ,どうぞ.」
オショウ「ちょうどよかったあ.そろそろトイレ行きたい頃じゃないかなあ.」
サファリ「トイレ?」
とにかくサファリは日比谷公園のトイレに入り, タンクの上に置いてあったゴッドの指令書を取ってタイガーキャブに戻った.

アジトでサファリは指令を説明した.1週間前, 原子炉汚職で名前のあがった宮田代議士が釈明の記者会見を終え, ビルを出てきたところを暗殺された.狙撃地点は向いのビルの屋上. 狙撃した田畑博己は, 非常階段を使って裏道に飛び出したところを車に跳ねられて死亡. 田畑を跳ねた車は発見されていない.警察は田畑の単独犯行と見ていた. 田畑は2ヶ月前に宮田が経営する建設会社を首になっており, 友達に宮田を殺してやると言っていた.それに田畑は傷害で前科二犯. ゴッドのつかんだ情報では, この事件の裏には大東亜興業会長の桃井こうきち(田中明夫)がいるという. 桃井は戦時中軍部と組んであくどく儲け, 戦後も政治家を手玉にとって私腹を肥やしてきた.大東亜興業をはじめ, 桃井が経営する会社は十数社に及んでいる. ありあまる金を動かしてはまた儲けるフィクサーだ. 桃井は原子炉汚職にもかんでいた.だから狙撃した田畑が殺されたのも気になる. さらにサファリはテレビ局が撮影したビデオを見て, ある事実に気がついた.発見されたライフルの指紋, 屋上に残された薬莢から警察は田畑の犯行と断定した.しかし, テレビカメラが狙撃の瞬間を撮った時, 田畑がいた階はライフルのある屋上とは別の階だったのだ.

ハングマンは実際に現場を検証してみた. ライフルの地点から田畑のいた地点を結ぶと, 宮田代議士を田畑が狙撃したときとほぼ同じ直線になる. サファリの推理はこうだ.田畑をあそこに立たせ,本当の狙撃者が宮田を撃った. そして驚いて逃げた田畑を車で轢き殺し, 凶器のライフルに田畑の指紋をつけて横に置いた. かなり場数を踏んだ連中の仕業に違いない. サファリは桃井の周辺を洗うことにした. オショウ達は田畑の恋人のかまたみどり(賀田ゆう子)を洗うことにした.
オショウ「あ,美人だ.よろしく.」
オショウはクレイに写真を渡した.
クレイ「俺?」
オショウもサファリもうなずいた.

大東亜興業の向いのビルからサファリは桃井の部屋を覗いた. 桃井は次の標的を男達(宮口二朗ら)に渡し, 続いて田畑の恋人が週刊誌に浅井のことを話したことを伝えた. 桃井は原稿の段階で抑えたのだが,田畑の恋人の存在は危険だ. 桃井は次の仕事の半金を男達に渡した.早速サファリは男達の前に登場.
サファリ「どちらまで?」
男(宮口二朗)「六本木だ.」
サファリ「わかりました.」

その頃,かまたは田畑と一緒に写っている写真を見て悲しみに暮れていた. テレビにはレッツゴー三匹の漫才が映っていた.そこへ電話がかかってきた. 週刊ドキュメントの記者と称していたが,電話をかけてきたのはあの男達の部下. 犯人は田畑ではないと思うので話を聞かせて欲しいと言う男の言葉に, かまたはまんまと騙され,会う約束をしてしまった. さてサファリは男のマンションへ男を連れて行った. 帰ってきた男の所へ浅井人材サービスの浅井(小島三児)から電話がかかってきた. 男の名前は那須.那須は浅井にどこをほっつき歩いてたんだと怒り, 用件を聞いた.那須は急ぎの仕事が入ったこと, そして田畑の恋人が浅井のことを田畑から聞いていたことを伝えた. その会話を電話線からサファリが盗聴していた. 早速サファリはタイガーキャブにいるオショウに無線で連絡を入れ, クレイにかまたの身柄を守るように伝えろと指示した.その頃, クレイはかまたをうまく乗せ, かまたと男達の待ち合わせ場所であるスターホテルへと運んでいた. 戻ってきたジャッキーからそのことを聞いたオショウは早速クレイに無線連絡. クレイ達の目的地を確認し,サファリに連絡した. かまたを降ろしたクレイは無線で連絡を入れ, かまたが命を狙われていることを知った. 地下駐車場で那須の部下岡部がかまたを車に乗せた. 血気にはやって追いかけようとするクレイ.とそのとき
サファリ「乗れ.」
クレイ「命狙われてんだろう,みどりちゃんは.」
サファリ「いいから乗れ.」
クレイ「乗れ?」
岡部の車は発進した.慌ててクレイもサファリの車に乗って追跡. 岡部の車の中でかまたは麻酔薬を染み込ませたハンカチで口を塞がれてしまった.
クレイ「ほれ見ろ.どうするんだよ,みどりちゃん殺されちゃったらよ.」
サファリ「エーテルで眠らせただけだ. 死体が発見されないような場所で始末するんだろう.」
クレイ「そこで助けるんだったら,さっき助けたって一緒じゃないかよ.」
サファリ「助けるだけなら,いつでもできる.」
クレイ「いちいち気に障るなあ.一体何考えてるんだ,あんた.」
サファリ「後のことを考えてるんだ.」
クレイ「後のこと?」
サファリ「そう.」
岡部の車はスクラップ工場に連れてこられた.
クレイ「あんたの考えてる後のことってのはよう,葬式の日取りなのか?」
サファリは黙って車を降りた.かまたは車に乗せられた. 車はフォークリフトでプレス工場へと運ばれていく.
サファリ「俺が合図したら,この電源を切れ.」
そう言ってサファリは出て行った.車がプレス機に置かれ, 岡部がスイッチを入れた.プレス機の鉄板が車の屋根へ向かって降りていったが, なかなかサファリは合図しなかった.焦るクレイ. 鉄板がボンネットに達する直前にクレイは合図した. 驚く岡部達.電源を岡部達が見に行った隙にサファリはかまたを車から降ろした. そして岡部達は電源を入れ,車が潰れるのを見届けた.

かまたが気がつくとそこはホテルの一室だった.中にはハングマンがいた.
かまた「誰です,あなた達.」
クレイは岡部達に殺されかかったところを助けたと言った. そしてオショウは宮田代議士暗殺事件を調べていると言い, 田畑がダミーで殺されたと見ていると言った. そして岡部達に命を狙われている理由を尋ねた.
かまた「彼とお店を持とうと話していたんです. 二人で小さくてもいいから喫茶店をやろうって. でもなかなかお金はたまらないし,彼も焦ってたんだと思います. 宮田代議士が社長をやっている建設会社をやめさせられてから, 遊んでましたから.傷害の前科が二つあったし, 就職もなかなかうまく行かなかったみたいで.2週間くらい前だったか,彼, 明るい顔で私の勤めてるお店に来て喫茶店の頭金が何とかなりそうだって. 浅井人材サービスとか言う会社の人が来て, いい仕事を紹介してくれたって言うんです.」
オショウ「浅井人材サービス?」
かまた「はい.誰にも話すなって言われたらしいですが, 船の仕事で2ヶ月間東南アジアを回って300万円くらいにはなるって. あの日も浅井さんに会うって言って出かけていったんです.」
クレイ「宮田が殺された日か?」
かまたはうなずいた.
ジャッキー「そのことを警察には?」
かまた「話そうとしたんですけど,とりあってくれなくて.」
サファリ「君はしばらくここにいてくれ.奴らは君を始末したと思っている. その方が我々の仕事がやりやすくなる.」
去って行くサファリを見て
クレイ「なるほどね.それが後のことか.」
クレイも部屋から出て行った.

さて廊下に出たハングマンはおばさんの客室係と出くわした.
?女「お仕事,ご苦労様.他人に見られますと困りますので, 今日は客室係に変装しましたの.」
呆れる4人.?女は包みを取り出した.
?女「これがいつもの例のもの.」
サファリ「はあ.」
?女「それから,ゴッド様からのお土産の水戸納豆でございます.」
オショウ「あ,はあ.」
?女「あのう,何かリクエストございましたら仰ってください.」
オショウは?女に耳打ちした.それを聞いた?女は吹きだしてしまった.
?女「失礼致します.」

オショウの調べだと浅井人材サービスの従業員は浅井一人.いい加減な会社だ. サファリの調べでは那須ひろし36歳は, 5年前まで桃井のボディーガードをしていた.岡部と今井は那須の部下. 桃井が那須に命じ,那須が浅井に依頼して, 身代わりの田畑を探させて宮田を始末したと言うからくりだ. 実際に狙撃したのは那須だろう.那須は昔自衛隊の狙撃班にいたからだ. そんだけわかってりゃ十分だろうというクレイを制し, サファリは盗聴テープを聞かせた.
浅井の声「どんな男がよろしいんですか?」
那須の声「殺人未遂の逮捕歴があり,密輸の経験もある麻薬常習者だ.」
浅井の声「難しい注文ですねえ.」
那須の声「それで銭を取っているのではないのか,貴様.」
浅井の声「わかりました.探してみましょう.」
次の標的を探しているのだ.オショウとサファリはクレイを囮に使うことを発案.
ジャッキー「クレイ,適役じゃない.」
クレイ「何言ってんだ,お前は.」
クレイはジャッキーをこずいたが,渋々やることにした.

オショウは浅井人材サービスに忍び込み, 5インチのフロッピーディスクをすりかえた.余談だが,この頃, 3.5インチのフロッピーは高価で,しかも今よりも容量が小さかった.その翌日. 浅井はフロッピーに入っていたデータから 「金子正夫(24歳)」ことクレイに目をつけた. 早速浅井は交友関係者の「篠崎純一(45歳)」ことオショウと大久保の安宿で会い, 金子正夫の居場所を聞き出した.そして浅井はクレイに会い,仕事を持ち掛けた. それをサファリ達もつかんだ. ジャッキーはバイクに乗ってクレイをフォローしに出かけた. オショウの調べでは標的になりそうなのは何人かいる. まず銀竜会組長大原.銀竜会は元々桃井の世話で勢力を伸ばしていた. それが今年の春,関西系の千草組の傘下に入った. つまり桃井から寝返ったと言うわけだ.次にはた総業社主のはた. 彼は桃井のライバルだ.そして東京地検の検事杉村. 杉村は間違いなく桃井を追っている.この3人のうちの誰かだろう.

ジャッキーは無線でクレイにターゲット候補を連絡した. クレイはターゲットを番号で連絡することにした.1番が大原,2番がはた, 3番が杉村.そこへ車が来た.車に乗ってやってきたのは岡部と今井だった. 岡部と今井はクレイをボディーチェック.岡部はライターを発見した.そのとき, 岡部はライターを落としてしまった.その頃,那須は桃井に電話し, 杉村を翌朝狙うことを報告.密輸の捜査で芝浦へ行くところを狙うつもりなのだ. 一方,クレイも標的が杉村であることを立ち聞きして知った.その後, クレイは岡部と今井に言った.
クレイ「あんたらさあ,プロ野球の選手じゃ誰が好き? 俺は高木豊だなあ. 昔はさあ,長島なんかがよかったんだけど,あの背番号3ってのがいいんだよね. 3番.広島の3番は誰だっけ?」
だが無線機(ライター)の故障でジャッキーは話を聞くことができなかった.
クレイ「映画なんてのは好きかなあ.俺はオーソン・ウェールズだね. ほら,あのう,第3の男なんてのは見たかなあ.」
結局クレイからの連絡をジャッキーが受けることはできなかった. 岡部と今井に連れられて出てきたクレイにジャッキーは合図したが, クレイは合図の意味がわからなかった.車は発進. ジャッキーはバイクで追いかけた.余談だが, ジャッキーがバイクで追跡するシーンはこのシーン以外にあまりない. それは兎に角, 車の中でライターを見たクレイはやっと無線機の故障に気がついた. クレイはわざとライターを落とし, 拾いたいので懐中電灯を貸してくれと岡部達に頼んだ. そして懐中電灯を3回点灯させ,ジャッキーに合図.
ジャッキー「こちらジャッキー.ターゲットがわかったわ.杉村検事よ. 繰り返します.ターゲットは杉村検事.」
サファリ「トラトラトラだ.」
タイガーキャブの車は産業ロボットの操作により, 緑ナンバーから白ナンバーに変えられ,ボンネットから虎のシールがはがされ, 虎のエンブレムが屋根からはずされ,色も塗り替えられた. そしてハングマンは出動した.

ハンギング

かまたみどりが潜んでいる部屋に手紙が投げ込まれた.
サファリの声「田畑さんを殺人犯に仕立て上げ,殺害した悪党共の ハンギングパーティーが,開催されます.是非ご出席下さい.」
日時は10月31日金曜日午前7時から.場所は豊海冷凍倉庫街バース.

朝早く,オショウは浅井のマンションを訪れた.
オショウ「浅井さん,書留ですよ.書留ですよ.現金書留です.」
出てきた浅井は郵便配達ではなくオショウがいるので激怒.
オショウ「早朝からの入金,おめでとうございます.誰からだと思います? まあ,一服してください.」
そしてタバコに火をつけるふりをして眠らせてしまった. その頃,桃井と秘書がジョギングしていた.サファリは秘書を倒して入れ替わり, さらに桃井を殴り倒した.

さてクレイは仕事のことを話してくれと言っていた.
岡部「その前の道でなあ,もうじき事件が起きる.」
クレイ「事件?」
岡部「お前に目撃者になってもらいてえんだ.事件を見たらなあ, そこの非常階段を降りろ.俺達は来るまで拾い,警察へ行く. そこで見た通りのことを話せばいいんだ.」
クレイ「あ,そう.」
クレイは那須の存在にきがついた.そして岡部は非常階段を降りて去って行った. 車がやってきたのでライフルの狙いを定める那須.しかし様子がおかしい. なんと車に乗っていたのは桃井だった.
サファリ「ボスを撃つ勇気はないか.」
その声に那須が振り返るとサファリとジャッキーの姿が見えた.
サファリ「俺が代わりに撃ってやる.」
那須はサンダーブロウで倒された. そしてサファリは那須の代わりにライフルを構えた.車の中の桃井に
オショウの声「この車はリモコンで操縦してるから止めようと思っても無駄だ. このまま走ったらどうなると思う?」
運転席に座らされていた浅井は一生懸命ブレーキを踏んだが,車はとまらない.
オショウの声「桃井さん,那須君に頭を撃ち抜かれるよ.」
桃井「何の話をしてるんだ,貴様ー.」
オショウの声「じゃあ,行ってみるよ.」
ライフルがお見舞いされた.弾は当たらなかったが桃井は泡食って伏せた.
オショウの声「全てを話せ. 田畑を犯人にでっち上げた宮田代議士殺しの真実を.」
桃井「なんの話かわからん.」
オショウの声「話さないと本当に死ぬぞ.」
またライフルが撃たれた.さらに何発か撃たれた. やめろーと浅井と桃井が叫んだ. 異変に気づいた岡部と今井は非常階段を駆け上がったがクレイに倒された. 一方,車の中では
オショウの声「どうだ,話す気になったか.」
浅井「あたしは人間を探しただけだあ. そりゃ頼まれれば仕事だから人を探しますよ. 宮田の身代わりの男を探せと言われただけだあ.」
浅井の声はどこかのスピーカーからも大音量で流された. ライフルの弾により,車の窓ガラスは全て割れ,フェンダーミラーも外れ, ボンネットは開いてしまった.
浅井「助けてくれえ.全部話してるじゃないですかあ. 宮田代議士を撃ったのは那須さんだあ.それを命令したのは桃井さんだあ.」
桃井「黙らんか,貴様.」
浅井「私は殺しに関係ないの.助けてくれえ.」
浅井は泣き出したが桃井が吐かないので弾は撃ち続けられた. ついにドアまで開いてしまった.
桃井「撃つなあ,撃つなあ.戦争で生き残ったんだ.ここで死にたくない. わ,わしが,わしが那須に宮田殺しを命令したんだあ.撃つなあ.」
それを聞いたサファリは
サファリ「ギルティーだ.」
クレイがサンダーブロウをお見舞いした. 那須達の乗せられた車にもサンダーブロウが撃ちこまれ, 悪党どもは黒焦げになって警官に連行されて行った.
サファリ「さあ,行くぞ.」
ハングマンは去って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp