第二十六回

大往生信仰につけこんだ殺人事件を暴く
嫁の殺意・ポックリ寺の謎

脚本:山浦弘靖 監督:帯盛迪彦

ある日の朝.タミーがジョギングしていると, 元気にジョギングする老人(増田順司)にでくわした.
タミー「いつもながら.お見事な走りっぷりですわ.」
老人「ありがとうございます.でも,うちの者からは年寄りの冷や水だ, やめてくれってたびたび言われましてね.」
タミー「でも健康の秘訣ですものねえ.」
老人「はい.まあ会社を切り回すには体が第一ですから.」
タミー「まあ,社長さんでしたの?」
老人「社長って言ってもちっぽけな材木屋のいわゆるワンマン社長でしてねえ. あ,そろそろ戻らないと.あ,明日はジョギングの方は休みますから.」
タミー「お仕事の関係で?」
老人「いやあ.日帰りの小旅行です.」
タミー「旅行? よろしいですわねえ.」
老人「いやあ,あのポックリツアーですよ.」
タミー「ポックリツアー?」
老人「ほれ.年寄り達がポックリ死ねるように願をかけるツアーで, 今はやってるでしょう.私も死ぬときはぽっくり逝きたいですからねえ.じゃ, お先に.」
そう言って老人は去って行った.次の日. 老人は電極が中に入れられた水槽に両手をつけられていた. 三角頭巾をかぶった男がスイッチを入れると老人は苦悶の表情.さらに翌日. すなわち,タミーが老人と会った翌々日の朝.ジョギングしていたタミーは, その老人松本が座ったまま死んでいるのを見つけたのであった.

今週のよね子 その1

さて妙徳寺へオショウが戻ると一人の老女(千石規子)が座っていた. オショウは老女に声をかけた.
オショウ「おばあちゃん.こんなところで昼寝してると風邪ひきますよ.」
老女「ああ.こちらここの和尚様ですか?」
オショウ「ええ.そうですよ.」
老女「ああ.お待ちしておりました.ご祈祷お願いします.」
老女は深々と頭を下げた.
オショウ「ああ,よろしいですとも.で,何を祈って差し上げましょうか.」
老女「あたしが死ぬときにぽっくりと死ねるように御祈祷お願いします.」
オショウは困った.
オショウ「え? ポックリ死ねるように.」
老女「はい.うちの嫁はそりゃあ底意地の悪い女でしてねえ, 私がもし病気で寝たきりになったら, まあどんな酷い目に遭うかと考えただけでも,ぞーっとします. それで私が死ぬときは是非ぽっくりとね.」
オショウ「ちょ,ちょ,ちょっと,おばあちゃん.」
老女「はい.」
オショウ「ここはぽっくり祈願はやっておりませんが.」
老女「え? このお寺,ぽっくり寺じゃない.」
オショウ「は,は,は.おばあちゃん,それは勘違いですよ.」
老女は落胆した.
老女「ああ,そうですかあ.」
オショウ「あのねえ,おばあちゃん. 人間というものは普段から信心していればね,長生きもできますし, 死ぬときは仏様が大往生に導いてくださるわけです.ですから,一にも信心, 二にも信心,よろしいですかな.」
老女「ありがたい,ありがたい.南無阿弥陀仏.南無阿弥陀仏.」
そこへ
よね子「和尚様.」
オショウ「はいはい.え?」
オショウと老女が声のするほうを向くとよね子がやってくるのが見えた.
よね子「お帰りなさい.」
オショウ「ああ,奥さん,いらしてたんですか.」
よね子「お疲れになったでしょう.お風呂も沸いてございますの. ご飯の支度ももうすぐできますからね.」
オショウは困惑の表情.老女は怪訝な表情.
よね子「今夜こそ,ゆっくりさしつさされつ…」
老女「ちょっと,和尚さん.この人は何者ですか?」
オショウ「いやあ,うちのお檀家で主人が亡くなった気の毒な方です.」
老女「まあ,未亡人.いけませんよ,こんな人と付き合ったりしては. お体が汚れますねえ.」
老女が至極もっともと思われることを言うと
よね子「何ですって.和尚様,このおばあちゃんこそ何者なんですか?」
オショウ「いやあ,私は…」
よね子「和尚様,まさか年上の方にご趣味が変わったんでは?」
オショウ「馬鹿なこと言うんじゃありませんよ. この方,ぽっくり祈祷にいらした方です.」
よね子「ぽっくり?」
老女「嫁にね,いびり殺されるのはごめんですから.」
そこへヨガがやってきた.ヨガは遠巻きにこの様子を見物.
よね子「嫁に.底意地の悪いお姑さんに限って, よくそう言ってお嫁さん困らす方がいらっしゃるんです.」
オショウは苦い表情.ヨガは面白がって笑みを浮かべていた.
老女「まあ,あなた何ですって.」
よね子「おばあちゃま,おうちの方が心配していらっしゃいます. お帰りになさい.」
老女「あなたこそお帰りなさいよ.」
よね子「いいえ,あたくしは帰りませんのよ.」
老女「いいえ.私.」
よね子「暗くなったら…」
ついにヨガがオショウに声をかけた.
ヨガ「お願いします.」
オショウ「はいはい.」
オショウは喧嘩に明け暮れる二人を置いてヨガの方へ行ってしまった.
ヨガ「交通安全のお守りを頂きたいのですが.」
オショウはヨガを連れ出した.
ヨガ「オショウ,相変わらずもててますねえ.」
オショウ「冗談じゃないよ.そんなんじゃないよ.で,何の用だい.」
ヨガ「今夜0時.ゴッドのところへ集合.」
オショウ「Ok!」
ヨガは去って行ったが
よね子「私のお寺も同然なんです.」
オショウ「まだやってるよ.」
老女「お帰んなさい.」

仕事開始

さてゴッドのオフィスで.
オショウ「何.タミー,この仏はタミーのジョギング仲間.」
タミー「ええ.」
マイト「年寄りの冷や水って奴だなあ. ジョギングもいいが,ほどほどにしとかなきゃ.」
タミー「でも,このおじいちゃん,健康そのものだったのよ. それがぽっくりツアーに参加した翌日,ぽっくりと.」
オショウ「ぽっくりツアー?」
タミー「ええ.」
マイト「まさに願をかけたとおりになったわけだ.」
オショウ「いやマイト,それは違うんだよな. ぽっくり祈願ってのは何も速く殺してくれと頼んでるわけじゃないんだ. できりゃあ,長生き,できるだけ長生きして,で死ぬときぽっくり逝きたい, とこういう信仰だ.」
タミー「このおじいちゃんも別に死にたがってたわけじゃないわ. まだまだ元気で働きたい.そう言ってらしたのに.」
デジコン「医者には当たってみたのか.」
タミー「ええ.念のため.でも心臓麻痺に間違いないって.」
デジコン「それならいいじゃないか.」
タミー「だけど,どうしても引っかかるのよね.」
オショウ「しかし,仏は材木問屋の一経営者だ. 何も俺達が出ることはないだろう.」
とそのときドアが開いて
ゴッド「仏はその社長だけじゃない.」
ゴッドが現れた.
オショウ「と言いますと.」
ゴッド「実はなあ,このところぽっくり亡くなるお年よりの数が増えてるんだ.」
オショウ「陽気のせいじゃないですかなあ. お年寄りにはこの寒さこたえますから.」
ゴッド「ま,それもあるかもしれん. しかし,そのお年より達には一つの共通点があるんだ.」
マイト「共通点.」
ゴッド「そう.ぽっくりツアーだ.」
マイト「ぽっくりツアー?」
ゴッド「このツアーはあけぼの観光という, 新宿にある小さな観光会社が仕立てたもので, 日帰りで奥相模の浄土寺という寺へ参詣してぽっくり死ねるように祈願するんだ. しかし,このぽっくりツアーに参加したお年よりが, 次々と同じぽっくり病で死ぬというのはどう考えても腑に落ちない. 3ヶ月前にこのツアーが始まって以来,すでに5人だ.」
マイト「5人もですか.」
ゴッド「しかもその5人は揃いも揃って金持ちで元気なお年寄りばかりだ. これは偶然なんかじゃない.絶対に犯罪が絡んでる. 徹底的に調べてもらいたい.」

あけぼの観光は今日もぽっくりツアーを開催していた. 先日妙徳寺を訪れた老女塚田もツアーに参加していた. マイトとオショウがそれを見届けた. そしてぽっくりツアーのバスをデジコンが尾行した.バスは浄土寺に到着. そのとき,怪しげな僧が出てきた.さっそくデジコンが追いかけたが, 僧は森の中で立小便.その頃,塚田に僧(梅津栄)が声をかけていた.一方, デジコンは浄土寺の住職に事件のことを尋ねていたが,一喝されてしまった. ツアーは無事終了.塚田に声をかけた僧は, バスの運転手(きくち英一)に合図を送った.塚田の家はお菓子屋だった. バスの運転手は塚田の家を見届けて去って行った. 塚田は息子のかずおの嫁に安産のお守りを土産に持って帰った.

さてゴッドのオフィスで中間報告.
デジコン「やっぱりお寺の方はオショウに任せるべきだったよ. 住職に怒鳴られて散々さ.」
オショウ「コンピュータばっかりいじってるからそういうことになるんだよ. 信心心をもてよ.どうだ,この際,寺へまとまった金寄付するか.」
マイト「あけぼの観光社長拝は元大手観光会社の部長だった. 二年前に独立したんだが,業界では評判のいい人物だ.」
オショウ「相手もなかなか尻尾ださねえなあ.」
デジコン「保険の線は?」
タミー「ヨガと手分けして遺族に当たってみたんだけど, 保険金は全て受取人は遺族だし,事件に絡んだ臭いは全然しないわ.」
マイト「金が絡んでねえわけないなあ.」

松本商店にあの僧が現れた.それをタミーが目撃した.生前, 「佐山仙吉」は一口百万円の二口, すなわち二百万円を浄土寺に寄付するという遺言状をしたためていた. 遺言状の筆跡は松本のものに間違いなかった.未亡人は寄付に同意した. さっそくタミーが聞き込んだ.他の遺族も同様だったのだ. 僧は塚田のところにも現れ,寄付金の遺言状を書かせるために立ち寄った. 塚田は息子が外出しているので後で答えると言った. 息子の嫁は寄付金の件には大反対.僧が帰った後, 塚田のところにはわら人形が五寸釘で打ち付けられていた. さらに不吉なことに,下駄の鼻緒が切れてしまった.

今週のよね子 その2

塚田は妙徳寺へやってきた.
オショウ「何,寄付金?」
塚田「はい.それをねえ,嫁が断りましたら次から次へと恐ろしいことが…」
オショウ「ああ.そのことか.いや,わかりました. この寺にいれば安心ですからね.」
塚田「はあ,もう嫁の言うことなんか聞かずに寄付の申し込みしていれば, こんなことに…」
オショウ「おばあちゃん,おばあちゃん.寄付の申し込みはしてはいけません. いいですか.」
塚田「ええ,もう次から次へとこんなには…」
オショウは塚田の肩を持って慰めたが, そこへ「あのこと」しか頭にないよね子が登場した.
よね子「和尚様!」
オショウ「ん? ああ,ああ.」
よね子は塚田を突き飛ばした.
よね子「何をしているんですか.」
オショウ「奥さん,奥さん.」
よね子「またこのおばあちゃんをお部屋にあげてるんですか.」
あげるくらい良いではないか.
オショウ「落ち着いて,落ち着いて.落ち着いて.いいですか. このおばあちゃんは,今困ってるんですよ.」
よね子「この方が?」
オショウ「そう.そうなんです.そこであんたにお願いがあるんですよ. あたしねえ,急に京都の本山へ行かなきゃならないから, おばあちゃんのお世話をお願いしますよ.」
よね子「おばあちゃまの,お世話?」
オショウはよね子の手を握った.
オショウ「よね子さん.お願いします.」
これは効いた.
よね子「和尚様.あたくし,嬉しい.和尚様のお願いなら,よね子, 命に代えてもおばあちゃまのお世話いたします.」
よね子はオショウに抱きつこうとしたがオショウは素早くかわしてしまった.
オショウ「おばあちゃん,お聞きのとおりですからね. 息子さんには私からよく言っておきますから,お寺から一歩も出ちゃ駄目ですよ. いいですね.」
そして振り返って,オショウはよね子の手を握った.
オショウ「よね子,頼みますよ.」
オショウはよね子の頬にキス.
よね子「ああ.よね子って呼んでくださったのね.ああ.よね子,幸せ.ああ.」
よね子が自分の世界に浸っている間にオショウは去って行った.

あけぼの観光に変装した,オショウ,マイト,タミーが訪れた. ぽっくりツアーに参加したいというのだ. オショウは白髪のかつらに白いつけひげをつけて登場した. オショウは一万円札のたくさん入った財布から一万円を取り出し, ツアー代の7500円を支払った.社長室に古美術品があるのを見て, オショウは社長に見せたいと言って社長を連れ出した. その隙にデジコンとヨガが注文を受けたコンピュータを届けに来たと称して, 社長室に入った.そして隠し扉を開けて松本殺害に使用した装置を発見した. 水槽に電極が仕込まれており,感電死させるための装置だ.装置を見届けた後, デジコンとヨガは間違えたと言って帰っていった.その頃, 「オショウの屋敷」で.
オショウ「この壷は12世紀に景徳鎮で焼かれた青磁の壷です.」
拝「ほう.」
マイト「これはこのう,どっかのデパートで催された偽物展と違って, 我が家にあるものは正真正銘の本物でございます.あ,パパ. ニューヨークから電話があったんで, マヤ文明の例の美術品2億5千万で押さえました.」
そこへタミーがコーヒーを持ってきた.
タミー「遅くなりました.カフェロワイヤルに致しましたわ.」
社長「いい香りですなあ.」
タミー「あなた,そろそろ時間ですわ.」
オショウ「孝介,日経連の久保理事にはよろしくな.」
マイト「久保のおじちゃまね.わかった,パパ.」
拝は口を開けて驚いた.
オショウ「あれには私の後を継がせて貿易の方,やらしておりますが, まだまだ安心はできません.」
そこへ電話がかかってきた.
タミー「ちょっと失礼.はい.辻村でございます. はあ.おります.お父様,山川財団の会長様からです.」
オショウ「あ,そ.」
タミー「今参りますので少々お待ち下さい.」
オショウ「あ.もしもし.あ,山川さんですか.」
実は電話の相手はマイト.
マイト「どうだい,オショウ.まんまと引っかかったなあ. 奴さんしっかり信用したぜ.」
オショウ「は? 新しい記念館を.ああ.なるほど,わかりました. お手伝いさせていただきますよ.」
マイト「デジコンとヨガもうまくやったらしい.おお.」
オショウ「う,は,は.そりゃまた結構なことで.では節に.」
オショウは電話を切った.
オショウ「山川財団からまた寄付の申し込みじゃ. 新潟の方の山でも一つ売ってお手伝いしよう.」
タミー「それがよろしいですわ,お父様. 社会にお役に立てるなんて素晴らしいことですもの.」
拝はまんまと引っかかった.

さてヨガもオショウと同じ変装をした.
オショウ「姿形はねえ,どうにかなるもんだけど,喋り方,歩き方, こりゃむずかしいぞ.」
ヨガはかつらをつけた.そしてつけひげをつけた.
デジコン「いい男になってきたぞ.」
ヨガ「ああ,気持ち悪いなあ,おい.」
デジコン「我慢しろよ.楽しいぜ.オショウ,こんなもんでどうか.」
オショウ「あとは目の感じだな.よし.」
デジコン「目なんだよなあ.」
オショウ「どうだ.」
デジコン「さすが,オショウ.自分の顔よく知ってるよ.」

僧は塚田が姿を消したのを不審に思っていたが, 社長はオショウが引っかかったので問題ないといっていた. その頃,「オショウの屋敷」では.
オショウ「ぽっくりツアー作戦の成功を祈って,サルー.」
マイト「チンチン.」
タミー「乾杯.」
そこへデジコンがやってきた.
デジコン「お待たせ.完成したぜ.」
やってきたのはオショウと同じ姿に変装したヨガ.
オショウ「ありゃ.おう.」
マイト「ヨッ君,素晴らしい.」
オショウ「上出来,上出来.」
マイト「どっちがどっちだか全然わからねえ.ほうら,見てくれ.」
オショウとヨガは別室へ引き揚げた.
マイト「おいおい,素晴らしいなあ.才能あるぜ.」
デジコン「最高のできだ.」
そこへどっちかがやってきた.
どっちか「さあ,どっちだかわかるかな.」
マイト「どっちだい? あ,オショウだ.オショウだろう.」
オショウ「はずれ.」
全員大笑い.
デジコン「やった,やった.」

さて,オショウがぽっくりツアーに参加した. 浄土寺で例の僧がオショウに声をかけ,寄付の件を持ち出した. オショウは十口も寄付すると言ったので僧は驚いた. オショウは翌日遺言状をしたためて会社の方へ行くと答えた. その頃,ヨガは耐電圧の訓練を受けていた.次の日. オショウはあけぼの観光へ遺言状を持ってきた. 社長は僧の雲海によかったですなあと答えていた. オショウは立ち去ったが,途中でバスの運転手に捕まってしまった. だが捕まったのはヨガ.ヨガは例の装置にかかって「死んでしまった.」 そして拝達はヨガの「死体」を「オショウの屋敷」の玄関先に置き, 「辻村さん,大変ですよ.」と叫んで去って行った.
マイト「パパ.マイパパ.パパ.多美子.多美子.パパ.パパ.」
タミー「どうしたの,あなた.お父様!」
マイト「多美子,部屋へ運ぶんだ.速く.」
タミー「はい.」
部屋にはデジコンとオショウもいた.ヨガはポーズをとって復活. ヨガは仮死の術を使って死んだ振りをし,さらに電流に対抗するため, 絶縁皮膚をつけていたのだ.

ゴッドのオフィスでハングマンがゴッドにからくりを報告した.
ゴッド「すると,その雲海って言うのは 浄土寺と何の関係もない坊主だったのか.」
オショウ「はい.全くの偽坊主です.」
ゴッド「なるほど.これで悪党どものからくりは全てわかったわけだ. お年寄りの命をネタに金を稼ごうだなんて不届き千万だ. 同情の余地はない.徹底的に痛めつけてやれ.」
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

雲海はいけしゃあしゃあと遺言状を持って現れた. マイトは承知し,銀行へ一緒に行こうと言った.
マイト「取引銀行は日本銀行でございます.」
そして雲海はタミーに麻酔薬入りハンカチを口に当てられて眠ってしまった. あけぼの観光では拝と部下が雲海は遅いといらいらしていた. するとオショウの笑い声が響いた.
オショウ「こっち,こっち.」
声は例の装置の置かれた部屋から聞こえてきた. 拝がドアを開けるとオショウの後姿が.
拝「誰だ,貴様は.」
オショウは振り返りながら言った.
オショウ「騙したつもりが騙されたねえ.」
拝「貴様は何者だ.」
オショウ「地獄の一丁目からの使いですよ.」
拝はオショウに飛び掛ったが逆に倒され,部下もヨガに倒された.

さて妙徳寺にオショウが帰ってきた.
よね子「あら,お帰りなさい,和尚様.お疲れになりましたでしょう.」
オショウ「お二人ともお元気で何よりでした.」
塚田「ありがとうございました.」
オショウ「おばあちゃん,こんなもん,来てましたよ.」
塚田「まあ.」
白い封筒に入っていて数珠を握る手の描かれたシールで封をされた手紙, すなわち,オショウからハンギングパーティの案内状だった.
よね子「和尚様.よね子には何も下さらないの?」
オショウ「ちゃんと買ってきましたよ.へ,へ,へ.はい.」
よね子「まあ,嬉しい.」
よね子はキスしようとしたが,一生懸命オショウは制止した. でも仕方がないのでよね子の頬にキスした. その頃,塚田とみは案内状を読んでいた.
オショウの声「塚田とみ様 本日午後3時,あけぼの観光の前へご足労下さい. 老人の敵どもに天罰が下されます.」
松本の未亡人好江のところにも, タミーからハンギングパーティの案内状が届いていた.

さて,拝,雲海,拝の部下は運動着に着替えさせられ, ルームランナーの上で眠りこけていた.
マイト「起きろ.目を覚ませ.悪党ども.」
そこへハングマンが三角頭巾をかぶって登場した.
拝「誰だ,お前達は.」
マイト「立て!」
拝「ここはどこだ.」
オショウ「ぽっくり寺さ.」
雲海「ん? ぽっくり寺.」
オショウ「ああ.お前達みたいな悪党でもぽっくり死なしてもらえる, ありがたいとこだ.」
拝「いや,待ってくれ.何で俺たちはそんな酷い目にあわなきゃならないんだ.」
雲海「そうとも.我々は悪いことはしとらん. ぽっくりと死にたいお年より達に手を貸したやっただけだ.」
マイト「黙れ,赤鬼.」
赤い服を着せられていた雲海は滑ってこけてしまった.ちなみに拝は青い服.
拝「ちょ,ちょっと待ってくれ.」
マイト「黙れ,青鬼.」
デジコン「じゃあ,仕方ない.ぽっくり行っていただきますか.」
マイト「スイッチオン.」
オショウ,デジコン,ヨガはルームランナーのスイッチを入れた. 悪党達は強制的に走らされた.そしてハングマンは三角頭巾を脱いだ.
マイト「諸君.これから死のマラソンが始まる. 走って走って心臓が耐えられずにそのうちパンクする.」
オショウ「つまりぽっくり死ねると言うわけだ.さあ,漕いで,漕いで.」
デジコン「スピード,5キロアップ.」
タミー「Ok!」
タミーの操作でスピードが5キロ上がった.
デジコン「まだまだ.10キロアップ.」
タミー「Ok!」
さらにスピードが上がった.もう悪党はグロッキー寸前だ. 息が上がり始めた.
ヨガ「さあ,走れ,走れ.」
拝「うー,わかった.言う.言うから許してくれえ.」
マイトが合図したのでタミーがスピードを落とした.
マイト「あけぼの観光の社長拝,貴様から話してもらおう.」
拝「俺は,俺は金が欲しかった.だからぽっくりツアーを利用して. 年寄りの中にはぽっくり死にたがってる奴がたくさんいる. そんな年寄りに話を持ちかけて」
オショウ「さあ,雲海.」
雲海「はい.」
オショウ「お前の番だ.」
雲海「私は浄土寺の住職に成りすましまして寄付金の遺言状を書かせました.」
オショウは雲海を叩いた.
マイト「それで?」
拝「社長室の隣りの部屋で高圧電流を使って, 年寄りに心臓麻痺を起こさせて殺したあ.」
オショウの怒りが爆発する.
オショウ「貴様達は人殺しだ.」
拝「そうだ.俺達は人殺しだあ.」
部下「俺も人殺しだあ.」
雲海「そうだ.人殺しだあ.」
マイトはタミーからリモコンを奪い,スピードを上げた. そしてハングマンは去って行った.実は悪党達はあけぼの観光の前の小屋にいた. そしてさらされ,先程の自白が流された.その様子を塚田とみも松本好江も見た. 塚田はかけつけた息子と嫁にわびていた.その様子をオショウが見ていた. そしてパトカーと入れ替わりにオショウは去って行った. そこへマイトがやってきた.
マイト「パパ.パパ.」
オショウ「仕事終わってパパはやめてくれよ.」
マイト「優待券,優待券.」
オショウ「何の優待券?」
マイト「ぽっくりツアーの優待券よ.」
オショウ「この野郎.」
オショウはマイトを追いかけた.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp