第二十一回

会社乗っ取り組織の悪事を暴く
やわ肌を復讐に賭ける女

脚本:柏原寛司 監督:児玉進

今週のよね子.そして事件勃発

レストランでオショウがデジコンを相手にぼやいていた.
オショウ「参ったなあ,もう. あの女,俺と一緒に寺で暮らしたいって言うんだよ.」
レストランの外ではサングラスをかけた男が中の様子を伺っていた. 暢気なデジコンは
デジコン「暮らしたら?」
オショウ「冗談じゃない.あんなのと一緒に暮らした日には身がもたねえよ.」
デジコン「オショウを好きだなんていう女性は希少価値なんだからね. 大事にしなきゃ.」
オショウ「人のことだと思ってまあ.」
外を見たデジコンは話題を変えた.
デジコン「オショウ,そんなことより,あのサングラスの男,何か臭わないか?」
オショウも外を見た. 男はレストランの上の階にある吉田商事の事務所を探っていたのだ. すると外へよね子がやってきて,オショウのスクーターを発見した. 慌ててオショウはついたての陰に隠れた.
デジコン「どうした?」
よね子が中に入ってきた.よね子は散々中を探ったが, オショウの姿を発見できず,外へ出てしまった.
デジコン「かわいそうに.」
オショウ「帰った?」
デジコン「ああ.」
オショウは安心して溜息をついた.
デジコン「泣きそうな顔してね.」
オショウ「ああ,良かった.コーヒーおかわり.」
よね子が去った後,吉田商事の吉田社長(田口計)が車で戻ってきた. サングラスの男が吉田に声をかけた.
男「あのう,吉田商事の社長さんですね?」
吉田「そうだが.」
男はピストルで吉田を狙い,一発撃った.だが吉田には弾は当たらなかった. 銃声を聞いてデジコンとオショウが外へ出た. 男は吉田の部下に取り押さえられながらももう一発ピストルを撃った. しかしまた吉田には当たらず,オショウのスクーターのバックミラーに当たった. 男は逃げ,その後を吉田の部下が追いかけた.
デジコン「なんだ,あいつら.」
デジコンも男を追いかけた.
オショウ「あ,ああ,ああ,バックミラー.」
よね子「和尚様.」
オショウはよね子に見つかってしまった. オショウはヘルメットをかぶった.よね子は車に隠れていた.
よね子「恐い.」

サングラスをかけていた男は吉田を追いかけ,ピストルを撃ったが, 一発も当たらなかった.男は赤い車で逃走. 吉田の部下もタクシーを拾って後を追った. さらに男の車はデジコンを轢きそうになったが,デジコンは「ザ・ハングマン」 #26「コンピューター死刑執行人登場」 時に修得した当たり屋としての腕を利用して車に発信機を取り付けた. そして自分の車に積んだコンピュータも駆使して, 男の車が止まった場所を突き止めた.そこへオショウが登場.
オショウ「いやあ,参った,参った.」
デジコン「あ.オショウ.」
オショウ「あの女,あの近所にまだうろうろしてたんだよ. うまく巻いたけどなあ.」
デジコン「ま,オショウらしいなあ.」
オショウ「なんだい,これ.」
デジコンはサングラスの男の車に発信機をつけといたことを説明した. 男の車は北新宿の神田上水公園の辺りに止まっていた.

その頃,男は妹のみどり(黒木麻由美)と会っていた. 神田上水公園の辺りにみどりのアパートがあったのだ. 吉田一味は兄妹の父と母を殺した疑いがあったのだ. みどりは自分が証拠をつかむまでは逃げてくれと言い,男に金を渡した. みどりは夜の店で働き,吉田に接近しようとしていたのだ. 男はみどりと別れた直後,吉田の部下に追われた. そしてトラックにはねられて死んでしまった.みどりもそれを目撃した.
みどり「お兄ちゃん…」

デジコンは男の車がずっと止まったままであることを不審に思っていた. そこへマイトから電話が入った.タミーの店で待っているので来るように, と言うのだ.デジコンはタミーの店へ行く前に, 男の車の止まっている場所へ寄ってみた.そこで一人の女, すなわちみどりが花を供えているのを目撃した. デジコンは声をかけようとしたが,マイトから通信が入ったので断念した.

仕事開始

昼間拳銃を乱射したのは宮下定春という男だった. そしてマイトが呼び出したのもその件に関する話だった.
マイト「狙われた吉田商事社長吉田勇一.そいつに心当たりがあるんだ.」
デジコンはマイトの方を向いた.
マイト「太陽グループって言う総会屋知ってるだろう.」
デジコン「暴力団も一目置いていたほどの総会屋だが, 確か,1年前に解散してるはずだ.」
マイト「そのボスが吉田勇一だ.」
マイトはデジコンに週刊誌の記事を見せた.
マイト「警察が総会屋締め出しの法改正に動き出したときに, 吉田はいち早く総会屋から手を引いた. そして商事会社の看板を上げたってわけだ.だが, それは表向きでしかない.奴らがやってることは乗っ取り屋だ. 経営に行き詰まった会社に目をつけ,金利の低い金を融資するといって近づく. もちろん,それは話だけだ.貸し付けた後, あの手この手で経営者にゆすりをかけ,不動産を乗っ取る. それで自殺したものも多い.」

吉田は事情聴取から戻ってきた.部下(片桐竜次)が, 吉田を狙ったのは宮下の息子だったと吉田に報告した. そして吉田は宮下夫婦の死体は大丈夫かと確認した. 部下は安全なところに隠してあると答えていた.

一方,デジコンは宮下定春, みどり兄妹の父親が経営していた宮下冷蔵の倉庫の前にいた. そこへオショウもやってきた. 宮下冷蔵は宮下定春がアメリカへ行っている間に吉田に乗っ取られ, 宮下夫妻は失踪していた.報せを受けて定春は4日前に帰国したばかりだった. そこへタミーから,ゴッドのオフィスに集合するように連絡が入った.

マイト「吉田達の悪事についてはみんな承知だと思う. 問題はどうやって奴らの尻尾をつかむかだ.」
タミー「1年間に7社も乗っ取った奴よ.関係者の自殺といっても, この中には他殺もあるんじゃないの?」
ヨガ「やりかねないな,あいつなら.」
オショウ「たとえ殺していたとしてもだ. 自殺として処理されたものから新事実をつかむのは難しいな.」
デジコン「宮下冷蔵の社長夫婦も表向きには失踪だ.」
タミー「それも会社の名義が吉田の名義に書き換えられてから, 姿を消しているわ.」
オショウ「無理矢理サインさせられて殺されたってとこかなあ.」
マイト「今度の宮下が死んだのも事故死には違いないが, 他殺みたいなものさ.」
デジコン「返り討ちってわけだ.」
ヨガ「くっそう.」
ヨガはテーブルを叩いた.と同時に宮下夫妻の写真がスクリーンに映し出された.
タミー「これが宮下夫婦.そして死んだ息子の宮下定春.妹のみどり.」
デジコンはスクリーンを覗き込んだ.
デジコン「妹?」
タミー「彼女は大学生だったんだけど,今は新宿で働いているらしいわ.」
デジコンはみどりが花を供えている場面を思い出していた.
タミー「デジコン.」
デジコン「あ,ああ.」
デジコンはスライドのスイッチを消した.
オショウ「マイト.どうする?」
マイト「もう一度奴らに会社を乗っ取らせて証拠をつかむしかないだろうなあ. よーし,適当なオフィスを見つけてくれ.」
タミーとヨガは事務所を探しに出た.社長役はオショウだ. それを尻目にデジコンはファイルをじっと見ていた.
マイト「デジコン.」
マイトはデジコンに「マ・ヤン」という店のマッチを渡した.

デジコンは「マ・ヤン」へ行き,みどりを見つけた. この店に吉田商事の連中もよく来るのだ.さてマイトは吉田商事を訪れ, 「辻村総業株式会社 専務取締役 日下部孝介 〒150 東京都新宿区新宿四丁目八番 TEL 03-348-1821」と書かれた名刺を, 吉田の部下に渡した.
吉田の部下「辻村総業の日下部さんですか.」
マイト「はい.専務をしております日下部です.」
吉田の部下「ま,どうぞ.」
マイト「失礼致します.どうも.皆さん,私と同じようにメガネをかけてる.」
吉田の部下「ええ.仕事が細かいものですから,どうも,どうも.」
吉田の部下は椅子に座ったマイトと握手をした.
吉田の部下「で,ご用件は?」
マイト「こちらへ伺えば金利の安い資金を融通してくれると伺いまして.」
吉田の部下「あ.」
吉田の部下は他の面々に目配せした.突然,マイトが泣き始めた.
マイト「あ,すいません.何とかわが社を助けていただけませんでしょうか.」
吉田の部下「いやあ,確かにですねえ,街場の金融業者よりは安いんですけど, 銀行よりは高いですよ.」
マイト「わかっております.実はですねえ, 会社のほうで急に資金がいりようになりまして, 銀行の場合だといろいろと手続きが面倒なので, それでこちらの方にお伺いいたしました.」
吉田の部下「気持ちはよくわかりますけどねえ, お宅の企業内容まで調べてみないとなんとも返事できませんねえ.」
マイト「よろしかったら,うちの社へ来てみませんか. 帳簿などを見ていただきたいと思います.」
マイトは吉田の部下を事務所へ連れて行った.吉田の部下は帳簿を見た.
吉田の部下「ふーん. 以前はかなりの収益をあげていらっしゃったようですなあ.」
マイト「はい.石油製品の販売が大部分でしたから, この円安で打撃を受けましてねえ.」
吉田の部下「ところで,不動産をお持ちですか?」
マイト「はい. 倉庫が3つに埼玉に社員寮として使っていた跡地が600坪ほどございます. 少ないですがねえ.」
吉田の部下「あの,権利書見せていただきますか.」
マイト「はい.社長が保管しておりまして, 社長はニューヨークから明日帰る予定でございます.」
吉田の部下「ニューヨークですか?」
マイト「はい.」
吉田の部下「ああ,そうですか.ええっと,ここに記入されている取引がですね, 実際行なわれてるかどうか,銀行に確認を取りたいのですが.」
マイト「はあ?」
吉田の部下「いやいや.架空の帳簿をつくりですね, 我々からお金を受け取るとそのままドロンと言うケースがよくあるんですよ.」
敵も念入りだ.だがマイト達の方が一枚上だ.
マイト「よくあるでしょうね,良くわかります.東和銀行でございます. お電話をしてみましょうか.高原氏.」
ヨガ「はい.」
マイト「新宿支店の児玉支店長に電話をしてみたまえ.」
ちなみに今回の監督は児玉進さん.
ヨガ「はい,わかりました.」
ヨガは電話した.
マイト「ちょっと失礼します.前を失礼します.」
電話に出たのはタミー.
ヨガ「あ,もしもし.」
タミー「はい.東和銀行新宿支店でございます.」
ヨガ「あ,辻村総業ですが,支店長の児玉さん,おいでになりますか.」
タミー「はい,少々お待ちくださいませ.」
マイトがダメを押すために
マイト「児玉はまだかね,児玉は,君.」
と電話で言った.そして
マイト「今呼んでおります.」
と吉田の部下に答えた.
デジコン「はい.支店長の児玉ですが.」
ヨガ「少々お待ちくださいませ.出られます.」
マイトはわざとらしく咳払いして電話を代わった.
マイト「もしもし.児玉支店長様でございますか.いつもお世話になります. 辻村総業の日下部でございます.真に恐れ入りますが,私どもの会社のですねえ, 収支証明をお願いしたのでございますが.」
デジコン「はい,わかりました.至急,テレックスでお送りします.」
マイト「左様でございますか.一つよろしくお願いいたします. 申し訳ございません.」
マイトはヨガと電話を代わった.
マイト「ああ,どうも.ただちにテレックスで送ってくれるそうです.」
デジコンからテレックスで収支証明が送られてきた.
マイト「いかがですか.」
吉田の部下「結構ですねえ.」
マイトはにやりとした.

その晩.デジコンはマ・ヤンに姿を見せた. デジコンはみどりに吉田商事の悪事をほのめかした. みどりは「よく来るのよ,あいつら.」と答えた. デジコンは宮下冷蔵の件をほのめかすと, みどりは帰りに家へ来ないかと誘ってきた.自宅でみどりは全裸になり, デジコンを誘惑したが
デジコン「自分で自分を粗末にするような真似はやめろ.友達なんだよ, 君の兄貴と.こんなことをしていて宮下が喜ぶとでも思っているのか. 宮下は俺に言ってたよ.両親は吉田に殺されたんじゃないかってな. 俺が話したかったのはそのことだ.」
みどりはいけしゃあしゃあとこう答えた.
みどり「兄貴は思い込みが激しいのよ,昔から. 勝手にそう思い込んで挙句に吉田殺し損ねて自分が死ぬなんて世話ないわ.」
デジコン「本気で言ってるのか?」
みどり「本気よ.両親は失踪してるのよ. 殺されたって証拠どこにもないじゃない.馬鹿馬鹿しい.」
デジコン「兄さんが死んだ日,公園の脇で花を持って立ってた君を見た. 君はあの時泣いていた.」
みどり「泣いちゃいけないの?」
デジコン「兄さんが好きだったんだろう,君は.」
みどり「帰ってよ.帰んなさいよ.」
そこへ電話がかかってきた.電話の相手は吉田の部下の小林(片桐竜次)だった. デジコンは外へ出てみどりのアパートを見張った. みどりは一家4人で写っている写真を見て泣いていた.
みどり「なぜ死んじゃったの.あたし一人だけ残して. 何でみんな死んじゃったの.」

次の日.吉田はオショウに資金を貸すことを承諾した. 会社の跡地などは社長の辻村名義になっていた. オショウは1年前に会社名義のものを自分名義に直したと答えた. 早速小林は契約書を出してサインさせた. そして次の日の正午に7000万円用意すると小林は答えた. ゴッドのオフィスに戻ったオショウはうまく引っかかったと高笑い. マイトもわざと高笑い.だが
マイト「オショウ.笑ってる場合か.」
オショウは我に返った.今度は辻村社長, つまりオショウを殺しにかかる番なのだ.
オショウ「そこでなあ,万が一のことあったら頼みがあるんだ.」
マイト「なんだい.」
オショウ「例の奥さん.あれ頼むわ.」
マイト「ああ,あれだけはダメだ.」
オショウ「参ったなあ,これは.」
マイト「まあ,まあ.心配するなあ.俺達がオショウ見殺しにすると思うか.」
オショウ,一安心.
オショウ「ありがとう.じゃ,女のことはデジコンに頼むか.」
マイト「うーん,あいつだったら選り好みしないからなあ.」
タミーも苦笑した.そのときタミーが気がついた.
タミー「あれ,デジコンは?」
ヨガ「どこいったんだ?」
マイト「あいつ,彼女にいかれやがったかなあ.」

マイトの予想通り,デジコンは公園でみどりと会っていた.
デジコン「これ以上,危険なことはしないほうがいい. 吉田達のことは警察に任せろ.」
みどり「あんた,誰なの? 兄貴の友達じゃないってことはわかってたけど… 刑事?」
デジコン「そうじゃない.」
みどり「じゃあ,なんなの.」
デジコン「それはいえない.兄さんのこと,本当に好きだったんだな. 今日の花も赤だった.毎日花は変わっても,色は赤.」
みどり「兄の好きな色.」
デジコン「君は手を引くんだ.そして,今の店もすぐやめろ. 君に夜の仕事は似合わない.」
みどり「兄もおんなじことを言ったわ.私には夜の仕事は似合わないって. でも,でも私,絶対許せない.」
そう言ってみどりは走り去っていった.

オショウは靴に録音装置を仕込んだ.小林達がオショウのところへやってきた. そして社長が直接渡すと称し,オショウを迎えに来た. オショウは宮下冷蔵の件を持ち出し,妙な予感がしたと言い, 警察へ電話しようとしたが,ピストルを突きつけられて断念した. オショウを連れ出す小林の車をヨガが尾行した. そして車は宮下冷蔵の倉庫の前に到着した. ヨガはオショウが倉庫に連れ込まれるのを見届けた.
吉田「土地の名義変更にサインしろ.」
オショウ「冗談じゃない.」
吉田「こっちだって冗談じゃないんだ.」
ピストルがオショウの座っている机に向けて発射された. 思わずオショウはのけぞった.
小林「さあ,わかったら,お願いしますよ.」
仕方なくオショウはサインした.

その頃,みどりはベッドの中で吉田の部下から悪事を聞き出していた. そして宮下冷蔵の件を聞き出した.
みどり「ねえ,宮下冷蔵って会社,乗っ取ったでしょう. 社長夫婦がそのあと失踪した.」
部下「ああ.」
みどり「あれも,殺し?」
部下「そういうこと.」
みどり「本当なの,今の話.」
部下「ああ.死体を始末したのはこの俺なんだあ.へ. そんなことはどうでもいいじゃねえか.」
部下はみどりと情事を続けようとしたが,ベッドの下から物音がした. 探ってみるとテープレコーダーがある.そしてテープを再生してみると
みどりの声「あれも,殺し?」
部下はみどりに詰め寄った.そして絞殺しようとしたところへデジコンが登場. 部下はデジコンに殴り倒されてしまった.

その頃,オショウは製氷室に連れ込まれた.
吉田「あんたは担保にするはずだった土地を我々に売り, 挙句に借りた7000万を持ち逃げして失踪した,そういうことになるんだ.」
オショウ「宮下夫婦と同じようにか?」
吉田「二人はその箱の中だ.」
見ると人間一人が入るくらいの箱が二つ置かれていた.
小林「あんたも,こいつらと一緒に,南太平洋で魚の餌になるんですよ. 冷凍マグロと一緒に明日ブラジル行きの船に乗る. そして太平洋であんた達を始末する, とストーリーはまあこうなるわけですがねえ.」
オショウは慌てた.
オショウ「なにをやってるのかなあ,あいつらもたもたしやがって.」
小林「ぶちぶち言ってるんじゃない.見ろ.」
吉田の部下「入れ.」
オショウ「こん中へですか? いやまあ,お先に.」
オショウは無理矢理箱の中へ押し込まれ,氷を入れられ, さらに蓋をされて蓋を釘で打たれてしまった. そして吉田達は悠々と去って行った.吉田達が去った後, 製氷室にヨガが入った.
ヨガ「オショウ.」
だが返事がない.
ヨガ「オショウ.」
ヨガは箱の蓋を壊した.だがその箱からは宮下の死体が出てきた. ヨガは隣りの箱の蓋を壊した.だが,それは宮下の妻の死体が入った箱だった. そしてやっと,ヨガはオショウの入れられた箱の蓋を壊した.
ヨガ「オショウ.」
オショウは返事をしない.
ヨガ「オショウ.オショウ.オショウ.大丈夫か,おい.オショウ.オショウ. 大丈夫か.」
やっとオショウが気がついて,白い息を吐いた.
ヨガ「大丈夫かい.」
オショウは寒さのあまり,こういうのがやっとだった.
オショウ「だ・い・じょ・う・ぶ・な・わ・け・な・い・だ・ろ・う.」
オショウはしばらく口をパクパクさせていたが,
オショウ「ち・く・しょ・う.は・ん・ぎ・ん・ぐ・けっ・て・い!」
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

吉田達が事務所に戻ると部下が縛り上げられていた.
吉田「おい.」
小林「何をやってるんだ,おい.」
そこへマイト,ヨガ,タミーが登場した.
小林「専務.」
マイトは机の上に乗り,なぜかうさぎ跳びをしながらこう言った.
マイト「俺は専務じゃねえよ.」
小林「じゃあ,なんなんだよ,お前.」
マイト「俺か.名乗るほどじゃねえが,ヤッツケマンだ.」
そう言ってマイトは小林を殴った.
マイト「メガネ外して,真似しちゃってえ.」
吉田はタミーに殴り倒され,小林はマイトに押さえ込まれた.
マイト「あんまり真似すんな.」
そしてもう一人の部下もヨガに倒された.

その頃.みどりのところへ青い封筒に入っていて, 蜘蛛が描かれたシールで封をされた手紙,すなわち, デジコンからのハンギングパーティの案内状が投げ込まれた. みどりは案内状を読んだ.
デジコンの声「本日午後4時,下記の場所へお越し下さい. あなたの両親を殺し,会社を乗っ取った悪党どもに審判が下されます.」

吉田達はオショウがされたように宮下冷蔵の製氷室で箱に入れられていた. 製氷室にはマイト,タミー,デジコン,ヨガの四人がいた.
マイト「ああ.どうだね,皆さん.氷付けになった気持ちは.」
小林「出せよ.」
デジコン「会社の乗っ取り.宮下夫婦殺害. 貴様らがやった悪事を吐けば助けてやる.」
吉田「俺たちは何にもやっちゃおらん.」
タミー「ここは,零下20度よ.」
タミーは吉田に温度計を見せた.
マイト「まあ,いいだろう.南太平洋の魚の餌にでもなってもらうんだなあ.」
小林「南太平洋! 証拠があるのか,証拠が.俺達が宮下夫婦を殺した証拠が, どこにあるんだ.」
デジコン「証拠ならある.」
デジコンはみどりが録音したテープを再生した.
みどりの声「ねえ,宮下冷蔵って会社,乗っ取ったでしょう. 社長夫婦がそのあと失踪した.」
部下の声「ああ.」
みどりの声「あれも,殺し?」
部下の声「そういうこと.」
吉田「そんな,作り物のテープで脅迫して, 俺達が驚くとでも思っているのけえ.」
そこへ
オショウ「貴様ら.よくもそこまで白が切れるなあ.」
辻村社長,すなわちオショウの姿を見た吉田達は驚いた. そしてオショウは録音したテープを再生した.
吉田の声「あんたは担保にするはずだった土地を我々に売り, 挙句に借りた7000万を持ち逃げして失踪した,そういうことになるんだ.」
オショウの声「宮下夫婦と同じようにか?」
吉田の声「二人はその箱の中だ.」
小林の声「あんたも,こいつらと一緒に,南太平洋で魚の餌になるんですよ. 冷凍マグロと一緒に明日ブラジル行きの船に乗る. そして太平洋であんた達を始末する, とストーリーはまあこうなるわけですがねえ.」
吉田「おめえ達はなんてドジを…」
吉田は自分のドジを棚にあげてほざいた.そこへ氷が投げ込まれた.
オショウ「そうら.やってやれ,やってやれ.みんなでやりやがって.そうだ, そうだ.その調子,その調子.」
そして吉田達の箱は氷で一杯になり,箱には蓋がされた.ただし, 顔の部分は透明になっていた.そしてハングマンは吉田達を置いて, 製氷室から去って行った.

そして宮下冷蔵のビルに設置されたスピーカーからテープが流された.
みどりの声「ねえ,宮下冷蔵って会社,乗っ取ったでしょう. 社長夫婦がそのあと失踪した.」
宮下冷蔵の作業員が集まってきた.
部下の声「ああ.」
みどりの声「あれも,殺し?」
部下の声「そういうこと.」
そこへみどりもやってきた.
吉田の声「あんたは担保にするはずだった土地を我々に売り, 挙句に借りた7000万を持ち逃げして失踪した,そういうことになるんだ.」
そのとき,扉が開いた.
オショウの声「宮下夫婦と同じようにか?」
吉田の声「二人はその箱の中だ.」
フォークリフトで吉田達のつまった箱が運び出されてきた.
小林の声「あんたも,こいつらと一緒に,南太平洋で魚の餌になるんですよ. 冷凍マグロと一緒に明日ブラジル行きの船に乗る. そして太平洋であんた達を始末する, とストーリーはまあこうなるわけですがねえ.」
吉田達はさらし者になった.従業員の怒声が飛んだ.そしてパトカーが 駆けつけるのを見届けて,オショウ,ヨガ,タミー,マイトが去った. みどりも歩き始めた.デジコンはみどりを追い抜いた. デジコンの車のフェンダーミラーに写るみどりの姿が小さくなっていった.

そして

デジコンは自分の店でコンピュータの基板をいじっていた. そこへマイトがやってきた.
マイト「お,あいかわらずやってるなあ.みどりちゃん, 例のバーから姿を消したそうだ.元の生活に戻ったってことだなあ.ま, 良かったじゃねえか.あ.」
だがデジコンは無言で基板をいじっていた.
マイト「おい.聞いてるのか.」
デジコン「俺は女よりコンピュータのほうが性にあってるんだよ.」
デジコンは負け惜しみを言った.それを知ってか知らずかマイトは
マイト「そうか.世界的に女が強くなってホモが増えてるって言うからなあ. ま,お前も文化人の仲間入りか.」
デジコン「マイト!」
デジコンは基板を持ってマイトにつかみかかろうとした.
マイト「冗談.」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp