第十六回

殺人事件の冤罪を晴らす
美人姉妹の危険な就職

脚本:鴨井達比古 監督:井上梅次

深夜の大星物産で.池田専務(梅津栄)が副社長に引退を迫っていた.副社長は, 5年前に倒産の危機を救ったこと(副社長は取引先の銀行から派遣されていた)と, 池田が独断で10億円以上もの政治献金をばら撒いていたことを盾に取り, 逆に池田に引退を迫った. 副社長は次の取締役会で池田の件を問題にするといって去ろうとしたが, 千野に邪魔された.
池田「副社長,引退を承諾するまでは返すわけには行きませんなあ.」
池田は副社長を突き飛ばした.副社長は頭を打って死んでしまった. 慌てる千野に池田は放っておけと言い,田沢(三角八朗)を呼び出した. 早速田沢は社屋に駆けつけた.
警備員「ああ,田沢さん.どうしたんですか,こんな時間に.」
田沢「ちょっと専務に呼び出されてね.」
田沢は急いで池田の所へ向かった.田沢は副社長の死体を見て驚いた.
池田「田沢君.君は来年定年退職だったね.」
田沢「はい.」
池田「退職金もほとんど前借をしてしまったようだが,奥さんの病気, そんなに金がかかるのか?」
田沢「はい.」
池田「子会社に役員の椅子が一つ空いてるんだが,再就職の当てはあるのかね?」
田沢「いいえ.」
千野「田沢君. 副社長と君がもみ合ううちに頭を打って亡くなったと言う事にしてくれよ.」
田沢は首を振ったが
千野「奥さんの治療費も出す.君の定年後の地位も保証するよ.」
池田「もちろんいい弁護士もつける. 事故死だから執行猶予になることは間違いない.どうだね.」
だが田沢一郎は懲役3年6ヶ月の刑に処された.
田沢「そんな.実刑だなんて.」
絶望のあまり,田沢一郎はビルの屋上から身を投げて自殺してしまった.

さて田沢一郎はオショウの檀家だった. 49日を迎えたのでオショウは田沢の家を訪れ, 息子(佐藤仁哉)と娘達と一緒にお経をあげた.田沢はオショウの将棋の好敵手. 息子は一郎がはめられたと呟いた.それを聞いたオショウが問いただすと, 息子は池田が社長になるための罠に違いないと断言していた. だが証拠はなかった. それでも息子は一郎が人を殺せるような人物ではないと言うのだった.

今週のよね子 その1

妙徳寺に戻ったオショウはタミーに電話した.
オショウ「ああ,タミーか.」
タミー「ええ,あたし.なあに?」
オショウ「その後,ゴッドから何か指令ないか?」
タミー「うううん,今のところは何も.」
オショウ「大至急全員集めて欲しいんだ. 実は大星物産の副社長殺しの犯人田沢の自殺の件なんだけどなあ, 俺,どうも臭いと睨んでるんだ.」
だが電話の最中に
よね子「和尚様.」
オショウ「あ,奥さん.じゃ,お願いします.」
オショウは慌てて電話を切った.
よね子「奥さんだなんて.よ・ね・こ.」
オショウ「ああ.」
よね子「おいしい水菓子持ってきましたから一緒にいただきましょう.」
オショウ「ああいつもいつも.」
よね子はオショウの手を握った.
よね子「いかがでした,田沢さんとこの49日.」
オショウ「いやあ,残された子供達だけでかわいそうでした.」
よね子「まあ,仕方ないでしょうね. 副社長さんを殺して自殺したんですからあ.」
オショウ「田沢さんは人を殺せるような人ではありませんよ.」
よね子「人は見かけによらないんです. 現に和尚様だって真面目な顔して,好きなくせに.」
よね子はオショウに寄りかかり,オショウの腿をつねった. オショウは痛がったところで,よね子がオショウの首にチュウした.

その他のメンバー

デジコンがコンピュータに「オレハイツケッコンデキルカ」と入力すると
コンピュータ「ソレハアリエナイコトダ」
という答えが返ってきた.
デジコン「ええ?」
そこでデジコンが「ドウシテ」と入力すると
コンピュータ「ハングマンニジョセイハカンケイナイ ワカリキッタコトヲイウナ」
デジコン「参ったなあ.長い付き合いじゃないか.もう少し色気出せ,色気.」
デジコンはコンピュータのディスプレイを叩いた. そこへヨガがやってきて大笑い.
ヨガ「友達に裏切られてやんの.」
デジコン「馬鹿野郎.あ,そうだ.お前,いつ死ぬか占ってやるよ.」
ヨガは慌てた.
ヨガ「ああ,俺はいいよ,いいよ.俺は不死身だ. 今夜0時集合だ.」

カジノ「ダイナ」をタミーが訪れていた.
さとみ「うちのマスターね,美人が来るとヒョッコ,ヒョッコ, ついて来ちゃう癖があるんです.」
タミーは笑った.
さとみ「どんな御用ですか?」
タミー「借金取り.うちの店,つけがだーいぶ溜まってるんで.」
さとみ「ああ.女癖だけじゃなくて金癖も悪いんだ.」
そこへマイトが登場した.
さとみ「あ,おかえんなさーい.」
マイト「誰が女癖が悪いんだ.私の友達にね,デジコンと言う男がいるんだけど, 彼と間違えてるんじゃないかと思うんだよー.君.え?」
さとみは笑った.そこへタミーがやってきた.
タミー「こっちのこと,こっちのこと.」
さとみはこれ幸いと立ち去った.
マイト「誰が金払いが悪いんだ.」
タミー「あなたのこと.」
タミーは紙を渡して去って行った.紙には「今夜0時集合」と書かれていた.

仕事開始

ゴッドのオフィスでオショウが説明する. いつもと違ってオショウは坊主の格好をしていた.
オショウ「資本金850億.社員2700名. 戦後30年あまりで急成長を遂げた総合商社大星物産.今から約1年前, この本社ビルの会議室で衝撃的殺人事件が起きた. 殺されたのは副社長の西岡雄作58歳.6年前, メインバンクの関東銀行から役員として派遣され,次期社長の最有力候補だった. 犯人は総務部次長の田沢一郎54歳.35年かかってやっと次長のポストにつき, 1年後に定年を控えた実直そのもののサラリーマンだった.田沢は犯行を認め, 仕事上のミスを責められてかっとなり, もみ合ううちに気がついたら副社長が死んでいたと説明. 裁判の一審で懲役3年6ヶ月の実刑判決を受け, その時点で会社を懲戒解雇となった.そして控訴し,保釈された翌日の夜, ビルの屋上から身を投げて死んだ.」
マイト「思い出したよ,その事件のことは. 平凡なサラリーマンがなぜ副社長を殺したかって随分週刊誌が騒いだっけなあ.」
オショウ「実はこの田沢ってのはうちの檀家でな, で今日がちょうど49日の命日だから昼間行ってお経あげてきたんだ.」
タミー「でも,なんで自殺なんかしたの? 実刑判決を受けたから?」
オショウ「いやあ,あたしは自殺したなんか思っちゃいませんよ.」
デジコン「どうして?」
オショウ「この男は実に将棋が好きでねえ,前にも何回か手合わせしたが, 堅実で,まあ実に粘り強いと言うか, 途中で諦めたり投げたりするタイプじゃなかった.」
それを聞いてマイトはうなずいた.
マイト「なるほど.将棋ねえ.」
オショウ「それから,もう一つ.彼の棋風はとても優しい. 相手を追い詰めたりいじめたりするのが苦手なタイプなんだ. 現に3人の子供達は親父に一度も怒鳴られたりしたことがないそうだ.」
デジコン「じゃあ,副社長殺しも.」
オショウ「彼は絶対人を殺せるような人ではないよ.」
ヨガ「しかし,人間かっとなると…」
オショウ「かっとしないんだ,この男は.」
タミー「じゃあ副社長は別な人間が殺したことになるわねえ.」
オショウ「俺の感に間違いはない.」
マイト「家族は?」
オショウは写真を一枚,一枚,ファイルから取り出した.
オショウ「これが奥さんのさだこ.病弱で3年前から伊豆の療養所暮らしだ. それからこれが長男の保夫.同じ大星物産の営業三課で働いてたが, 事件の直後に辞表を出してる.これが長女の明子だ.中学の教師をしていたが, 1年前に退職.大星物産のロンドン支社員と結婚することになっていたが, この婚約は破棄された.つづいて,これが次女の春子だ.看護学校に通ってたが, 父の死後,学校をやめ,姉の明子と一緒に新宿のバーに勤め始めた. もちろん,母親の入院費を作るためだ.」
マイト「自殺じゃない,犯人じゃないと言っても何の証拠もない. ただオショウの勘だけじゃ.」
オショウは笑った.
オショウ「マイトらしくないこと言うな.俺が勘だけでこんなこというと思うか?」
デジコン「うーん.で,ゴッドはなんと言ってる?」
タミー「オショウと同じ意見よ.影に何かあるから探ってみろっと.」
マイト「副社長が死んで得をしたのは誰なのか. それを当たるのが一番の近道だなあ.」

マイトとタミーは大星物産を見張ることにした.社長になった池田が出てきた.
マイト「半年前に社長になった池田.その腹心の千野取締役. 社長秘書の石原きょうこ(竹井みどり).」
そこへ保夫がやってきて,池田に詰め寄ろうとした. だが保夫は警備員に追い払われてしまった.マイトはヨガに池田の尾行を指示. きょうこは保夫を助け起こした.
保夫「きょうこちゃん,社長に伝えておいてくれ. 必ず真相をつかんで見せるとなあ.」
そういう保夫に警備員がつかみかかってきた.
警備員「何,ごちゃごちゃ言ってるんだ.帰れ,帰れ.帰るんだ.」
マイト「田沢の息子だなあ.どういうつもりだ.」
タミー「さあ.」
マイト「あのガードマン,いやに目つきが鋭いなあ.」
タミー「一年前,田沢があのビルで副社長を殺した夜, 田沢が駆けつけたと証言したのもガードマンだったわね.」

池田と千野は料亭で飲んでいた.なぜ保夫が来たのかと不思議に思う池田に, 千野は,保夫が辞職直前に車両部へ行って, 事件当夜の重役専用車の記録を調べたらしいと告げた.千野が記録を改竄し, 池田は定時に退社したことになっていたので大丈夫だったが. そこへ柴崎弁護士がやってきた. 千野は「おかげさまで田沢の方も自殺してくれましたし」と礼を言い, さらに謝礼を柴崎に現金で渡した.柴崎は千野に, 保夫が何度も来たことを告げたのであった.その頃, ヨガは池田の車の運転手に因縁をつけていた. その隙にデジコンは池田の車に盗聴機を仕掛けた.

さて明美と春子は新宿のバーで働いていた. そこへオショウが白髪のかつらをつけ,白いつけひげをつけて登場した.
オショウ「Hi!」
ママ「はじめてでいらっしゃいますわねえ.」
オショウ「久しぶりの日本です.Sit down.」
ママはオショウの隣りに座った.
オショウ「女房が死んでから急に日本が恋しくなりました. コーヒー園叩き売って30年ぶりにブラジルから帰ってまいりました.」
ママ「ブラジルからあ.」
オショウ「はい.これからは酒と女と…」
オショウが指折り数えて言うと
ママ「まあ.」
オショウ「あなた疑ってますが,私,これまだ大丈夫.」
ママはオショウの下ネタに大笑い.オショウも笑った.
ママ「失礼しました.じゃ,これからもどうぞ御贔屓にお願いします.」
オショウ「こちらこそ.」
ママ「明子ちゃん.」
明子「はい.」
ママ「今,かわいいこが来ますからねえ.」
明子がオショウの隣りにやってきた.
明子「いらっしゃいませ.明子です.」
オショウ「ああ.Hey! Sit down. Sit down, please!」
明子はオショウの隣りに座った.そこへ保夫がやってきた. 春子も立ち上がろうとしたが, 客に抱きつかれていて立ち上がることができなかった. 明子は保夫を外へ連れ出し, 就職活動もせずに池田に詰め寄ろうとしたことを責めた.ちょうどその頃, オショウも帰った.慌てて明子はママと一緒に見送るのであった.

一方,池田は千野とともに車で料亭を出た. すかさずデジコンとヨガが盗聴しながら車を追いかけた.
千野「今更,田沢の息子が何をしようと関係ないと思いますねえ. 田沢は我々の筋書き通りに裁判を受け,死んでくれたんですから.」
池田「絶対につけが私まで回ってこないだろうね.」
千野「はい.田沢の件は柴崎に任せました. あの男が誰を使おうと,私には関係ありません.」
池田「田沢は死ぬ前に息子に何か喋ったかもしれん.」

さて客はしつこく,晴子を車に連れ出し情事を行なおうとした. そこへオショウがやってきて客をステッキで撃退した. 明子と晴子はオショウに礼を言った.オショウは帰っていった.
晴子「姉さん,あの人,前にどこかであったような気がする.」
明子「そんなはずないわよ. だって30年ぶりにブラジルから帰ってこられたそうよ.」

盗聴テープをハングマンは聞いた.
マイト「おい,柴崎って誰だ?」
千野の声「いや,その心配はないと思います. 柴崎弁護士もああ言ってますし.」
タミー「弁護士.」
池田の声「とにかく,用心することに越したことはない.」
千野の声「ええ.それより社長,石原きょうこのほう,気をつけてくださいよ. 女は魔物ですからねえ.」
池田の声「ああ.わかってるよ.」
デジコン「以上だ.」
柴崎弁護士は田沢の裁判を担当した男だった.
マイト「よーし.オショウの説に従って仮説を立ててみよう. 田沢は副社長を殺さなかった.じゃ,犯人は誰だ.」
オショウ「池田と千野さ.」
マイト「ということは田沢は二人の罪をかぶったことになる.なぜだ. 金じゃないか.」
オショウ「だと思うよ.田沢は退職金もほとんど前借してるし, 病気の女房抱えてこれからずーっと金もかかる.結婚を控えた娘もいるし, 定年を目の前にして再就職の当てもない.」
デジコン「金と定年後の仕事を餌にされればなあ.」
マイト「それだけじゃない.優秀な弁護士をつけてやるから, 過失と言うことで執行猶予になる.そういわれたんだろう.」
タミー「秘書の石原きょうこ,何か握っていそうね.」

きょうこは池田の愛人でもあった. 池田がシャワーを浴びに行った隙に池田の手帳を破った.
きょうこ「柴崎弁護士 3000万.」
次の日.今日も保夫が大星物産に現れ,池田を詰問しようとした. だが保夫は警察に突き出されてしまった. 結局保夫はきょうこが身元保証人になって警察を出ることができた. 警察署の外で出迎えた明子と晴子は, 保夫に未だきょうこと付き合っていたのかと聞いたが,保夫は否定した. 保夫ときょうこはあの事件さえなければ結婚していたに違いない. それほどの仲だった.その様子をオショウが目撃した.

さてタミーはあの晩のガードマンを誘惑して誘い出した. ガードマンは腹にヨガの一発を受けて気絶した.その晩. 思い出の場所にきょうこが,そして保夫がやってきた.昔, よく二人で来ていたのだ.きょうこは保夫に冷たい態度を取ったが, 保夫は知っていることは何もかも話してくれと頼んでいた. 一方,ガードマンはマイトとヨガに殴られてあの夜のことを質問されていた. その3日後にガードマンの銀行口座に300万円の金が振り込まれていたのだ. その金を誰に貰ったのかとマイトは聞くが,ガードマンは喋らない. 殴られても喋らない.
マイト「よーし,ヨガ.太い針をぶちこんでやれ.」
ヨガ「Ok!」
マイト「ゆっくりとなあ.」
ヨガは針を取り出し,緒方拳さんが藤枝梅安を演じたときのように,針を舐めた. 恐怖でガードマンは叫び声をあげた.ヨガは後頭部に針をつきつけた.
ヨガ「ここへ刺せば1秒以内に死ぬ!」
ガードマン「やめてくれえ.」
マイト「あの晩,お前は田沢がタクシーで来るのを見かけた. そのとき,田沢はお前になんと言ったんだ.」
ガードマンはあの夜のことを思い出していた.
マイト「専務に呼ばれてきた.田沢はそう言ったんだなあ.」
だがガードマンは無言だ.
マイト「言わねえのか.よーし,ぶちこんでやれ.」
ヨガは一回腕をあげ,針をつけた.ついにガードマンは
ガードマン「言う,言う,言うよ.」
傍らではテープレコーダが回っていた.

明子と晴子は荷物を運び出していた.明子は遺影を持ち
明子「父さん,この家ともお別れだね.」
その様子をタミーとオショウも見ていた.明子達はあの家を売ったのだ. 残りのローンを差し引いて700万円くらい残るらしいが, 会社への返済に当てるらしい.その頃, ヨガは柴崎弁護士の事務所の電話回線に盗聴機を仕掛けていた. 事務所ではきょうこからメモを受け取った保夫が柴崎に詰め寄っていた. 池田から3000万円もらったと言ってだ.柴崎は知らぬ存ぜぬを決め込んだが, メモを見せ付けられた柴崎は驚き,保夫が去ると同時に千野に報告した. そこへ池田がやってきて,ガードマンの平野の行方を聞いた. 千野は知らないと答えた.さらに千野は保夫のせいかもしれないと言い, 柴崎の事務所に保夫が来た件を報告. そして手帳が破られていないかどうか確認した.手帳は破られていた.
池田「きょうこだあ.」

その晩.きょうこのマンションを訪れようとした保夫を暴漢が連れ去った. きょうこのところへ柴崎もやってきた. 柴崎は部下にきょうこをベッドに縛り付けさせた. 明子と晴子は保夫が事故に遭ったという偽の報せが入った. そして明子と晴子はエレベータの中で暴漢に襲われた. だが明子と晴子のバーにはオショウがいた.オショウはデジコンに連絡. そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

保夫は平野の件について柴崎の部下から拷問を受けたが, 保夫は何も答えられなかった.そこへ明子と晴子も連れてこられた. 柴崎は明子と晴子を裸にし,保夫から回答を得ようとした. そこへ救急隊員に扮したハングマンが登場.
マイト「交通事故があったと聞きましたので救急車を引っ張ってまいりました.」
柴崎「何?」
オショウ「念のために断っておくが, ガードマンの平野を預かっているのは我々だ. Do you understand?」
オショウはブラジル帰りの老紳士の扮装のまま登場した.
晴子「あなたは.」
デジコンとヨガが平野を連れてきた.
柴崎「平野を奪い返せ.」
だが柴崎達は平野を奪い返すことはできず,逆に保夫達を奪い返されてしまった. そして柴崎達は二台の車に閉じ込められた.

「救急車」に保夫達は乗っていた.運転しているのはタミー.
明子「兄さん,大丈夫.お世話になりました.ありがとうございました.」
オショウ「いやいや.」
保夫「あなた達はいったい誰なんですか?」
オショウ「何にも心配いりませんよ.あなた方を送り届けるだけですから.」
晴子「教えてください.あなた,誰なんですか?」
オショウは答える代わりに催眠ガスを噴射して眠らせてしまった.

その頃,柴崎たちは.
マイト「さあガソリンをぶっ掛けてやれ.喋らねえと車ごと丸焦げだあ. 西岡副社長を殺したのは池田と千野の仕業だろう.なあ,弁護士さん.」
デジコンとヨガはガソリンをぶっかけた.
柴崎「知らん.わしゃ,知らん.」
デジコン「もう平野は何もかも喋ったぞ.」
柴崎「嘘だ.」
マイト「そうか.よーし,テープを聞かせてやれ.」
デジコンはテープを再生した.
平野の声「一年前の西岡副社長殺しの犯人は池田社長と千野専務だ.」
柴崎は驚き,平野は小さくなった.
平野の声「田沢は騙されて身代わりになったんだ.」
柴崎「何てことだ.嘘だ.みんな嘘だあ.」
マイト「嘘じゃねえよ.ところでもう一つ知りてえことがあるんだ. 田沢さんがビルの屋上から飛び降りて自殺したのは見せ掛けで, 本当はおめえ達がやったんだろう.」
柴崎「知らん.わしゃ,知らん.」
マイト「喋らねえとホントに黒焦げにするぞ.」
柴崎「みんな,脅しに乗るな.嘘だ.一切喋るなよ.嘘だあ.」
マイト「脅かしじゃねえ.そうかい,本当にやってやろうじゃないかい.」
ヨガが松明を持ってきてマイトに渡した.
マイト「よーし.どっちにし…」
マイトは松明を一方の車に投げた.たちまち炎に包まれる車. 逃げる柴崎の部下をデジコンとヨガが捕まえ,もう一方の車に押し込んだ.
マイト「さあ,6人ごと丸焦げだ.」
マイトは松明を手にもった.柴崎の部下はやめろと叫んだ.
マイト「よーし,しゃべろ.」
平野「待ってくれ.俺は全部喋ったじゃないかよ.」
部下「俺も言うよ.言うから助けてくれえ. 田沢をビルから突き落としたのは俺じゃねえ.奥の,奥の二人なんだ.」
部下「ホントだ.俺じゃねえ.だから助けてくれ.」
マイトは本当に楽しそうに喋った.
マイト「よし,よし.よく喋った.」
マイトは松明をヨガに渡した.
マイト「よーし,お前,よく喋った.ほら出ろ.」
マイトは一番はじめに喋った部下を外へ出した.
部下「俺も喋ったよ.」
マイト「そうか.よーし.」
マイトは二番目に喋った部下を出した. だが,ドサクサに紛れて別の部下が出ようとしたので車のドアを閉めた.
平野「俺も,俺も喋ったよ.」
マイト「そうか.」
マイトは平野を出してやった.
部下「待ってくれえ.俺も喋る.そ.あ.」
マイト「何を言ってるか,わからねえ!」
部下「柴崎の指図でやったんだあ.」
マイト「ホントか?」
部下「ホントだあ.」
マイト「よーし.」
マイトは喋った部下を出した.すると別の部下が
部下「三万もらったんだ.」
マイト「ホントか?」
部下「ホントだあ.」
マイト「よーし.」
そして柴崎だけが残った.
マイト「さあ,弁護士さん,お前さんだけだ. お前さんが焼けたら,つまり,ローストピッグ.黒豚の丸焼きだなあ.」
そう言ってマイトは立ち去ろうとしたが,
柴崎「ああ.ああ.」
マイトはヨガから松明を受け取った.
マイト「50年先にあの世で会おう.さようなら.」
マイトは松明を投げつけようとしたが
柴崎「待て,待ってくれ.みんな,池田社長と千野の差し金だ. 3000万やると言うので.」

オショウとタミーはきょうこを救出した.
オショウ「何にも心配しなくていいんだよ.保夫君も大丈夫だからねえ. はいはいはい.」
タミー「きょうこさん,何も言わないで私達に手を貸してくれないかしら.」

保夫,明子,そして晴子は自宅だった建物で目を覚ました. そして壁に白い封筒に入っていて, 数珠を握る手の描かれたシールで封をされた手紙,すなわち, オショウからハンギングパーティの案内状が置いてあるのを見つけた. 保夫達は案内状を読んだ.
オショウの声「あなた達の父上に,副社長殺しの罪を着せて殺してしまった 悪党達に裁きが下されます.本日午後2時,大星物産本社の向いのビルの 屋上までおいで下さい.尚,この家の売却の仮契約はストップしておきました. 多分,その必要がなくなるでしょう.」
晴子「多分,あの人だわ.」

その頃.平野も柴崎も消えたという報告を千野から受けた池田は慌てていた. そこへ放送が.
きょうこの声「社員の皆さん.社長秘書の石原です.実は私, 大変なことを聞いてしまったのです.一年前の西岡副社長殺しの真相です. 知りたい方はすぐ屋上へ集合して下さい.事件に直接関係した人物が説明します. 一年前の西岡副社長殺しの真相です.事件に直接関係した人物が説明します. すぐ屋上へ集合してください.」
屋上に社員が集合した. 屋上の給水筒に柴崎達が首に縄をかけられてつながれていた.
社員「この人,顔見たことあるわ.」
社員「多分,ガードマンだよ.」
社員「あの人,弁護士さんじゃない.」
社員「そうだよ,柴崎さんだよ.うちの顧問弁護士だよ.」
そして平野達の自白が流された.
平野の声「一年前の西岡副社長殺しの犯人は池田社長と千野専務だ. 田沢は騙されて身代わりになったんだ.」
ついに池田と千野が屋上に現れた.
柴崎の声「みんな,脅しに乗るな.嘘だ.一切喋るなよ.嘘だあ.」
部下の声「俺じゃねえ. 田沢をビルから突き落としたのは俺じゃねえ.奥の,奥の二人なんだ.」
部下の声「ホントだ.ホントだ.俺じゃねえ.頼む,助けてくれ.」
池田「柴崎…」
柴崎は首をうなだれた.
柴崎の声「待て,待ってくれ.みんな,池田社長と千野の差し金だ. 3000万やると言うので.」
千野「なんてことを.」
柴崎の声「俺が悪いんじゃない.悪いのは,池田と千野だ. 俺がやめろと言ったのにどうしても二人がやれやれと言ったんだよー. 悪いのは俺じゃない.池田と千野が悪いんだあ. 悪いのは池田と千野だあ.」
池田と千野は社員達に取り囲まれた. その様子を保夫,明子,晴子も向いのビルから眺めていた. そしてパトカーが駆けつけた.
池田「何で,私を見るんだ!」
保夫のところへきょうこもやってきた.
きょうこ「これでおじ様の霊も浮かばれるわね.」
保夫はうなずいた.マイトはにやりとしながら去り, オショウとタミー,そしてヨガ,デジコンも去って行った.

今週のよね子 その2

オショウが田沢の家を通りかかると, ちょうど保夫達が入居しなおしているところだった. 田沢の妻も病院から戻ってくると言う.去って行くオショウを見て, 一人晴子だけが疑問に思っていた. さてオショウがスクーターを走らせていると
よね子「あら,和尚様.」
オショウ「あ,やばい.」
オショウはスピードを上げて逃げ去った.
よね子「和尚様,待ってえ.乗せてよ.もう,冷たいんだから.」
悔しがるよね子.そこへマイトの車がやってきた. さてオショウはよね子を巻いて悠々とスクーターを走らせていたが, 角のところで口をあんぐり開けて驚き,スクーターを止めてしまった.
よね子「ふふん.和尚様.どうして逃げるの.うーん.」
よね子はオショウの耳をつかんだ.
オショウ「よしなさいよ.あっちにいたのが,何でここにいるの?」
よね子「うーん.いいじゃない.」
そのとき,オショウは何かをみつけた.
オショウ「マイト!」
マイトは車の中から投げキッスを送るのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp