第十九回

東南アジアからの留学生を売春婦に仕立てる組織を叩き潰す
女子留学生を売る吸血医

脚本:和久田正明 監督:西村潔

早朝の新宿を一人の女がスリープ1枚だけの姿で走っていた. 彼女は止まっているタクシーを見つけると
女「Hey, driver. Help me!」
と叫んで運転手(吉田良全)を叩き落し,タクシーに乗り込んだ. 怪訝な顔のタクシー運転手に女は片言の日本語で叫んだ.
女「ケイサツヘイッテクダサイ. ワタシノポリスマネーヲウッタエルコトアリマス.」
結局,運転手は女の頼みを受け入れてタクシーを発進させた. そこへ車がやってきた.車はタクシーを強引に止めた. そして中から出てきた男(藤木孝)は警察手帳を見せて女を連れ出そうとした.
女「No. No. ケイサツ,チガイマス.」
だが女のいうことをタクシー運転手は信じなかった.さらに
男「シャブ中で頭いかれてるんだよ,この女.」
と言うので運転手は男を刑事と思ってしまった. 男は女の腹に当身を食らわせて倒し,連れ去ってしまった.

男のマンションでは,あの女ポーリーが逃げたことを知っていたのか, と他の女達に男の部下が詰問していた.そこへ男がポーリーを連れて帰ってきた. ポーリーが逃げたのはこれで三度目.そこで男は覚醒剤を打つことにした. だがポーリーは覚醒剤を打った途端に死んでしまった.

マイトとタミー

マイトはさとみのためにテニスのラケットを物色していた.
マイト「これいいんじゃないかなあ,ピッチングラブねえ. うーん,ピンクだしねえ.」
マイトはさとみの背後に回り,さとみの背後から両手を伸ばして, さとみの両手を持ってラケットを振ってやった.
さとみ「なんか,このラケット,感じちゃうみたい.」
マイト「感じるだろう,名前がラブって言うんだよ.」
さとみは微笑んだ.そこへタミーがやってきた.
タミー「私にもラケット選んでいただこうかなあ.」
マイト「どれくらいやってます?」
タミー「まだ始めたばっかり.」
マイト「あ,じゃあ,全くできないのとおんなじですね.これも難しいし, これなんか顔に合って…ないですね.これも悪いし, これなんかいいんじゃないですか.デカラケだし,今はやってるんですよ.」
タミー「真っ黒でいいわね.おいくらかしら.これいただく.」
マイト「えー,3万円ですけど,1万…1万は安すぎるねえ. 二万,二万ちょっと.」
タミー「ごめんなさい.お財布忘れちゃった.また今度.」
そう言いながらタミーはマイトに紙を渡した. 紙には「今夜0時集合」と書かれていた.

今週のよね子

さてオショウが鼻歌を歌いながら境内をほうきではいていると
よね子「和尚様.」
オショウ「え.あ.」
よね子「和尚様.」
オショウ「あ.」
オショウはほうきを放り投げて慌てて逃げ出した.
よね子「和尚様.」
よね子はオショウがいたところにやってきた.
よね子「あら.お掃除しかけで,どこへ.」
するとオショウがお堂の後ろに隠れて逃げていくのが見えた.
よね子「まあ.かくれんぼのつもりね.」
オショウはよね子が消えたので一安心.お墓のところで
オショウ「ああ,やれやれ.」
だが
よね子「見つけた.」
よね子が抱きついてきたのでオショウは驚いた.
オショウ「ああ,奥さん.ああビックリした.」
よね子「かくれんぼだなんて和尚様ってかわいいのね.子供みたい.」
オショウは苦笑した.
よね子「抱きしめてあげたくなっちゃった.」
オショウ「あ,いやいやいや.この暑いのに.」
よね子「お部屋へ参りましょう.」
オショウ「何しに?」
よね子「知ってるじゃありませんか.」
あのことしかよね子の頭にはないようだ.オショウは困った. そのとき,オショウは一計を案じた.
オショウ「あ,奥さん.もう一回かくれんぼしましょう. で,僕が見つかったら,今度部屋へ参りましょう.」
よね子,大喜び.
よね子「え,いいわ.やりましょう.」
オショウ「顔隠して.」
よね子「はい.」
よね子はしゃがんで両手で顔を隠した.
よね子「もういいかい.」
オショウ「まだですよ.」
よね子「もういいかい.」
オショウ「まーだだよー.」
そう言いながらオショウが逃げているところへ
マイト「何がまーだだよだい.今,いくつ?」
マイトを見たオショウは笑った.
オショウ「頑張ってますよ.仕事?」
マイト「今夜0時だ.」
オショウ「Ok!」
そこへ
よね子「もういいかい.」
オショウは口をあけた.
オショウ「まーだだよー.」
マイト「もういいよ!」
オショウはマイトの肩をつかんで,なにすんだ,という表情.

よね子「もういいの.」
よね子はオショウを探して走り回った. するとお経を唱えている声が聞こえてきた.
よね子「みつけた.」
よね子はお経を唱えている人の背中に抱きついた.
よね子「和尚様,キスして.」
男は口を突き出しながら振り返った.
マイト「かわいい口ですな.」
よね子は驚いた.

esquire club

esquire club でタミーは客に口説かれて困っていた. そこにちょうどつけひげをつけたデジコンがいた. タミーはデジコンに目配せした.デジコンがスイッチを押すと, タミーの胸についたブローチが鳴り出した.
タミー「子供のおしめを取り替える時間なんで,失礼.」
タミーは客から逃げ去った.
タミー「助かったわ.ありがとう.」
デジコン「遅れるぞ.」
タミー「素敵なおひげ.ちょっとはがれてるけどね.」
デジコン「馬鹿野郎.これがいいんだよ.」

仕事開始

タミー「今月の初め,東京湾の埋立地で若い女性の死体が発見されたわ. その仏様は東南アジアからの留学生.」
マイト「死因は?」
タミー「シャブね.彼女は特異体質だったらしくて, シャブに素早い死の反応をしてしまったらしいわ.」
オショウ「日本へ何の勉強に来てたの?」
タミー「彼女は名前をポーリー・ライムと言って医学生だったの.」
ヨガ「学校は,どこ?」
タミー「城東医科歯科大.彼女を招いたのは,この人.」
デジコンがその男(川辺久造)をスクリーンに映した.
タミー「城東医科歯科大講師阿川はるひこ.」
阿川の証言「そりゃあ,ショックです.彼女は10ヶ月前に当校に入学しました. 授業のない間,私のクリニックで看護婦見習のアルバイトをしていましたが, ま,それは,とても明るくていい子でした. それが三月前から学校にもクリニックにも姿を見せなくなって, どういうことになったのか…」
マイト「三月前から消息を絶っていたのか.」
タミー「それが,クラブで働いていたらしいの.」
オショウ「クラブで? なんでまた.」
タミー「この男(藤木孝)がそこの支配人で佐久間こうじ.」
佐久間の証言「うちにいたのは一ヶ月ちょっとですよ. うちは他にも東南アジアの子がいるんで, うまくいくかなあと思ったんですけどねえ.急にいなくなって.いやあ, 後のことは知りませんよ.もちろん,シャブ打ってたなんて全然.」
タミー「警察の捜査もここまでで,あとは暗礁に乗り上げたみたい.」
デジコン「じゃあ,誰が彼女の死体を捨てたんだ.」
タミー「謎ね.ゴッドもこの二人の男が臭いと睨んでるわ.ま, 表面上は全く結びつかないんだけど, 留学生のポーリーが死んだ件と何か関係があるんじゃないか. その辺のところをはっきりさせたいのよね,ゴッドとしては.」
マイト「させましょう,はっきりと.」

阿川の経営する阿川クリニックの前で.
デジコン「あ,オショウ,虫歯が一本,二本,上下虫歯だらけですよ. いかんですなあ.」
オショウ「冗談じゃないよ,お前.」
オショウはデジコンの口の中を見たが
オショウ「こりゃ驚いた.たいしたもんだなあ.虫歯なしだよ.」
デジコン「そりゃそうですよ. 毎食後,それから寝る前に必ず歯,磨いてるんですからねえ.」
オショウは負け惜しみを言った.
オショウ「過ぎたるはおよばざるがごとしってなあ, 磨きすぎで歯,なくなった奴がいるんだぞ.」
デジコン「ホントですか?」
オショウ「しょうがない,俺,行ってくるわ.」
デジコン「よろしく.」
仕方なくオショウは阿川クリニックに患者として潜入した. 阿川クリニックは受付の人(マリアン)も含めて, 東南アジアからの留学生が何人も働いていた.オショウは阿川の診察を受けた. 虫歯は見つかったが抜かないと言う治療方針でオショウは一安心.
オショウ「いやあ,いい子だったなあ.清潔な感じでさわやかで. あんないい子は滅多にいないわ.」
デジコン「オショウ,それより阿川の方は?」
オショウ「かわいいんだよなあ.あれ,根っからやさしいんだよ.」
デジコン「オショウ,阿川.」
オショウ「え?」
デジコン「阿川!」
オショウ「ああ,阿川ね.」
オショウは任務を忘れていたようだ.
オショウ「阿川はあれ,歯医者としてもカッコついてるんじゃないか.」
デジコン「阿川は歯科医師会の中でもかなりの座を占めてるって話だからな.」
オショウ「そりゃそうだろう.言うことが違ってたよ. 親から貰ったものは大事にしろって.」
デジコン「しかしこっちが知りたいのはその裏の顔なんだがなあ.」

ヨガは酒屋の店員に化け,佐久間の店に入り込んだ.
タミーの声「佐久間のクラブは会員制でフリーの客は入れないわ. それもかなり厳しいチェックがあって何だか秘密めいて胡散臭いの. 客で潜り込むのは会員に化けるしかないんだけど, その名簿はどうやら店にはないみたい.」
ヨガは店の中を探ってみたがみつからなかった. そこでタミーとデジコンは佐久間のマンションを見張ることにした.
タミー「あそこの二階が佐久間の部屋よ.」
佐久間の部下が女達を連れ,車に乗せた.
タミー「クラブサロの女達よ. 佐久間の隣りの部屋で住み込みのような形になってるの.」
デジコン「ふーん.オール東南アジアか.」
タミー「毎日4時になると,ああやって出勤するの.帰りも同じ.」
デジコン「彼女達は完全に管理されてるってわけだなあ.」
タミー「部屋には彼一人ねえ.」
デジコン「訪問してみましょう.」
デジコンは佐久間の隣りの部屋に忍び込んだ. デジコンはリモコン操作で非常ベルを押し, 佐久間が出た隙に部屋に忍び込んだ.そして覚醒剤と名簿を発見. 名簿のあるページの写真をマイトの写真と取り替え, 取り替えたページの写真を撮っておいた. そしてデジコンとタミーは部屋から出た佐久間を尾行した.

その晩.早速マイトが客として潜り込んだ.
ホステス「いらっしゃいませ.よろしいですか.」
マイト「Sure. Please.」
マイトは隣りにホステスを座らせた.彼女は東南アジア人だった.
ホステス「お会いするのははじめてですね.」
マイト「うん.いつ来てもいい店だねえ.ホントに. どうしたの? 悩みでもあるの?」
ホステス「どうしてですか?」
マイト「Looks like a tired. ちょっと疲れてるみたいだよ.昼間は何してるの? あ,そうか.別の仕事でせっせと働いて国に送金か.偉いなあ.」
ホステス「いいえ.昼間は私,学生だから.」
マイト「留学生.それじゃあ, 国のパパやママは君の帰りを楽しみに待ってるんだねえ.」
ホステスは涙を浮かべた.
マイト「どうしたの?」
ホステス「私,日本へ勉強しにきました.それなのに早く国へ帰りたい. もうたくさんです.」
マイト「君ね,踊りましょう.」
マイトとホステスはダンスを踊り始めた.
マイト「実はねえ,君と外で会いたいんだ. いろいろ話したいことがあるんだよ.」
ホステスは様子を伺い
ホステス「いけません.」
そこへ佐久間がやってきた.
佐久間「お客様.困りますね,秘密の取引は.」
マイト「いやあ,そういうわけじゃあ.」
佐久間「おそれいりますが,ちょっと.」
マイト「Excuse me.」
マイトは佐久間についていった.
佐久間「かまいませんよ.あなたがお気に召したのでしたら. ご相談に乗りましょう.店を通していただければ, 送り迎えからお部屋のお世話まで全て致します. しかしあの子の体は特別仕込ですから.」
マイト「いやいや,いいんだよ.」
佐久間「まあ,その切にはおこしください.」
マイト「ありがとう.」
佐久間「失礼します.」
佐久間が去った後,マイトはホステスに聞いた.
マイト「ここの子はみなそうなのか?」
ホステスはうなずいた.

さて阿川の歯医者では,阿川が薬を取り替えていた. 両方とも青い瓶に入っていた. そして後の処置をオショウお気に入りのスー(マリアン)に頼んだ. スーは患者の口に劇薬を入れてしまい,患者はのた打ち回った. 阿川はスーを難詰した.阿川は患者から1千万を要求されたと言い, スーに働いて償えと言った.その晩.クラブサラにて.
佐久間「皆さん,今日はようこそ. さて恒例になりましたクラブサラのビッグイベント女体の競り売りでございます. では,紹介いたしましょう.ミス スー・タハラン!」
競りにかけられたのはスーだったのだ.
佐久間「競り落としたお客様は, ここ数ヶ月ミス スー・タハランをオンリーにして, 夢のように過ごすことができます.さあ,早速参りましょう.どうぞ,お声を.」
競りは50万円からスタートし,結局,マイトが200万円で落札した. 葉巻をくわえながら両手でVサインをするマイトを, スーは悲しそうに見つめていた.クラブサラをマイトとスーは一緒に出て, 佐久間の用意した車で送られた.すかさずタミー,ヨガ,オショウが後をつける. そしてマイトとスーは佐久間のマンションの一室へ連れてこられた.
スー「私…」
マイト「大丈夫.これは芝居だから.僕を信用して.」
スー「はい.」
さて車の中では
タミー「マイトもかなりの狸ねえ. すっかりなりきって楽しんじゃってるみたい.」
オショウ「商売熱心で結構じゃないの.ちょっと連絡入れてくれ.」
ヨガ「Ok! マイト.そちらの様子はどうだ.」
マイト「佐久間は3階にも部屋を借りていた.305号室だ. 見張りがうろついてるから,用心してきてくれ.」
ヨガ「了解.」
オショウ「よし,俺行ってくるから頼むわ.手,貸してくれ.」
タミー「Ok!」
連絡を取ったマイトはスーを慰めていた. そしてタミーはわざと見張りの目をひきつけ, その隙にオショウがマンションの中に入り込んだ. オショウは305号室に入った.オショウを見たスーは驚いた. そこへノックの音が.見張りが部屋の中に入ってきた.一生懸命ごまかすマイト. スーは見張りの中にあのときの患者がいるのに気がついた. 見張りはマイトに騙されて出て行った.

ゴッドのオフィスで
マイト「奴らの手口はこうだ.歯科大講師の阿川が立場を利用して留学生を招き, 罠にはめて佐久間の店に流す.そこで女の子をホステスとして働かせながら, 高級コールガールとして仕立てていく.逃げようとする奴は無論容赦はしない. まさに血も涙もないなあ.調べたところ阿川は去年だけでも, 7人の女子留学生を招いている.」
オショウ「その子達はじゃあ,今どうなっちゃってるの?」
タミー「今はみんな帰国しているわ. でも日本でやらされていることがことだけに公に訴えることもできず, 泣き寝入りをしているの.中には自殺をはかった娘もいるって話だわ. 阿川が考えたのは留学ビザのメリットね. 普通の観光ビザだと有効期限は60日だけど, 留学ビザだと1年は日本にいられるの.つまり, 留学ビザの特性を利用して女の子を1年で全部取り替えて, 毒牙にかけていたってわけ.」
デジコン「ほっておけば,もっともっと東南アジアの女の子が泣かされるぞ.」
オショウ「下手すりゃ国際問題だ.許せんな,奴ら.」
マイト「もう一つ見逃せないのは奴らがシャブを扱ってるってことだ.」
デジコン「そのシャブってのは, 歯科医の立場を利用した阿川の線じゃないかと思うんだがなあ.」
マイト「俺もそう思う.よーし,阿川当たってみよう.」

阿川をタミーが訪れた.タミーはスーの友達と称して訪れた. タミーは阿川を誘惑しながら質問した. タミーは麻薬を持っているので阿川に売ろうと言うが, 阿川は白を切った.だがタミーは受けないとスーのことを警察に言うと言った. その晩.阿川は esquire club へやってきた. タミーを連れ出した阿川は佐久間にタミーの首を絞めさせた. 佐久間はタミーの懐からヘロインを取り出した. そこへ刑事に化けたデジコンとヨガが登場.「麻薬所持の現行犯で逮捕」した. 阿川は女が持っていたというが,タミーの姿は消えていた. デジコンとヨガは阿川と佐久間を「連行」した.一方, 佐久間の部下はマイトに殴り倒された.
マイト「さあ,いいところへ連れてってやろう.」
部下「え,どこへだよ.」
マイト「桜組よ.いや,桜田門だ.」

翌朝.部屋に閉じ込められた留学生達. 呼び鈴が鳴ったので出てみると玄関に手紙が挟まっていた. それは黒い封筒に入っていて, 導火線に火のついたダイナマイトを手に持ち, 葉巻をくわえたギャンブラーが描かれたシールで封をされた手紙,すなわち, マイトからのハンギングパーティの案内状だった.スー達は案内状を読んだ.
マイトの声「本日午後2時,下記の場所へおいで下さい. 東南アジアの留学生をコールガールに転落させて泡銭を稼いでいた悪党達に 制裁が下されることになっています.」
そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

阿川と佐久間は手錠をはめられ,歯医者の椅子に座らされていた.
ヨガ「先生,用意ができました.」
マイトとデジコンが白衣を着て手術用手袋をして登場した.
デジコン「チーフ,どの道具を?」
マイト「抜きやすい,その長いのでやる.」
マイトは大きいペンチを,デジコンは少し小さめのペンチを手にとった.
阿川「え?」
佐久間「こんなことして,どうしようっていうんだ.」
阿川「訴えるぞ.君達はなんなんだよ.」
だが阿川はヨガに頭を押さえ込まれてしまった. そして阿川と佐久間はペンチで歯を抜かれそうになった. 痛がる阿川と佐久間.そして一本ずつ,阿川と佐久間から歯が抜かれた.
阿川「どうしてこんな酷いことするんだ.」
そこへオショウが白衣を着て登場した.
オショウ「治療中は無駄口叩いちゃいかん.自分の胸に聞けばわかるだろう.」
佐久間「いったい,何のことだ?」
マイトがペンチを佐久間の顔の前に見せたので
佐久間「やめろー!」
マイト「やめてほしければ今までやってきた悪事を全部喋るんだなあ.」
佐久間「何のことだ.」
タミー「あなた達から逃げようとしたポーリーをシャブを打って死なせたこと. そしてスーを汚い罠にはめたこと.それからさかのぼってまだまだあるはずよ.」
阿川「バカな.下らん言いがかりはよせ.」
マイト「なら自白しろ.」
佐久間「私は知らん.」
マイト「よーし,全部歯を抜いちまえ.」
阿川は悲鳴をあげた.
デジコン「いいのか,おい.」
阿川「よせ.よせ.言うから,よせ. 二年前からこの男と組んで東南アジアの女の子達を留学生として日本に呼び, そして罠を仕掛けてコールガールをさせて荒稼ぎをしてたんだよ.」
佐久間「いや,違う.俺はただ,言われるままやっただけだ.」
マイト「二人の結びつきは? 薬用の麻薬をある筋へ流したのをこの男に嗅ぎつけられたんだ.」
デジコン「最初はゆすられたのか?」
阿川「そうだ.私は元々被害者だ.」
オショウ「馬鹿も休み休み言え.二人は持ちつ持たれつの関係じゃないか.」
タミー「それにしても酷いじゃない. 逃げ出したポーリーという留学生を殺して.」
阿川「そ,そ,そ,そ,それは私のせいじゃない.」
佐久間「あれは事故だ.あの女,特異体質だったんだよ. だから殺しじゃない.」
阿川「し,しかし,埋立地へあの死体を捨てたのはお前じゃないか.」
実は彼らは新宿駅東口の小屋にいた. そして彼らの自白は外へ大音量でスピーカーで流されていた.
佐久間「あんたの指示に従ったんだよ.」
阿川「お前,今更何を言うんだ.」
佐久間「冗談じゃねえよ.」
二人が大喧嘩を始めた.野次馬が群がった.そのときカーテンが開き, 阿川と佐久間は「女子留学生の生血を啜った ―現代のドラキュラ展―」と 題してさらされた.それをスー達女子留学生も見た.
阿川「違う,これは罠なんだよ.悪いのはこいつなんだ.」
佐久間「みんな,出鱈目なんだ.こいつが悪いんだよ.」
二人は言い争いを始めた.その様子を見届けてハングマンは去った. 女子留学生と入れ替わりにパトカーが止まり,警官が駆けつけた.

そして

esquire club にヨガ,マイト,デジコン,オショウが来ていて酒を飲んでいた. ロックの水割りを飲んだオショウは歯に酒が染みて痛がった.
オショウ「中途半端におい,治療やめたから…」
デジコン「ちょっと待って.あ,こりゃ駄目.抜かなきゃ.」
オショウ「いい,いい.」
デジコン「オショウ,抜いたほうがいいって.」
オショウ「いいって.」
デジコン「オショウ,これはやっぱり抜いたほうがいいよ.」
そこへタミーが大きなペンチを持ってきた.
マイト「はい,ありがとう.おい,抜いてあげよう.」
オショウ「おい,いいかげんにしろ.」
デジコン「オショウ.」
ヨガとデジコンはオショウを取り押さえた.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp