第十六回

二世議員母子の轢き逃げ事故隠蔽工作のからくりを暴露する
ゴッドマザーの馬鹿ムスコを吊せ

脚本:鴨井達比古 監督:永野靖忠

若き政治家郷原道夫(永井秀和)は「明日の政局を語る会」で講演をしていた. 彼の父親も政治家で理想を追い求めていたのだが, 総理目前にして病気で倒れてしまったのであった. 道夫は父の夢を継いで将来は総理になり,明るい未来を作ると宣言していた. そして自分への支援を頼んでいた.講演終了後, 控え室で母親(日高澄子)が講演の内容は70点だと誉めていた. 道夫はビールを飲みながら, 「あんなじいさん,ばあさん相手にしてるんだもん.」とこぼした. そこへ運転手の平井が貧血を起こしたと言う連絡が, 女性秘書(西尾三枝子)から入った. そこで道夫は自分で車を運転して帰ることにした.

車の中で.
道夫「まったく.どうして日本人って,こう馬鹿なのかなあ. あのババア連中,俺のこと芸能人と同じだと思ってやがる.」
道夫はいい気なものだ.
母親「それでいいんです.どんな馬鹿でも一票は一票.次の選挙には なんとしてでもトップ当選しないと郷原の名前が泣きますよ.」
この子にしてこの母親あり.
道夫「わかってますよ.おい,明日はゆっくり寝ててもいいんだろう.」
秘書「いえ.7時半の飛行機で札幌へ飛んでいただきます. 北海道知事選の応援です.」
道夫「7時半.やれやれ.」
道夫はカーラジオをつけ,大音量で聞き始めた. 秘書はたしなめたが道夫は学生時代にA級ライセンスを取ったと意に介さない. 母親もストレスが溜まっているからと好きにさせろと言う始末. だが秘書の懸念は最悪の形で現実のものとなった. 道夫の車は男をはねてしまったのだ.ここまでなら, どこかで見たような話だ. そこへ寿司屋の出前持ちがやってきた.出前持ちは救急車を呼ばなければ, と公衆電話へ走ろうとした.慌てた母親は秘書のたかこにお金を渡した. 秘書は出前持ちにお金を渡した.そして道夫達は車で立ち去ってしまった.

今週のよね子

しばらく経ったある日.妙徳寺にデジコンが来て何かを作っていた. 新聞を見ていたオショウは田中明夫という男が轢き逃げされた記事を読んだ. 事件の捜査は難航していた.すると6時になった. デジコンが作っていた装置が完成した. オショウが装置を操作するとお寺の鐘が鳴った. リモコン操作でロボットが鐘を突く仕掛けになっていたのだ. オショウは嵐の日でも本堂から鐘が突けると大喜び.オショウは礼を言うが, 部品代が1万5千円と聞き,渋々財布を出した.だが一万円札しかない. 仕方がないのでオショウは二万円を出した.デジコンは,お釣りはいらないの, と二万円をそのまま取ってしまった.そこへよね子が登場.
よね子「和尚様.あ,どうも,いらっしゃいませ.」
よね子はデジコンに挨拶した.デジコンもよね子に挨拶した.
デジコン「あ,奥様ですか.」
すかさずオショウはデジコンをはたいた.よね子は大喜び.
デジコン「毎度,どうも.」
オショウ「いや,電気屋さん,ゆっくりしてくださいよ.ね,電気屋さん.」
だがデジコンはさっさと帰ってしまった.
よね子「どうもご苦労様でした.」
オショウ「スイカ冷えてるから.」
デジコン「毎度,どうも.」
これからのことを思うと…オショウは頭を抱えてしまった.
よね子「和尚様.」
オショウ「え?」
よね子「参りましょう.」
オショウ「参りましょうって,どこへ?」
よね子「あら,嫌だわ.お忘れですの.」
よね子はオショウの手を握った.
よね子「今日は氷川神社のお祭りで二人でベッコウ飴舐めながら歩こうって, 仰ったじゃありませんか.」
オショウ「そんなみっともないことできますか.いい年して.」
逃げるオショウをよね子が追いかけた.
よね子「あら,なんでみっともないんです.」
オショウ「冗談じゃありませんよ.」
よね子「何をごちゃごちゃ仰ってるの.」
オショウ「あ,いた.」
オショウはつまづいて転んでしまった.
よね子「和尚様.あら,和尚様,そんなことなさっちゃ.」
よね子はオショウの上に乗っかった.なぜかよね子は恍惚の表情.
オショウ「よしなさい,こら.」
よね子はオショウの手を無理矢理自分の胸に当てた.
オショウ「よしなさいって,こら.」
よね子「もう,いやーん.ちょっと,ああーん.」
オショウ絶体絶命の危機.
オショウ「ああ.」
そこへうまい具合に電話がかかってきた.オショウは飛び起きて電話に出た. よね子はオショウに寄りかかって甘えた声を出した.
オショウ「はいはい.妙徳寺でございますが.」
よね子「うーん.」
タミー「なあに? 息なんてはずませて.」
オショウ「いや,あのう,渋り腹でトイレへ.」
よね子はオショウの体を撫で回した.
タミー「集合命令が出たわ.」
オショウ「ああ.」
タミー「今夜の0時.」
オショウ「はあ.ご本山のほうへ.集合でございますか. はい,承知いたしました.大僧正様.失礼致します.」
オショウは電話を切った.

カジノ「ダイナ」にて

カジノ「ダイナ」を道夫が訪れた.道夫にテレビカメラや記者達もついてきた. 道夫がほざく.
道夫「この店は未成年者が少ないようだね.」
役人「はい.この辺りでは事件の少ない優良店でございます.」
マイト「何事ですか,いったい.」
役人「ああ,マスターかね.こちら,衆議院議員の郷原道夫先生だ.」
マイトは道夫を無視してテレビカメラに手を振った.
役人「最近,えー,新宿で未成年の事件が多いんでねえ, 実態視察に回っておられる.」
マイト「衆議院って,この未成年者が?」
マイトの暴言を聞いて役人の顔が真っ青になった.
役人「君,何を失礼なことを言う.あやまりなさい.」
マイト「じゃあ,すいません.」
役人「なんだ,その言い方は!」
道夫はぽんぽんと役人を軽く叩いてたしなめた.
道夫「いやいや.構わないよ.」
道夫を無視してマイトも取り巻きをぽんぽんと軽く叩いた.
道夫「都心にこのようないかがわしい町が存在すると言うことは, 我々政治家が無力だからだ.そう思わないかね.」
道夫はそうほざいて咳払いした.マイトも咳払いして道夫の後をついていった.
道夫「いやあ,それにしても空気の汚い店だねえ.のどがからからだよ.」
役人「申し訳ありません.あ,君.マスター.先生に何かお飲み物を.」
そこでマイトは
マイト「飲み物? さとみちゃん.」
マイトは従業員のさとみを呼んだ.
マイト「事務所にポチにあげたミルクが半分残ってるだろう. あれを先生に差し上げなさい.」
さとみ「はい.」
マイト「よくばい菌を取って.」
さとみ「承知しました.」
さとみは事務所へ向かった.
マイト「とてもおいしいですよ.はい.」
機嫌を損ねた道夫はそっぽを向いて帰ってしまった.
マイト「何か,失礼なことを申し上げたかなあ.」
さとみ「いいえ.」

仕事開始

ゴッドのオフィスで新宿を道夫が視察する様子を報じるテレビニュースを, ハングマンが見ていた.
道夫「私も年が若いですから若者の気持ちはよくわかります. なぜ彼らが夜の盛り場に集まり,無意味な時間を過ごすのか. それは今の社会に夢がないからであります.」
デジコンがテレビを切った.
オショウ「ふん.よく言うよ.」
マイト「ミルクをぶっかけてやりゃ,よかった.」
デジコン「さて,今のニュースを見てもらったのは, 今度の仕事に関係があるからだ.二週間ほど前の夜, 都心の住宅街の道で轢き逃げ事件があった. 被害者は救急車で病院へ運ばれる途中で死んだんだが,いわゆる浮浪者でね, 身元は不明だ.」
タミー「誰が救急車を呼んだの?」
デジコン「現場を通りかかった寿司屋の旦那で,この男だ.」
あのときの出前持ちがスクリーンに映し出された.
デジコン「ただし,轢き逃げされた車は見ていないと警官に言っている.」
ヨガ「じゃあ,手がかりなしか?」
デジコン「ところが事件から10日後,警察に差出人不明の投書があって, 轢き逃げした車のナンバーが書いてあった. 警察が念のためにそのナンバーを調べたら, 車の人物がこの人物だったってわけだ.」
デジコンは道夫をスクリーンに映し出した.
デジコン「衆議院議員郷原道夫29歳.五年前, 総理大臣の椅子を目前に急死した郷原りゅうぞうの一人息子. 一昨年の選挙で日本のケネディのキャッチフレーズで最年少当選を果たした, 政界のサラブレッドだ.」
マイト「こいつはたまげた.で,警察は彼を調べたのか.」
デジコン「一応はね.だがアリバイがある.その時刻,郷原道夫は赤坂の料亭で, 旧郷原派の大物代議士岩田雄作(幸田宗丸)と会っていたって言うんだ.」
オショウ「岩田か.郷原りゅうぞうの一の子分だった男だ.な.」
デジコン「そのとおり.その大物がアリバイを証言したら, 警察は手も足も出ない.結局投書の件は郷原道夫の反対派の悪質な悪戯だろう, ということになった.」
タミー「それで,ゴッドがなぜこの事件を?」
デジコン「アリバイを証明した岩田が実はその時間に赤坂の料亭じゃなくって, 四谷の愛人のマンションにいたと言う噂がある.」
マイト「なるほど.ありそうな話だ.」
オショウ「郷原道夫が演説終わったのは何時だっけ?」
デジコン「夜の9時半.」
オショウ「轢き逃げ事故があったのは?」
タミー「10時.」
オショウ「ピッタリだな.演説終わってまっすぐうち帰ったとすれば, ちょうどその時間に現場を通ってることになる.」

さて郷原道夫の屋敷に道夫が予算委員会を中座して帰ってきてしまった. 母親はそのことを注意した.予算委員会はテレビ中継されているから, 全国民に顔を売る必要があるというのだ.道夫は眠いといって寝室へ向かった. 母親はたかこに轢き逃げ事故に関する投書の件を尋ねた. たかこはその件を都会議員の大川に調べさせていた. そして投書があったという報告を大川から受けていた. そのことをたかこは母親に報告した.母親は例の寿司屋を疑った. たかこは事故の件がばれたら運転手の平井を自首させればいいと言うが, 母親はイメージダウンは避けられないと言った.道夫に傷をつけてはならない.

その頃,タミーとオショウは例の寿司屋を見張っていた.
タミー「坂井勇28歳.神田の寿司屋で10年修行して1年前に結婚と同時に独立. ここに店を借りて営業を始めたそうよ.近所の評判もまあまあらしいわね.」
オショウ「住まいの方も?」
タミー「この裏の通りのアパートに23歳になる妻きよみ(東啓子)と二人暮し. あ,ほら.あれ奥さんじゃない.」
きよみがやってきて営業開始. オショウとタミーは店に入った.タミーはトロを注文.
オショウ「じゃ,あたしはタコいただきますかなあ.タコ坊主なんてね. しかし,彼女は災難でしたなあ.夜道を歩ってて, いきなり後ろからドーンですからねえ.」
タミー「そうよ.浮かばれないわよね.」
勇がジロっとオショウ達を睨んだ.
オショウ「で,轢き逃げした奴はまだ捕まらんのかね?」
タミー「暴走族らしいって言うんだけど.」
オショウ「ありゃりゃりゃあ.」
ここできよみが登場した.
きよみ「轢き逃げですか?」
タミー「ええ.あたしの友達でね,三日ほど前に.」
オショウ「そうそう.」
きよみ「気の毒にねえ.このあいだもねえ,この近くであったんですよ. うちの主人がねえ,たまたま現場通りかかったんですけど.」
オショウ「ほう.で,犯人は捕まったんですか?」
きよみ「すぐ逃げちゃったらしくって.そういう時はねえ, ちゃんと車のナンバー見なくちゃ駄目じゃないかって, この人にも言ったんですけどねえ.」
勇の表情が変わった.
勇「よさないか.」
勇の表情が変わったのをオショウとタミーは見逃さなかった. ここでオショウは話題を変えた.
オショウ「タコ,遅いですなあ.」

マイトは岩田を見張っていた.岩田の愛人も一緒だ. マイトはホステスに聞き込んでいた.ここには道夫も時々やってくる. そして岩田は道夫に気を使っている.そこへバーテンに化けたヨガがやってきた.
ヨガ「お姐さん,電話.」
ホステスが去った隙に.
ヨガ「あの女の住所がわかった.」
ヨガはマイトに紙を渡した.

寿司屋できよみは札束を発見.勇に確認したが,勇はなかなか答えない. それをタミーとオショウが盗聴した. やっと勇が理由を話そうとしたところへ電話がかかってきた.
勇「すいません,もう閉店なんですけれども…わかります.私も,もう一度, お会いしたいと思っていたんです…わかりました.じゃあ.」
勇は電話を切り,札束を持って出かけていった. 帰ったら何もかも話すときよみに言い残して.

電話はたかこからのものだった.ホテルでたかこは投書の件を勇に詰問した. たかこは勇が警視総監だって対当に口を聞けない男だと言い, さらに500万円の小切手を渡した.だが勇は受け取らず,札束も返した.
勇「今日は,これを返しに来たんです. あれ以来,死んだ人の夢をよく見るんですよ.」
たかこ「たかが浮浪者でしょう.あんな男のために将来国を背負って立つ, 有能な政治家に傷をつけるつもり? 大体何の徳があるって言うの?」
勇「正直言って,金は欲しいです.でも,浮浪者だって人間です!」
一瞬,たかこは息を呑んだ.
たかこ「1千万払うわ.」
勇「やめてください.人間は誰でも,自分でやったことの責任はとらなきゃ.」
たかこ「どうする気?」
勇「あんた達が自首しないなら,私がこの足で警察へ行きます.」
たかこ「警察が取り上げてくれると思うの? 相手は郷原道夫なのよ.」
勇「ロッキード事件も全部有罪になってますから.失礼します.」
勇は帰っていった.女秘書の松田たかこは部下に勇の始末を命じた. その頃,タミーとオショウもホテルにいた. 松田たかこが一人で出てきたのを見て,勇が始末された可能性があることを知り, 慌てて駐車場へ向かったが後の祭りだった.

一方,岩田の愛人のマンションをデジコンとヨガが見張っていた. そこへ岩田が愛人に連れられてやってきた.早速ヨガの誘導指示を受けながら, デジコンは屋上からカメラを下ろし,岩田と愛人の情事を撮影した.

次の日.勇はナイフで背中を刺されて死んでいるのが見つかった. 号泣するきよみ.その様子をオショウとタミーも沈痛な表情で見ていた. ハングマンは怒りに燃える.
オショウ「ああ,くっそう.俺達の油断だった.」
タミー「甘く見すぎてたわ.」
マイト「しかし,ボンボンの道夫がそこまでなあ.」
デジコン「いや,命令を下したのは母親の徳江だろう.」
タミー「母親が?」
デジコン「ただの女じゃない.郷原が死んで5年になるが,今でも政界じゃあ, ゴッドマーザーと呼ばれてるくらいだ. 息子を総理にするまでは絶対に死なんと普段から公言しているくらいだ.」
オショウ「は.笑わしちゃあ,いけねえよ.寿司屋の仇はちゃんととってやる. ついでにそのゴッドマーザーもなあ.ところで,デジコン. アリバイ崩しの方はどうだい?」
デジコン「ああ.政治家なんて弱みだらけだからなあ. 少し荒っぽい攻め方をすれば簡単だ.」
オショウ「よーし,とことん追い詰めてやろうぜ.」

きよみは花束を持って勇の死体が発見された場所にやってきた.
オショウ「奥さん.ご主人は本当にお気の毒でした.」
きよみ「あなた,誰なんですか?」
オショウ「警察じゃあ,単なる殺人事件と断定しましたが, 奥さんは例の轢き逃げが絡んで殺されたんじゃないかとお思いでしょう.」
きよみ「なぜ,それを?」
オショウ「そのことを警察に話しましたか?」
きよみ「はい.でも相手にしてくれないんです.でも,なぜ? なぜ,あなたがそのことを?」
オショウ「あなたと同じようにご主人を殺した奴を憎んでいるからです. 犯人の見当はついています.でも証拠がないんです.」
きよみ「何ですって!」
オショウ「奥さん,ご主人の仇を討つために,ご協力願えませんか?」

きよみは勇の遺骨の前で呆然としていた.そしてきよみは電話をじっと見つめた. その頃,衆議院第二議員会館の道夫の部屋で松田たかこが道夫に その日の予定を伝えていた.そこへ電話がかかってきた.
きよみ「私は坂井の妻です.」
道夫「坂井?」
たかこも受話器に近づいた.
きよみ「あなた達に殺された坂井の妻です. 私は何もかも知っています.必ず坂井の仇を.」
ここで電話は切れてしまった.道夫は本会議を欠席し,屋敷へ帰った. 屋敷で徳江は屋敷にも電話があったと言い, 「大の虫を生かすには小の虫は死んでもいい」と, きよみを始末することを示唆した.道夫は国会議事堂へ向かった.

その頃,国会議事堂の前でマイトが強引に岩田の車を止めた.
運転手「君,危ないじゃないか.」
マイト「岩田先生ですね?」
岩田「何者だ.」
マイト「ちょっと,お二人だけでお話がしたいんですがねえ. こういうものについて.」
マイトはデジコンが撮影した情事の写真を岩田に見せた. 料亭で岩田は写真を見た.
マイト「最近のフイルムの感度もよくなりましたねえ.」
岩田は写真を破り捨てたが
マイト「無駄ですよ.フイルムは別の場所に保管してあります.」
岩田「目的は何だ?」
マイト「そういった写真が先生の選挙区に大量にばら撒かれたら, いつもはトップ当選でも次の選挙ではねえ.」
岩田「誰に頼まれた.」
マイト「別に.」
岩田「よし.フイルムを買おう.いくらだ.」
マイトは無言だ.
岩田「1千万.」
マイトは首を振った.
岩田「2千万.」
マイト「先生,やっぱり女のスキャンダルは恐いらしいですねえ.」
岩田「いくらだ.」
マイト「金は要りませんよ.」
岩田「なんだと?」
マイト「8月20日の夜,あんたは郷原道夫代議士と一緒にはいなかった. その写真の女の部屋にいた.そうですね.」
岩田「貴様.貴様,誰だ.」
なおこの会見の様子は隠しカメラで撮影されていた.
マイト「さっきも言ったじゃありませんか.名乗るほどのものじゃないって. さあ,どうします?」

坂井きよみの家を警察のものと称して徳江の部下が襲いに来た. すかさずオショウ,ヨガ,タミーが登場.部下を殴り倒し, 部下の一人を連れ出し,きよみを別の場所へ連れて行った. このことは残りの一人から徳江に報告された. さてマイト達はもう一人の部下をエレベータの穴に縛り付けていた.
オショウ「おい.今,エレベータは7階まで上がってる.このスイッチを押すと, この地下3階まで下がってくるのに30秒しかかからん. 喋るんだったら今のうちだぞ.」
部下「知らん.俺は何にも知らん. 貴様ら,こんなことしてただで済むと思っているのか.」
マイト「聞き分けのない奴だ.オショウ,お経を唱えてやれ.」
オショウ「こんな馬鹿に唱えるお経があるもんか.あ,いいのがあったわ. スイスイ,スーダラタッタ,スラスラ,スイスイスイー.
マイト「いくぜ.」
マイトはスイッチを押した.
オショウ「スーダ,スーダラダッタ,スラスラ,スイスイスイー っと.」
エレベーターが上からどんどん降りてきた.恐怖で部下の顔に脂汗が浮かんだ.
部下「わかった.やめてくれえ.喋るよー.止めてくれえ.喋るー.喋るよー.」
スイッチが押された.

道夫は議員会館の部屋で落ち着かない様子. そこへ変な女からの手紙が届けられた.
岩田の声「私は去る八月二十日の夜には, 郷原道夫君とは一度も会っていない事を誓います. この件につき警察当局の調べがあるときはいつでも, その事を証言するものであります.衆議院議員 岩田雄作」
さらに電話がかかってきた.
オショウ「郷原先生.手紙は読んだかね.」
道夫「貴様,誰だ.」
オショウ「寿司屋殺しの一件もちゃーんと知ってるんだぜ.」
呆然とする道夫.すかさずたかこが代わった.
たかこ「もしもし.あなた誰.いったい,どうすればいいの?」
オショウ「金を用意しろ.今夜中に1億だ.わかったな.明日また連絡する.」
オショウは電話を切ってしまった.徳江は岩田を呼び出したが出なかった. 道夫は外国へ行こうと弱気になっていたが 徳江は金を用意すると言い,関東銀行の頭取を呼ばせた.

きよみはホテルで目が覚めた.そして机の上に勇の遺影と, 白い封筒に入っていて数珠を握る手の描かれたシールで封をされた手紙, すなわち,オショウからハンギングパーティの案内状が置いてあるのを見つけた. きよみは案内状を読んだ.
オショウの声「きよみさん,目が覚めましたか.自分の犯した罪を隠すために, あなたの御主人を殺した悪党共に,裁きが下されることになりました. 明日の午後3時,下記の場所においで下さい.」
ハンギングパーティーの場所は東京都目黒区駒場5丁目20-1 東郷会館 3F 「郷原道夫・議員辞職記者会見」会場. そしてハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

次の日.道夫,徳江,たかこの3人は東郷会館に入った. すかさずタミーとヨガが現れ,「郷原道夫 議員辞職記者会見場」の看板を出し, 受付の机を出した.マスコミ各社がロビーに集まってきた.
タミー「国会記者クラブの皆さんですね. まもなく会見を始めますので,あと少々お待ちください.」
記者「おい,君.辞職って本当かね.」
記者「その理由はなんなんですか.」
記者「郷原さんはどこにいるんですか.」
記者達がタミーに次々に質問した.
タミー「お静かに.すぐ発表しますので,お待ちください.」

一方,指定された部屋で道夫,徳江,たかこの3人は苛立っていた.
道夫「ちきしょう.誰もこないじゃないか.」
徳江「静かにしなさい.」
突然,カーテンが閉められ,部屋が暗くなった.
オショウの声「諸君,この特別法廷へようこそ. 今から君達の犯した罪を改めて証明しよう.」
カーテンの一部が開いてテレビが現れた. テレビに最初の事故で死んだ浮浪者が映し出された.
オショウの声「君達はこの男を殺した.もちろん,交通事故は珍しくはない. だが君達は自分の地位と立場を守るために犯した罪を隠そうとした.」
次にテレビに坂井勇の死体が映し出された.
オショウの声「それだけではない.現場を目撃した市民の命まで奪った.」
徳江「やめなさい.止めて.」
たかこ「はい.」
徳江の命令でたかこはテレビを消そうとしたが
オショウの声「無駄だよ.君達はもう逃げられない.これを見たまえ.」
テレビに部下が白状する様子が映し出された.
部下の声「そのとおりだよ.俺達が全てやったんだよ.何でだかしらねえよ. 頼まれただけなんだよ.郷原先生の母親によ.」
マイトの声「頼まれたって誰に?」
岩田の声「郷原のばあさんに.なにせ政界のゴッドマーザーだからな. いやとはいえんじゃないか.あの馬鹿息子が轢き逃げなんかやるから.」
徳江「おだまり.お前,何を言ってるの. 誰のおかげで大臣になれたと思ってるの.」
徳江は灰皿を投げてテレビのブラウン管を叩き割った.部屋が明るくなった.
道夫「だから,だから言ったじゃないか. あの時運転手を自首させといたほうが良かったんだ.」
徳江「道夫,何を言ってるのよ.」
道夫「だって,そうだろう.あの寿司屋だって何千万払ってやれば…」
徳江「おだまり.あんな連中は死んだっていいのよ.岩田が悪いのよ,岩田が.」
徳江の絶叫はロビーにいた記者達にもスピーカーを通して聞こえた. ハングマンは部屋の中の音を拾ってロビーに流していたのだ.
道夫「母さんが悪いんだよ.身代わりを立てれば轢き逃げなんて どうってことなかったんだ.それなのに…」
徳江「道夫.あんたは母さんがやったことにけちをつける気なの. 母さんはあなたのためを思えばこそ…」
記者達が部屋をみつけ,駆け込んだ.
道夫「だけど,こうなったじゃないか.俺の一生,めちゃめちゃにしたんだよ.」
記者が部屋の中に入ってきた.悪党3人は記者の質問攻めにあった. その様子を坂井きよみも見ていた.記者に囲まれる3人を見届けて, ハングマン,そして坂井きよみはパトカーと入れ替わりに去って行った.

きよみは荷物を持って寿司屋を出た.オショウがきよみを呼び止めた.
オショウ「あ,奥さん.」
きよみ「ああ,いつかの.」
オショウ「はは.今日はお店,お休みですか?」
きよみ「実は,ちょっと事情がありまして田舎に帰ることになったんです.」
オショウ「え,田舎へ?」
きよみはうなずいた.
きよみ「わざわざすみませんでした.主人もきっと喜ぶと思います. 失礼します.」
歩いていくきよみをオショウ,そして車の中からマイトが見送った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp