第十四回

悪徳建設会社社長らの悪事を暴く
ニトロ式コルセットで悪の減量を!

脚本:中村勝行 監督:帯盛迪彦

権藤建設に欠陥マンション販売に抗議する住民団体が押しかけていた. 社長の権藤(小松方正)は社長室で今村部長に早く追い返せと命じていた.
権藤「わしは実業家だぞ.どこにも逃げ隠れはせんよ.」
と叫んだ途端に
北沢「社長,逃げ隠れせずに,なぜ彼らと話し合わんのですか?」
労働組合の委員長の北沢が乱入してきた.北沢は今村に叩き出された.

その頃デジコンは手製のラジコンロボットを子供達に披露していた. そこへ無線で仕事の連絡が入ってきた.

今週のよね子

オショウが将棋盤に駒を置いて詰め将棋をしていた.
オショウ「金いただきと.待ってましたと王手飛車取り.敵は飛車が下がるか…」
よね子「こんにちは.」
オショウ「はいはい.」
オショウはうわの空で返事をした.
オショウ「え?」
縁側によね子がいた.
オショウ「あ,奥さん.」
よね子「ちょっと近くまでお寄りしましたものですから…」
よね子はお盆にコップを載せていた.
よね子「おじゃましようかと.」
オショウ「ああ.」
よね子「冷たい麦茶を.」
オショウ「あらあら.まあまあまあ.いつもどうも.」
よね子「和尚様にはさぞ,お変わりございませんか?」
よね子はうちわでオショウを扇いだ.
オショウ「え.ええ.おかげさまで元気ですって言いたいですが, それが陽気のせいもあるんですが頭がもうボーっとしましてね. 目がかすんで鼻が右左交代でつまって首は痛くなるわ, ろくな状態じゃないですわ.」
よね子「もうそんな.こないだまであんなにお元気でしたのに.」
オショウ「え?」
よね子「和尚様.」
オショウ「は?」
よね子「ちょっと腰でもおもみしましょうか.」
オショウ「あ,いえいえ.それにはおよびません.」
嫌な予感がしたオショウは断ったが
よね子「そんなご遠慮なさらないで.」
よね子はオショウを無理矢理うつぶせにしてしまった.
オショウ「あ,あ,ちょっと,奥さん.大丈夫です.」
よね子「あらあ,ちょっとお痩せになったみたい.」
オショウ「目方はちょっと変わらないんですけどね.
よね子「まあ,相変わらずかわいいお尻.」
オショウ「どこを触るんですか,奥さん.あ,痛.ちょっと駄目.」
よね子「ねえちょっと.ここ硬く…こってらっしゃるみたいよ.」
ついによね子も寝転んだ.
オショウ「奥さん,人が見たらなんて思います.」
よね子「和尚様.」
オショウ「昼間っからはしたない.なんてことするんですか.」
よね子「和尚様.目を瞑れば夜ですわ.」
よね子は目を瞑り,自分の世界に入ってしまった.
オショウ「ああ.」
よね子「和尚様,あたくし,もう我慢できませんわ.」
オショウ「いやいや.目ふさいでるからそういうことになるんですよ.」
よね子「ああ,目.和尚様.」
タミー「和尚様.」
オショウ「あ,これはこれはタミー様.」
タミー「とうとう今朝ほど,お迎えが.」
オショウ「ああ.左様でございましたか.あんなにおやさしいご主人が.それは, それは,どうも.早速お参りさせていただきます.ああ忙しい,忙しい.」
よね子はご機嫌斜め.うちわを破いてしまった.

マイトとヨガはテニスをしていた.そこへタミーから連絡が入った.

仕事開始

マイト「権藤建設.」
タミー「業界でも中堅クラスの建設会社で, 主に首都圏のマンションを手がけているわ. ところがこの会社の建てたマンションに欠陥事故が続出して, 住民から苦情が殺到しているの.」
オショウ「つまり手抜き工事をしていたってわけか.」
タミー「一応建設基準にはパスしているそうだから, はっきり断定するだけの根拠はないんだけど.それより会社側の対応が問題だわ. 特に社長の権藤は住民側の抗議を一切受け付けようとせず, 責任は全て下請け会社に押し付けて頬かむりを決め込んでいるわけ.」
デジコン「しかしそれだけ大騒ぎになっているんなら, 当然住宅局が調査に乗り出すはずだが…」
マイト「いやあ,いざとなるとお上なんて当てにならないさ. 大体そんないい加減な会社にマンションの建築許可が下りること自体, すでにきな臭いんだ.」
オショウ「連中も適当に鼻薬嗅がされてんのかもしれないなあ.」
タミー「その可能性はあるわねえ. それに権藤って男は政界に顔が広いそうだから.」
ヨガ「それじゃあ,結局住民側は泣き寝入りってわけか.」
デジコン「仮に損害賠償の訴訟を起こしたとしても 裁判が長引けば膨大な金がかかるだろうしなあ.」
タミー「ゴッドの指令書によると被害者はマンションの住民だけじゃないわ. 社員や従業員も権藤のワンマン経営の犠牲になってるの.」
マイト「社員も?」
タミー「職場の安全管理は杜撰.合理化を口実に大幅な人員整理や賃金カット. 自分の意に添わない人物は平気で不当解雇. 特に組合に対しては異常とも思えるほど締め付けが厳しいわ.」
オショウ「経営者としちゃ最悪の男だなあ.」
デジコン「社会的にも有害な男だ.」
タミー「権藤は常に刑務所の塀の上を歩きながら, 一度も塀の内側に落ちたことはなかったわ. いつも非合法すれすれのところで生き延びてきた男なの.」
マイト「だから俺達が塀の内側に突き落とす.それが今度の仕事ってわけだ.」

喫茶店シェルで北沢は津山(南城竜也)に組合は権藤と全面対決すると告げ, 協力を求めていた.悩んだ末,津山は承諾した.その頃, オショウは掃除夫に化けて社長室を探っていた. そして権藤が秘書を探していることを聞き込んだ. 権藤は今村にビジネススクールに手配を頼んでいたのだ. すかさずオショウはビジネススクールに権藤建設のものと称して電話を入れ, 秘書は決まってしまったと伝えた. そしてタミーが秘書として潜り込む作戦を提案した.
タミー「ちょっと心配だわ.」
オショウ「何が?」
タミー「権藤ってかなり好色な男だそうだから.」
マイト「心配いらないよ. タミーちゃんの貞操は俺達がちゃんと守ってあげるから.」
そこへデジコンが「ハングマンの七つ道具」を持って現れた.

深夜.津山は極秘資料を漁った.帰り際,津山は今村とすれ違った. 今村は机の引出しから紙がはみ出ていたことから, 津山が極秘資料を持ち出したことを知った.津山は北沢に極秘資料を見せた. これは下請け会社に手抜き工事を強要したときに取り交わした念書だった. 資材なども大幅に削っていた. これでは欠陥マンションと言われても不思議ではない. 念書は北沢がしばらく預かることにした.北沢と別れた津山は暴漢に襲われ, 車で連れ去られた.暴漢は今村の手の者だった. 津山は拷問を受けて念書のありかを問われるが,答えようとはしなかった. 暴漢は津山の顔を水につけたり出したりして拷問したが,津山は吐かなかった.

次の日.今村は権藤に念書が取られたことを報告した. 権藤は今村に念書を取り返すように指示した.そこへ人事部長が秘書希望の女性, タミーを連れてきた.タミーはメガネをかけていた. 権藤はタミーを一目見て気に入ってしまった.
権藤「君,名前は?」
タミー「はい.沢野たまこと申します.」
権藤「タマちゃん.そりゃあ,いい名前だなあ.うーん.君, メガネ取ってご覧.」
タミー「はあ.」
権藤「素顔が見たいんだよ.メガネ取って御覧なさい.」
タミー「はい.」
タミーはメガネをとった.
権藤「ほう.こりゃ美人だねえ. 君みたいな美人はメガネかけないほうがいいなあ.なあ.」
タミー「でもひどい近眼ですので.」
権藤「ふーん.うん.仕事のときはしょうがないけどねえ, プライベートなお付き合いのときはメガネ取ってほしいなあ.」
タミー「どういう意味でしょう?」
権藤「いや,深い意味はないんだけどね.おい.採用決定だよ. この子気に入ったよ.」
人事部長は津山が無断欠勤していることを権藤に言うと, 権藤は首にしろと言った.人事部長と今村は外に出た. タミーも外へ出ようとすると
権藤「君,いつから来てくれるかな?」
タミー「明日からでも,よろしくお願いします.」
権藤「ああ,そう.よろしくお願いします.」
権藤は鼻の下を伸ばした. 受付に来たタミーは津山を訪ねて津山の妻が来ているのを見かけた. タミーは津山の妻に声をかけて話を聞いた.津山は家に帰ってこなかったのだ. そして家を出るとき,帰りに組合委員長の北沢に会うと出て行ったことを知った. 早速マイトが北沢に接近した.マイトは刑事に化け, 津山俊彦が行方不明になっていることを告げ, 前の晩に北沢と津山が会っていたことを知った.さらにマイトは, 北沢に会社側の人間が津山を拉致したんじゃないかとほのめかしたが, 北沢はどうせやるなら自分をやるだろうと言って否定した.

その晩.津山はせめ殺されてしまった. 早速今村は社長の権藤雄三郎に電話で報告した.権藤は死体の始末を命じた. 翌朝.津山の死体は多摩川を渡る小田急の鉄橋の脇で発見された. 警察は事故死と断定した. このことを知ったハングマンはゴッドのオフィスに集結. マイトは津山が殺された理由がわからずにいたが, オショウは津山が会社にとって重要な情報をつかんだのではないかと推理した. マイトはタミーに出勤するよう命じた.タミーは社長の机の引き出しをあさるが, 何も見つからない.そこへ今村が現れた. タミーは机の掃除だと言ってごまかした.そこへ権藤も現れた. 権藤はタミーにコーヒーを入れるように頼んだ.タミーが外へ出るやいなや, 今村は権藤に念書がみつからないことを報告した. 権藤は津山の家へ向かうことを指示した. タミーがタイプを打っていると電話がかかってきた. 誰かが念書のことで電話をかけてきたのだ. タミーはネクタイを直す振りをして盗聴機を仕掛けた. 権藤はそれに気づかず,タミーを夕食に誘って出て行った. 早速タミーはデジコンに連絡した.

権藤が会ったのは北沢だった.なんと北沢はまとまった金を得るために, 津山をそそのかして念書を手に入れたのだ.
権藤「こいつは驚いたなあ.組合委員長の君がゆすりたかりか.」
北沢は権藤に1千万円を要求した. その会話の一部始終はデジコンが盗聴していた.
マイト「驚いたのはこっちだぜ.あの男,そんな悪党だなんて.」
オショウ「結局,津山は北沢の薄汚い欲のために利用されただけなんだ.」
タミー「社長の権藤も許せないけど,その委員長の北沢はもっと許せないわ.」
デジコン「ああ.ターゲットは権藤と北沢だ.」
タミー「それに事業部の今村って部長も一枚噛んでるの.」
マイト「よーし,今度の獲物はその三人だ.」
タミー「さて,そろそろ行かなくっちゃ.」
マイト「どこへ?」
タミー「権藤と食事の約束したの.」
オショウ「ああ,そりゃちょうど都合よかった. 仕掛けができるまで時間稼いでくれ.」
タミー「Ok!」

その晩,タミーは権藤と食事をした.権藤はシャトー・ブリアンの69年物を注文. タミーはうっかりメガネをかけてきてしまった.社長はメガネをはずさせ, 見とれてしまい,口説き始めた. タミーがすんなりベッドに入ることを Ok したので権藤は大喜び. 権藤の車に乗ったタミーは香水を取り出した.
タミー「社長さん,私,香りに弱いんです. 特にこの香水をつけている男性には.」
この言葉に騙された権藤は香水…ではなくて眠り薬を嗅いでしまい, 眠り込んでしまった.その頃,北沢はデジコンの当身をくらい, オショウの車で運ばれた.そして井上のところにマイトとヨガが現れた. 今村は楊枝をくわえていた.
マイト「今村さんはどちらさまで?」
今村「私だが.何の用だ.」
マイト「楊枝をくわえて季節はずれの秋刀魚でも食べてきたんですかい.」
今村の部下が襲ってきたが,マイトとヨガは部下を撃退. 今村を連れ去ってしまった.

北沢と今村はフォークリフトに吊り下げられた.
マイト「念書ってのは,これか.」
デジコン「下請けに手抜き工事を強要して念書を取り, 一切の責任を押し付けようって寸法か?」
北沢「俺達をどうするつもりだ.」
マイト「これを見てくれ.」
マイトは液体の入った小瓶とコルセットを見せた.
マイト「こいつは特別あつらえのコルセットだ. 商品名はニトロ美容コルセット.まずはちょっと見ててくれ.」
マイトはマネキンにコルセットをはめ, ニトログリセリンの入った小瓶をコルセットに取り付けた.
マイト「さあて,準備完了だ.」
デジコン「このリモコンスイッチを押すと…」
ニトロ美容コルセットが爆発した.今村も北沢も目をそらした.
マイト「さあ,お前達もあれと同じ物をつけてもらおうか.」
マイトとデジコンはニトロ美容コルセットを今村と北沢にはめていた.
北沢「やめろう.」
今村「やめてくれえ.」
マイト「言われたとおりにするんだ. 逆らったりするとどんなことになるか,よーくわかってるな.」

翌朝.権藤はホテルでタミーに起こされた.タミーはいけしゃあしゃあと, 夕べ権藤は凄かった,と言っていた.権藤が風呂から出ると, そのまま檻に閉じ込められてしまった.

その頃,津山の妻友紀子宛に手紙が届いていた.それは桃色の封筒に入っていて, 赤いキスマークがされた黄色い紙が, 壁に留められた様子が描かれたシールで封をされた手紙,すなわち, タミーからのハンギングパーティの案内状だった.友紀子は案内状を読んだ.
タミーの声「津山友紀子様.本日,午後1時,豊洲四丁目, 権藤建設本社ビルの前においで下さい.あなたのご主人を殺害した犯人,および, 権藤建設の不正に対し,審判が下されます.」
ハングマンは表の仮面を脱ぎ捨ててハンギングに出動した.

ハンギング

さてニトロ美容コルセットとヘッドフォンをさせられた北沢と今村は, ニトロの瓶を押さえながら通りを走らされていた.
マイト「よーし,よし.そのまま会社へ行くんだ.よーし,いいぞ.」
権藤建設本社ビルには今日も住民が押し寄せていた.津山友紀子もやってきた. そこへ北沢と今村が登場.
今村「触らないで,触らないで.社長はただいま参ります.しばらく, しばらくお待ちください.お願いします,お願いします.お願いします.」
そこへトラックが荷台に青と白の幕をつけてやってきた. トラックを運転しているのはオショウとヨガ.
デジコン「着いたぜ.」
マイト「今村.玄関の脇にトラックが止まっている.幕を下ろせ.」
今村「はい.」
今村と北沢はニトロの瓶を押さえながらトラックに近づいた. 住民達もトラックに近づいた.今村が幕を下ろすと, トラックの荷台には権藤を閉じ込めた檻が載せられていた.
権藤「今村.こりゃいったいどういうことだい.おい.」
今村「社長.それがそのう.」
マイト「さあ,北沢.洗いざらい喋るんだ.」
北沢は震えが止まらない.
マイト「早くしろ,北沢.さもないとニトロがドカンだぞ.」
北沢の脳裏にマネキンが爆発した様子が浮かんだ.
北沢「ちょ,ちょっと待ってくれ.皆さん,これは,この権藤社長が, 下請け会社に手抜き工事を強要したときの証拠の念書です.」
権藤「北沢,貴様,いったい何を言い出すんだ! 馬鹿.」
北沢「私はねえ,これを津山君に盗ませ,権藤をゆすっただけなんです.」
権藤「俺は知らんぞ.そんなの知らん.知らんぞ.」
権藤はバスタオルをかぶって顔を隠した.
北沢「今更白を切っても始まらないんだ. 津山君を拷問して殺したのは,あんたと今村じゃないか.」
今村「お,俺は社長に命令されてやっただけなんだ.」
権藤「今村,貴様…」
住民達の怒声が飛んだ.それを津山友紀子は見つめていた. それを見ながらハングマンは立ち去っていった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp