第四十八回

デジコンと元恋人との邂逅.そして決別.
死人の恋 愛の言葉はさよなら

脚本:鴨井達比古 監督:永野靖忠

ゴッドのオフィスでゴッドが指令を説明する.
ゴッド「日本の選挙史上最大の金権選挙といわれた, 杉村雄作(根上淳)派の選挙違反事件. その総括責任者の河田道夫は公職違反容疑で起訴が決定し, その翌日,800万円の保釈金を積んで保釈された.1週間前のことだ. その夜,河田は報道陣を巻いて青山のあるマンションに直行した. 愛人の宮坂まゆみの部屋だ. 河田とまゆみの間にどんなやりとりがあったのかはわからない. そして5時間後の午前3時40分.」
河田はマンションから転落して死亡.パトカーと救急車が現場に駆けつけ, 娘の杉村典子(松本留美)も現場に駆けつけた.号泣する典子.
ゴッドが図を前に説明する.
ゴッド「新聞などで諸君が知ってるとおり, 今回の選挙で東京13区で行なわれた,この杉村雄作派による現ナマ作戦は, 史上最大のものと言われている.警視庁の調べで浮かんだだけでも約3億5千万. 実際にはその3倍の金が動いたといわれている. そしてこの杉村雄作派の選挙本部長が河田道夫.この人物だ.」
ゴッドが河田道夫の写真を図に貼った. ハングマンは立ち上がって図に近づいた.
ゴッド「次に元副首相の高野太一. これは知っての通り大派閥を率いる政界の実力者だ. それから今度の選挙で10億の金を使って当選した杉村雄作代議士は, この高野の次女の照子を嫁にもらっている. つまり高野派の将来の後継者として白羽の矢を立てられた人物だ. 一年前までは産業省のエリート官僚だった. この雄作に弟が一人.これも産業省のエリート官僚である杉村武(宗方勝巳)38歳. これも近いうちに政界に打って出る予定らしい. で,その妻が典子.その父親が最初に言った河田道夫. これは元都議会議員であり現在二部上場の河田製作所の社長でもあるが 今回の選挙違反事件の責任者として起訴され,保釈の後,謎の死を遂げた.」
パン「元都議会議員か.果たせなかった政界への夢を, 自分の娘の亭主とその兄に託して選挙にのめりこんだってことか.」
ゴッド「そのとおりだ.河田は自分の会社の金を1億以上も, 今度の選挙につぎ込んでいたらしい.」
マイト「自殺ですか? それとも…」
ゴッド「警察の1週間の捜索では他殺の証拠は何一つ出なかった. そして彼の死によって杉村雄作がその議席を失う可能性は全く0になった. 下っ端の運動員が何人有罪になろうと当選した本人には関係ないからな.」
タミー「ひどい話ねえ.」
パン「いやあ,ありそうな話だ.」
マイト「うーん.で,何をすればいいんです?」
ゴッド「その前にもう一枚写真がある.」
ゴッドは杉村典子,すなわち旧姓河田典子の写真を貼った. それを見た瞬間,デジコンの顔色が変わった.
ゴッド「死んだ河田道夫の娘,杉村武の妻典子.」
デジコンは声も出せない.
パン「へえ.」
パンとタミー,そしてマイトはデジコンの方を見た.
パン「デジコン,どうした?」
デジコンは困ったような顔をしたが何も言わない.
ゴッド「デジコン,今回の仕事から君は外れてもらう. 理由は言わなくてもわかってるはずだ.わかったら出てってもらおう.」
デジコン「わかりました.」
デジコンは出て行った.
マイト「ゴッド,どういうことですか?」
ゴッド「彼は十年前,まだ学生だった頃に一度は結婚を決意した女がいた. それがその杉村典子だ.」
パン「はあ,驚いたね.あのコンピュータ人間が恋をしたのか.」
ゴッド「今回の仕事は権力に直結した人間を裁くことになる. 私情を入れることは許されんのだ.」

その頃,杉村雄作と杉村武は高野の元を訪れていた. 高野は杉村雄作に選挙のことを乱暴だと注意していた. 高野はこれ以上世間や警察を刺激しないように注意した. 屋敷から出てきた杉村兄弟の車をマイトとパンの乗る車が追った. 雄作が車の中で河田の件は大丈夫かと武に確認すると, 武は地検の松崎から得た情報として警察が自殺という結論を出したことを告げた. さらに雄作が河田の愛人の方はと聞くと武は大丈夫だと答えた.

杉村雄作の事務所があるビルのロビーでパンとマイトが話していた. マイトは盗聴をやってやれないことはないが難しいと言っていた. その頃,デジコンは鬱憤を晴らすかのようにジムでトレーニングに励んでいた.
デジコン「出て来いよ,タミー.」
タミーは外から覗いていたのだ.タミーはジムの中に入った.
タミー「知ってたの.」
デジコン「いい女は遠くにいても目に付くもんさ.」
タミー「ありがと.」
デジコン「ゴッドの命令か? ご苦労だな.」
タミー「そうでもないんだけど,気になってね.」
デジコン「心配するな.俺は命令もないのに働くほど勤勉じゃないよ.」
タミー「そうかな.」
デジコンは黙ってタミーから目をそらした.
タミー「ねえ.その典子さんって言う人,ホントに好きだったの? どうして結婚しなかったの?」
デジコン「昔のことだ.忘れたな.」
そう言ってデジコンはジムから去って行った.

その晩.武を尾行したマイトは武の家に着いた. そこへパンもやってきてマイトと合流した. 典子の弟で大学生の河田信彦(津山栄一)が来ていたのだ. 信彦は武の家に来る前に警察で半日粘っていた. 河田道夫は自殺じゃないと信彦は考えていたのだ. 家の中でも信彦は典子に河田道夫が自殺するわけがないと言っていたが, 典子はやめてと繰り返すばかり.そこへ武がやってきた. 信彦はすぐに帰ってしまった.武は典子に,高野派の長老の岡田が引退するので, 次の選挙では岡田の後継者を武にすると高野が考えていると話していた. だが典子は上の空だった.武は河田道夫の「自殺」の件は忘れろと言った.

次の日.団地のアジトでマイトがパンとタミーと話していた. 雄作はマスコミで叩かれながらも平然と行動していた. 武は正式な秘書ではないが事実上の第一秘書として活動していた. いずれ武も選挙に出るらしいなとパンが言う. さらにパンは河田道夫の愛人宮坂まゆみが, 警察の取調べが住んだ翌日に麻布のマンションへ転居したことを報告した. まゆみは元は赤坂のホステスで河田道夫の愛人になったのは三年前. ところが半年ほど前から選挙運動で忙しい河田道夫の目を盗んで, 別の男を作っていた. まゆみと男は夫婦気取りで新宿の不動産屋を歩き回っていた. 二人で店をやるつもりらしい.三千万円前後のスナックを物色しているらしい. 河田道夫が死んだ途端に金回りが良くなったらしい. 男の名は平岡で以前赤坂で水商売に首を突っ込んでいたらしい. 三年前に傷害事件を起こして服役.半年前に出所したばかりだ. パンの話を聞いたマイトは平岡とまゆみの二人と 杉村兄弟との間に接点があるかどうか調べようと言った. 以上の会話をデジコンは全て盗聴していた.

その頃,原宿の喫茶店で平岡とまゆみは金の件について話していた. 喫茶店にはタミーもいた.そこへまゆみに電話がかかってきた. まゆみがここにいることは誰も知らないはずなのにだ. まゆみに電話をかけたのは,店の前の公衆電話にいたマイトだった. マイトが「大金はもう手に入ったかい?」と言った途端に, まゆみは電話を切った. 喫茶店から出てきたまゆみと平岡を見てタミーとマイトはにやりと笑った. その晩,新宿の東京大飯店でまゆみと中華料理を食べていた平岡に 電話がかかってきた.電話のあるロビーにはパンがいて, 激怒して電話を切る平岡を見ていた. 東京大飯店から出てきた平岡とまゆみを見て,パンと, 東京大飯店前の公衆電話にいたマイトはにやりと笑った. 平岡は杉村武に三千万円をすぐに払えと電話をかけた. 武はなぜ約束の日まで待てないんだと言うと平岡は怒って電話を切ってしまった. 平岡にまゆみは警察だって自殺だと思っているのだから びくびくすることはないと言っていた.

一方,典子はしばらく実家に帰ると書置きを残して家を出て行った. そして大学時代からの友人(夏木マリ)が経営するクラブに来ていた. ママ(夏木マリ)に典子は結局夫を愛していないことがわかったと言っていた. そこへデジコンがやってきて典子の隣りに座った. デジコンを見た典子はびっくりしてデジコンを見つめた.
デジコン「何かついてますか,顔に.」
典子「いえ,あのう,昔の知り合いの方に良く似てたものですから… あ,ごめんなさい.酔っ払っちゃってて.」
デジコン「似てるって顔が?」
典子「いえ.お顔はちょっと違うんですけど…なんていうか雰囲気が…」
ママ「典子,あなた,絶対そういうと思ったわ. 雰囲気似てるでしょ,加納さんに.でもこちら加川さんって人よ.」
デジコンは挨拶した.
デジコン「加川です.」
ママ「ほら,いつかお話したでしょ.学生時代の友達,典子.」
デジコン「ああ.」
典子「はじめまして.」
デジコン「どうも.」
ママは席を外し,舞台で歌いだした.
ママの歌「帰らないで.ドアを閉めたら駄目よ. 抱きしめて.夕べのように Hold me tight!」
典子はデジコンのグラスに酒を注いだ.典子はデジコンとしばらく飲んでいた. そしてデジコンはタバコをくわえた.典子がマッチをするとデジコンは制止し, 自分のライターでタバコに火をつけた.

典子はデジコンと一緒にディスコへ行った.
デジコン「一つだけ聞いていいかなあ.」
典子「いいわよう.知らないもの同士だもん.」
デジコン「どうして結婚しなかったの? その加納って言う人と.」
典子「辛いこと聞くのねえ,加川さんって.」
デジコンは無言で典子をみつめた.
典子「今考えるとねえ,とってもつまんない理由なの.その人ねえ, 大学出ると警察に就職しちゃったのよ.」
それを聞いてデジコンの顔が曇った.
典子「うちの父親がとっても警察嫌い.」
デジコン「そう.」
典子「あの時絶対に自分の意志を通すべきだったんだわ. そしたら父さんだって…」
典子はグラスに口をつけて酒を少し飲んだ.
典子「ああ.ねえ,もう,ねえ,よしましょう,こんな話.」
デジコンがタバコをくわえたので典子はマッチを持って火をつけようとした. だがデジコンはまた典子を制止し,自分で火をつけた. これを見た典子は何かに気がついた.
典子「変ですねえ.」
デジコンは典子の方を見た.
典子「女性に火をつけてもらうのを嫌がる人が…彼もそうだったわ.」
典子はデジコンの方を見た.
典子「ああ.タバコの持ち方まで似てる.」
デジコンはごまかす.
デジコン「雰囲気の似ている人間は癖まで似ているのかな.」
加川(デジコン)に電話がかかってきた. それはママの清子からでお客さんの都合でどうしても来られないと言うのだ.
典子「気を利かせたのかなあ.」
デジコン「え?」
典子は何でもないとごまかした.

ディスコを出て,エレベーターの中でデジコンが典子と話していた.
デジコン「さあ,どこまで送ろうか.ご主人のところへ帰る?」
典子「うううん.しばらく実家で暮らすの.」
デジコン「じゃあ練馬だね.」
典子「ええ? なぜ知ってるの?」
ぼろが出そうになったのでデジコンはごまかした.
デジコン「え.さっき言ったろ.実家は練馬の桜台だって.」
典子「そうだっけ?」
タクシーの中で典子がデジコンに話し掛けてきた.
典子「加川さん.帰りたくないんです.」
デジコン「酔ってるね.」
典子はデジコンの方を向いた.
典子「ええ.酔っ払っちゃったあ.あんなに飲んだのにお酒に強くて. あなたはちっとも酔ってない.彼もそうだったわ. はあ.お願い,加川さん.今夜は誰にも会いたくないの.」
典子はデジコンの腕にしがみついた.
デジコンは典子と一緒にホテルに入ったが, 典子をベッドに寝かせたまま昇る朝日を見つめるのであった. デジコンは典子を抱かなかったのだ.

次の日.典子の実家で信彦が典子に夕べはどこへ行ってたんだと聞いていた. 朝になって二回も武から電話があったのだ. 典子は清子のところとごまかすと信彦は清子のところへ電話した後だったのだ. 信彦はまあいいさと言い,河田道夫を殺した奴は絶対に許さないと 力強く言うのであった.

一方,まゆみが自宅へ戻ってきたところへ信彦が強引に入り込んだ. 河田道夫は毎月三十万円,まゆみのところへお金を持ってきていた. そして信彦はまゆみに河田道夫をどうやって殺したのかと, ナイフで脅して聞いていた.まゆみが時間を稼いでいるところへ, 平岡がやってきてピストルを信彦につきつけた.

このことを雄作の事務所で平岡からの電話で聞いた武は驚いた. 信彦は多摩川の川原で死体となって発見された. 現場に駆けつけた典子は号泣した. その様子をマイトとパンとタミーも見ていた.
パン「くそう.仇は必ずとってやる.」
武は平然と信彦の葬儀に顔を出した. 武は,警察の話として信彦は相当な量の酒を飲んでいたと言った. 典子は,何もかもわかっている,武がどうやって河田道夫をだましたのか,と 叫んだ.典子は武に殴り倒され,麻薬をうたれて病院へ入れられた. その病院へタミーとデジコンがやってきた.
タミー「いいわね,デジコン.これはゴッドに内緒のことなのよ.」
デジコン「ゴッドが恐いのなら帰れよ.俺一人でやるから.」
デジコンはタミーから白衣を受け取って着込んだ.タミーも白衣を着込んだ. 二人は東京都衛生局の人間に化け,定期調査と称して病院へ乗り込んだ. そして典子を発見すると医者を殴り倒し,病室に入った.
デジコン「君.君.」
典子「加納さん.」
タミー「麻薬を打たれたのよ,きっと.酷いことするわね.運び出しましょ.」
デジコンとタミーは典子を運び出した.職員が追いかけてきたので, デジコンは消火器を噴射して職員を後退させ, 車で典子を運び出すことに成功した.

ハンギングその1

まゆみと平岡は店を物色していた.そこへマイトが登場した.
マイト「商売の話はそこまでだ. 銭勘定抜きに何年くらいこむか良く考えるんだなあ.」
平岡とまゆみはマイトとパンに捕まった. そしてあるビルのボイラー室へ連れ込まれた.
マイト「半年前にシャバから出てきたばかりで, 三千万もの買い物ができるはずがねえ. そちらのおねえさんの銀行口座も調べさせてもらったが, 残高は100万そこそこだ.そこでお前達の金の成る木を知りたくてなあ.」
平岡「おい,てめえ達はいったい誰なんだ.何者なんだい.」
マイト「質問してるのは,この俺だ!」
マイトは平岡を張り倒した.
平岡「知るかよ.」
マイトは溶接に使うガスバーナーに火をつけた.
マイト「女を痛めつけるのは趣味じゃないが,平岡, お前さんが協力する気にならないと,この女がお岩さんになるぜ.」
まゆみはびびった.だが平岡はへこまない.
平岡「やれよ,勝手に.女なんてのはいくらでもいるぜ.」
まゆみ「ひどい.ひどい.」
マイト「どうやら金が取り持つお二人らしいなあ.親父さん,どうする? 俺はもうめんどくさいぜ.」
パン「へ,へ,へ.よーし.じゃ別な手,考えるか.」
今度は屋上にまゆみと平岡がつれてこられた.
平岡「どうするんだよう.」
パン「自殺してもらうのさ.河田道夫とおんなじようにな. あ,それからあ,お前さん達の三千万な,あれ頂戴しようと思ったけどやめたよ. 今,ある男と取引してな,お前さん達を心中させれば,手数料として, 2千万払うって言うんだ.それでも差し引き1千万得するって喜んでたよう.」
平岡「杉村の野郎!」
マイトはにやりとした.
マイト「やっとその名前が出たなあ. 今からでも俺達に協力すれば相談に乗ってもいいんだぜ.」
平岡「どういう意味だい.」
パン「わからんかなあ,ここ使えよ. 杉村兄弟に頼まれて河田道夫を殺した経緯を話してくれれば, 3千万なんてけちな稼ぎじゃなくてもっとうまい話になるっていうの.」
マイト「その通り.代議士の椅子欲しさに十億もの金をばら撒く奴だからなあ.」
ついにまゆみが話し始めた.
まゆみ「その話,私が喋るわ.」
平岡「待てよ,お前.俺が話したんだよ.」
まゆみ「なによ,あなたなんか.私はねえ.」
平岡「なんだよ,お前.」
まゆみと平岡が喧嘩を始めたので慌ててマイトが止めた.
マイト「まあ,まあ,まあ.お二人さん,喧嘩をしなくても.タミー,テープは?」
タミー「用意できてるわ.」
タミーはテープを置いた.
タミー「さ,どうぞ.」

そして…

平岡は武に電話をかけ,5千万円を要求した. その頃,ホテルの一室で典子は服を着たまま寝かされていた. その傍らにはデジコンがいた.
典子「加納さん!」
デジコンを見つけた典子は起き上がった.
デジコン「加川.」
典子「そうだった,ごめんなさい.でも,ここはどこなの.」
デジコン「ホテル.私が超秘で借りているところだから何も心配はない.」
典子「どうしてここに? 私,確か病院みたいなところに…」
デジコン「病院関係者に知り合いがいてね,ちょっと情報を聞いたもんだから 強引に連れ出した.」
典子はうなずいたが頭を押さえてしまった.
デジコン「悪い薬で少し体がまいっている. 何も考えないでぐっすり眠ることだ.」
デジコンはテーブルに置いてあった水差しと薬をベッドに運んだ.
デジコン「ここに薬も用意してある.」
典子「でもなぜ? あなたは…」
デジコン「今は何にも考えなくていい.通りすがりの人間のほんの気まぐれだと 思っていてくれ.」
デジコンは典子をベッドに寝かせた.そして部屋の外へ出た.

駐車場でタミーがデジコンに声をかけた.
デジコン「報告したのか,親父さんとマイトに.」
タミー「当然でしょ.」
デジコン「で,ゴッドには.」
タミー「言ってないわ,まだ.でもゴッドのことだから,きっとお見通しね. どうするつもり?」
デジコン「さあね.」
タミーが忠告した.
デジコン「デジコン.もしあなたが彼女を抱いてしまったら, たとえ顔が変わっていてもきっと彼女は気がつくわよ. 女ってそういうものよ.」
デジコンは無言で部屋に戻った.

その頃,雄作は武から平岡が5千万円を要求したと聞き, このままでは一生彼らに金を払いつづけることになると言った. 武は,そうはさせるものか,と強硬手段に出ることを示唆した. さらに典子の始末も考えていると告げた.

風呂から出た典子をデジコンは食事に誘った. 着る物がないという典子にデジコンは服を用意したと告げ,服を見せた. 典子は服を気に入った.そして二人は上のレストランへ行った.
デジコン「とりあえず,乾杯しようか.」
典子「なんに乾杯すればいいの,私達.」
デジコン「そうだなあ,お互いに何も知らないし.」
典子「でも,私は随分昔からあなたのことを知ってるような気がする.」
デジコン「そうだね,そう言われれば.よくはわからないけど, 君はこれからいろんなことを乗り越えていかなければならないようだね.」
典子はうなずいた.
典子「一つだけは,乗り越える決心ができたわ. やり直せるかどうかわからないけど.」
デジコン「よし.じゃあ,その決心に乾杯だ.」
典子「ありがとう.」
二人は乾杯した.そのとき,デジコンは一人の紳士が席を立つのを見て, 顔が凍りついた.席を立ったのはゴッドだった.
典子「知り合いの方?」
デジコン「いや,人違いだ.」

ハンギングその2

典子が泊まっている GROVAL HOTEL に雄作と武が現れた. ロビーで平岡とまゆみに会うためだ. 平岡とまゆみは先に来て椅子に座っていた.
武「なぜこんな場所を指定した?」
平岡「さびしいところへ行って自殺でもさせられたんじゃ, たまったもんじゃないですからねえ.」
まゆみ「お金,もって来てくれたんでしょうねえ. もう買うお店,決めちゃったんだから.」
雄作と武は椅子に座った. そして武はお金が入ったアタッシュケースを平岡に渡した. 平岡がアタッシュケースを開けると同時にフラッシュがたかれた.
記者「杉村さん,この金は?」
記者「河田殺しの代金って本当?」
記者「ねえ,平岡さんってあんた?」
記者「あなた達が川田氏を殺したの?」
記者「ねえ,何か言ってよ.」
雄作「やめろ! いったい何の騒ぎだ? なに言ってんだ?」
記者「このテープが届いたんだよ.」
記者「さっきねえ.」
記者がテープを再生した.
まゆみ「そうよ.私達が杉村代議士の弟から頼まれたのよ. 三千万出すから河田を自殺に見せかけて殺してくれって…」
武「やめろ!」
記者「うちにも届いたよ,ほら.」
雄作と武は質問攻めにあった.その隙に平岡とまゆみは札束を懐に入れていた. そこへ典子がやってきた.武は典子を見つけ,駆け寄った.
武「典子.典子.」
記者も典子のところへ駆け寄った.
記者「あなた,奥さん?」
記者「杉村の奥さんでしょう?」
典子は答えた.
典子「違います.知らない方です.」
そして典子は去って行った.それを呆然と見送る武. ハングマンもその様子を見ていた.そしてパトカーが駆けつけた.

デジコンと典子との別れ

清子の店で典子は離婚することを告げた. 清子は典子に加川が急に外国へ行くことになったと電話してきたことを告げた. 当分帰れないので残ったコニャックは典子に飲んでほしいと言ったことも. 典子はさびしそうにコニャックを見ていた. その頃,デジコンも清子の店を見つめていた. 典子はグラスにコニャックを入れ,コニャックの瓶で乾杯した. そしてデジコンは去って行った.

解説

デジコンの過去編です. あのデジコンも元恋人が絡んだ事件では心を乱してしまいました. 元恋人に近づいたデジコンにゴッドがさりげなく警告するのも見所です. ちなみに高野の屋敷は後の「ザ・ハングマン4」で 三代目ゴッド神山玄蔵が住んでいた屋敷と同じ屋敷です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp