第四十五回

恐喝組織の悪事を暴く
浮気夫人の遺書を探れ

脚本:山田隆之 監督:小澤啓一

タミーは成城のプールで泳いでいた. プールサイドでは一人の女が電話を受けていた.
女「金はもう作れません.できないんです. もしもし.あたしがここにいることをどうして?」
恐喝者「とにかくですね,私は奥さんの立場を心配して申し上げてるんです. 秘密を守らないことには奥さんばかりか ご主人の会社にまで何することになりますからねえ.」
恐喝者が電話している脇では恐喝者のボス(安倍徹)が葉巻を吹かしていた. 女は電話を切って呆然としていた.タミーは女の方に注目した. 女はジュースに薬を入れていた. そして女のところへ弁護士のとしや(清水章吾)がやってきた. 女はとしやとの情事をネタに強請られていた. そしてお金ばかりではなく夫の会社の企業秘密まで要求されていたのだ. としやは警察に訴えようと言ったが, 女はとしやとの関係まで明るみに出るので駄目だという. 女は遺書にどんな風に恐喝されたのかを書いていた. 女はとしやに遺書を託した. そして女は毒入りのジュースを飲んで服毒自殺してしまった.

調査開始

偶然にもこの件が仕事になった. ゴッドのオフィスでパンがゴッドからの指令を説明する.
パン「この人は丸新工業社長夫人わかこ34歳,投身自殺. 次は中光商事若社長夫人美穂29歳,この人は手首の血管を切って自殺だ. この二人は去年のことだが,次見てもらおうか.佐竹精機社長夫人かよこ32歳, 服毒自殺.これは三日前のことだ.」
タミー「あれ,この女性は.」
マイト「タミー,知ってるのか?」
タミー「ええ.死ぬ寸前,成城のプールで偶然現場に居合わせたんだけど, やっぱり自殺?」
パン「表向きはな.」
パンはスライドのスイッチを切った.
デジコン「警察の調べでも自殺と断定される状況証拠はそろっている. 自殺者はどれも株式に上場されている有名会社の夫人達ばかりだ.」
マイト「有閑マダム,浮気がばれて世間体をはばかって自殺か.」
デジコン「で,ゴッドの指令は?」
パン「裏にあくどい恐喝事件があると見ている.」
マイト「恐喝? 親父さん,相手はどんな人間だ.」
パン「それだよ.恐喝者の正体を暴け.これが今回の指令だ.」
デジコン「うーん,これは手間がかかりそうだ. 恐喝事件は被害者に弱みがあるため,なかなか発覚しない.」
ドラゴン「ウン.」
マイト「タミー,お前さんが出くわしたかよこ夫人の線から, 何か糸口はあるか?」
タミー「かよこ夫人は自殺直前,弁護士に会ってたわ. とすると,手渡されたのはきっと遺書だったのよ.」
マイト「よーし,とっかかりはその弁護士先生だ.」

その頃,かよこから受け取った遺書を平岡としやは金庫にしまっていた. そしてマイト達は平岡に接触することにした. 平岡は貴金属店で高級品を買った.そしてタミーが平岡から財布を掏り取ると, こわーいお兄さんたちが周りを取り囲んだ. ドラゴンとマイトの助けで逃げたタミーは財布を拾ったと称して平岡に接触した. 平岡はタミーに礼を言った.タミーは久賀たつ子と名乗った. そして平岡はタミーを食事に誘った.高級レストランでタミーが言う.
タミー「わたくし, 以前にも一度平岡さんをお見かけしているのを思い出しましたの.」
平岡「うん,そういえばどこかで…」
タミー「スイミングクラブですわ.佐竹夫人がお亡くなりになったとき.」
平岡は無言だ.
タミー「夫人の自殺の原因は何でしたの?」
平岡「過労によるノイローゼじゃないですか. 新聞にはそう出てましたがね.」
タミー「でも平岡さんなら本当の原因をご存知なんでしょう.」
平岡「僕が? どうしてです.」
平岡はとぼけた.
タミー「夫人から遺書を預かったではありませんか.」
平岡「いや,そんな事実はありませんね.」
タミー「あたくし,見てたんです.夫人があなたに封書を手渡されたのを.」
平岡の手が止まった.
タミー「もしかして夫人は誰かに恐喝されていた.違いますか?」
平岡「恐喝? は,は,は,は.これは穏やかではありませんなあ.」
タミー「これは私の感なんですけど,誰がどうやって恐喝したか, あの遺書には全て書いてあるんじゃないですか?」
平岡「たつ子さん,あなたまるで警察の刑事さんみたいだ.」
タミー「あ,私そんなんじゃありません. 自殺なさった夫人がなんだかとってもかわいそうで, 本当のことが知りたいだけなんです.」
平岡は遠くで見ていた男に目配せした.
平岡「踊りませんか?」
タミーは平岡の誘いに乗った.
平岡「大変失礼なんですが,あなたどういう方なんですか? 何をなさってるんですか?」
タミー「私の主人はヨットを作る会社を経営しております.」
平岡「ほう.ヨットなら近頃ブームだし, 外国からの注文もあってなかなか忙しいでしょう. 裕福な家庭と美人の妻.ご主人がうらやましい.」
タミー「先生,正直に申しますと私今夜ここへお伺いする気になったのは, 先生が弁護士でいらっしゃるからですの.」
平岡「何かお困りなことでも?」
タミー「私の主人は私よりも随分年上なんですが, 小さな漁船作りから始めてこつこつとここまで来て, やっと外国から取引できるほどの会社にまでしたのに, 法に無知な主人を利用してある恐喝者が.私も法の知識がないものですから, まんまと乗せられて余計主人を窮地に追い込むようなことになって.」
平岡「会社に顧問弁護士はいらっしゃるんですか?」
タミー「いるにはいるんですが,先生のような誠実そうな人じゃないので, どうも信用できなくて.」
平岡「そうですか.ま,一度お伺いしてゆっくりお話を伺いましょう. 当分は忙しくて無理ですが.」
タミー「私,あの自殺なさった夫人が自分の近い将来を見ているようで, それで,それでどうしても本当のことが知りたくなって. いろいろと立ち入ったことをお伺いして申し訳ございません.」
平岡「そういうことでしたか.遺書は確かに預かりました. しかし,佐竹夫人に関することは一切お話できません. 僕は依頼者の秘密を守る義務があります.弁護士ですから.」

タミーは平岡から何も聞き出せなかった. そこでパンは恐喝一味が佐竹社長に接触しているに違いない, と佐竹社長の方に探りを入れることを発案した. まずマイトとドラゴンが恐喝一味に扮して佐竹社長に近づき, 次にパンとデジコンが刑事に化けてマイトとドラゴンを捕まえて, 佐竹社長に近づく作戦を実行した.だが佐竹は何も喋らず, 見事に空振りに終わった.
ドラゴン「ヤッパリダメカ.」
デジコン「だから言ったでしょ. この種の事件は恐喝された被害者からの告発ってのは難しいってね.」
パン「マイト,これは別な手だな.」
マイト「よーし,弁護士の線だ.」

その頃,佐竹は恐喝者に会っていた.佐竹は金を恐喝者に渡した. 恐喝者は妻の浮気写真と贈賄の極秘メモを回収すると称して金をゆすったのだ. 恐喝者は写真は渡したがメモは回収しなかった. それでは約束が違うと言う佐竹に,恐喝者はメモも回収すると言うのであった.

平岡は富倉紡績社長夫人しげこに貴金属店で買ったペンダントを渡していた. 不審な男が遠巻きに見ていた. そして平岡としげこが情事を行なっているところへ男が登場し, 写真撮影を行なった.男の後をデジコンが追跡. 男が東海経営新報社に入るのを目撃した. デジコンからそのことを聞いたマイトは
マイト「東海経営新報社と言えば, あの悪名高い総会屋前田仙造(安部徹)の会社だよ.」
パン「前田仙造か.あの野郎,今まで散々あくどいことしてきやがったくせに, 一度も警察に尻尾捕まれたことねえんだよなあ.」
デジコン「そんなトカゲ野郎なら,よほどうまく尻尾をつかまないと.」
ここでデジコンはタミーに声をかけた.
デジコン「タミー,どうした.さっきから考え込んで.」
ドラゴン「タミー.」
マイト「二枚目弁護士にまた別の女ができたことがショックなんだ.」
タミー「グルなんだわ,あの弁護士と前田は.」
マイト「女の直感か.だが証拠がない.」
タミー「あの遺書よ.弁護士が持っているに違いないあの遺書を手に入れれば, 必ず何かが出てくるわ.」

その頃,富倉紡績社長夫人しげこのところへ電話がかかっていた. 電話は東海経営新報社からのものだった.写真が手に入ったと言うのだ. また十分検討させていただいてお電話いたしますと言って,電話は切れた. そして東海経営新報社へ平岡がやってきた.平岡は前田とグルだったのだ. 平岡はかよこの遺書をたてに前田から金を受け取るのではなく, 平岡が前田にお金を分けることを要求した. 前田は平岡の親代わりになって学費を出して弁護士にしてやったことを盾にし, 折半を主張した.

平岡はしげこに会い,白々しく善後策を協議した. デジコンからそのことを聞いたタミーは遺書を盗み出そうと言った. タミー達はかよこの遺書を盗み出そうと平岡の事務所へ向かったが, 前田の部下が忍び込んでいるところに出くわした. 早速ドラゴンが前田の部下を倒し,遺書を奪った.まず社員藤木が写真を撮影. その写真をネタに前田の秘書金村がいろいろと恐喝していたのだ. 証拠はそろった.ハンギングだ.

ハンギング

タミーが平岡に接触し,遺書を返したいとほのめかし,平岡にコピーを渡した.
平岡「貴様は前田の回し者か?」
興奮した平岡はうっかり前田の名前を出してしまった.
タミー「前田の? それどういうことですの?」
平岡「とぼけるな! 遺書を盗んだのは前田仙造に決まっている.」
タミーは遺書の本物を夫が返したいと考えていると言って, 平岡をとある港に停泊しているヨットの一室に連れ込んだ.そこにはパンがいた. パンは平岡に遺書を渡し,前田に売りつけて売上を折半しようと申し出た. 平岡は同意した.そして本物の遺書はタミーが掏り取り, パンとタミーは外へ出て行った.一方,マイトは前田の事務所に乗り込み, 遺書のコピーを見せた.マイトは前田に, 平岡が遺書を売りたいと言っていると伝え,平岡のいるヨットに連れ込んだ.

前田「としや,遺書をいくらで売る気なんだ?」
平岡「十億だ.」
前田「十億? そんな.」
平岡「俺はあんたにそれくらい儲けさせたはずだ.びた一文まからないな.」
前田「下手に出りゃ,つけあがりやがって.」
前田は平岡に拳銃を突きつけた.振り返った平岡は驚いた.
前田「おとなしく遺書を出せ.死にたくなきゃ,早く出すんだ.」
平岡「わかった.」
平岡は懐から封筒を出して前田に渡した.前田は中を確認したが,白紙だった.
前田「なんだ,これは.貴様.」
前田は怒り,また拳銃を突きつけた.
前田「わしを馬鹿にする気か! 本物を出せ!」
平岡「待ってくれ,これは何かの…」
前田「うるさい.早く出せ.」
平岡は叫び,前田の右手をそらした. 銃声がヨットについているスピーカーから流れた. 実はハングマンは前田と平岡が大喧嘩している様子を, スピーカーで流していたのだ.そうとも知らずに
平岡「拳銃よこせ.」
前田「くそう.」
また銃声が響いた.外にいた人が警察に電話をしにいった. ヨットの中では平岡が前田に拳銃を向けていた.
平岡「よくも,よくもこの俺を殺そうとしたな. お前みたいな野郎はぶっ殺してやる.」
前田「ま,ま,待て.としや,わしは何だ.わしはな, お前を撃つ気なぞなかったんだ.ただ遺書が欲しかっただけなんだ.」
平岡「うるさーい.お前の騙しになんか乗るもんか.」
前田「う,撃つな! 撃たんでくれ.わしが悪かった.信じてくれえ.」
ヨットの周りに人が集まってきた.
平岡「は,は,は,は.今になってあがいたってもう遅い. これからは俺がボスだ.お前を殺して,俺がボスの座に座る番だ. 俺はそれにふさわしい仕事をしてきた. 女を利用して恐喝のネタを作り出してきたのはこの俺だ. 法の網をかいくぐってお前達に大もうけをさせてやったのもこの俺だ. 俺の頭脳だ.この俺を殺そうとしやがってきたねえ.地獄へ行くんだ. 地獄へ行け.」
前田「このわしを殺したら,殺人罪でお前の弁護士生命もおしまいだぞ. それでもいいのか.」
平岡「は,は,は,は,は.正当防衛って言う便利な法律があるんだ. お前だって知ってるだろう.弁護士と総会屋じゃ, どう考えたってお前の方が分が悪いな.さ,死んでもらうぞ.」
前田は外へ逃げた.平岡は拳銃をぶっぱなした. そして外へ出た前田と平岡は遺書のコピーが周りの海面に漂っているのを見た. さらにヨットに「恐喝殺人事件犯人乗船」という幕が下がっていること, そして自分の部下が船に縛られていることも. 前田と平岡は駆けつけた警官に逮捕されたのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp