第四十三回

暴力団を全滅させる
ふたり親分相撃ち作戦

脚本:中村勝行 監督:帯盛迪彦

銀龍会の跡目相続をめぐって暴力団の抗争が激化. ついに一般市民にまで死者が出た.この事件が仕事になった.
デジコン「この男が関東一の組織暴力団銀竜会々長, 日本のドンと呼ばれた島崎壮八. 今回の抗争事件は一月前にこの島崎が心臓発作で急死したことをきっかけに, 跡目相続を巡って火蓋が切られたってわけだ. 跡目ナンバー1と目されていたのが村尾組々長村甲こと村尾甲造(草薙幸二郎). 銀竜会の切り込み隊長として組織の拡大に功績のあった男で, 今でも事が起これば先陣を切って鉄砲玉を送り込むと言った根っからの武闘派. 一方,その対抗馬と言われているのが滝口組々長滝口正次郎(宮口二郎). 表向きは金融業と言う看板を掲げているが実態は手形のパクリ屋, もぐりの金貸し,競馬のノミ屋などを手広く営み, 銀竜会の金庫番と呼ばれている男だ. この二人が今回の抗争事件の主役ってわけだ.」
パン「暴力派に金力派か.まことに対称的だ.」
マイト「同じ銀竜会でもこの二人は犬猿の仲なんだ. おまけに跡追い問題が絡んでいるだけに, どちらも一歩も引けないってことだろう.」
デジコン「このまま放っておいたら罪もない一般市民が巻き添えを食って, 犠牲者はますます増えるばかりだ. それを阻止するためにも銀竜会を叩き潰さなければならない. それがゴッドからの指令だ.」
パン「え? それは警察の仕事だろう.」
マイト「ところが警察が上げるのは雑魚ばかり. 肝心の主役は椅子に座ってデーンと高見の見物だ.これじゃ, 組織壊滅どころか三つ巴の鬼ごっこをしているようなものだぜ.」
ドラゴンがなんか言った.
パン「香港もおんなじだってさ.洋の東西を問わず大物は常に安泰.」
マイト「だから俺達ハングマンに出番が回ってきたってわけよ.」
タミー「でもあれだけの組織を一気に叩き潰すなんて,いったいどうやって?」
デジコン「ここに資料がある.」
デジコンは封筒から写真を取り出した.
マイト「ふーん,女か.」
デジコン「かがわみやこ.村甲の女だ.」
パン「これが奴のアキレス腱になりそうだなあ.」
マイト「女性は僕ちゃんの担当だ.一応任せてもらいましょう.」
タミー「マイトったら.」
デジコン「さて,滝口のほうはどうするかなあ.」
パン「よし.奴ら用の餌撒いてみるか.」

闇金融会社を営む滝口にはパンが接触. パンは倒産した会社の不渡手形を滝口の会社に渡した. ついでにパンはヘロインも入手した. 倒産した会社の事務所にデジコンが居座っていると 滝口の部下が乗り込んできた.デジコンは滝口の部下に連れ出され, その後をタミーとパンとドラゴンが追った. デジコンは滝口の事務所へ連れてこられた. 滝口はパンが持ち込んだ手形の監禁を持ちかけるが,デジコンは断った. その代わりにデジコンは滝口にヘロインの取引を持ち掛けた. 取引現場ではドラゴンが倒れており,村尾組にヘロインを取られたと言う. 滝口は次の取引まで預かると称してドラゴンを連れて行った.

村甲の女かがわみやこの営むブティックをマイトが覗いていた.
マイト「やくざの色にしておくにはもったいないなあ.」
マイトはみやこが村甲のところへ行くところを襲って麻酔薬で眠らせた. みやこが気がついた時,みやこは車の中で寝かさせていた.
マイト「気がつきましたね.」
みやこ「あなたは?」
マイト「通りすがりのものです. チンピラ風の男があなたに乱暴しようとしたので.」
みやこ「乱暴?」
マイト「間一髪でした.」
みやこ「それじゃあ,あなたが.」
マイト「私は喧嘩が苦手でね.おかげで二,三発殴られましたよ.」
みやこ「申し訳ありません.」
マイト「いやあ,あなたが謝ることはない.」
みやこ「でも.」
マイト「よろしかったらお送りしましょうか.」
みやこ「すいません.」
マイトは車を運転し,レストランへ向かった. 村甲は遅刻してカンカンだったが,滝口の手のものに襲われたとみやこは説明. 村甲は激怒した.これにより村甲と滝口の抗争が激化した.

あまりの抗争の激化振りに, 滝口はヘロイン40Kg(末端価格約40億円)を村甲に譲り渡すことを条件に, 銀竜会の会長の座を得ようと持ちかけたが,村甲は拒否.交渉は決裂した. その模様をデジコンとマイトが盗聴していた.
マイト「交渉決裂だ.40Kgのヘロインか.おい,これは面白くなりそうだぜ.」
デジコンはドラゴンにヘロインの在り処を探させた. そしてドラゴンはヘロインの隠し場所を発見した.

マイトはみやこの店に顔を出した.
みやこ「よくおわかりになりましたねえ,私の店.」
マイト「通りがかりにちょうどあなたを見かけたものですから. それにしても意外だった. あなたのようなお方が村尾組の組長と交際があるなんて.」
みやこ「どうしてそれを?」
マイト「あなたの店の店員, あなたに似て美人揃いだがちょっと口が軽すぎますねえ.」
みやこ「私,村尾の援助を受けてるんです. あのブティックも村尾が全面的に資金を. 俗に言う囲われ者って言うんですか.」
マイト「幸せな男だ.」
みやこ「え?」
マイト「あなたのような女性を独り占めできるなんて. 男として幸せですよ.」
みやこは絶句した.
マイト「一度会ってみたいなあ.」
みやこ「村尾にですか?」
マイト「興味があるんです.多少のジェラシーも含めてね.」

団地のアジトでタミーが言う.
タミー「マイト,それ演技じゃなくて案外本気なんじゃないの?」
マイト「俺はいつでも本気さ.こと女に関してはなあ.」
タミーは呆れた.
タミー「これなんだから.」
デジコン「で,彼女オッケーしたの?」
マイト「おお.夕方の五時に彼女のマンションで食事をすることになった.」
タミー「第一接近成功.問題はその後ね.」
マイト「奴が滝口の取引に応じてくれればこっちのもんなんだ. 親父さん,黙ってないで何かいい手はねえのかい.」
パン「あるよ.これなんか使えそうだ.」
パンは資料を渡した.
マイト「ああ?」
パン「村尾の奴はなあ,この資料によると病気ノイローゼだ.」
マイト「病気ノイローゼ?」
パン「粗暴な奴ほど気が小さいって言うけれども,風邪引いただけで, はあ,死ぬー,って大騒ぎだって.」
マイト「ああ.」
パン「よっぽど病気が恐いのか,常時5種類も薬飲んでる.」
タミー「5種類も?」
パン「ああ.強心剤から精神安定剤,消化薬,総合保健薬,薬漬けだよ.」
マイト「薬漬けか.親父さん,そいつは使えそうだ.」
パン「使えるわ.」
マイト「デジコン,元化学警察官としては化学にも強いんだろ.」
デジコン「まあね.」
マイト「人為的に心臓発作を起こさせるような薬は作れないかね.」
デジコンはしばらく考えた後,
デジコン「ストリキニーネなら似たような症状になる.」
マイト「ストリキニーネ?」
デジコン「毒性の強い薬品で薬理作用としては脊髄の反射機能を高め, 全身の筋肉に硬直性痙攣を起こさせることができる.」
マイト「よーし,決まった.そいつで行こう.」

夕方五時. マイトはアメリカの大学の研究室で働いていると称して村甲とみやこと会食した. 別れ際,マイトは村甲と握手をして,そのときにカフスボタンに仕込んであった 待ち針を刺した.待ち針にはストリキニーネが塗ってあったのだ. 村甲は胸を押さえて苦しんだ.マイトは村甲をベッドに寝かせ, 心臓発作だと言い,知人の「医者」に電話した. やってきたのは医者に扮したパンと看護婦に化けたタミー.
パン「心不全による心臓発作ですなあ.ま,一時的な発作ですから, 命に別状はございませんが,なるべく今後は, 激しい運動とか気を使うようなお仕事はお避けになった方が, よろしいんですがなあ.」
みやこ「はい.」
パン「お仕事は?」
みやこは口篭もった.
マイト「会社役員です.」
パン「ああそうですか.ま,できれば現役を退かれて, 当分の間安静に過ごされた方がよろしいんですがなあ.」
マイト「引退しろと仰るんですか?」
パン「ええ.まあ仕事上のストレスがたまるとか, 心労を伴う激務は一番体に毒ですからなあ.」
マイト「村尾さん,お聞きになりましたか.」
村甲はうなずいた.
パン「私はこれで.お大事に.」
みやこ「ありがとうございました.」
マイト「お送りしましょう.」
マイトとみやこはパンとタミーを送るために部屋から出たが
村甲「みやこ.」
みやこは村甲が呼ぶので中に入った.それを見たパンとマイトは思わず笑った.
村甲「電話を取ってくれ.」
みやこ「電話を?」
村甲「俺はなあ,極道の世界を今まで身一つで渡り歩いてきた. しかしこんなことでは組の連中に示しがつかねえ. 癪な話だが,銀竜会の跡目は滝口の野郎に譲って, 俺はきっぱりと身を退くつもりだ.」
その言葉をしっかりとマイトも聞いていた.そして村甲は滝口に電話した. 村甲はヘロインと交換に跡目を滝口に譲ることにした. 村甲はヘロインを取りにその日の夜10時に滝口の事務所へ行くことにした.

ヘロインを奪ってしまえば交渉は決裂するに違いない. 団地のアジトでマイト達は作戦を練った. が,隠し場所の壁はコンクリートで換気口があるだけで侵入が不可能に近い. まずタミーがトイレの給水管を壊す. そして水道局員に化けたパンとデジコンがトイレを閉鎖. トイレの換気口から管をいれ,隠し場所の換気口へと管を出した. あとは掃除機を管に取り付けてマイトがヘロインを全て吸い込み, 代わりに小麦粉を入れておいた.
パン「マイト,按配はどうだ?」
マイト「後ですいとんでも作って食べるだろう.」

そして手打ち式の時を迎えた.滝口はヘロインの隠し場所から, ヘロイン(ではなくて小麦粉)の詰まったアタッシュケースを持って来させた. それをマイトとドラゴンが見届けた.そして村甲が滝口の事務所にやってきた.
滝口「やあ,やあ,やあ.お待ちしてましたよ.さあ,どうぞ.」
村甲「早速,見せてもらおう.」
滝口「ええ.おい.」
滝口は部下にアタッシュケースを出させ,村甲をソファに座らせた. 村甲はアタッシュケースの中に入った薬の袋を破り,薬を舐めてみた. 村甲の顔色が変わった.
滝口「どうかしましたか?」
村甲「こいつは偽もんだ.」
滝口「何?」
村甲「ただのメリケン粉だよ.」
滝口「そんな馬鹿な.」
村甲「ふざけやがって!」
村甲は袋を叩きつけた.と同時にマイトが仕掛けておいた小型爆弾が爆発した.
と同時に撃ちあいが始まった. 結局村甲と滝口はピストルで相撃ちとなり,二人とも死んでしまった. こうして銀竜会は全滅した.

解説

というわけでハンギングシーンはありません.この頃, 中村勝行さんは事実上のメインライターになっていたはずですが, 彼の書く話はなぜかこういう異色作ばかりです. なお滝口を演じた宮口二朗さんは#20でも悪役を演じています. 「仮面ライダー」のゾル大佐や 「非情のライセンス」での刑事役が有名な人です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp