第四十一回

外国人の殺し屋と対決
パリから来た殺し屋

脚本:中村勝行 監督:西村潔

夏の暑い日.ある政治家がゆすり屋に強請られて困っていた. 秘書は強行手段を示唆した.

そんなある日. 新宿のビルの屋上から白人の男(クロード・チアリ)がホテル街を見張っていた. ホテル街に止まっている車の中では, 黒人の男(キム・バス)がホテルを見張っていた. ホテルから女(鹿沼えり)が出てきた. その直後,男が出てきた.黒人は男がホテルから出てくるのを見つけ, 無線で白人に「出てきた.」と連絡を取った. 白人は子供達にソフトクリームをあげている最中だったが, 無線で連絡を受けると立ち上がり,早速ゴルフバックを抱えて移動. ゴルフバックからライフルを取り出し, ホテルから出てきた男を屋上から射殺した. そして白人は黒人の車に乗って去って行った.

調査開始

次の日,パンは病院から退院した. パンが看護婦さん達と出口で話しているところへマイト登場.
マイト「大丈夫かよ,大丈夫かよ.」
パン「マイト!」
パンは大喜び.酒屋の前でマイトはキリンの缶ビールを御馳走した.
パン「マイトがわざわざ迎えにきてくれたとは嬉しいなあ.」
マイト「飲んでくれや.ほら.飲んでくれや.もうすっかり治ったのかい.」
パン「ああ,ばっちり生き返ったさあ.」
マイト「おーい,死人が生き返っちゃ困るぜ.」
パン「ああ,それもそうだなあ.」
マイト「ま,とにかくなあ,軽井沢に別荘一週間借りといたから, ゆっくり休んでくれ.」
パンは大喜び.だが,
マイト「と言いたいところだが早速仕事なんだ.」
パンはがっかりした.

ゴッドのオフィスでは,残りの三人がパンとマイトを待っていた.
マイト「お待ちどうさん.」
タミー,デジコン,ドラゴンは拍手し,タミーは全快祝いに花を渡した.
パン「入院ってのは面白くないよ.もう死人とおんなじだよ. まあ一ヶ月ぶりにみんなの顔を見たら気分爽快.」
デジコン「ゴッドからもお祝いのメッセージが届いてますよ.」
パン「洒落たことしてくれたなあ.」
デジコンがゴッドからのお祝いのメッセージを読み上げた.
デジコン「退院おめでとう.今後の健闘を祈る.」
パン「それで?」
デジコン「それだけ.」
パンはがっかり.
マイト「その代わり仕事の中身は分厚いぜ.ほれ.」
マイトはファイルを放り投げた.
パン「宮仕えは辛いわ.」

ゴッドの指令は冒頭の殺人事件を探ることだった. 殺されたのは警視庁捜査二課の滝沢刑事.勤続20年のベテラン捜査官だ. 警察は恨みによる犯行と見ていた. しかし白昼衆人監視の中で狙撃するという大胆な手口や, しかもかなりの距離から心臓をぶち抜いていることから, ゴッドは犯人が射撃に熟練しているものかプロのスナイパーであると見ていた. タミーは警察だってそのくらいは考えるだろうと言ったが, 滝沢にはプロの殺し屋に狙われる理由が見当たらなかった. ドラゴンは「ボウリョクダンハ?」と言うが, マイトは捜査二課の刑事で経済犯専門の係であることを理由にその説を否定した. 暴力団は捜査四課の担当なのだ. つまりゴッドの指令は殺し屋を探し出すことと殺し屋の依頼者を探し出すこと.

早速マイトとデジコンは現場を訪れた. マイトは現場がラブホテル街の近くだということに気づき, デジコンと二人でラブホテル街へ向かった.すると本庁の刑事達の姿が見えた. 堅物の滝沢には愛人がいて彼女は銀座のホステスだったことが 刑事の調べでわかっていた.刑事は事件に関係がないし, 警察の面子のためにも公表しないでおこう,と言っていた. その会話をマイト達は盗み聞きした.
マイト「滝沢は女とホテルでしけこんでいたんだ.」
一方,パンはビルの屋上を当たっていた. そして中年の白人が子供達にソフトクリームをあげていたことを聞き込んだ.

料亭では黒人と白人が浴衣を着てたたずんでいた.黒人はアメリカ人. 白人はやけに日本に詳しく「郷に入っては郷に従え」と言い, 風流を楽しんでいた.黒人は依頼者からの連絡を待ちわびていた. 白人は浮世絵の描かれたうちわを仰ぎながら,そろそろ来るだろう, と言っていた.そこへ電話が. 白人が取ると依頼者石野(川辺久造)からのものだった. 金が出来次第振り込むことと,滝沢に情報を漏らした奴を探して殺して欲しい, と伝えた.渋る白人に石野は金を上乗せすると伝え, 滝沢の愛人から探り出してはどうかと付け加えた.

その頃,滝沢の愛人(鹿沼えり)はキャッシュコーナーにいた. 愛人が立ち去った後,デジコンがゴミ箱をあさり, 愛人の口座に1253万円の振込みがあったことを知った.その晩, マイトが愛人の店に潜入した.マイトはホステスから愛人が新入りだという事と, 金持ちの滝沢がパトロンになっている事を聞き出した. 滝沢は女に貢いでいたらしい.刑事が大金を手にするには二つの方法がある. 一つは個人的に得た情報を売り渡すこと. もう一つは個人的に得た情報を元に強請ること. 個人的に得た情報ならばれることはない. 滝沢は強請った相手に殺されたに違いない. マイトはデジコンとドラゴンに滝沢の愛人を見張らせた. 突然,マイトが話題を変えた.
マイト「出前のラーメン遅いじゃんか.」
パン「悪い悪い.今日休みだってさ.」

滝沢の愛人が乗ったタクシーをデジコンとドラゴンが追いかけた. 愛人はマンションの前で黒人に襲われた. ドラゴンは黒人と対決するが,黒人の空手とナイフ投げにはかなわず, さらわれてしまった.だがドラゴンは愛人が落としたアドレス帳を拾っていた.

団地のアジトでデジコンとドラゴンは黒人に愛人がさらわれたことを報告した. 黒人は愛人から何かを聞き出すためにさらったに違いない. マイトは滝沢に相棒がいたのではないかと睨んでいた. 相棒も狙われるに違いない. マイトはアドレス帳に載っている人を洗ってみようという. そしてパンはデパートの屋上に白人がいたことを報告.

廃工場で黒人は愛人を拷問し,滝沢に情報を流した奴を聞き出そうとしていた. だが愛人は知らないようだ.白人は拷問をやめさせた. そして滝沢が親しくしていた人は誰か聞いた. そして加倉井(中井啓輔)という男のことを聞き出した. さらに愛人はアドレス帳に電話番号が書いてあると答えた. 愛人はもう話したから返してくれというが, 黒人は「そうはいかない」とナイフを投げて愛人の心臓を一突きにしてしまった. 面を見られたからだ.
白人「面を見られて人を殺していたら何百人殺しても足りないぞ. お前はまだ一流じゃないんだよ,殺し屋として.」
黒人「俺はお前とは違う.俺の色は目立つんだ,日本では.」
白人「かわいそうに.なにもこの女を殺すことはなかったんだ.」
黒人「シャラップ.お前は俺のボスじゃない.」
白人「お前とは一度決着をつけなきゃならんとおもった.やるか?」
黒人「Yeah, Ok!」
外で白人と黒人は空手で戦った.結果は黒人の負け.

その頃,ゴッドのオフィス.マイトの位牌の前に線香の煙が舞っていた. そこへマイトがやってきて机の上に置いてあった殺し屋の資料を取り上げた.
マイト「ピエール・ボナパルト.国籍フランス.」
マイトは外でパンと話した.白人の資料はインターポールの資料から得られた. ピエールはフランス語のほか八ヶ国語を話し,国籍はその都度変えていた. 偽造パスポートを使うほか,変装の名人で面を見られたことは一度もなかった. ピエールはたまにパートナーを現地で調達するが, 黒人はピエールのパートナーかもしれない.

ピエールの依頼者は加倉井の名前を聞き,驚いていた. その頃,デジコンとタミーも加倉井のところへ向かっていた. 加倉井りゅうじは国土開発庁の三崎和夫の後援会である三和会の幹事だった. 滝沢に情報を流したのは加倉井に違いない. 国土開発庁といえば莫大な利益が絡む政治ポストだ. 仮に民間業者と三崎の間に不正があったとしたら, その情報を加倉井が捜査二課の滝沢に流し,滝沢はそれをネタに業者をゆすり, 挙句の果てに殺された.これが今度の事件の概要だ.そこでマイトはデジコンに, ピエールが加倉井をいつどこで狙うかをインターポールの資料をもとに分析させ, 加倉井を自分とドラゴンで見張ることにした.

ピエールと黒人は三和会を探し当てていた.加倉井が出てきた. と同時にマイトが尾行しているのをピエールと黒人は見かけた. その頃,デジコンの分析結果が出た.射程距離は200mから300m. そして角度は20度.デジコンは3箇所のビルに絞り込み, 退社する会社員で溢れる午後5時頃に狙うだろうと睨んでいた.

その頃,加倉井はナイフで狙われた. 早速マイトの指示でドラゴンが加倉井を襲わせ, マイトがドラゴンを撃退するという芝居を打った. マイトは警視庁の刑事と名乗って加倉井と接触した. そしてマイトは加倉井に加倉井が命を狙われていると告げた. マイトは見張っているドラゴンを殺し屋だと言って脅した. この作戦に引っかかった加倉井は, 城西開発の石野社長に狙われたのではないかと答えた. 城砦開発は土地転がしのためのトンネル会社.石野と三崎は昔からの親友で, 国有地を安く払い下げてもらっては転売して巨額の利益を得ていた. そのネタを加倉井は滝沢に流して強請らせたのだ. 加倉井は偶然石野と三崎が取り交わした念書を見つけたので, それをコピーして滝沢に渡したのだ.マイトはその会話をテープに録音した. このテープを警察に送れば石野と三崎は御用.あとは殺し屋だ. デジコンは三箇所(確率90±5%)に場所を絞り込んだとマイトに報告した.

ハンギング

午後五時頃. マイトは三和会の前に車を止め,ドラゴンは三和会脇の歩道橋の上に立っていた. デジコンとパン,そしてタミーはビルの上にいた.
マイト「そろそろ退社時間だ.殺し屋まだ姿現さないのか.」
デジコン「いや,未だです.」
パン「俺のほうも駄目だ.」
タミー「右に同じ.」
マイト「おかしいなあ.おい,加倉井が出てきたぜ.」
加倉井が三和会から出てきた.
マイト「殺し屋,まだ出てこないのか?」
デジコン「ええ.それらしい気配はまったく.」
パン「なあ,マイト.奴ら,ひょっとしたら場所変えたんじゃないかなあ.」
マイト「まさか.」
タミー「きっと裏をかかれたんだわ.」
マイト「なあんてこった.だからコンピュータって当てにならねえんだよ. すぐに降りてきてくれえ.」
加倉井は駐車場へ行くと黒人が現れた.そこへドラゴンが登場し,黒人と戦った. 加倉井は車を発進させた.黒人をドラゴンが,そしてマイトが追う. だがマイトは気がついた.
マイト「そうか,奴は囮だ.」
マイトは慌てて引き返した.そしてデジコンとパン,そしてタミーに
マイト「加倉井の車探してくれ.」
黒人とドラゴンは川の中を走り,公園で対決. 黒人はヌンチャクを持ち出したが,結局ドラゴンに敗れた.
デジコン「畜生,どこ行っちまったんだ.」
パン「まんまと裏かかれたな. コンピュータも人間の知恵にはかなわなかったってことかな.」
デジコン「いえ,コンピュータの答えは正しかったですよ. ただ偶発事態が発生しただけのことですよ.」
パン「まだ言ってるよ.」
その頃,住宅街でピエールが車の中から加倉井の車を狙っていた. そこへマイトが登場.逃げるピエールの車を追いかけた.
マイト「殺し屋の車を追跡中.恵比寿から原宿方面へ向かってる.」
デジコン「了解.」
タミーも合流した.ピエールは行き止まりに追い詰められてまい, 車を降りて逃げた.そしてライフルでマイト達を狙った.
マイト「ピエール・ブダペスト,こっちにはダイナマイトがあるんでい. この野郎.」
マイトはダイナマイト(の偽物)に火をつけて投げた. 煙にむせるピエールをマイト達が捕まえた.
マイト「さあ,一緒にきてもらおうか.」
ピエール「あんた達,いったい何者なんだ?」
パン「ハングマンだよ.」

ここはあるビルのボイラー室.
パン「お前さん達の身柄は, このインターポールの資料と一緒に日本の警察に引き渡すことになった. まあいずれ本国に送還されて裁かれることになるんだろうが, その前にちょいと手貸してみろ. お前さん達にドジ踏ました野郎を捕まえたいんだ.手伝ってくれるな.」
ピエール「武士は食わねど爪楊枝.
パン「武士は食わねど爪楊枝? ちょっと.」
ピエール「あのう,まな板の上の鯉.」
パン「驚いたねえ.まな板の上の鯉とは.You are a gentle man.」
そこへマイトが登場.
マイト「おーい,できたか.」
パン「おうおう,今引導渡したよ.」
マイト「石野と三崎の会食は13時半からだそうだ.早くしてくれよ.」
パン「そう慌てなさんなって.」
マイト「さあそろそろ始めるか.」

そのビルにある高級レストランでは石野と三崎が会食していた. 乾杯の後,三崎と石野は加倉井のことを話していた. そこへ給仕に扮したデジコンとマイトが登場.
デジコン「お待たせしました.」
三崎「ん?」
石野「君,こんな料理は頼んだ覚えないぞ.」
マイト「いえ.シェフからお二人にどうしても召し上がっていただきたいと.」
石野「シェフから?」
マイト「はい.これは滅多に手に入らない,世界の珍味でございます. どうぞ召し上がってください.」
マイトが蓋を開けるとナイフとマイクロカセットが.
石野「何だ,これは.」
デジコンを蓋を開けるとライフルの模型が. ライフルが三崎を狙い,テープから加倉井の声が流れた. 思わず石野がテープを止めようとするがナイフは リモコンで動くようになっており, 石野はナイフで手を切りそうになったので手を引っ込めた.
マイト「(テープの声)止めようとしても無駄だ. 貴様らの悪事はこの加倉井のテープとともに警察に届けてある.」
石野「いったい何の真似だ,これは.」
三崎「支配人を呼べ.」
マイト「支配人!」
パン「はいはい.ただいま.」
登場したのはパン.
パン「あ,お呼びでございますか.わたくしが当店の支配人でございます. ちょうどようございました.あちらのお客様がこれをお渡しするようにと.」
パンが石野にメモを渡した.ふと見るとタミーとドラゴン, そしてピエールと黒人が座っていた.石野がメモを読み上げた.
石野「テーブルの下,少しでも動くと命がないぞ.」
慌てて石野と三崎がテーブルの下を覗くとダイナマイトが仕掛けてあった. 見るとピエールがリモコンを手にしている.おびえた石野は立ち上がったが, 三崎が動くなと制止した.
石野「支配人.」
パン「そうです.そうですよ.」
石野は座った.そこへパトカーがやってきた.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp