第三十九回

悪徳医師親子をハンギング
悪医者は吸血処刑

脚本:鴨井達比古 監督:永野靖忠

ある夜,マイトの知り合いかわむらよしこが心臓発作を起こした. 司法試験の勉強をしていたたくやは, マイトの車でよしこを車で病院へ運ぶことにした. とりあえずマイトはよしこを大徳寺総合クリニックへ運んだ. 看護婦の西田めぐみ(佐藤万理)は副院長を呼びに行ったが, 大徳寺俊彦副院長(松橋登)は婦長と情事の真最中. 俊彦と婦長は救急病院ではないという理由でマイト達をたたき出してしまった.
マイト「あんたら,それでも人間か!」
マイトは心臓マッサージをしたが,別の病院に着いたとき, よしこは死んでしまった.大徳寺総合クリニックで応急処置が行なわれていれば, よしこの命は助かったかもしれない.

調査開始

ここはゴッドのオフィス.
マイト「あの病院で応急措置さえしていれば,多分助かったはずです. それを考えると悔しくて.とても明るくていい娘だった. 両親を交通事故で亡くしてから二人っきりの生活だったんです. ゴッド,それがなにか,我々の仕事と関係があるんですか?」
ゴッド「ある.高林五郎という人物については至急な.」
タミー「高林五郎? あの全国医療ユニオンの.」
ゴッド「そうだ.過去十年間全国医療ユニオンの会長として君臨し, 歴代の厚生大臣を馬鹿呼ばわりしてきたあの怪物の高林五郎だ.」
デジコン「確か,彼は引退.」
ゴッド「そうだ.怪物も病には勝てなかったわけだが, 問題は二ヵ月後に行なわれる全医療の会長選挙だ.次の会長には誰がなるか. もちろん,日本にだって良心的な医者は数多くいる. この十年間,高林のやり方を苦々しく思ってきたものも多い. そうした中から次期会長の有力候補として注目を集めていたのが, 関東医科大学の名誉教授有村慎太郎博士だ. わが国の医学界の両親と言われてる人だ. ところが三週間ばかり前,この有村博士が自宅付近の公園を孫と散歩中, 数人組の暴漢に襲われ,殺害された.」
タミー「その事件でしたら,新聞で見ました.財布を奪われたとか.」
ゴッド「ま,警察は強盗殺人事件として捜査を進めているが, 犯人の手がかりは全くつかめていない.」
デジコン「奪われた金額は?」
ゴッド「現金1550円だ.」
マイト「それっぽっちの金の為に何人もの人間が覆面をして… おかしいですねえ.」
ゴッド「しかも,凶器の鉄パイプには指紋一つ残されていなかった. つまりこれは訓練されたプロの計画的犯行だ. 決して金目当ての行きずりの犯行ではない.さて, 有村博士の死によって次期会長候補の最右翼にのし上がったのが,この男だ.」
ゴッドはスクリーンに一人の男(根上淳)を映し出した.
ゴッド「政財界人御愛用として有名な高級病院大徳寺総合クリニックの院長, 大徳寺俊造.」
マイト「大徳寺?」
ゴッド「そう. 君のかわいいガールフレンドに玄関払いを食わせた病院のオーナーだ. この大徳寺は怪物高林の右腕と呼ばれた男で, 現在は次期会長の椅子を目指して凄まじい現ナマ作戦を展開中だ. もしこの男が会長になれば, 高林以上の黒い怪物になることはまず間違いない. ここまで言えば,今回の諸君の任務はわかったと思うが.」
マイト「俺達は死人だから,医者が何しようと関係ねえが, あの病院だけは許せねえ.」

その頃,俊造は代議士の黒坂(有馬昌彦)とともに, 高級クラブで全医療大阪支部長の菊村(田島義文)に協力をお願いしていた. そこにホステスとして潜入したタミーが近づいてきた.

たくやは弁護士の橋爪(高峰圭二)とともに, 大徳寺総合クリニックを訴えることにした. 橋爪は弁護士だったたくやの父親に世話になった男だった. 橋爪はマイトに証言を求めた.
マイト「少し,考えさせてください.」
マイトはデジコンにこの事を話した.引き受けるつもりかと言うデジコンに
マイト「馬鹿なこと言うな.戸籍のない人間が法廷に立てるか.」
デジコン「まあね.しかしマイトが証言台に立たないとなると, その裁判勝ち目は薄いなあ.」
タミーは自分が潜入したクラブについて報告した. あのクラブは俊造が事実上のオーナーで,自分の女にやらせている店だった. 大徳寺は関西の票を握っている菊村に大攻勢を仕掛けていた. 菊村の弱点を突けば菊村は自分につくに違いない. 菊村は大阪で大きな病院を経営していたが, 株で失敗して何億もの借金を抱えていた.また菊村は女に弱かった. クラブのママはタミーを菊村とくっつけようとしていた. マイトはこの裁判を利用することにした.
マイト「この裁判騒ぎが大きくなれば,大徳寺にとっては致命傷になる. だから必ず対応処置を取ってくる.それを逆手にとる.」

マイトに証言を断られた橋爪は, 現場に居合わせた看護婦西田めぐみに証言を求めた. その様子をマイトとデジコンが見ていた. デジコンは大徳寺クリニックの人脈を調べたら, 理事会のメンバーに高木龍三郎の名前があったと言った. 高木は元広域暴力団神龍会理事長で, 現在は関東一円の総会屋の元締といわれていた. 高木は現役時代は東日本最強の殺しの軍団を従えていた. 高木なら有村博士を強盗に見せかけて殺すぐらいわけはない.めぐみは悩んだが, 結局証言することに応じた.それを院長室から俊造と俊彦は見ていた. 裁判で負けるはずがないと俊彦は軽く考えていたが, 俊造は結果は問題ではないと言い,裁判になり, マスコミが騒ぐことが問題なのだと付け加えた. そうなったら全国医療ユニオンの会長選挙に支障が出る.

慌てた俊彦と婦長はめぐみを副主任にすることを持ちかけたが, めぐみは俊彦の話を断った.怒った俊彦はめぐみに乱暴した. だが俊彦はめぐみに花瓶で殴られ,昏倒した隙にめぐみに逃げられてしまった. そのことを知った俊造は俊彦を殴った.そして高木(稲葉義男)と相談し, たくやとめぐみとマイトを殺すことにした.高木は有村も殺していたのだ.

その頃, 橋爪の事務所でマイトは橋爪からめぐみが証言すると聞いて安心していた. 橋爪はさらにマイトに証言を求めた.
橋爪「それなのに日下部さん,なぜあなただけが協力してくれないのです. よしこちゃんをむざむざと死に追いやっておきながら, 反省の色一つ見せない病院に対して,怒りを感じないんですか?」
マイト「それはもちろん.」
橋爪「あの兄弟はねえ, 両親を亡くしてからわずかに残された遺産でつましい暮らしをしながら…」
マイト「知ってますよ.私だってできれば,よしこちゃんのために…」
橋爪「じゃあ,よしこちゃんのために,お願いしますよ.」
マイト「それはできないんです.」
橋爪「なぜ? まさか,病院側があなたに対して手を打ってきたんじゃあ…」
マイト「違います.これは全く私の個人的な事情で.」
マイトは一呼吸置いた.
マイト「実はですね,今月中に私はあの,外国へ行かなければならないんです. 向こうへ行ったら4,5年は帰って来れないかもしれないし…」
地下駐車場でマイトは暴漢に襲われた.だが暴漢はマイトに撃退された.
マイト「何のつもりだ,いったい. 俺が弁護士事務所に来ているのを知って待ち伏せした.あ,そうか.」
マイトは車に乗り,デジコンにたくやの護衛と暴漢の車の割り出しを頼んだ.

たくやはめぐみのアパートを訪れていた. たくやとめぐみは近くの児童公園へ向かった.暴漢達はめぐみを追った. 一足遅く,マイトとデジコンはめぐみのアパートに着いたが, 留守だと知った. マイトとデジコンは同じアパートの住人から近くにいるだろうと言われたので 探すことにした.一方,たくやとめぐみは暴漢に襲われた. マイトとデジコンは駆けつけたが,暴漢を取り逃がしてしまった. たくやは頭を撃たれて重症.めぐみは拉致されてしまった. マイトが泊まっているホテルの部屋も爆破された.

ハンギングその1

一方,タミーは俊造が選挙のため買収していた, 関西の医療界の大物菊村に接近していた. 菊村を薬で眠らせたタミーはドラゴンと協力して情事写真をでっち上げた. そして写真を利用してタミーは菊村を脅迫した. そして菊村が賄賂を受け取る時の会話をテープに録音させることにした.

料亭で俊造は菊村を出迎えた.
俊造「約束通り現金で1億. まあ会長当選後にはそれなりの協力をさせていただきますよ. は,は,は.これで関西地区の票を取りまとめてもらえますなあ.」
菊村は冷や汗をかきながら,うなずいた. 菊村は記者会見でこのテープを公表した.この件は大々的に報道された. これで大徳寺俊造の会長当選の目はなくなった.
デジコン「ゴッドの指令はここまでだ.どうする?」
マイト「看護婦の西田めぐみは奴らに捕まったまま生死不明. 川村たくやは意識を回復してない. こんな中途半端で手を引けるか.俺は一人でもやるぜ.」
デジコン「そう来なくっちゃ.」
団地のアジトからハングマンは出動した.

ハンギングその2

マイトは婦長との情事にひたる俊彦の元に向かった.
俊彦「誰だ,君は?」
マイトは腰に巻いたダイナマイトを見せつけた.
マイト「院長に伝えろ. 息子を返して欲しければ看護婦の西田めぐみと交換だとな.」

俊彦はとある倉庫のベッドにくくりつけられた. ハングマンは皆白衣を着ていた.
俊彦「お前達は誰だ?」
ぶっとい注射器を持ったマイトが答える.
マイト「俺達は幽霊さ.またの名をベン・ケーシー. お前のお蔭で死んだかわいそうな娘のために,あの世からやってきた.」
俊彦「俺をどうする気だ.」
マイト「血をもらうのさ.」
デジコンは管のついた採血用の針を俊彦の左腕に刺した.
俊彦「やめろ.やめてくれ.」
管が点滴用の器具につながっており, そこから赤い液体がポタポタとたれるのが俊彦にも見えた.
マイト「よく見ろ.お前の薄汚れた血だ.」
床に落ちた赤い液体は音を立てた.
俊彦「やめろ.やめてくれ.やめてくれ.」
デジコン「お前も医者の端くれだ. 人間の体内からどれくらいの血を抜いたら死ぬか, それくらいは知ってるはずだ.」
俊彦はうめき声しか上げることができなかった. 赤い液体が音を立てて床に落ち,赤い水溜りがどんどん床に広がっていった.
俊彦「やめろ.頼む.やめてくれえ.やめだ.頼む.やめてくれえ. やめてくれえ.頼む.俺が悪かった.助けてくれえ.何でもするから.頼む. 死にたくない.死にたくない.」
マイトは電話機を取り出した.
マイト「お前とお前の親父のやってきたことの全てを話してもらおう. そうすれば,血をとめてやる.さあ,喋るんだ.」

その頃,俊造がめぐみを連れて倉庫の前へやってきた. 俊造はタミーにめぐみを引き渡した.
俊造「息子はどこだ.」
デジコン「どら息子なら中にいるよ. 今電話で警察に何もかも喋っているところだ.」
マイト「有村博士殺害の件.黒坂代議士との裏取引. 病院の不正経理.お前らのやってきたことの全てをな.」
それを聞いた俊造は倉庫の中へ走った.
俊造「俊彦.」
俊彦「親父,助けれくれ.輸血を.でないと,俺.」
パトカーの音が響く中,俊造は管を調べたが
俊造「馬鹿.血なんかじゃない.ただの赤い水だ.」

めぐみはたくやを見舞いに訪れた. たくやを看病していた橋爪はたくやの意識が回復したことをめぐみに伝え, めぐみはマイトからの花束をたくやに渡した. マイトはたくやの病室を見ていたが,車に乗って去って行った.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp