第三十八回

デジコンと元ボクサーの対決
KO強盗をKOせよ

脚本:中村勝行 監督:小西通雄

新宿の居酒屋でパンは, 定年退職して小さな会社に再就職して庶務をしている男と知り合った. 男は居酒屋から去ったが,ライターを忘れていった. それに気がついたパンはライターを渡すために男の後を追いかけた. だが男は「KO強盗」に襲われ,殴り殺されてしまった. そこへパンもやってきたが,パンも腹を殴られて倒れてしまった.

パンは病院へ運ばれた.病院へマイトが花を持って見舞いに訪れた.
マイト「は,は,は,は.よ,親父,元気かい?」
マイトはわざと花束でベッドで寝ているパンの腹を叩いた.
パン「痛い.」
マイト「あばら骨,折ったんだってなあ.何本折ったんだい?」
パンは痛さで苦しみながら答えた.
パン「あ,二本も折れちゃったよ.」
マイト「なんだよ.たったの二本かい.」
マイトは横腹を蹴飛ばした.パンはまた痛さでうめき声をあげた.
マイト「俺はまた五,六本折ったのかと思ったぜ.」
パン「冗談じゃねえよ.全治一ヶ月だよ.」
マイト「ほお.」
パン「こん畜生,もう,パンチは効いたよ.」
マイト「もちろん,やつの面は見たんだろうなあ.」
マイトは4回も丸めた新聞でパンの腹を叩いた. これは相当効いたらしくパンは無茶苦茶痛がった.
パン「いやそれがなあ,一瞬の出来事で顔までは…」
マイトは舌打ちした.
パン「それよりなあ,枯ススキのおっさん,どうしてる?」
マイト「あれかい? あれはなあ…」
マイトはパンに新聞を広げて見せた.
マイト「死んだよ.」
驚くパンは新聞記事を見た.男は頭蓋骨骨折で即死したのだ.
パン「気の毒に…おい,頼みがあるんだ.」
マイト「なんだい?」
パン「そこの引き出しにライターが入ってるから, おのおっさんの家族に渡してやってほしいんだ.」
マイトはパンにライターを取り出して見せた.
マイト「これかい?」
パン「ああ.」
マイト「よしわかった.俺のやることは間違いはねえ. しかし親父さんもわけえ,わけえと思ってたけれど, 病人になると随分老けるなあ.とにかく再起不能じゃなくてよかったよ. 親父さん,何かほしいものがあったら言ってくれよ. え.めんどくせえけど持ってきてやらあ.じゃな.」
マイトは腹を叩いて去っていった. パンは痛がった後,マイトが持ってきた花束を見て
パン「きれいな花だ.あの野郎,口は悪いけど,心はやさしいんだよな.」

調査開始

ゴッドのオフィスにパン以外の4人のハングマンが召集された.
ゴッド「この事件の被害者はすでに136人目だ.」
律儀(?)にマイトが訂正した.
マイト「いえ,ゴッド.パンの親父も入れて137人目です.」
ゴッド「そのとおり.これはノックアウト強盗に関する警察庁の資料だ. デジコン,読んでくれ.」
ゴッドはデジコンに資料を渡した. これまでの被害総額は3562万5千円.死亡者数はすでに7名. 捜査当局は同一人物の犯行と見て捜査に全力をあげていた. そして犯人はある程度絞れており,内偵の段階まで捜査は進んでいた.
マイト「それじゃあ,時間の問題ですねえ. 日本の警察は優秀ですから,我々ハングマンの出番はないでしょう.」
だがゴッドは新事実を挙げて反論した.
ゴッド「いや,そうとは限るまい.仮にこの一連のノックアウト強盗事件に, 全く別の犯罪が絡んでいたとしたら,どうなる?」
マイト「別の犯罪?」
ゴッド「警察はおそらく,これも同一人物の犯行として片付けてしまうだろう. いや,それに気づいたとしても,もはや手遅れだよ.」
マイト「しかしゴッド? 別の犯罪と申しますと?」
ゴッド「ノックアウト強盗に便乗した別の偽装殺人だ.」
マイト「偽装殺人?」
タミー「断定するだけの根拠はあるんですか?」
ゴッド「ある.」
デジコンがさらに資料を読み上げた.
デジコン「死亡した七人の解剖所見によると, 全く同じ個所に致命傷を受けた被害者が二人. まず一人は美術品ブローカーの野崎誠吉. 一月前にノックアウト強盗に襲われて死亡. そして,もう一人は飯沢伝二.ある会社の庶務だそうだ.」
マイト「夕べ,襲われた男だなあ.」
デジコン「二人とも左側の顎の関節が砕け, 左こめかみを強打され脳挫傷を起こしている. これは他の五人には見られない致命傷だ.」
マイト「なるほど,ただの偶然とは思えないなあ.」
ゴッド「今のところ,この二人を結ぶ線は見つかっていないが, 私の仮説が正しいとするならば,必ずどこかに共通点があるはずだ.」
タミー「つまりその共通点が殺人の動機につながっているというわけですね.」
ゴッドはうなずいた.
マイト「顎の関節を砕くほどのパンチというと, 空手かカンフーかボクシングだなあ.」

デジコンとドラゴンはフリーのスポーツジャーナリストと名乗り, ボクシングジムを訪れた. そこでデジコンはジョー高木(伊吹剛)のことを聞き込んだ. ジョー高木の左手はミサイルパンチと呼ばれるほど威力があった. そしてジョー高木はキャリアは浅かったが, いきなり世界大会を狙わせてもいいくらいの実力があった. だがジョー高木はボクシングを止めていた. ミドル級の東日本新人王決定トーナメントで対戦相手を死なせてしまったからだ.

その頃,マイトは刑事と称して飯沢の元を訪れていた. そしてパンの頼み通り,ライターを飯沢の妻に渡してきた. マイトは飯沢の妻に野崎誠吉のことを聞いたが, 飯沢の妻からは心当たりがないという答えしか返って来なかった. だが飯沢の妻は飯沢が若い頃に絵を描いていたと話した. 飯沢は画家になるのが夢で美術学校に通っていたのだ. マイトは飯沢が描いた絵を見た.飯沢の描く絵は非常にうまかった.

タミーは飯沢の勤めていた東洋企画が引っ越したことを聞き込んだ. タミーは東洋企画が引っ越した後を調べ, 床にテレピン油のしみがあるのを発見した. タミーは学生時代に油絵を趣味で描いていたので, テレピン油の匂いには自信があった.絵描きの飯沢と美術品ブローカーの野崎. なんとなくつながってきたようだ. だがなぜ東洋企画の事務所にテレピン油のしみがついていたのか. タミーからそのことを聞いたマイトは野崎を洗ってみることにした.

一方,デジコンはジョー高木こと高木真二が働いていた工事現場を訪れたが, 彼は一ヶ月前に仕事をやめていた.作業員は, 高木が新宿の歌舞伎町にある高級クラブから出てくるのを見かけたことを, 思い出した.その頃,高木はあの試合の対戦相手, 矢島てつおの妻かよこ(井原千寿子)が住むアパートを訪れていた. かよこはまだ赤ん坊の矢島の遺児と二人暮し. かよこは高木の顔を見た瞬間に戸を閉めようとしたが, 高木は強引に中に入った.
かよこ「帰って.帰ってよ.」
高木はベビーベッドに眠る矢島の遺児を見た.そして札束を出した.
高木「百万ある.」
高木は百万円をちゃぶ台に置いて帰ろうとしたが
かよこ「待って.何よ,このお金. あんたから施しを受ける筋合いは何もないわ.」
かよこはお金を返そうとした.
高木「俺からもらった金だと思えば腹も立つ. 拾った金だと思って生活の足しにしてくれ.」
かよこ「余計なおせっかい,よして. あたしはこうやって一人でちゃんと生きてるんだから.」
高木「意地張るのよせよ. 女一人で子供抱えて生きていくのは並大抵の苦労じゃねえ. たとえどんな金だろうと,くれるってのはもらっておくんだな.」
かよこ「それ,私に対する同情? それとも,死んだ矢島に対する償いのつもり?」
高木は無言で矢島の遺影を眺めた.そしてあの試合のことを思い出した. 高木は出口のところで一礼した.
かよこ「帰って.帰ってください.」
高木「俺は否が応でもあんた達親子の人生を背負い込んでしまった.」
かよこ「うちの人を殺しておいて.今更.」
高木「あんたそうやって俺を一生恨み続ければいい. そして俺はあんたに一生金を送りつづける.」
高木はそう言って去っていった.

マイトとタミーが野崎と飯沢をつなぐ線を報告した. 野崎は中小企業の社長や町医者を相手に有名画家の贋作を大量に売りつけていた. 飯沢は贋作作家だったに違いない.会社の庶務というのは世間を欺く仮の姿. 飯沢が勤めていた会社は秘密のアトリエだったに違いない. 野崎と飯沢は口封じのために殺されたに違いない.

ここは浜田美術評論社. 社長で美術評論家の浜田健三(今井健二)は贋作を見て出来栄えに満足していた. 浜田は贋作を描いた久保に百万円を払うと言い,さらに, 死んだ飯沢の代わりにもっと描いてくれ,と言った. だが久保はこの仕事を降りたいと言った.浜田は,ギャラを上げてもいい, と言ったが,久保は浜田にギャラの件ではないと言って断った. 危ない橋を渡るのが恐くなったのだ.久保が帰った後, 浜田は部下(大下哲矢ら)に,この仕事も潮時だろう,と言っていた. そして久保の始末も指示した.

浜田は新宿の喫茶店に高木を呼び出し,久保の始末を依頼した. 高木の後をデジコンとドラゴンが追いかけた. 高架下で高木はボクシングのグローブをはめ, あの試合のことを思い出しながら練習をしていた. 矢島は高木から左手のミサイルパンチを受けて死んだのだ. 高木が練習を終えた後,拍手をしてデジコンとドラゴンが高木の前に姿を現した.
高木「誰だ?」
デジコン「ジョー高木のファンだよ.」
高木「冗談はよしてくれ.」
デジコン「さすがにミサイルパンチは健在だなあ.」
高木「誰かの間違いじゃねえのか.」
デジコン「あんたの左フックは立派な凶器だ.使い方次第ではなあ.」
高木「貴様,デカか?」
デジコン「ジョー高木のファンさ.」
高木「俺をからかうつもりか?」
デジコン「ファンのイメージを傷つけてほしくはないなあ.」
高木「何?」
デジコン「あんたの生き方は間違ってる.」
高木「冗談言うなよ.間違わずに生きてるやつなんて一人もいねえぞ. 貴様はどうなんだ.今まで何一つ間違わず, 清く正しく生きてきたって言うのか.」
デジコン「いや,多少の間違いはあったさ. だが,人殺しだけはしなかったぜ.」
高木とデジコンは睨み合った.そしてドラゴンが高木と戦ったが, ドラゴンの回し蹴りは全てかわされた.
デジコン「ドラゴン!」
高木はわざとドラゴンの顔の前でパンチを止めた.
高木「あんた,死んでたぜ.」
さすがのドラゴンも高木のミサイルパンチにはかなわなかったのだ. 息をのむドラゴンとデジコン.
高木「俺は殺人鬼だ.一人殺すも二人殺すも俺にとっては同じことさ. 間違ったら間違ったまま生きていくのが俺の主義だからなあ.」
デジコン「殺しの依頼人は誰なんだ.」
高木「見たところデカじゃなさそうだなあ.なぜそんなことを?」
デジコン「ある人から頼まれてなあ.」
高木「世の中には裏の裏があるってわけか. それを聞きたかったら腕ずくで言わせるんだなあ. 俺を叩きのめしたら言ってやってもいいぜ.」
高木は立ち去り,デジコンは腕組みして見送った.

その晩,デジコンとドラゴンが団地のアジトへ入ろうとすると, おばさんにそこは辻本さんのお宅だと怪しまれた. デジコンは咄嗟に辻本の弟だと名乗った. おばさんはおでんの鍋を差し入れにきたのだ. 早速タミーとデジコンとドラゴンはおでんに舌鼓を打った.
タミー「あら,このおでん,結構いける!」
マイト「僕ちゃんには口に合わないけど, しかし,団地ってのはいろんなものが飛び込んでくるんだねえ.」
タミー「味がしみてておいしいなあ.」
デジコン「それにしてもおでんの差し入れとはねえ.」
マイト「おい,デジコン,仕事の方はどうだった.」
デジコンはジョー高木が有力な容疑者として浮かんだと報告した. マイトも彼の試合を見たことがあった. その試合では開始ゴングが鳴り終わらないうちに相手が倒れていたのだ.
マイト「俺はお前に言っとく.あいつにだけは近寄るな.」
デジコン「じゃあ他に手蔓でも?」
マイト「いやあ,これと言った手がかりはねえ.」
デジコン「だったら,あの男をしめあげるしか手はないでしょう.」
マイト「やめとけ,やめとけ.99%勝ち目のない相手だよ.」
デジコン「残りの1%に賭けてみます.」
マイト「1%?」

デジコンはタミーが入手したジョー高木の試合フィルムをコンピュータで解析. パンチのスピードからコンビネーションなど全て解析したのだ. そして解析結果を元にドラゴンを特訓した. その頃,高木はかよこのアパートを訪れたが, かよこの部屋には鍵がかかっていて留守だった. それをマイトとタミーが目撃した.一方,ドラゴンの特訓は続いていた. そしてタミーは高木が矢島かよこの部屋を訪ねてきたことを知った. かよこは子供を託児所に預けて近所のスーパーで一生懸命働いていたのだ. やっとドラゴンの特訓が終わった.
デジコン「おーし,ドラゴン,パーフェクトだ.」
デジコンはドラゴンと手を叩いた.

かよこがスーパーから戻る帰り道,高木が現れた.
高木「百万入ってる.」
高木はかよこに封筒を差し出した.
かよこ「あんた,いったいどうやってこんな大金…」
高木「いいからだまって受け取ってくれ.」
かよこ「いらないわよ.それよりもう, あたし達のことはほっといてちょうだい.」
高木は封筒を無理矢理手渡して去っていった. その様子をタミーとマイトも見ていた.

団地のアジトにマイト達が集合した.
マイト「やつは自分が殺した矢島の女房と子供に償いをするために, 人殺しを請け負っていたんだ.」
タミー「何も,そうまでして自分をせめる必要はないのに.」
デジコン「あいつはボクサーとしての勲章と十字架を, 一緒に背負ってる男なんだ.」
タミー「十字架はわかるけど勲章ってどういうこと?」
デジコン「必殺の左フック. 高木は今でも自分のパンチに絶対の自信を持ってる.」
マイト「あのミサイルパンチならすぐにでも通用する. たとえ相手が世界ランキングでもなあ.」
デジコン「その自信を徹底的に叩きのめしてやる.」
タミー「叩きのめす?」
デジコン「野獣だって牙を抜かれれば従順になる.奴も同じだ. きっと自分の間違いに気がつくはずだ.」
マイト「そういえば,あの札束は…」
マイトは高木がかよこに渡した札束のことを思い出していた.
デジコン「札束?」
マイト「デジコン, ひょっとしたら奴は新しい仕事を請け負ったかもしれないぜ.」

久保善次郎が住む西五丁目楓アパートの辺りを高木が歩いていた. そこへデジコンとドラゴンが登場した.
デジコン「高木,これ以上罪を重ねるのはよせ.」
高木は無視して通り過ぎようとしたが,デジコンとドラゴンによって遮られた.
デジコン「腕ずくでも阻止する.」
高木「腕ずくでも? 勝てる自信があるのか?」
デジコン「ああ.」
高木はデジコンの挑発に乗った.
高木「面白い.受けてやろうじゃないか.」
高木とドラゴンが戦った.ドラゴンは高木のパンチを全てかわした. 高木はひるんだが,高木のパンチはドラゴンには全く当たらなかった. そしてドラゴンは高木を何度か蹴った後,高木の眼前で回し蹴りを止めた.
高木「負けた.俺ははじめて負けた.」
高木がデジコンの方を向くとデジコンが近づいてきた.
デジコン「約束どおり,殺しの依頼人を教えてもらおうか.」
高木「山田って男だ.」
デジコン「山田?」
高木「新宿のヴェルサイユってクラブで知り合ったんだ. 年は四十六,七.いつもパイプをくわえてる.俺の知ってるのはそれだけだ.」

デジコンはヴェルサイユでバーテンに山田という男のことを聞いたが, バーテンには心当たりはなかった. そこでデジコンが高木から聞いた山田の特徴を話すと, バーテンは,それなら浜田先生だろうと答えた. 山田は美術評論家の浜田健三の偽名だったのだ. ゴッドはハンギングのゴーサインを出した.

その晩,高木のところへ浜田の部下が姿を現した. 仕事を督促する浜田の部下に高木は仕事はやめたと答えた. そして高木は浜田の部下に刺されてしまった. 瀕死の高木はかよこのアパートに向かった. 血まみれの高木を見てかよこは驚いた.
かよこ「どうしたの?」
高木「あんたに見せたかったのさ.俺の死に様をなあ.」
かよこ「ひどい怪我.」
高木はよろめきながらも言った.
高木「これで,おあいこだね.」
高木は膝をついてしまった.
かよこ「ねえ,どうしたの.いったい何があったのよ.」
高木「静かに.赤ん坊が起きるぞ.」
高木はそう言うのがやっとだった.
かよこ「待って.今すぐお医者さん呼ぶから.」
高木は首を左右に振った.
高木「もう手遅れでい.矢島の赤ん坊,ちゃんと育ててやってくれよな.」
そう言って高木は倒れた.
かよこ「高木さん,高木さん.死なないで.死なないでよ.」
だが高木は何も応えなかった.
かよこ「なぜ.なぜこんなことを.」

ハンギング

その頃,浜田は部下から高木を始末したことを聞いていた. そして手持ちの贋作の買い手が見つかったことを浜田は話し,部下達と乾杯した.
部下「これで全てきれいに片がつきますなあ.」
浜田「そうだなあ.まあヨーロッパへでも行って少し遊んでくるか.」
マイト「俺もヨーロッパへ行きてえなあ.」
驚いた三人は立ち上がった.
浜田「誰だ?」
マイト,デジコン,ドラゴンが姿を現した.
浜田「何だ,貴様達は.」
マイト「世間の人達は俺達のことをザ・泥棒と呼んでるよ.」
浜田「なに?」
マイト「ドアが開いてたんで金目のものでもねえかと思ってよ.」
部下「ふざけやがって.出てけ.」
マイト「1億5千万の名画と聞いちゃ,このままおとなしく引き下がれねえなあ.」
部下「おい,つまみ出せ.」
出てきた三下達は全て倒された.そして浜田達はマイト達に捕まえられた.
マイト「タミー,俺達の仕事は済んだ.画廊の方は予約できたか?」
タミー「Okよ.」

次の日.とある画廊でハングマンは「世紀の贋作展」を開き, 浜田達が描かせた贋作を全て公開した.大勢の来場者が訪れ, 贋作の出来栄えに感心していた.
マイト「これから皆さんにロンドン美術館にもルーブル美術館にも, アメリカボストン美術館にもない,素晴らしい作品をお見せしましょう.」
来場者が会場の一角に注目した.
マイト「では,二度と公開できない,世界最高の作品をどうぞー.」
幕がおろされ, 浜田達三人が「さん悔する贋作グループ」という題でさらし者にされた.
客「なんですか,あれ.」
そして反対側には自供書が公開された. 浜田達には絞首刑に使う縄が首にかけられており, 壁に隠れて見えなかったが,浜田達はシーソーの上に立たされていた. シーソーは縄が結ばれており,縄のはじっこをドラゴン,タミー, デジコンが持っていた. 言うことを聞かないと首が絞まる仕掛けになっていたのだ.
マイト「さあ,自供書を読んでもらおう.」
浜田は無言だ.
マイト「どうしました.扁桃腺でも悪いんですか.」
マイトが合図すると三人の首が絞まった.苦しむ三人.
浜田「死んじゃうよー.」
それでも浜田は読もうとしなかった.
マイト「どうしました?」
部下「先生,はやく.」
部下「先生,はやく読んでくださいよ.」
浜田「俺はしぇんしぇえなんかになりたかねえやい.」
だがなおも首が絞まった.
部下「先生,はやく読んでくださいよ.」
部下「先生,はやく言ってくれ.」
だが浜田は読まない.
マイト「はやく言わないと首が長くなりますよ. せっかくお父様お母様からもらった首が長くなりますよ.」
しばらく経って
浜田「読むよ.」
ついに浜田は読み始めた.
浜田「私こと浜田建造は贋作を大量に制作し, 濡れ手で粟のボロモウケを致しておりました. 更にこの秘密を守る為美術品ブローカー野崎 贋作々家の飯沢をKOノックアウト強盗の手口に便乗し, 元ボクサーの高木に殺害させました. しかも,その高木をも口封じの為に部下の平野と小坂に殺させ, そ,そして一切を闇に葬ろうと算段したのであります.今, 思えば神をも恐れぬ悪行の数々.ここに謹んで懺悔する次第であります.」
平野と小坂も首を下ろした.浜田は勢い余ったのか下へ落ちてしまった. こうしてハングマンは贋作一味を闇に葬ったのだ.

解説

というわけで#39と#40ではパンは欠席します.この回も冒頭のKOシーンと, マイトが病院へ見舞いに行くシーンのみでの登場に留まっています. ちなみにパンをKOしたジョー高木の設定は, 後に「ザ・ハングマン4」のクレイに流用されました.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp