第三十二回

マイトと女スパイとの恋.そして悲しい別れ.
死人を愛した女スパイ

脚本:鴨井達比古 監督:西村潔

とあるレストランで親子三人が食事を食べていた.食事を取った後, 男は公衆電話で電話をかけようとして狙撃されてしまった. それを見送る女(大信田礼子).

射殺されたのは国防庁の職員中井貴志だった. マイトはとある喫茶店で新聞を読んでいた. 競馬場で金を貸してくれたゆうこと名乗る女(大信田礼子)と, マイトは待ち合わせていたのだ.

調査開始

ゴッドのオフィスに終結するハングマンの面々. しかしマイトだけは連絡がつかなかった. 仕方がないのでパン達は4人で仕事を始めることにした. デジコンがゴッドからの指令を説明した.ここ半年あまり, 国防庁の職員が不自然な死に方をしていた.事故で二人,殺人で一人. ただし犯人に関する手がかりは全くつかめなかった. この三人には共通点があった.いずれも将来を約束されたエリートであり, 国防上の重要な機密事項に関与する立場にあったこと.ただし, 三人とも国を裏切るような思想的背景は持っていないということ. そこで今回の任務は,国防庁から機密を奪い取って, 東側に売りつけている人物をつきとめ,それをつぶすこと. ゴッドはこの三人以外にも機密を漏らしている人物がいると睨んでいた. 第四の男になりそうなのは長官参謀室参与春日タケオ.

一方,マイトはスペイン料理店(マイトが女と初デートする場所は, 65%の確率でここになる)でゆうこと飲んでいた. スペインでゆうこはある男と6年前に知り合ったのだ. マイトが車でゆうこを送ろうとするところをタミーが見つけ, 尾行した.ゆうことマイトが別れたところへタミーがやってきた.

ゆうこが自室に入ると周明徳(土屋嘉男)が来ていた. 周は仕事を急ぐように催促した.

春日たけおの素行調査の結果を団地のアジトでデジコン達が報告した. 毎朝9時10分前に登庁,5時には勤務を終えて出てくる. 週に二度くらいは銀座のクラブエルエトワイへ足を運ぶ. 飲む相手は出入りの業者の部長クラスだが, 必ずしも業者の接待と言うわけではなく, 二度に一度は自分が払っているようだった. そのクラブにドラゴンがバーテンとして,タミーが歌手として潜入した. そのクラブには周も来ていた.

日曜日に打ちっ放しで娘と一緒にゴルフの練習する春日を見てパンは, 機密を漏らすような男には見えないなあ,と言った.がデジコンは, 国防庁のゴルフコンペでは必ずベスト3に入る腕前を持つ, 春日のスイングが乱れているのを見て,心に動揺があることを見抜いていた. そこへ春日に電話が入った.呼び出しを受けたのだ.

春日がホテルの部屋に入るとゆうこが待っていた. パンは自分達の他に春日をはっている人物がいることに気がついた. とそのとき,ゆうこが出てきた. タミーはマイトと一緒にいた女だと言うことに気づき, 自分が尾行することにした.

ゆうこを尾行したタミーはマイトとタミーが会っている所に出くわした. マイトは自分が死人だと言うことを告げたが, ゆうこも,自分も似たようなものだ,と応えて意に介さなかった. そのあと,マイトとゆうこはベッドで抱き合った.

その頃,春日は周からの指令のテープを聞いていた. 今度の水曜日に開かれる駐留米軍と国防庁首脳の連絡会議が開かれた. テーマは北海道の防衛戦略の強化.その会議の模様をテープに録音し, 周に録音したテープを渡すことが周からの指令だった.

団地のアジトでパンは下着泥棒に間違えられ,憤慨した.その後, デジコンの調査で殺された3人に共通点が見つかった. 一つは大金を必要としていたこと. 3人とも死ぬ前に300万円から500万円を数回に分けて銀行振込で受け取っていた. 振込み人の名はそのたびに違っていたが, いずれも東和銀行城北支店から振り込まれていた. もう一つは女と接触していたらしいこと. 春日も家を新築したばかりで金を必要としていた. なおマイトは全くやる気がなかった.

タミーはマイトとゆうこが会っている写真をマイトに見せた. そしてゆうこが春日と会っている事もタミーはマイトに伝えた.

その頃,柴田やすおという私立探偵が春日に接触していた. その様子をデジコンとパンが目撃した. 柴田は春日の妻から素行調査を頼まれたと称し, ゆうこと春日が会っている様子を撮影した写真を見せた. そして200万円の現金を要求した.

その頃,ゆうこは周に手を切りたいと申し出ていた. ゆうこはスパイ稼業を嫌になっていたのだ. 周はマイトのことを知っていたが,マイトの正体をつかみきれていなかった.

その晩,柴田はおでん屋の屋台から出てきたところで車に轢かれ,事故死した. そこへデジコンとパンがやって来て,柴田が持っていた資料を拾った. その後で柴田の家を家捜しするが,何も見つからなかった. が,ゴミ箱から破り捨てられた一枚の写真を見つけた. つなぎ合わせると周とゆうこが写っていた. どこだろうなあ,というパンにドラゴンは「May be Spain.」

デジコンの調べで周の正体がわかった. 周は香港国籍の中国人貿易商で新宿に事務所を持っていた. とは言っても貿易の仕事をしている様子は全くなかった. パンは,ゴッドが東側スパイは今度の国防会議の内容に興味を持っているらしい, と言っていた,と皆に言う.タミーは例の写真をマイトに預けることを発案した.

マイトはゆうこと会った.ゆうこは一緒にスペインへ行かないか,と誘い, マイトの正体を尋ねた.マイトは「ハングマン,死神さ.」と答え, さらに例の写真を見せ,周とのことをゆうこに尋ねた. ゆうこは中国人と日本人との混血児だった.父親はベトナムで商売をしていた. ベトナム戦争の末期,両親が万一のことを心配し, ゆうこをヨーロッパへ絵の勉強と言う名目で留学させたのだ. そしてスペインで周と出会った. 両親は最後の手紙に船でベトナムを脱出すると書いていたが, その手紙がついた翌日にサイゴンが陥落した.それっきり,連絡がつかなかった. マイトは周を捕まえることに協力してほしいとゆうこに申し出た. ゆうこは一緒にスペインへ行ってくれる,と聞いた. マイトはパリ行きのチケットを用意していた.パスポートは持ってるね, というマイトの問いに
ゆうこ「持ってるわ,何枚も.」

ハンギング.そして悲しい別れ.

そして国防会議当日.春日は緊張しながらテープを録音していた. その晩,春日はタクシーで周から指定された場所へ向かった. そして指定された隠し場所にテープを置いて帰ろうとすると パンとドラゴンが現れた.パンは春日に自首を勧め, 今までの犯行は全て明日になれば警察にばれるとつけくわえた.

テープを取りに周が現れた.そこへマイトとゆうこが現れた. マイトはテープを渡すように言う.が,ゆうこは周の部下に撃たれてしまった. ドラゴンの活躍で部下は倒され,周はハングマン達に取り囲まれた. 観念した周は頭を拳銃でぶち抜いて自殺してしまった. マイトはゆうこを助け起こすが,ゆうこは「後悔しないわ. はじめて自分の手でカードを配ったんですもの.」と言い残して 死んでしまった.そのゆうこに改めてマイトはキスをするのであった.

翌日.ハングマンは周の死体と周の部下を車に入れて放置した. 周に接触しようとしていた東側のスパイは車に乗り込んだが, 周が死んでいることに気がついた.外へ出ようとしても車のドアが開かない. スパイはそのまま警察に捕まってしまった. その様子をハングマンは物陰から見て,立ち去った. その晩,マイトはタバコを吸いながら港を歩くのであった.

解説

マイトと女スパイとの恋が描かれた作品です. 脚本を担当した鴨井達比古さんはこういうスパイ物が好きな人で, ハングマンの他にも「太陽にほえろ!」#48「影への挑戦」などの作品を 残しています.また今回は BGM にフラメンコギター演奏の曲が使われ, いつもの BGM の使用は抑えられています. 周明徳役の土屋嘉男さんは#51ではハングマンを全滅させる刑事を演じますが, それはこのときの恨みを晴らすためだったのでしょうか? また土屋さんは後の「ザ・ハングマンV」では ハングマンとゴッドとの連絡係である前尾大輔を演じることになります.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp