第三十回

レストランチェーン店本部による土地乗っ取りの悪事を暴く
エンゼルキッスは豚の味

脚本:田上雄 監督:帯盛迪彦

タミーがヨットを湘南の海で走らせ,マイトにヨットはどうと自慢していた. タミーはヨットを購入したのだ.マイトが食事でも招待しよう,と言うと, タミーは「ファミリーレストラン マイルートチェーン 18号店」がいいと言った. そこで食事をする二人. そこのレストランは前は荒れ果てたドライブインだったが, チェーンに加盟してから売上が3倍に伸びていた. そこのオーナー三枝はタミーが入っているヨットクラブに入っていた. そんな話をしていると,三枝の奥さんが逃げ回っている姿が見えた. タミーとマイトが外へ出ると,三枝が銃をぶっ放し,奥さんを狙っていた. オーナーは奥さんが浮気していると誤解し, さらにマイトまで「間男」と狙ってきた. 三枝は駆けつけた刑事に射殺されてしまった.

さてここは湘南のとあるマンション. 部屋の持ち主千恵子が小杉きみえに「疲労回復のビタミン剤」を勧め, 注射していた.注射を打った後,千恵子は暗示をかけた. きみえはたちまち幻覚に浸った.

調査開始

ゴッドがオフィスでマイトに言った.
ゴッド「エンジェル・キッス.すなわち,天使の接吻と言う名の薬品がある. 某国の陸軍が開発した一種の興奮剤だが,極めて即効性があり, 外部からの刺激や暗示に抵抗できなくなると言うのが特徴だ.」
マイト「それじゃあ,あの三枝と言う男もその薬の作用で?」
ゴッド「ああ.警察では単なる精神錯乱と見ているようだが, 私は,仕組まれた事件だと思う.ま,これを見てくれ.」
ゴッドは二人の男のスライドをみせる.この二人と三枝には共通点があった. 死亡当時原因不明の精神錯乱に陥っている事, マイルートレストランのチェーンに加盟しているレストランのオーナーだった事. この事件を探るのが今回の使命だ.

団地のアジトで,連絡がつかなかったパン以外のメンバーに, マイトはゴッドからの指令を伝えた. とりあえずパン抜きで調査を開始することにした.

マイルートレストランチェーンの本部にマイトが乗り込み, 専務の大村にジャーナリストと称して会った. 三枝の事件の件で社長(早川保)に会いたいと伝えた.マイトは社長に会い, 三枝の件,および9号店と14号店オーナーの件も聞いてみた.大村は開き直り, たちの悪いゆすり屋なので警察を呼ぼう,と言ったが,社長はマイトを雇い, 営業妨害に出ている連中がいるので調査しよう,と言うのであった.

一方,タミーは三枝の家を訪れ,未亡人に心当たりはないかと聞いていた. そこへ三枝を撃った刑事がやってきた.お悔やみの言葉を言う刑事に対して, 三枝の妻は,お帰りください,と言って追い返した. そういう三枝の妻の手が震えているのを,タミーは見逃さなかった.

デジコンはコンピュータで犠牲者のデータを解析し,共通点を見つけ出していた. まず,経営する店の立地条件が良いこと.売上の伸び率が月平均5%以上あること. そして,店の立っている土地がオーナー自身の所有物であること.デジコンは, ドラゴンからマイルートレストランチェーンに加入している, レストランのオーナーのリストを受け取り, 23号店のオーナー小杉のぶおが次の犠牲者になるのではないかと見当をつけた.

さっそくデジコンは23号店へ向かった.デジコンは本部から送られた 公認会計士と称して小杉と会った. 部屋に通されたデジコンは共同経営者のパンに出くわしてしまった. デジコンとパンは驚いたが,パンはごまかした. 事業をやるのは警官時代からのパンの夢だったのだ.

団地のアジトでマイトがパンを問い詰めた.事業から手を引けとマイトは言う. じゃなければ本当の死人になるかもしれない,と.夢を諦めるのか, というパンにマイトは
マイト「男だったら誰だって夢を持っている. 俺だって本当は女の下着屋をやりたいんだ.
小杉はパンの元上司の息子だったのだ.小杉はパンの正体を知らなかったが, パンは小杉のことを自分の息子のように思っていた. デジコンは小杉が第4の犠牲者になる可能性があるから, なおのこと手を引くように言うが,パンは聞かずに出て行ってしまった.

その頃,千恵子のマンションをきみえが訪れ,「ビタミン剤」をもらっていた. 今度は怖い夢を見させられるきみえ.そして気絶してしまった. 千恵子はほくそえんでいた.

三枝の葬儀の日.三枝の妻の様子がおかしい.席を中座し, 外で注射器を手にしていた.タミーは注射器を取り上げた. 妻は三枝から薬を教わったのだ.薬の入手先をタミーは聞いたが, 妻は知らなかった.三枝が電話して届けてもらっていたからだ.

タミーはゴッドに,三枝の妻の入院を依頼していた. 病院の手配が済んだと知り,タミーはホッとし,続けて言った.
タミー「それにしてもショックでした. あの奥さんがあんな惨めな姿を見せるなんて.人間なんて, もろいものですね.」
ゴッド「だからこそ,我々のような組織が必要なのだ. もろい人間の弱みにつけこむ奴らを叩き潰すためのプロの集団がな.
うなずくタミー.タミーは売人との連絡もつけていた.

横浜で売人を待つタミー.そこへ白い車がきた. 車の運転手(信実一徳)が「すいません,今何時でしょうか?」と聞くと, タミーは「あいにく,時計が壊れてますの.」と応えた.それが合言葉だった. 運転手はタミーを三枝の妻と信じ込み,車に乗せた. タミーが薬なしではいられないんですと言うと, 運転手は,そうだろうな,エンジェルキッスを覚えた男は必ず妻にも教えるんだ, と言った.タミーはタバコに火をつけるふりをして, 運転手の顔をライター型小型カメラで撮影した.

タミーはとある倉庫へ連れてかれた.だがエンジェルキッスはなかった. 倉庫には女とその一味が待っており, 土地・建物売買契約書に判を押せばエンジェルキッスを渡してやると言う. 契約金額は500万円と言う相場の20分の1の金額.だが途中で一味の一人, 三枝を射殺した刑事がタミーが三枝の妻ではないことに気がついた.危ない, と思った瞬間にマイトとドラゴンが登場.一味を撃退し,タミーを救い出した. マイトは逃げる奴らの車に音波発信機をつけておいた.

マイト達が追跡すると車はマイルートレストランチェーンの本部に入り込んだ. 黒幕はマイルートレストランチェーンの社長だったのだ. 社長は18号店を諦め,23号店に的を絞ることを指示した.

その頃,パンは小杉にエンジェル・キッスをやってないかどうか確かめていた. パンは小杉の両腕を見たが,注射痕はなかった.だが, 小杉の妻きみえがエンジェル・キッスの毒牙にかかっていた. 千恵子はきみえに電話をかけ,暗示をかけた. 千恵子が小杉と浮気をしていると言うのだ. さらにあのとき運転手をしていた大和探偵事務所の峰岸が小杉に電話をかけ, 家へ帰ると面白いものが見られると言った.小杉が家に帰った. そして小杉は幻覚に陥っていたきみえに刺されてしまった.

ゴッドのアジトにデジコン以外のハングマンが全員集結した. チェーンの本部がなぜチェーン店を狙うのかと疑問に思うタミーに, ゴッドは土地が狙いだろうと言った.安く買い叩くのが目的だったのだ. ゴッドはハンギングを指示した.そこへデジコンが入って来て, 小杉が死んだことを報告した.驚くパン.

ハングマンは現場へ急行する. 小杉の遺体が担架で運び出されるのを見てパンは飛び出そうとしたが, マイトに止められた.
マイト「いっちゃいけねえよ.おやじさんは死人なんだ. あの二人とは何の関係もねえんだよ.
デジコン「下手に動けば警察の目に触れる. ここはそっと見送っといたほうがいいですよ.」
パンは悔やむが,マイト達はパンに責任はないんだと慰めた.

ハンギング

小杉死亡のニュースを聞きながら, シャンパンで乾杯するマイルートレストランチェーン一味の面々. そこへハングマン全員が乗り込んだ.密談の模様は全てテープに録音されていた. その上でハングマンは一味全員にエンゼルキッスを打ち, 豚になれ豚になれと暗示をかけ,豚の檻と並べ, 一人ずつ檻に閉じ込めてしまった.哀れ悪党どもは豚になりきってブーブー鳴き, 野次馬達の物笑いの種となるのであった. 最後はマイト達が横浜の街を歩き回るシーンが流れておしまい.

解説

パンの過去編であると同時にハングマンの掟が改めて語られる作品です. 敵のボスを演じた早川保さんは#46にも登場します.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp