第二十六回

デジコン登場
コンピューター死刑執行人登場

脚本:中村勝行 監督:山根成之

深夜.商店主の車に一人の男(吉田良全)が飛び込んできた. 商店主は声をかけたが男は起き上がらなかった.商店主は慌てて車を走らせ, 逃げてしまった.翌朝,商店主の娘(中村久美)が出かけようとしているところへ, 商店主の営む店「セーターの浅川」へあのときの男が現れた. 男は頭に包帯を巻き,腕をつり,そして松葉杖をついている. 商店主は驚いた.男は全治一ヶ月の大怪我だと言い,お金を要求した. そして商店主は手首を剃刀で切って死んでしまった.

その頃,マイトは暇を持て余していた.そこへパンがやってきた. ブラックが死んでから2週間.ゴッドからは何の音沙汰もなかった. マイトはブラックの一件でびびったんじゃないかと言うと, パンがタミーから聞いた話として,ゴッドがオフィスを改装していることを, マイトに言った.ブラックの後釜の件もあるので, ゴッドは何かとせわしなくしているらしい.
マイト「で,僕ちゃんに何か用?」
パン「いや,別に.生きてるかどうか確かめに寄っただけだよ. 変な風にはねのばされちゃ困るからな.」
マイト「心配ご無用.こう燻ってたんじゃ,羽のばす気にもなれねえよ.」
パン「よし.じゃあ,つきあえ.な,気晴らしにでかけよう.」
マイト「あんまり乗らねえなあ.」
パン「いいとこつれってくれたって,もう僕ちゃんスキップしちゃう.」
マイトはにやりと笑った.
マイト「本当かよ.」
パン「よし,行こう,行こう.」
パンが連れてった場所はパチンコ屋だった.
マイト「親父さんの気晴らしはこれかあ.」
つまらなそうにマイトが言うとパンは笑いながら
パン「気晴らしはこれに限るなあ.ほほ,また入った.」
マイト「俺みたいな知的な人間はこういう単調なゲームはいらいらするぜ.」
パン「ほう,お前さんが知的.めでたいねえ.」
パンはパチンコに没頭した.
パン「はは.また来た.また入ったよ.」
パンの台から玉がたくさん出た.
マイト「ますますくすぶってきたよ.」

マイトが暇を持て余していた頃,ゴッドがブラックの後釜として目をつけた男, 加納良次(飯田道郎)はムカデのロボットを動かして遊んでいた. そこへゴッドが電話をかけてきた.
ゴッド「私だ.決心してくれたかね.組織をしめなおすためには, どうしてもお前の力が必要なんだ.難しい仕事だが, やりがいはある.」
加納はなかなか答えなかった.
ゴッド「どうなんだ.」
加納「(名高達郎さんの声で)わかりました.やりましょう.」
ゴッド「じゃあ,早速死んでもらおうか.」
しばらく経ったある日,加納は山道で車を走らせていた.そして崖から車は転落. 「加納良次.27才科学警察研究所々員」は「事故死・戸籍抹消」 となった.そして加納は整形手術を受け,指紋を消し, ハングマン第9号デジコンとなった.

ゴッドのオフィスにマイト,パン,タミー,ドラゴンが召集された. マイトは白いスーツを着込んでいた.改装されたオフィスを見た一同は
パン「はあーあ.ここが新しいオフィスですか.」
マイト「ゴッドも趣味が悪いですねえ.これじゃあ,まるで棺桶ですよ.」
ゴッドがマイトに応える.
ゴッド「その通り.これは君達の棺だ.そのつもりで作った. 死人であることを再認識してもらうためにな.」
ゴッドは4人の位牌を取り出した. マイトの前に「俗名 日下部孝介之霊」と書かれた位牌が置かれ, パンの前に「俗名 辻 雄太郎之霊」と書かれた位牌が置かれ, タミーの前に「俗名 桑野多美子之霊」と書かれた位牌が置かれ, そしてドラゴンの前に「俗名 竜 清康之霊」と書かれた位牌が置かれた.
ゴッド「かけたまえ.」
マイト「座らせていただきます.」
一同は位牌の置かれた場所に座った.ちなみにゴッドの左前がマイト, 右前がパン,左側の手前がタミー,右前がドラゴンの席.
ゴッド「ブラックとバイクのことは忘れてくれ.(二人の位牌をしまいながら) この二人はハングマンとして死人になりきれなかった男達だ. この二人の轍を踏まないためにも重ねて忠告しておく. 君達は絶対に人間的感情で動いてはならん. あくまでも死人であることを忘れないように.」
マイト「わかりました.命日にはこの部屋に来て, この位牌にきれいな花でも供えましょう.」
ゴッドは大笑い.
ゴッド「それは名案だ.」
突然,マイトが立ち上がった.
マイト「ところでゴッド.我々は常日頃,ゴッドを尊敬し,崇拝しております. 私財を投げ打って世のため人のために尽くす精神は, まことに素晴らしいと常々思っております.実はですね,我々もいろいろー,あ, かかります.いや,なかなかうまく言うことができません.結構でございます.」
マイトは座ってしまったが
ゴッド「わかった.一千万上積みして四千万ということではどうかな.」
マイトは立ち上がった.
マイト「そんなに少し!」
すかさずパンが手で合図した. ゴッドの気が変わらないうちに手を打てというのだ.
マイト「結構でございます.」
一礼してマイトは座った.
ゴッド「それから,君達のためにアジトを見つけておいた.」
パン「アジト?」
ゴッド「ああ.集まるときはそこを使ってくれ. 誰にも怪しまれることのない安全な場所だ.それから,もう一つ.」
ゴッドは「俗名 加納良治之霊」と書かれた位牌を取り出した. あれ,さっき出た字幕と違うぞ.どっちが本当の名前なんだ?
ゴッド「新しいメンバーが加わった.加納良次.元科学警察研究所の所員だ. コードネームはデジコン.」

新しいアジトは団地の一室.白いスーツを着込んでいたマイトはこぼす.
マイト「ハングマンのアジトが団地とはなあ. 掃除ができねえから埃はたまり放題,靴下は真っ黒,白いドレスが真っ黒よ.」
パンは大笑い.
マイト「灰皿がねえからバケツだ.ちっともかっこよくねえ!」
パン「そうぶーたれるなって.人目につきにくいこと考えたら, ここは最適な場所かもしれないよ.」
タミー「あ,そうそう.マイトに御礼言わなきゃ.」
マイト「何の礼だい.」
タミー「おかげで一千万もベースアップしたんだもん.」
マイト「はしゃぐほどの金額じゃねえや.」
タミー「あたし,ヨットを買うことにしたわ.」
タバコを吸っていたパンはびっくりしてむせてしまった. ちなみにドラゴンは何の意味があるのか,ずっと逆立ちしたままだった.
パン「ヨット?」
マイト「くだらねえ発想だな.」
ドラゴンは逆立ちをやめた.
タミー「一日十万の浪費をするほうがよっぽどくだらないわ.」
ドラゴンは足を前後に伸ばして柔軟体操を始めた.
マイト「人のことはほっといてくれ.」
タミー「じゃあ,あたしのこともほっといて.」
マイト「ほっとくよ.」
タミー「パンは何に使うの?」
マイト「パンは一千万も食えるかい.」
寝転んでいたパンは大笑い.
パン「俺か.俺はまあそうだな.」
パンは起き上がった.
パン「娘の嫁入りに備えて貯金でもするか.」
パンはまた寝転んでしまった.
マイト「夢がないね.」
タミー「パンらしいわねえ.ドラゴンは?」
ドラゴン「ボクハコレデペンションノオーナーニナル.」
パン「これが一番しっかりしてるよ,これ.」
すると呼び鈴がなった.新入りかどうか確かめにパンが玄関へ出た. やってきたのはデジコンだった.
パン「待て.保険なら入らないよ.」
デジコン「デジコンですよ.」
パン「ああ,お前さんがデジコンか. ほー.サイズ長いな.まいいや.あがれ.」
パンはデジコンを通した.
マイト「ほお.お前さんがラジコンかあ.」
デジコン「デジコンですよ.」
デジコンは秋葉原でLSIを買い込んだので遅くなったと言った.
マイト「なるほど,それでラジコンかあ.」
タミー「デジコン.デジタルコンピュータの略.」
マイト「常識だよ,君.」
大笑いしたパンはデジコンにメンバーを紹介しようとした.
パン「まずこの俺はなあ…」
デジコン「パンって呼ばれてるんでしょ.こっちがマイト.」
マイト「ダイナと呼んでもいいぜ.」
デジコン「彼がドラゴン.彼女がタミー. メンバーに関する資料は一通り届いてます.」
パンは仕事の話をしようと言い,タミーに封筒を取らせた.
パン「何がダイナだ.やめてちょうだいな.
パンの親父が放った親父ギャグに反応する者は誰もいなかった. タミーが指令書を読み上げた.この一ヶ月間で自殺した商店主が三人. 一人は貴金属店の経営者.二人目は玩具店の主人. そしてもう一人は洋品卸問屋の店主. いずれも個人経営の店舗としてはかなりの規模だった. ところが警察の調べでは自殺の動機はいずれも経営不振. 三人とも同じ動機で自殺し,しかも経営が悪化した時期も同じ頃.
マイト「で,私達どうすればいいの?」
タミー「まずはなぜ経営不振に陥ったのか,その原因を探ってくれ. それがゴッドの指令よ.」
パン「じゃあ,手分けして動くか.」
ハングマンは立ち上がった.

一軒目の貴金属店を当たったパンは未亡人が子供を連れて引っ越したことと, 店が人手に渡ったことを知った. 二件目の玩具店を当たったタミーとドラゴンも収穫無し.一方, マイトとデジコンは車に乗っっていた. しきりに時計を見るデジコンにマイトが言う.
マイト「約束でもあるのかな,ラジコンちゃん.」
デジコン「デジコンですよ.」
マイト「似たようなもんだ.」
デジコン「あと5秒.」
マイト「ん?」
デジコン「いや,別に.」
マイト「エリートってのは何を考えてるのかわからねえよ.」
マイトは葉巻をくわえ,火をつけた.その様子をデジコンは嬉しそうに見た.
デジコン「ジャストだ.」
マイト「どういうことだい.」
デジコン「あなたに関する資料を分析してデータをコンピュータに 入れてみたんです.」
マイト「俺をカンピュータに?」
デジコン「ええ.面白い解答が出ましたよ. あなたは平均45分と50秒毎にシガーを吸う.それをテストしてみたんですよ. ぴったりでした.」
マイト「ラジコンとはうまいこと言ったもんだ.」
デジコン「デジコンですよ.」
車は3件目の「セーターの浅川」についた.店は閉まっていて売りに出ていた. 裏へ回っても戸が開かない. 中を覗こうとしていると自転車に乗った警官が職務質問しにやってきた.
マイト「我々は興信所のエリート調査員でございまして.」
警官「興信所?」
マイト「はあ.抵当物件を調べておるところです.」
警官は見事に騙された.そしてマイトはさりげなく家族のことを聞いてみた. 家族の居場所はわからなかったが,大学生になる娘がいることがわかった. 自転車で去って行く警官を見送ったマイトは舌を出した. そしてマイトは取引先を当たることにし,デジコンに娘を探すように命じた.
デジコン「探すってどうやって?」
マイト「(自分の頭を指差して)コンピュータにでも聞いてみんだな.」

とあるビル.そこの1階に位置するレストランで男(小松方正)が食事をしていた. そこへ男が二人(一人は冒頭で商店主をゆすった男),社長と声をかけてきた. 社長は,ここの飯はまずいと文句をいうと, 男がこのビルのてっぺんにもっとおいしい店があると言った.
社長「馬鹿言うなよ.高いところへ上りたがるのは馬鹿と煙だけだよ. 俺は自分の頭のてっぺんよりなあ,高いところで飯食うぐらいなら, 飢え死にした方がましだ.」
社長は男を座らせ,横浜でゴルフボールを欲しがっている業者がいると伝え, この前の報酬を渡した.そして伝票を渡してここの支払いを払うように言った.

デジコンは洋品店の娘浅川ようこ(中村久美)がいるバーにやってきた. ようこはヒロミという源氏名で働いていた. デジコンは大学の友達から聞き出したのだ. デジコンは刑事と称し,犯人を探すのに協力してくれというが,ようこは断った. 警察は何を言っても取り合ってくれなかったからだ. ようこは学費を稼ぐためにこの店で働いていたのだ.

プールバーでマイトはデジコンから報告を聞いていた. あんなに警察を憎んでいるとは思わなかったというデジコンにマイトが言う.
マイト「お前さん,科学警察研究所にいたそうだな.」
デジコン「ええ.」
マイト「だから,被害者心理って物を知らねえんだ. 女を口説くテクニックもなあ.」
デジコン「それとこれとは別ですよ.」
マイト「俺なら一発で口説き落とす.」
デジコン「できますかね.」
マイト「おお.賭けてもいいぜ.」

その頃,社長の部下はゴルフボールを得るためにある店に目をつけていた. そしてあのときと同じようにもう一人の男が飛び出したが…今度は頭を打ち, 血を流して死んでしまった.

翌朝,マイトはようこをホテルで起こしていた. 酔い潰れたようこを連れ込んだのだ.ようこは服を着たまま寝ていた.
ようこ「あたしを抱かなかったの.なぜ.」
マイト「女より,眠りが欲しかったのさ.」
ようこは微笑んだ.
ようこ「あなたって変わってる.」
マイト「俺は正常な男さ.だから,君に関心を持ったんだ.」
ようこ「関心?」
マイト「君の悲しい身の上にね. さあ朝食を食べながら,夕べの続きを聞かせてもらおうか.」
ようこ「夕べの続き? 私何を喋ったの?」
マイト「君のお父さんが交通事故を起こした.そこまでは聞いている. その償いをするために店の商品を叩き売った.それが破滅の原因だった. そうだったね.」
ようこ「何も話したくないわ.」
だが新聞記事であのときの男が交通事故で死んだことを知り
ようこ「この男よ.父がはねたって言うのはこの男よ.」

アジトで新聞記事を見たパンは, この男が前島という当たり屋であることを思い出した. 刑事時代にパンは前島を捕まえたことがあった.
マイト「当たり屋?」
画面が真っ黒になり,「当たり屋?」という字幕が出た. タミーは当たり屋が死ぬなんてと大笑い. パンは殺された三人(自殺じゃなかったのか?)を追っていくうちに, なかがみというバッタ屋が浮かび上がったことを報告.
デジコン「バッタ屋?」
再度,画面が真っ黒になり,「バッタ屋?」という字幕が出た.
パン「バッタ屋ってえのはなあ,資金繰りに苦しんでいる個人商店を探し出して, 在庫品を二束三文で買い叩くハイエナみたいな連中のことだ. 奴らは当たり屋を使って交通事故を偽装し,それをネタに相手をゆする. 最後のとどめがバッタ屋だ.相手の弱みにつけこんで, 有無を言わせず在庫商品を買い叩く.それが奴らの手口だよ.」
マイト「当たり屋はともかく,バッタ屋は合法的だ. たとえ二束三文でも金を払ってる以上は犯罪者にはならねえからなあ.」

ゴッドにマイトは調査結果を報告した. ゴッドは黒幕がいるんじゃないかと睨んでいた.
ゴッド「買い集めた商品を売りさばくには販売ルートが必要だ. おそらくディスカウントショップや金融質流れ品の販売業者に, 顔の利く人物だろう.」
一味は死んだ当たり屋の後釜を探しているに違いない. ゴッドは囮作戦を示唆した.誰かを当たり屋に仕立てて接触させるのだ.

団地のアジトでパンとタミーは,誰かが当たり屋をやって潜入せよ, という命令が出たと聞いて無理だと尻込みした. マイトも「そういうのは俺の性格に合わん!」と言って尻込みした.
デジコン「俺がやります.」
パン「おい,よしなよ.死に急ぎすることはねえよ.」
マイト「お前さんには無理だよ.」
だがデジコンは自身満々だ.
デジコン「賭けてもいいですよ.あんたには一つ負けがありますからねえ.」
マイト「ほう.彼女のことか.」
パン,タミー,ドラゴンは置いてけ堀だ.
タミー「何の話?」
デジコン「別に.」
デジコンはそのまま話を続けた.
デジコン「タミー,ドラゴン,手伝ってもらえないか.」
デジコンは多摩川の川原で特訓を開始した. まずタミーがデジコンを乗せて車を走らせた. そしてドラゴンが人形を操作して人形を飛び込ませた. タミーが急ブレーキを踏み,デジコンが時間を計測する.
タミー「どう?」
デジコン「コンマ5秒.これでタイミングを合わせれば何とか行けそうだ.」
タミー「やってみる?」
デジコン「ああ.」
デジコンは車を降りた.そしてタミーが車を走らせた.デジコンが前に飛び込み, 宙返り.車には当たらずに済んだが,着地には失敗した.
タミー「大丈夫?」
デジコン「ああ.もう一回.」
その様子を車の中からマイトとパンが覗いていた.
マイト「あいつ,やる気だぜ.」
パン「こいつばっかりはコンピュータ通りにいかねえんだけどなあ.」
マイト「女にはからっきし駄目なくせに,なんという性格をしとるんだ, あいつは.」

なかがみがバーで飲んでいた.同じ店にパンとデジコンがいた.
パン「ラジコン.
デジコン「デジコンですよ.」
パンは植木等さんが「シャボン玉ホリデー」で見せていた独特の笑い方をした.
パン「あの角で飲んでる奴がな,なかがみってバッタ屋だよ.」
デジコンはなかがみの車に飛び込み,当たり屋としての腕を見せた. なかがみはデジコンの腕を見込んで, いい儲け話があるとデジコンをスカウトした. なかがみの車をタミーとドラゴンの乗る車が追跡した. なかがみはレストランで食事している社長にデジコンを紹介した. 社長はデジコンの名前を聞いたのでデジコンは加藤よういちと答えた. なんなら身元調査してして資料を提出しましょうというなかがみに
社長「いやあ,いらん.仕事のできん奴に限って資料を欲しがるもんなんだ. わしゃなあ,この手帳一冊で十分,これ一冊でな.」
と答え,さらに明日の午後二時に東三丁目の工場の跡地に来い, とデジコンに命じた.テストするつもりだというのだ. そしてまた社長はなかがみに伝票を渡した.

デジコンの頼みでタミーは社長の手帳を掏り取った. 手帳には社長の手口が全て書かれていた.有力な証拠になる. マイトはどうやって料理するかと楽しそうに話したが, タミーは,社長は一筋縄では行きそうにないと言った. デジコンは一つだけ弱点があると言った. その弱点を聞いたタミーにデジコンが答える.
デジコン「その手帳の内容をコンピュータで分析してみたら, 奴のアキレス腱が見つかったよ.湯浅の立ち寄る場所は例えば喫茶店, レストラン,湯浅自身の事務所.全て1階なんですよ.」
マイト「つまり,ground floor と言う事か.」
デジコンはうなずいた.
タミー「で,コンピュータの答えは?」
デジコン「奴は極度の高所恐怖症なんだ.」
マイト「高所恐怖症?」
パンは笑った.
パン「そいつは使えるなあ.」

ハンギング

翌日の午後二時.湯浅らが指定した工場跡で待っていた. ハングマンもそこに潜り込んでいた.デジコンが湯浅の前に姿を現した. 早速テストが開始された.車がデジコンの方へ近づいたが, デジコンは車を避けて逃げてしまった. と同時にマイト,タミー,ドラゴンが登場.
なかがみ「なんだ,てめえら.」
マイトはなかがみを殴り倒し,湯浅に近づいた.
湯浅「こいつらをやっつけろ!」
湯浅の部下はマイト,ドラゴン,タミー,そしてデジコンに撃退された. そして湯浅はマイトに殴り倒され, 麻酔薬を染み込ませたハンカチで口を押さえられ,眠ってしまった.その頃, パンは別の場所でハンギングの仕掛けを作っていた.

湯浅が目を覚ました.
マイト「お目覚めかね.」
スピーカーから響く声に
湯浅「誰だ,お前.」
マイトは湯浅の問いに応えなかった.
マイト「腹が減っただろう.」
湯浅「余計なお世話だ.」
マイト「無理すんなよ.おねんねしてる間に消化剤を飲ませておいたんだ.」
湯浅「消化剤?」
マイト「しかも十五時間も飲まず食わずだ. あんたのような大食漢には堪えるだろうなあ.」
窓が開くと山盛りのカレーライスが置かれているのが見えた. 湯浅はカレーライスを取ろうとして窓に近寄ったが, 湯浅がカレーライスを取る寸前に窓は閉められてしまった.
マイト「このカレーが食いたかったら,一億円の小切手を切るんだな.」
湯浅「くそう.冗談じゃねえ.一億円なんて. カレー一皿に誰が一億円なんて払うもんか!」
マイト「まあ,そのうちいやでも小切手にサインするさ.」
湯浅が反対側の扉を開けると,深い崖の底が見えた.
マイト「どうだ.小切手を切る気になったかね.」
湯浅「そんなこけ脅かしは俺には通用しねえぞ!」
マイト「じゃあ,仕方がねえ.」
途端に凄い音がして床が傾きだした.
湯浅「なんだ,これは.」
マイト「そのうち,お前の体は箱の中から滑り落ちるぜ.」
湯浅は顔面蒼白で,やめろ,やめろと叫んだ. 実は湯浅が入っていた箱はトラックの荷台にくくりつけられていた. トラックは高い崖の上に止まっていたのだ.運転席からマイトが言う.
マイト「さあ,強情をはらず小切手を切ったらどうなんだ.」
ついに湯浅は観念した.
湯浅「わかった.小切手切るー.」
マイト「やっとその気になったようだなあ.」
湯浅「はやく降ろしてくれえ.」
荷台は元に戻された.湯浅は小切手にサインして,窓を開けてドラゴンに渡した.
湯浅「さあ,ここから出してくれえ.」
マイト「そうはいかねえなあ.」
湯浅「な,なにー.」
マイト「警察がくるまでもう少しそこにいてもらおうか.」
湯浅「警察?」
マイト「あんたの手帳を警察に届けておいた.」
湯浅は畜生と叫んだが,パトカーのサイレンが聞こえてきた. ハングマンは湯浅を置いて帰るのであった.

解説

この回はいろいろ特筆すべき点があります.まずデジコン加入. あわせて年俸が4000万円に上がりました.ゴッドの事務所も改装され, 「棺桶のような(マイト)」デザインになります. ご丁寧にもメンバーの位牌まで用意され,メンバーの席に置かれています. またアジトは高級マンションから団地の一室に変更されます. 前回むちゃくちゃ暗かった反動か,今回から明るいタッチに変更されます. 黒沢さんと植木さんの演技が非常に楽しくなりました. マイトはデジコンを四回も「ラジコン」と呼び, しまいにはパンも「ラジコン」と呼び出す始末. さらにオープニングナレーション,オープニングのフォーマット, エンディングの映像が変更されます.全て放送延長に伴い, 取られた措置です.

とにかくハングマンの作風は変わりました. ブラックが活躍した前半とはうって変わって明るい作品になりました. この変更をとやかく言うファンは多いのですが, この変更により人気がさらに増し, ハングマンシリーズを生み出す原動力になったのもまた事実なのです.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp