第二十三回

幼児密売組織の全貌を暴く.
人さらいベビーホテル

脚本:武末勝 監督:佐藤肇

深夜,とあるベビーホテルから,たかだのぞみという女の幼児が運び出された. 望月ふさこという保母が犯行に絡んでいた.その様子を一人の男の子, 谷保が見ていた.望月は夜食から戻ってきた保母と入れ替わりに外へ出て行った. そして保母は突如訪れた男(大下哲矢)に殴り倒された. ちなみに壁にはカゲスターやジャッカー電撃隊のお面が飾られていた.

その夜,マイトはとあるクラブを訪れていた. ホステスの五月(葉山葉子)が子供の養育のためにクラブをやめたい, とマイトに話していた.そこへ電話が.五月とマイトはベビーホテルへ急いだ. ベビーホテルでは現場検証が行なわれていた. 五月は息子の保が恐怖のあまりに失語症になってしまったことに気づいた. その頃,とある事務所で高田のぞみが受け取られていた.

調査開始

ゴッドからの指令が出た.この二ヶ月間, ベビーホテルから盗まれた赤ん坊は五人もいたのだ. 警察は子供のいない夫婦の仕業だと睨んでいたが, ゴッドは大物が絡んでいると睨んでいた. テレビのニュースで望月が殺されたと知ったブラックは 「馬鹿な奴らだ.かえってその保母が犯人じゃないと証明したようなものだ.」

マイトはドラゴンをつれてとあるドライブインを訪れた. 五月がそこで働いていたのだ. ドライブインの主人の計らいで五月は保と一緒に住み込んでいた. ドライブインは24時間営業なので都合が良かったのだ.保の失語症は相変わらず. カレーと言おうとしても「カ,カ」としか言うことができなかった. マイトは「鯖の味噌煮と野菜炒めとライスは小盛り」を注文し, ドラゴンは「オムスビクダサイ」その脇でベビーホテルを襲った一味が, 今度の標的はこの子だ,と保の写真を見ていた.

マイトは保を百人町診療所で保をみせていた. 医者(近藤宏)も徐々に直すんだなと言い,ついでにマイトを整形しなおした. 医者が後を頼むよ,と言った相手はパン.びっくりするマイトに
パン「心配ない.心配ない.俺はこう見えても軍隊時代は衛生兵だよ. といっても,まもなく終戦だから人間を扱ったのは今日初めてだ.」
マイト「獣医,鏡.」
パン「いい顔になったぞう.」
鏡を見て
マイトは「これじゃあ,まるで西洋猿じゃないか.」
パンは大笑いするのであった.

その頃,五月は保を連れて買い物に出ていた.さりげなく見張るブラック. そこへ誘拐一味の男が保をさらおうとやってきた.現れたタミーが一味を撃退し, 車で逃げた.だが別の男がトラックに乗って追いかけてきた.

ブラックとパンは子育て地蔵で最初に襲ってきた男を脅していた. ボスは東西運輸の社長大野(川辺久造)だった.

その頃,タミーの車は左右をトラックに,後ろにショベルカーがついていた. 前からもトラックが.タミーにマイトが助言を与えた.タミーは止まった. そのとき,トラックたちに隙ができた. それを見てタミーはギアをチェンジして逆方向に走り, トラックを振り切ることに成功した.

港でマイトはたもつに船を見せていた.
マイト「保ちゃん,あれ見て御覧.ダグボート.ちっちゃいけどなあ, 凄い力持ちなんだぞ.ダグボート.言ってごらん.」
だが保は「ダ…」としか言えなかった.その後,保が貨物船を指差した.
マイト「あれはね,世界中を走る貨物船って言うんだよ.」
マイトは優しく言うのであった.

その頃,郷田(早川雄三)という男の屋敷で, 大野が郷田に保を取り逃がしたことを報告していた. 郷田は是が非でも保を後継者にしたがっていた.なぜ, と問う大野に郷田が答えた. 保の父親谷ひろしは東大を主席で卒業した東京地検特捜部の検事だった. 汚職事件で郷田をぎりぎりまで追い込んだ男だった. 五月も谷検事と同じ名門高校を一番で卒業した才女だった. その優秀な両親の血を引く息子である保は育て方次第で優秀な男になるはずだ. ちなみに大野は谷ひろしを撃ち殺していた. 大野の代わりに花木が罪をかぶっていた. おかげで郷田は追及を逃れることができた. 郷田は大野の小さなタクシー会社を運送会社にしていた. そして大野が拉致した子供は郷田の屋敷に閉じ込められ, 政財界の大物やハワイの人たちに売り渡されていたのだ.

一方,ドライブインではマイトが泊り込んでいた. 寝転んでいるマイトに毛布をかけてやる五月.マイトは五月に礼を言い, 隠しマイクが仕込んであるペンダントを渡してやった. そんなマイトに五月は例を言い,さらに「日下部さん.」と声をかけた.
五月「亡くなった夫から聞いたんです.今時珍しい刑事がいる. 日下部と言って自己を完全に殺しきっている. 奥さんや子供さんが殺されたときも冷静だった. 心の中は悲しみの嵐が吹きまくっていたでしょう.」
マイト「馬鹿じゃないの,その刑事.格好つけちゃって.」
マイトはごまかしたが,
五月「あなたに似てたわ,新聞に出てた日下部刑事の写真.」
そこへ花木がやってきた. さらに外の車にいたバイクも隙をつかれて大野の部下に殴り倒されてしまった. 保も大野の部下にナイフを突きつけられ,絶体絶命のピンチ. マイトは大野の部下達と立ち回りを演じたが,逃げられてしまった. マイトはバイクの車で追いかけようとしたが細工をされ, エンジンがかからなかった.

五月は保がさらわれたことを警察に届けた.保は郷田の屋敷にいた. 私はお前の父親だと言う郷田.しかし保は郷田の言うことを聞こうとしなかった. 警察署を出た五月に花木が保に会いたくないかと近づいてきた. 花木は五月を自分のマンションに連れこんだ.体を代償に求める花木. 花木は大野の部下である女(水原麻記)に殺されたが,女は五月を殺そうとした. 五月は逃げようとしてベランダから飛び降りてしまった. 駆けつけたマイトに五月は保のことを頼んだ.その頃, 大野のところで花木のマンションを聞き込んだタミーは花木の部屋に乗り込み, 一枚の写真を得た.その写真から,郷田が黒幕についていることが判明した. ゴッドから電話がかかってきて,ハンギングのゴーサインが出た.

ハンギング

ある日の晩,郷田にバスを提供していた.バスの中にはホステスがいて, 貸切になっていた.バスにはバイクが細工を施した. そしてマイトとドラゴンが保と子供達を救い出した.その頃, バスをブラックとパンがワゴンで追跡していた. ホステスにはタミーが紛れ込んでいた.突如,バスが故障で止まった. タミーの合図でブラックがガス弾をバスに打ち込んだ. ガス弾からは催眠ガスが発射され,郷田と大野達三人は眠り込んでしまった.

気がつくと,郷田と大野達三人は赤ん坊が着るようなパジャマを着せられていた. ご丁寧にもおしゃぶりをくわえさせられ,赤ん坊がかぶる帽子をかぶされていた. また部屋の内装はベビーホテルそっくりに作られていた. 部屋は揺れがものすごく激しかった. そこへタミーの声がスピーカーから響いてきた.
タミー「(幼児をあやすような口調で)さあさ,皆さん, おいたをしてはいけませんよ.」
郷田「誰だ,貴様.」
大野「す,すぐここから出せ.さもないとぶち殺すぞ.」
タミー「誰ですか,そんな乱暴なお口をきく人は. お尻をペンペンしますよ.」
郷田「無礼な.俺を誰だか知っておるのか.」
タミー「郷田君,およしなさい.そんなことでは大臣になれませんよ.」
郷田「誰だか知らんが,私は政治家の郷田大三郎だ. お前達,ただでは済まんぞ.」
女「そうよ.早くここから出してよ.」
ブラック「出たければどうぞ.扉の鍵は開いてるよ.」
その言葉に扉を開けてみる郷田達.しかし,部屋と思ったのはコンテナ. コンテナは団地の真中の広場に置いてあるクレーンで宙吊りになっていた. その高さは半端ではなく,団地の屋上くらい高かった.
ブラック「さあ吐け.お前達がした悪事を何もかも吐くんだ. どうしても吐かないんなら,どうなるか教えてやろう. お前達が盗んだ赤ん坊に代わってユリカゴ運動でな.おやじ,やろう.」
クレーンの運転台に乗っていたパンが「OK」と言った. パンの操作により激しくコンテナが揺らされた.恐怖のあまり, ついに女が吐き始めた.それを聞いて,何を抜かす,一番の悪は郷田だ, と罪をなすりつける大野.郷田は, 子供のない夫婦に赤ん坊を渡してやっただけだ,と開き直った. マイトの怒りが爆発した.
マイト「嘘付け,郷田.貴様は他人の子供を盗ませ売りまくった.この大悪.」
マイトの車には保も乗っていた.ついに郷田も罪を認めた. ブラックはクレーンの動きを止めさせたが,しばらくコンテナは揺れていた. 中で内輪もめを始める郷田達.その様子をみつめるマイトと保. やがてパトカーがやってきた.入れ替わりにブラック達は立ち去った.

五月の病室をマイトは保を連れて訪れた.マイトは保に言う.
マイト「おじちゃんはスーパーマンナンバー1だ.保ちゃんはナンバー2. いいか,おじちゃんが言った通りにするんだぞ.よーし,行け.」
保は五月のベッドに駈け寄り,一生懸命声を振り絞り,「マ,ママ.」 その様子を廊下から見て微笑むマイト.五月は目を覚ました.
保「ママー,僕帰ってきたよ.」
五月「保」
五月は起き上がり,保を抱きしめた.
五月「保,誰に助けてもらったの.」
保「いつものおじちゃん.」
保は廊下を指差したが,マイトの姿はなかった.
五月「あの方ね. あの方はもしかしたら本当に日下部と言う刑事さんかもしれないわ.」
その言葉を無線で聞き,マイトは一回病室を見た. そして,車で立ち去ったのであった.

解説

今回はマイトの過去が描かれた作品ですが,#5と違い, 今回はクールにマイトが対処しています. またブラック死亡後に顕著となるギャグの要素が,整形手術シーン, ハンギングのシーンなどで出始めます. 後半のパイロットフィルムと言う感のある作風です.

ちなみに台本では,最後のシーンでマイトは「俺は日下部と言う刑事ではない. 日下部と言う男は死んだんだ.」という内容の台詞を喋っていた, と#40の台本のコピーを下さったKさんから伺いました. でも映像化されたラストの方がいいと私は思います.

メガホンをとった故佐藤肇監督は小西通雄さんと同じ東映出身. 「Gメン'75」や「特捜最前線」などの名作も手がけた方です. 「ザ・ハングマン」シリーズで演出した作品がこれ一本と言うのは, 非常に残念です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp