第二十二回

ドラゴン復帰.ジャガー退場.
帰ってきたドラゴン 香港カマキリ拳

脚本:中村勝行 監督:前田陽一

夜の横浜港.一等航海士の高山が男達(中田博久ら)に追いかけられていた. 高山は一味から抜けたがっていたのだ.男(中田博久)は高山を説得したが, 高山は聞かなかった.高山は酒を無理矢理飲まされ,トラックで運ばれていった. その様子をドラゴンが見ていた.

翌朝,高山は水死体として発見された.ゴッドはその話をブラックに伝えた.
ゴッド「今朝早く,横浜港で船員の水死体が発見された. 男はきょくえい丸という貨物船の一統航海士,高山のぶひこ. 南方航路から夕べ帰港したばかりだ.これがその写真だ. 死体の解剖結果によると,血液中に大量のアルコールが発見された.つまり, 高山は酒を飲んで誤って海の中に転落したらしい. 警察では,そう見ているらしい.ところが,わしの入手した情報によると, これは明らかに偽装殺人だよ.」
ブラック「偽装殺人?」
ゴッド「ああ.おそらくこの事件の背後には, もっと大きな犯罪が絡んでいるらしい.それを探るのが君達の仕事だ.」
ブラック「わかりました.」
ゴッド「ところで,ジャガーの件だがな.」
ブラック「は?」
ゴッド「香港警察の要請によって彼は夕べ急遽帰国したよ.」
ブラック「帰国ですか.」
ゴッド「ああ.彼はもう一度狙撃隊に復帰することになったらしい. 急な話で説明する暇もなかったが当分は現有勢力で頑張ってくれ.」
ブラック「はい.」

私立港湾病院で高山の妻りょうこ(早瀬久美)が娘のみかを見舞っていた. 「パパは?」と言うみかに,りょうこは船が二,三日遅れるといってごまかした. パンは船員仲間の辻井と称してりょうこが病院を出たところを捕まえた. レストランでパンにりょうこは,まっすぐ高山が帰ってこなかったのはおかしい, と言っていた.みかは生まれつき心臓が弱かった. 先天性肺動脈狭窄を患っていたのだ. そして明後日は心臓病を患っているみかの手術の予定日だったのだ. 肺動脈を広げる手術をすればみかの病気が治るとりょうこから聞き
高山「どんなことをしてでも,みかの病気を治してやる. どんなことをしてでもな.」
それから高山はいろいろなところを駆けずり回り,お金を工面していた. 出港間際にも「みかを頼む」と高山はりょうこに言って船に乗った. そんな高山が酒を飲んで帰ってこなかったのはおかしい,とりょうこは言った. パンは警察へ行ったのかと聞くと,りょうこは遺品を受け取ってきたと答えた. 遺品を見たパンは高価なプラチナ台のオパールがついたカフスをみつけた. オパールつきのカフスは一ヶ月前にパーティでもらったものだった.

アジトでパンはりょうこの話を報告した. 高山はみかの手術代を稼ぐために犯罪に巻き込まれたに違いない. パンはカフスの出所を探ってみることにした. 10万以上もするカフスがお土産に出るパーティと言えば, 政治家や財界人が出るようなものだ.そんなパーティになぜ高山が出られたのか.

タミーは宝石店で, 例のカフスが東南物産に納品されたものであることを聞き込んだ. その東南物産の本社ビルでは社長の猪佐野保太郎(山形勲)が電話をしていた. 産業省の大岩大臣が自宅を新築したので, お祝いとして一千万円以上する家具を贈るつもりだったのだ. さらに妻がドレスを買いたいというので, 秘書のしんどうにさらに百万円交際費から出すように頼んだ. そして猪佐野が買い物する様子をタミーとブラックが見張っていた.

その晩の横浜港.美術商梶原(江見俊太郎)と船長達(中田博久ら)がバーで. 高山殺しのことを話し合っていた.梶原に税関の検査が終わり次第, 品物は届けると船長は伝えた.

とあるバーでマイトは船乗り(上田忠好)に高山のことを聞き込んでいた. 船乗りは高山の事件はただの事故じゃないと睨んでいた. マイトはさらにお金を出し,手を貸してくれと頼んだ.次の日. マイトは船乗りの助けを借りてきょくえい丸に乗り込んだ. きょくえい丸では積荷の検査が行なわれていた.船長はウーロン茶の缶にお金を詰め, 積荷の検査に手心を加えるように頼んでいた. 積荷の中には宝石が入っていた.その様子をマイトは見ていたが, 見つかってしまった.船の中を逃げ回るマイト. その様子を物陰からドラゴンが見ていた.追い詰められ,絶体絶命のマイト. マイトを狙って拳銃がぶっ放された.
マイト「俺をレーガン大統領と一緒にしやがって.」
ちなみにこの頃,レーガン大統領が狙撃される事件が起きていた. すると銃弾がやんだ.マイトが覗き込むと,マイトを狙った男がぶっ倒れていた. マイトは不思議に思った.そのときマイトは, 男(ドラゴン)が逃げ去るのを目撃した. その隙にマイトは小船で逃げるのに成功した.それをドラゴンが見届けていた.

その夜,ゴッドにドラゴンから電話が入った. ドラゴンはゴッドにマイトを陰で救った件を報告し, 正体を現した方が良いかと聞いた. ゴッドはもう少し正体を隠していた方がいいと答えていた.

一方,マイトは昼間の件をブラック達に報告していた. マイトは自分を助けた奴がいると言い, 自分達の他にもこの件を探っている奴がいると睨んでいた. マイトはカフスの件をブラックに聞き返した. あのカフスは東南物産の50周年記念パーティで配られたものだった. パンは週刊誌のスナップ写真を見せた.それはあるパーティのスナップ写真で, 高山,猪佐野,梶原が写っていた.

さて梶原の事務所では梶原が船長から密輸品の宝石を受け取っていた. 梶原達は宝石の密輸を行ない,暴利をむさぼっていたのだ. 船長はマイトが潜入した件を梶原に報告した. 心当たりはないのかという梶原に船員が, 高山の妻が怪しいのではないかと答えていた.高山の死体が上がったとき, 事故のはずはないので調べてほしい,と高山の妻は食い下がっていた. それを船員が目撃していたのだ. そこへ猪佐野から品物の催促の電話がかかってきた. 梶原が品物が届いたことを報告すると,20分後に例の場所で会おう,と言って, 猪佐野は電話を切った.

ドラゴンとマイト達の再会

とあるホテルで猪佐野と梶原が会って品物を受け渡ししていた. 猪佐野は7千万円の小切手を渡した. そこへタミーがルームサービスと称してコーヒーを持ってきた. タミーは盗聴機を仕掛け,隣りの部屋に入って行った. 隣りの部屋にはブラックとバイクがいた. 梶原から捜査の手がのびたらしいと聞き,猪佐野は品物を全部返すと言い出した. 梶原は猪佐野を制止し,品物の場所を聞くと, 猪佐野は自宅に梱包したまま全部あると答えた. 梶原は品物を別の場所に移した方がいいと勧めた. 盗聴していたバイクにマイトから無線で連絡が入った. マイトは梶原のオフィスの裏口を見張っていた. マイトはグラビアで見た男(船長達)が出て行くのを見つけたので, パンと一緒に尾行することにした.だが赤信号に引っかかってしまい, 見失ってしまった.船長は横浜港の埠頭へやってきた. りょうこはみかの手術が成功に終わったので, 天国の高山に宛てて花を海に投げていたのだ. 船長はりょうこを拉致しようとしたが,ドラゴンが現れ,りょうこを助けた. 船長は拳銃を出してドラゴンを狙ったが, マイトがやってきたので逃げてしまった. 駆けつけたマイトとパンにドラゴンは声をかけた.
ドラゴン「マイト.パン.」
マイト「どうなってるんだよ,これは.」
パン「は,は,は,は,は.ゴッドも人が悪いや.」

ブラックはマイトからの電話でドラゴンが帰ってきたことを知った. ブラックはゴッドのオフィスへ行き,ドラゴンのことを聞いた. ゴッドはきょくえい丸の密輸に関する情報を得ていたが, その頃きょくえい丸は香港にいた.そこで密かにドラゴンに連絡を取り, ドラゴンを潜入させていたのだ.ゴッドはドラゴン復帰をブラックに打診した. ブラックに異存はなかった.

中華街の東京大飯店でドラゴンの歓迎会が開かれた.喜ぶバイク. ブラックはドラゴンにタミーを紹介した. そして乾杯の音頭は御長老のパンが取ることになった.その晩, ブラックはドラゴンを連れてゴッドのオフィスを訪れ, 事件の全容を報告した.ゴッドはハンギングのゴーサインを出した.

ハンギング

その夜,猪佐野のところを梶原と船長達が訪れ,品物を運び出していた. 船長達が運転するトラックをマイトとドラゴンが追いかけた. 正面にタミーの車が現れ,トラックを止めた.そこへマイトとドラゴンが登場.
マイト「トラックごと頂いちゃおうと思ってねえ.」
トラックの中から船長の部下の怖いお兄さん達が登場したが, マイト,そしてドラゴンの敵ではなく,船長達は撃退されてしまった. そして船長とその部下を捕まえた.一方, 猪佐野の屋敷を去ろうとする梶原の車にはパンとバイクが乗り込み, 梶原を捕まえた.

梶原と船長達にマイトはダイナマイトを見せた.
マイト「いいか.洗いざらい喋るんだ.さもねえとこいつが爆発して, 頭と足は逆,もちろん,おちんちんもあの世行きだよ.」
ハングマンは梶原達をおりに閉じ込めた.

翌朝,猪佐野は出社した.すると会社の前には新聞記者たちが集まっており, 猪佐野を質問攻めにした.「なんだね,この騒ぎは」という猪佐野に, 記者に化けたブラックが聞く.
ブラック「猪佐野さん,夕べ,横領容疑で事情聴取を受けたそうですが, ちょっと具体的に聞かせてください.」
猪佐野「え? 馬鹿な.誰がそんなこといったんだ.」
パン「お宅の広報担当者から連絡があったんですよ.」
猪佐野「君,冗談はやめてくれ.何かの間違いじゃないのか.」
バイク「いやあ,確かに記者クラブの方に連絡がありましたよ.」
タミー「横領容疑で事情聴取を受けたと, あたしの社にも連絡があったんですよ.」
猪佐野「誰かのいたずらだ.さ,邪魔になるからどいてくれ.」
猪佐野は社屋に入ろうとしたが,そこへドラゴンの運転するフォークリフトが, 今まで猪佐野が買い集めた密輸品を運んできた.
ブラック「ああ,横領金で買い占めた品物ってのはあれですか.」
猪佐野「知らん.わしは何も知らんぞ.」
そこへマイトの運転するフォークリフトが梶原達の入れられたおりを運んできた. さすがに猪佐野の顔色が変わった.マイトが導火線に火をつけた. ついに梶原達が自供した.野次馬が大勢集まってきた. そして梶原の話が猪佐野のことにも及んだ.
梶原「密輸をそそのかしたのは東南物産の猪佐野社長だあ!」
猪佐野「梶原君,なんてことを言うんだ! こいつのいうことは出鱈目だぞ. いいか.絶対そういうことはない.絶対だぞ.出鱈目を言うな.」
導火線はなおも燃えていき,ダイナマイトは爆発…しなかった. 猪佐野にマイトとドラゴンのフォークリフトが迫る.
猪佐野「やめろ.やめろ.危ないじゃないか.止めろ.止めろ.やめてくれえ.」
だがマイトとドラゴンは容赦しない.猪佐野を執拗に追い掛け回した. ついに猪佐野は観念した.
猪佐野「わかった.密輸をそそのかしたのは私だ.許してくれ. 助けてくれえ.助けてくれえ.」
パトカーのサイレンが響く中,一斉にカメラのフラッシュがたかれた. こうしてハングマンは密輸組織を叩き潰したのであった.

解説

唐突にジャガーが香港警察の要請で狙撃隊に復帰するために帰国します. そしてドラゴンが香港から船に潜入し,そのままハングマンに復帰します. それに伴いオープニングも変更されています. 悪役で登場した山形勲さんは東映時代劇の重鎮. 中田博久さんも東映出身の俳優で時代劇や刑事ドラマで悪役として よく登場します.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp