第十九回

会費を横領するレディースクラブ会長と村の発展を餌に騙される寒村の村長.
恐怖で走るダイナマイト女

脚本:山田隆之 監督:真船禎

全国レディーヘルツ親睦会総会が, 富士急ハイランド近くのホテル鐘山宛で開かれた.会長の大原道明(平田昭彦)は, ホテルから山を一つ越えて10Km先にある美山村の名誉村民になった. 総会の様子はテレビ中継され,美山村村長青山大造(奥村公延)も見ていた. 乾杯の音頭は副会長の千野美千代(三條美紀)が行なった.その席上, 関東地区総代の森本さち(三条泰子)から, 月千円の会費を2千円に値上げする提案がされ,賛成者多数で決定した. 千野は苦い顔.

翌日,大原は会員を連れて美山村の別荘に案内した.案内後, 大原の部屋で森本は大原と抱き合い,自分を副会長にしてくれとねだったが, 千野がやってきた. 千野は親睦会名義だった別荘が大原名義になっていることを詰問しに来たのだ. 大原はその方が管理上都合がいいとごまかしたが, 千野は名義を元に戻すようにいい, さらに森本に会費値上げ動議を撤回するように言った. レディーヘルツクラブは全国に一万店あった.1店千円の会費でも月に1千万円, 年間にすれば1億2千万円の収入だ. 会費を2千円にすれば年間2億4千万円が無税で大原の元に入るのだ. それのどこが悪いのかと森本は開き直ったが, 千野は森本のことを洗いざらい総代達にぶちまけると言い, さらに大原が親睦会の金を自分のために流用し, 美山村役場や小学校へ寄付したことを持ち出した.森本は千野を仏像で撲殺した.

千野の経営していた千野レディーヘルツクラブ.そこにブラックが来ていた. 千野に妹の由紀の病室へ来てもらったことがあったからだ. そのとき千野の力で由紀の目が動いた.ブラックは千野の一番弟子の谷原恵子に, 千野にもう一度足を運んでくれと頼んでくれと懇願していた.

だが千野は美山村の湖のほとりで死体となって発見された. 何も知らない村長は駆けつけた大原と森本に, 副会長がこんなことになってしまって,と声をかけた. 白々しく号泣する森本.そんな大原に刑事が声をかけた. 大原と総代達は刑事に日が暮れてから釣りにでかけたと証言した. 総代達と談笑中,女が車に乗るのを大原は指差した. そしてあれは千野だと言ったのだ.それを総代達は信じ込んでいた. 止めてこようと言い,大原は外の女の方へ行ったのだ. あの時,無理にでも止めていればと大原は「悔やんだ.」

村役場では刑事が千野の死に疑問を抱いていた. 傷は岩にぶつけたものと少し感じが違うし, 大原の話にもあやふやな点が多かったからだ. だが村役場の人達は大原を疑うようなことをしてはいけないといい, さらに村長は, 大原が美山リゾートホテルの建設費20億円を援助してくれることを持ち出した. 村長達はリゾートホテルに観光客が押し寄せてくれば, と獲らぬ狸の皮算用をする始末. さらに警察署署長(金内喜久夫)は刑事を担当から外し, 別の仕事で横浜へ出張させた.

恵子とブラックは湖に花を投げ入れ,千野の菩提を弔っていた. その頃,大原は副会長になった森本を村長に紹介していた.

千野レディーヘルツクラブに三人組の女が嫌がらせに来た. 千野レディーヘルツクラブを見張っていたマイトは, タクシーで去った三人を車で追った.そしてパンが電話でブラックに報告した. 早速ブラックは千野レディーヘルツクラブを訪れた. ブラックは恵子から千野が大原に殺された疑いがあることを聞かされた. 証拠はなかったが,千野は釣りをする人ではなかったのだ.

公園でブラックは,もう一度山梨へ行くからゴッドに伝えておいてくれ, とタミーに頼んでいた.その頃,ディスコでマイトは三人組に接触していた. マイトは誰に頼まれたのと聞いたが,女は答えなかった. さらに無理矢理聞こうとすると女は上半身裸になり, マイトに襲われたと騒ぎ立てた.さすがのマイトでもなす術もなかった.

一方,大原のところに恵子が乗り込んでいた. 恵子は千野レディースヘルツクラブが嫌がらせを受けた件を話し, 大原がやったのではないかと言った. 大原は誰よりも千野をありがたく思っていると白を切った. レディーヘルツクラブは千野のチェーン店を母体にして設立されたからだ.が, 恵子は山梨へ行く前に千野から聞いた話を持ち出した. 大原は親睦会のために美山村に建てた別荘をいつのまにか自分の名義にしたこと, 大原は親睦会の金を自分のもののように使って村長達を手なずけ, 広大な土地を自分のものにしたこと,そして大原に騙されていたのかもしれない, と.恵子は横領の証拠だと言う帳簿を見せ,警察に差し出すと言ったが, 大原はスタジオサチを経営している森本さちという証人がいること, そして公式の帳簿は森本が持っていることをたてに,白を切った. 報せを聞いて駆けつけた森本は帳簿を見せた.森本は紅茶に劇薬を入れ, 恵子に飲ませた.そして恵子は死んでしまった. 森本と大原は恵子の死体を例の3人組に運ばせた.

その頃,ブラックは美山村の別荘を調べていた. そして仏像に血がついているのを発見した. だがブラックは外から出たところを警官に見つかってしまった. 村でみかけない車(黒いワゴン)が止まっていたからだ. 雪が積もる森の中をブラックは走り回って逃げた.

一方,パンは千野レディースヘルツクラブで, 恵子が行方不明になったことを知った. 大原に会いに行くと言って出て行ったきり3日も帰ってこなかったのだ. タミーは大原の事務所の前で聞き込みをしたが, 恵子を見かけた者は現れなかった. バイクとジャガーは大原の事務所に忍び込んだが,警備員に見つかってしまった. またパンは谷原恵子のおじと称して大原と会っていた. 大原は恵子が三日ほど前に来たが元気に帰ったと白を切った. パンは応接室で真珠を見つけた.千野レディースヘルツクラブで, パンは恵子が真珠のネックレスをしていたことを聞き出した.

やっと警官を巻いたブラックは自分のワゴンを走らせていた. 無線でタミーに千野が殺された証拠があることをしらせた. パンは恵子も殺されたに違いないと睨んでいた. 恵子の死体はどこにあるのだろうか.

その頃,ホテルには大原と森本がいた. 二人の乗る車をバイクとジャガーの乗るオートバイが追いかけた.その頃, パンとタミーとマイトはヘリに乗り,富士急ハイランドでブラックと合流した. 富士急ハイランドのゴーカートで例の3人組を見かけたマイトは, 3人を追いかけることにし,ブラックとパンとタミーはワゴンで去った.

一方,大原と森本を村役場の警官が出迎えていた. 例の3人組はホテル鐘山宛に入った.3人組の車に潜り込んでいたマイトは, スコップを発見した.タミーとパンは湖を調べようとしたが, 警官に呼び止められた.慌ててタミーとパンは退散した. 起工式の現場でもブラックは無駄足を踏み, 別荘を調べたバイクとジャガーも無駄足を踏んだ.やっとマイトは, 例の3人組がトランクを雪の中に埋めたことを盗み聞きすることに成功した. 早速夜中に雪の中をハングマンは掘ろうとしたが銃で狙われてしまった. これは大原が無罪だと信じた村長の指示によるものだったのだ. 大原の身を守ることは美山村の発展を守ることだったのだ. ハングマンは食料調達にも事欠く始末. もはや例の3人組を締め上げるしか手はない.

ハンギング

ブラックとバイクとジャガーは3人組に声をかけて連れ出した. そこへスコップを持ったマイトが登場.
マイト「雪の上,案内しな.死体を埋めた,ゆ・き・の・う・え.」
3人組は逃げようとするが,ブラック達に取り押さえられた.
マイト「それじゃあ,お前達にいいものをくれてやる. どんなことでも言いたくなっちまう,燃える男だ.」
マイトはダイナマイトを取り出した.
マイト「こいつはリモコンの起爆装置だ.」
マイトの操作でダイナマイトが爆発した. 3人組の一人が顔面蒼白になった.
マイト「またぐらにつけさせてもらうぜ.」
マイト達は3人組のまたぐらにダイナマイトと起爆装置をとりつけた.
女「あんた達は誰なのよー.」
マイト「ハングマン.」
ブラック「死刑執行人さ.」
3人組は恵子の死体を埋めた場所をもう一度掘り返した. そして恵子の死体を詰めたトランクが掘り出された.

そして美山村リゾートホテルの起工式. ヘリコプターが恵子の死体が入ったトランクを運び込み, 3人組が歩いて近づいてきた.
森本「なによ,あんた達.」
3人組はトランクを開けようとした.
大原「おい,何をするんだ.」
トランクが開けられ,恵子の死体が飛び出した.
女A「森本さち,あんたが殺した.」
森本「何を言うの! 何を証拠に!」
女B「道明会長も殺した.」
女C「この二人が結託して, 横領した何億とも言う親睦会費のことがばれそうになったので殺したんだ!」
森本「私は知らない.親睦会のお金を自分のお金のように使って名誉村民になり, 別荘やこの広大な土地まで自分のものにしたのは道明会長なのよ. 殺せと言ったのもこの人なのよ.」
大原「千野女史を殺したのはお前なんだ.」
森本「事故死に見せようとしたのはあんたじゃないの. お人よしの総代達をうまく利用すれば事故死に見せられるといったのは, あんたよ.」
大原「お前こそ,自分の欲望のためならなんでもやってのける, 恐ろしい女だ.やくざ女どもを使って, 千野レディーヘルツ系列店を片っ端から乗っ取ってるのはお前じゃないか! 親睦会費を値上げすれば大儲けができると言い出したのもお前なんだ.」
森本「地元の発展を餌に村長さん達を騙したあんたこそ悪党よ.」
大原と森本は大喧嘩を始めたが,はっと我に返って逃げ出した. だが警官に捕まってしまった. その様子を村長は苦い顔をしながら呆然と見るだけだった.
ブラック「地元の発展か.村長達も悪い夢に踊らされたなあ.」
ハングマンは黙ってその場を去って行った.

感想文

この作品のテーマは最後のブラックの台詞に集約されています. 村の発展を願うあまり,結果的に犯罪に荷担してしまった村長達. 可哀相ですが,彼らも同罪です.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp