第十六回

未亡人が仕掛けた保険金殺人の真相を暴く
ドーベルマンを飼う悪女

脚本:田上雄 監督:松尾昭典

刑務所から一人の男(長谷川明夫)が出所し,新宿へ向かった. そして新宿にある石坂法律事務所を訪れた. ちょうど事務所では事務所の主人である石坂哲三弁護士(高木二朗)が, 客から謝礼を受け取っていた.客を見送った後, 石坂は男の来訪に驚く.男は石坂にお金を要求した. その様子を窓からバイクが撮影していた.

その頃タミーは鈴木民子と名乗り南雲松代(吉行和子)の元を訪れていた. 松代は娘と二人暮しでお手伝いさんを募集していた. 松代の屋敷ではドーベルマンが放し飼いにされていた. 松代の娘は亡夫の連れ子でタミーと同じくらいの年齢だった.松代は, 娘が一週間前から海外旅行へ出かけたと告げた. 松代は履歴書を見て「タミーが孤児である」ことを知り, かえって歓迎するような口ぶりであった.

さてゴッドの事務所.ブラックからゴッドが報告を受けていた. 石坂の事務所を訪れた男は寺沢秀雄.ゴッドはブラックに寺沢のことを話した. かつてはハンマー寺沢というリングネームで, 全日本ウェルター級の新人王にもなったボクサーだった. しかし暴力団がらみの八百長試合をやったことがばれて選手資格を剥奪され, 転落の道をたどって行ったのだ.いかがわしいバーや, キャバレーのバーテン兼用心棒としてハンマーパンチを活用していた. そして三年前の夏,寺沢はある男を撲殺.現行犯逮捕された.

ブラックがバイク,パン,マイト,ジャガーに言った. 酒を飲んでいたことと殺意がなかったことを弁護側が主張したことにより, 寺沢の刑は傷害致死で懲役5年に収まっていた. 被害者は南雲周一郎という旧華族の血を引く実業家だった. 南雲は事件の直前に生命保険に加入していた. 4つの保険会社にそれぞれ5千万円ずつで,しめて二億円. ゴッドは保険金絡みの殺人の疑いがあるとにらんでいた. 寺沢の弁護をしたのが石坂だった.

一方,南雲家ではタミーが開かずの間を見つけていた. タミーが開かずの間を覗こうとしているのを見て, 松代はとしこ(娘)の部屋で入らないでと言われていると,さりげなく注意した. そこへ客が来訪.松代がインターホンを取ると客は石坂だった. 石坂は松代に寺沢が出所したことを伝え, 約束の一千万円を払うかどうかを松代に相談した. 松代は石坂に寺沢を消すように指示.松代は, 石坂が公害反対の住民運動に荷担するふりをして, 実は企業側とつながっていることを知っていたのだ. が石坂も三年前の真相をばらすことを松代にほのめかし, 松代の言いなりにはならないと暗に示す.が松代は開き直った. 松代が気配を察してドアを開けるとタミーがいた. タミーは立ち聞きしていたのだが,お茶を持ってきたと称してごまかした. 松代はタミーを幸子の身代わりにするつもりだった.

その頃,マイトとバイクは寺沢をはっていた. 大胆にもマイトは対戦相手だったと称し,寺沢に近づいた. 寺沢は外へ出て行きバーのマスター(上野山功一)に真由美の行方を聞いたが, マスターは知らないと答えた.

松代は外出し,新宿のクラブ愛へ向かった. その隙にタミーは電話でブラックに連絡を取った.

その夜,寺沢はとあるバーで真由美の行方を聞いていた. すると周りをチンピラに囲まれ,真由美を探すことと, 石坂を強請ることを止めるように脅迫された. 石坂は抵抗したが多勢に無勢でなぶられた. そこへマイトとジャガーが入り,チンピラ達を撃退した.

一方,パンは松代を尾行し,とあるホストクラブに松代が入り込むのを見届けた. パンも入ろうとしたが,会員制のクラブであると店員に止められてしまった.

タミーはドーベルマンに餌をやろうとしていた. がタミーはドーベルマンに襲われた.間一髪ブラックが入り込み, 麻酔銃でドーベルマンを眠らせた.暴れると鎖が外れるようになっており, さらに餌には興奮剤が仕込まれているようだった. 松代はタミーを殺すつもりだったのだ.

ブラックとタミーはとしこの部屋を調べてみることにした. ブラックが鍵を開けて中に入った.天井からは手かせがぶら下がり, 窓には鉄格子が.さらにベッドには大量の血が付着していた. ブラックの見立てではその血は一週間前についたものだった. 一週間前と言えば「としこが海外旅行へ行った」頃だ.

マイトとジャガーは寺沢を介抱していた.マイトは真由美のことを寺沢に聞いた. 真由美は寺沢が惚れた女だった.真由美は結婚してもいいと言ったが, 一千万円の結納金を条件にしていた.その頃, 松代とホストの情事をパンが盗聴していた.

情事の後,自宅に帰った松代はドーベルマンを見て, さらにタミーが出迎えに出たのを見て驚いた.

ブラックはゴッドから南雲としこに関する調査の報告を受けていた. としこが国外へ出た形跡はなかった.そして, としこの部屋の結婚の血液型がとしこの血液型と一致した. 血液型についてはとしこの子供の頃からの主治医が証言していた. さらに五ヶ月前にとしこが3社の総額で1億5千万円の生命保険に入っていた事を, ブラックは知らされた.

バイク,マイト,パンにそのことを話すブラック. 生命保険の受取人は松代だった.としこが死んだ理由はなんだろう, と問うバイクにブラックは考えられる理由が二つあると答えた. 一つはとしこの死が他殺で検死の結果謀殺と判定される場合. もう一つは自殺の場合.加入後満一年を経過すれば, 自殺でも保険金を支払われるのだが,としこの場合は後七ヶ月残されている.

ブラックはマイトに真由美の行方はつかめたのかと聞いた. マイトは未だだと答えたが, 真由美は美人でグラマーでディスコ狂いだと付け加えた. それを聞いたパンは松代もディスコ狂いだと言う事を思い出した.

松代にバーのマスター(上野山功一)が寺沢を消すのに失敗した事を報告していた. マスターは真由美と松代が同一人物だとばれたらまずいとびびったが, 真由美は大丈夫だと答えた.松代は寺沢に連絡を取り,寺沢を誘い出した. 真由美がみつかったと寺沢が出て行ったことをジャガーがブラックに報告. それを受けてゴッドはハンギング開始を指示した.

ハンギング

その頃タミーは台所で隠し扉を発見した.扉を開けて中に入ると, そこには大きな冷蔵庫が.中を開けるととしこの死体が隠されていた. そこへ松代がやってきた.としこは自殺していたのだった. 本当は少しずつ砒素を飲ませて殺そうとしたのだが, としこはそのことに気づいて自殺してしまったのだ. 「身寄りのない娘」であるタミーを雇ったのも, としこの身代わりにするためだった.そこへマスターがやってきて, 寺沢がやってきたことを伝えた.

屋敷にやってきた寺沢に松代が正体をばらす.石坂とマスターもやってきた. 松代は得意になってタミーと寺沢にからくりを話した. 松代が書いた筋書きはこうだ.寺沢は南雲を逆恨みし, 出所後に南雲の屋敷を訪れ,お礼参りをしようとする. しかし松代に正当防衛で射殺される. その場に居合わせたタミーは事故でドーベルマンにかみ殺されてしまう.

勝ち誇った松代はドーベルマンを呼び寄せた. しかしやってきたドーベルマンは松代の愛犬ではなかった. ハングマンが連れてきたものだったのだ. 先ほどの会話はタミーが全て録音していた.ハングマンは制裁として, 松代と石坂とマスターに連れてきたドーベルマンをけしかけた. ドーベルマンを避けるために松代達は木の上に逃げた. ハングマンは松代達の自白テープを置き,寺沢を連れて帰って行った. 入れ替わりに刑事がやって来て,木の上の松代たちを見上げるのであった.

「ザ・ハングマン 燃える事件簿」へ 「全話のあらすじ」へ 「全話のキャスト」へ 「緊急指令トラトラトラ」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp