第十五回

偽物おもちゃ販売ルートを暴く.
おもちゃの首の怨み唄

脚本:武末勝 監督:松尾昭典

とある港のほとりでパンが釣りをしていた. 釣れないので「人間もせこいが魚もせこくなった.」とぼやいていると, 少し離れたところにトラックが止まっていて, そのそばで釣りをしている人をみつけた.釣り人がトラックに合図すると, トラックはヘッドライトをつけたり消したりして何か合図を送った. パンは「何やってんだろう.」と釣り人の方に近づいた. パンは釣り人に「どうですか,釣れますか?」と声をかけたが, 釣り人は何も答えなかった.さらに「トラックいっぱいは釣れんでしょう.」と, トラックを叩いたとたん,トラックが走り出した. 釣り人は「おい,待ってくれ.」とトラックへ向かって走り出したが, 狙撃されてしまった.パンは慌てて物陰に隠れた. そしてトラックも狙撃されて横転. トラックから脱出した運転手も狙撃されてしまった. 狙撃手は車で立ち去った.パンがトラックの荷台を開けると大量のおもちゃ, そして,全裸の女の死体が出てきた.

警察はこの事件を被害者の高森三郎が元関西の暴力団幹部だったことから, 関東進出を狙う暴力団と地元暴力団との争いと見ていた. そのことをパンはテレビニュースで知った. そしてゴッドからこの件を洗うよう指令が出た.

パンはおもちゃ問屋を当たってみたが, あのおもちゃは偽物だという答えしか返ってこなかった. 有名ブランドの偽物を日本国内で作り, ドイツ製やアメリカ製ということにして香港辺りで売り, ぼろ儲けするというからくりだ. 高森と彼の助手は密航船を待っていたというわけだ. そこへパンが登場したので高森達は逃げ, 見張っていた殺し屋が高森達を殺したと言うわけだ.
タミー「じゃあ,女の死体は何なの?」
とタミーが言ったところへマイトがやってきた.
マイト「ピンクサロンラブヤングのホステスで通称ミドリ,本名小林ひろこ25歳. おそらく奴らの裏を知りすぎて消され, 密輸船で太平洋へドボーンされることになってたんじゃないのー.」

パンは高森の家の前で男(清水紘治)とすれ違った.高森の未亡人の話で, 男はコード無しで動くおもちゃの子犬を探しに来たことがわかった.そのとき, そのおもちゃは高森の娘が遊ぶために持ち出していた. パンが窓を開けて外を見るとブラックが娘と公園で遊んでいるのが見えた. 娘とブラックがおもちゃの子犬で遊んでいると, 男(山本紀彦)がやってきて「ハッピーだ.」と子犬を取り上げてしまった. その様子を木陰からパンがすれ違った男が見ていた. 見かねたブラックが子犬を取り上げようとすると,男は名刺を取り出した. 男はおもちゃ研究家澄川たけし. おもちゃの子犬は一年がかりで仕上げた試作品だった. 澄川はおもちゃの修理を条件に預からせてくれと頼んでいた. 澄川は「東武宇都宮線」沿線のおもちゃの町に住んでいた.

タミーが東武宇都宮線おもちゃのまち駅に降り立つと, ブラックのワゴンが出迎えた. ここは「栃木県下都賀郡壬生町おもちゃの町」である. ブラックがタミーに説明する.
ブラック「おもちゃ工場ってのは,かつて東京では家内工業として, 下町でひしめいていたんだが,十五年程前に生産合理化のため, 現代的な工場を一箇所に集めて作った.それがこのおもちゃの町なんだよ.」
ブラックとタミーは澄川の住処である「澄川TOY研究所」に到着した. タミーは澄川の家を訪れた.タミーは育児雑誌チルドレンの記者と称して, 記者会見の予約をしていたのだ.タミーと澄川の会話は盗聴マイクを通して, ブラックにも聞こえていた.澄川はタミーを中に入れると鍵をかけた. 一ヶ月前に手作りの試作品を盗まれたので警戒を厳重にしているのだ, と澄川は言った.
タミー「想像していたのとはだいぶ違うけれど,なんだか夢が生まれそうね.」
澄川は熱っぽく語った.
澄川「そう,それなんですよ.おもちゃは夢から生まれ, 夢を育んで夢の彼方へ去って行く.少なくとも僕はそう思ってます. しかし現実は厳しいからなあ.楽しくって,夢があって,いいおもちゃだから, 必ずしも売れるとは限らないもんねえ.」
そこへ水原純子(畑中葉子)が野菜を買ってやってきた. ハッピーがみつかったのねえ,と喜ぶ水原純子に,澄川は, 高森の所へ行ったら見つかった,と話した. 盗まれたのは手作りだけでスケッチの方は無事だった. 手作りとスケッチさえあればいくらでも複製を作れる,と澄川は話した. その話をワゴンの中でブラックも耳にした.水原純子は, おもちゃの下請けも見ていかないか,とタミーを誘った. 喜んでと答えたタミーはしっかり盗聴機を仕掛けていった.

東亜商会では社長(名和宏)が,香港のブラックマーケットに当たってみたが, 子猫か子犬じゃないと売れない,と男と狙撃手氷川に話していた. 子猫はメカに金がかかるから商売にならない,と言う男に社長は, あの子犬にしよう,と言った.男は,子犬の手作りをたけしに奪い返された, と話し,スケッチがなければどうしようもない,と答えた. 少しは覚えてるだろうという社長に男は失敗作を見せ, モデルと設計図がなければと答えた. そして社長は氷川に整形手術の医者が見つかるまで見を隠せと言った.

一方,マイトはピンクサロンラブヤングでミドリのことを聞き込んでいた. 太ったホステス(かわいのどか)がお金を要求するので, マイトは五千円札をホステスの胸に一枚入れた.
ホステス「えーとねえ…私頭弱いからなあ.」
マイト「絞れ,脳味噌.絞れ.」
ホステス「えーと…ねえ,ねえ.そんなことよりさあ,もう一枚頂戴よ. そうしたら,これも,あれも,Okよーん.」
マイト「でもあれって言うのは男の人はここ(頭を指差す)でするんだよねえ. 女の人は下の方でしょ.ここ(頭を指差す)で考えて物事を言ってくれないと, 記事が書けないからおまんまの食い上げ.わかる?」
ホステス「かわいそうねえ.」
マイト「(間髪いれずに小声で)かわいそうなんだ.」
ホステス「そうしたらさあ, (ジェスチャーつき)ボインをギューっと握ってやって. 頭回転するから.うん,どうぞ,やって.」
マイトは両方の胸をわしづかみにしたり回転させたりしてやった.
ホステス「あー.いたわよ.その男の名前はね,雨宮春樹って言うの.」
マイト「雨宮春樹.どこかで聞いたことあるなあ.」
ホステス「どうせ偽名よ.あのね,今明美ちゃんって子にねえ, お熱上げてるのよ.あ,ほらほら,あそこに座ってる紫の洋服着てるあの子よ.」
マイトは明美の姿を確認した.
マイト「ちょっと待っててね.」
マイトはホステスの足をどけた.
マイト「重いねえ.」
ホステス「ねえ,ねえ,ねえ,ねえ,ねえ.行っちゃうの. もっと触ってよ−ん.」
マイト「(ホステスの頭を指差して)ここで考えるの,ここで.」
明美の客は「そろそろ言うことを聞けよ.」と言ったが, 明美に「おもちゃの企画でも持ってきな.」と返していた. マイトは男をどけて明美の席に強引に座った.
明美「消えてよ.一人になりたいんだから.」
それでもマイトはどかなかった.レミーマルタンを一瓶頼み,一万円札を渡し, 「週刊ダンディ取材記者ダンディ三郎」と書かれた名刺を渡し, 雨宮春樹のことを聞きたいと言った. 「ナポレオンじゃないなあ」と訳のわからないことをマイトが言っている傍らで, 明美はライターで合図を送った.同時に男が東亜商事の社長に電話をかけた. 外へ出たマイトは襲われた.マイトとジャガーは雑魚を撃退し, さらにマイトは雑魚の一人(三井恒)から雨宮春樹の居場所と, 本名が杉浦であることを聞き出した.

明美は西新宿のマンションに住む杉浦の元を訪れた. 明美はおもちゃの町出身だった. そこへ消防署の署員と称してパンとバイクが訪れ, 盗聴機を仕掛けて行った.明美はバイクに「堂門さん」と声をかけた. 思わず何か口走りそうになったバイクの口をパンは押さえた. 明美はさらに「あんた,二年前に上野の交番にいたでしょう.」と言った. バイクとパンは一生懸命ごまかした. さらにパンは大型の盗撮機を「火災警報機」と称し, 「サービスとしておつけ」した.早速ブラックが盗聴および盗撮を開始した. 杉浦はおもちゃの町でおもちゃ研究家として活動していたが, 澄川たけしにはかなわないとおもちゃ研究家としての才能の行き詰まりを感じ, おもちゃの町を出て行ったのだ.殺されたひろこもおもちゃの町出身だった. どこの会社で働いてるのと聞く明美に杉浦は東亜商会という貿易会社だと答えた.

ブラックはトーマス堀と名乗り,東亜商会を訪れた.
社長「どうしてあたしどものことを?」
ブラック「蛇の道は蛇,言いますね.これ,証明書の代わりです.」
ブラックは懐から札束を取り出した.
ブラック「私がほしいのは,子犬と子猫です. そしてリモートコントロールで動くことね.もちろん,コード無し. 子犬は十日以内.子猫はイチカゲーツ!」
杉浦「子犬のほうはできますがねえ,子猫は一ヶ月では…」
ブラック「No! 香港ブラックマーケットに負けたくない. 金香港の倍払う.Oh, Yes. 子犬だーけでもいい.Yes or No?」
社長「Oh, Yes, Yes, イエース.」
ブラック「Ok! 頼みまーしたよ,頼みまーしたよ.」

ここは澄川TOY研究所前.タミーが車で見張っていた.杉浦は札束をだし, ハッピーを売りたいと澄川に言っていた.20万個以上は必ず売れる, と言う杉浦に「メイドインジャーマニーとしてだろう.」と言って澄川は断った. 売れればいいじゃないかと杉浦はいい,さらに, 1個一万円じゃあ国内では売れないと杉浦は言ったが, 澄川は5千円以下で売れるように改良すると答えた.
杉浦「夢だよ.お前は昔から夢ばっかり追いかけてる. 現実は夢では生きてゆけないんだ.」
澄川「俺が育てた子犬にドイツ製のレッテル貼ってまで売りたくないよ.」
交渉は決裂した.杉浦は後悔するぞと捨て台詞を吐いて去って行った. 杉浦の「夢だよ.お前は昔から夢ばっかり追いかけてる. 現実は夢では生きてゆけないんだ.」という言葉を聞きながら,タミーが言う.
タミー「じゃあ,お金だけで生きてゆけるのかなあ.」

水原純子は業者から発注差し止めの通告を受けた.杉浦の差し金だった. 純子は方々を駈けずり回ったがどこからも断られてしまった. 歩道橋でボーっとする純子に杉浦が白々しく声をかけた. 純子は去ろうとしたが,杉浦は純子の所に仕事を回してもいい, というメーカーがあると言った.純子は杉浦について行ってしまった. そして杉浦は車の中で純子に乱暴した.

澄川を見張っていたタミーは純子が現れなかったことを不審に思っていた. そこへ杉浦が純子を車で連れてきた.純子を見て澄川は驚いた. そこへ杉浦が現れ,澄川に自分が純子を乱暴したときの録音テープを聞かせ, このテープをたてにハッピーの手作りとスケッチを要求した. 澄川は杉浦をぶん殴り,叩き出した.杉浦が去った後,澄川は泣いてしまった. そして純子は「ごめんね さようなら」というメモを残し, 澄川の家の鍵を置いて出て行こうとしたが, 戻ってきた澄川と出くわしてしまった.澄川は純子を抱き寄せた.
純子「いいの? こんな私でも.」
澄川「馬鹿.さあ.」
澄川は純子を椅子に座らせ,お茶を飲ませた.
澄川「忘れろ.嫌なことなんか忘れるんだ.」
外では雪が降っていた.澄川は「雪の降る町を」を歌い始めた. いつしか純子も澄川と一緒に歌うのであった. その様子をタミーはゴッドのオフィスにいたブラックにも電話で聞かせていた.

ハンギング

杉浦が明美のいるマンションに帰ってきた. 杉浦は明美にあのテープを聞かせた.明美は杉浦を軽蔑した.
杉浦「そういうお前は何だ.」
明美「あんたに騙された馬鹿な女の一人さ. おいしいこと言われておもちゃの町を飛び出し, おまけに盗みまでやらされてさあ.」
澄川の研究所からハッピーを盗み出したのは明美だった.
明美「そのうえ純ちゃんにまで乱暴してさあ. あんたまだそれでもおもちゃ研究家って言える?」
杉浦「研究家は返上さあ.実業家としてのし上がる. たとえ人の一人や二人殺してもなあ.」
明美「やっぱりあんただったのね,広子ちゃんを殺したのは.」
杉浦「あいつは知りすぎたんだよ.俺達コピー屋の内幕をな.」
明美「何がコピー屋よ.はっきり盗作屋です,泥棒ですって言ったらどうなの.」
杉浦は明美をビンタした. 何もかも警察に話すから,という明美を杉浦は殺そうとした.
ブラック「ジャガー,ゴーだ.」
ジャガーは杉浦を殴り倒し,明美を救った.

東亜商会の社長殿村はパンが催眠ガスを使って拉致した. さらにパンは殿村を拳銃で脅し,狙撃手の氷川に電話させて, トーマス堀が整形手術のうまい医者を紹介すると言わせた. 間髪いれずに氷川のところへブラックが登場. 氷川がブラックと握手した瞬間にブラックは氷川に手錠をかけた.
ブラック「これ,ハングマンスタイルの挨拶ね.Ok?」
氷川「くそー.」
ブラック「Oh, くそー.Ok, Ok.」

きがつくと,殿村達三人は暗闇に縛られて寝かされていた.
殿村「ここはどこだ.ここはどこだ.」
ブラック「おもちゃの墓場だよ. 私利私欲のためにお前達に殺された,おもちゃの墓場だ!」
殿村「なんのことかわからんが,つまらんこと喋るな.いいな.」
殿村達の周りには失敗作のおもちゃがたくさん置かれていた.
マイト「殿村,貴様は人間のくずだ.他人が苦労して考え出したアイデアを盗み, 偽物を作っては儲けた.見ろ.そのくずに犠牲にされた俺達を.」
パン「杉浦雅彦.貴様は無常にも小林広子を殺害した.」
ブラック「その上,水原純子を陵辱し,澄川たけしを脅迫した.」
マイト「氷川.貴様のような殺し屋はガス室で殺されるのは当然だ. 覚悟はいいな.」
マイトの言葉と同時にガスが流れてきた. これはバイクが七輪で炭を燃やして起こして流した煙だったが, 殿村達はびびりまくった.
パン「さあ吐け.苦しみもだえながら死にたいか.正直に吐くのだ.」
ついに殿村達はお互いに罪をなすりあいながら白状した.
パン「よーし.命だけは助けてやる.表へ出ろ.」
扉が開き,殿村達は外へ出た.野次馬が集まった. 殿村達のところへいろいろなおもちゃが集まってきた. そして自白テープがスピーカーから流された. 殿村達は観念して座り込んでしまった.パトカーが来たのを見届けてから, ハングマンは去って行った.

公園では高森の娘がハッピーで遊んでいた. その様子をブランコに乗りながら澄川と純子が見守るのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp