第十四回

タミー登場
生き返ったスリ係女刑事

脚本:中村勝行 監督:井上梅次

とある町の通り.洋光海運事件の秘密を知る菊村(入川保則)が, 公衆電話から東都日報編集部に電話を入れていた. 編集長の安井に菊村は時効成立後に事件の全貌を公表すると告げた. 時効成立まで後10日. 菊村は,検察が地団太踏むような重要書類も含めて発表するので, 5千万円で情報を買ってくれないか,とも付け加えた. 電話を切ったところで菊村は暴漢に捕まりそうになったが, すんでのところでバイクが通りかかり,何とか逃亡に成功した.

マイト,ナンパに失敗する

さてその頃,原宿のレストランでマイトがクレープを食べていた. そこへ一人の女が声をかけてきた.
女「それ,おいしい?」
マイトは大喜び.
マイト「さすが原宿だ.ジョギングしながらレストランかね. よかったらおごるよ.」
女「そう,座っていい?」
マイト「どうぞ.」
女はマイトの座っているテーブルに座った. マイトはやってきた店員に注文する.
マイト「これと同じ物をもう一つ.それから,カフェオレ.」
マイトは女に話し掛けた.
マイト「うーん,僕ちゃんの好みにぴったりだ.」
女「残念.わたしの好みはもっとジェントルなタイプよ.」
マイト「人におごらせておいて酷いこと言うじゃないか.」
そこへ注文したものが届いた.
マイト「さあ,食事が終わったら,一流ホテルへ行って,僕を食べてみない?」
女「私,こっち食べるからいいわ.」
マイト「あっそ.」
それでもマイトは諦めない.クレープを手に取り,
マイト「これさあ,開いてね…」
女「いいの,いいの.わかった,わかった.大丈夫.」
マイト「クリーム入れてさあ.」
女「食べたら行くわよ.」
じっと見るマイトに
女「行きなさいよ,見てられるとおいしくないから. 昼間っからぶらぶらしてると女にもてるわけないわよ.」
マイト,がっかり.
マイト「これが原宿の女か.じゃあね,またねえ.」
マイトは立ち去ろうとするが…
女「あ,ちょっと,ちょっと.」
マイトは大喜び.
マイト「そう.やっぱり僕ちゃん好き?」
だが…
女「これおごりなんでしょ.」
と請求書を渡した.請求書を持って去ろうとするマイトに
女「もう一つ.」
女が取り出したのはマイトの腕時計だった.
マイト「君ねえ.いったいどういう性格してるの?」
女「鼻の下を長くしてるとろくなことがないわよ.」
マイト「君はこれ(スリ)か? 僕ちゃん,怖い,怖い,怖い.」

菊村を襲った暴漢は高森栄三郎(神田隆)の屋敷に入った. 暴漢は立花の手下だった.立花は高森に株乗っ取りの次の獲物と, 菊村が東京に現れたことを報告した.高森が洋光海運を乗っ取ったのは5年前. 株を買い占め,社長は自殺.検察の手が高森まで伸びたが, 菊村が逃亡して事なきを得ていた.時効まで後8日. だが時効を過ぎて喋られても, 他の事件のことがマスコミの槍玉に挙げられるに違いない. 菊村を始末しなくてはならない.

立花は菊村の元妻あやの営むクラブにやってきて, 菊村が連絡を取ってきたら報せるように伝えた. そこへ菊村が電話をかけてきた.ホテルであやと菊村は会っていた.

タミー登場.マイトびっくり仰天する.

指令が出たのでアジトにハングマンが集合した.話を聞こうじゃないの, というマイトに,ブラックは「いや,もう一人来ることになっている. 新しいメンバーだ.」と言って話を始めなかった.その時,呼び鈴がなった. ブラックはジャガーに通すように言った. そして入ってきた新しいメンバーの女を見てマイトはびっくり仰天. 原宿でマイトがナンパした女だったのだ.
マイト「このスリ,お,おい,お前,何しに来た!」
だが女はマイトを無視してブラックに話し掛けた.
女「遅くなりました.」
マイト「うーん,このスリが仲間か.」
ブラック「紹介しよう.ハングマン第8号.本名桑野多美子.呼び名は?」
女「タミー.どうぞ,よろしく.」
パン「ベニーの後釜がタミーか.」
ブラック「元警視庁三課の婦警だ.」
タミー「スリ専門のデカでした.」
ブラック「半月前,スリに化けたバイクを追跡中…」
タミーは新宿の陸橋で「スリ」に刺され,そのまま陸橋の下に落ちてしまった. タミーはトラックの荷台の屋根の上に落ちた. トラックを運転していたのはジャガーだった. こうしてタミーは昭和56年1月25日に「殉職」した.
ブラック「俺達と同じように整形し,指紋も消した.さ.」
タミー「はい.」
タミーはマイトの隣りに座った.
タミー「こないだのは,ほんの挨拶代わり.」
マイト「おいみんな, これからはせいぜいこれとポケットの中身には気をつけなよ.」
そしてブラックは指令の内容を説明した. 菊村を見つけ出すことが今回の使命だった. 高森は元はせこい金融ブローカーだったが, 今は高森グループという乗っ取りグループの総帥にのし上がっていた. 菊村が犯人ということになっている洋光海運乗っ取り事件では犠牲者が出ていた. それを受けてタミーが説明した.南条社長はピストル自殺し, 夫人は首をつっていた.二人も犠牲者がでたのかと驚くバイクに, タミーは三人だと答えた.令嬢の良子はショックで麻薬中毒に陥り, 今では廃人同様になっていた. そして良子はタミーからの高校時代の親友だったのだ.時効まであと1週間. ゴッドは菊村は消されると睨んでいた.だから時効前に菊村を探し出し,喋らせ, 菊村もろとも高森グループを葬り去るのが今回の使命だった.
マイト「僕ちゃん,こういう仕事好きだよ.」
パン「おいちゃんだって好きだよ.法律の網にひっかからない奴をぶっ潰す. 実に愉快だよ.」
タミー「私警察が嫌になったのも, 高森みたいな奴らに大手を振らせて歩かせる法律が歯がゆかったからよ.」
マイトがタミーを覗き込んだ.
タミー「あたしにも大いに働かせてね.」
マイト「うん.」
タミーの手にはまたマイトの腕時計が…

その頃,高森の屋敷をあやの使い寺本が訪れていた. あやは7千万円を要求していた.菊村の居場所を高森は尋ねたが,寺本は, 答えられない,そのうちまた連絡をする,と答えた.寺本は, 金を渡さない場合はあやが昔のことを全て聞いているので, 菊村に代わって自分が警察に訴える,と言い,去って行った. 高森は立花に,びた一文払わん,と答えた.

マイトはあやのクラブにやってきて,聞き込んでいた. そしてあやのところに菊村が連絡をとってきたことと, あやのマンションの場所を聞き出した. そして今日菊村があやのマンションを訪れることも. 同じ情報を立花は寺本から連絡を受けていた.

あやのマンションで寺本とあやは立花の部下に殺された. 菊村は立花の手をうまく逃れてマンションから脱出した. そこへマイトとブラックが駆けつけた.マイトが菊村を追いかけ, ブラックはあやの部屋で寺本とあやが死んでいるのを見つけた.

ハンギング

とあるマンション.菊村は窓から「ミキ洋品店 2月24日 新装開店いたします!」 という看板を見て,時効成立の日だ,とほくそえんだ. 菊村はあやの家に電話を入れたが刑事が出たので切ってしまった. そこへタミーがあやの使いと称してやってきた.タミーは食料品と鉢植えの花, そしてカレンダーを持ってきた. 今日は2月19日.タミーは時効成立まで部屋を出ないようにと注意した.その頃, ブラック達は菊村の部屋の真上の部屋を契約し,入居した.

その夜,タミーはワインに眠り薬を仕込んで菊村に飲ませた. 薬の効果はてきめんで菊村は眠ってしまった. そしてハングマンの工作が始まった.各所に盗聴機をしかけ, (食べる)パンを固いパンに,野菜と花をしおれた物に交換し, さらに菊村の時計の日付を変えた.ポストに新聞を入れた. 時効成立の日と勘違いさせるためだ.

次の日の朝.マイトがジャガーとバイクを連れて高森達を「迎え」に行った. タミーは菊村の部屋へ向かった.その後,ブラックは窓から外を見て, 「ミキ洋品店 2月24日 新装開店いたします!」の看板を見つけた. あれを見られたらまずい.そこでパンはテレビの撮影と称し, ほんの2,3時間でいいから足場を外して花輪を飾り, 開店中の様子を見せてくれ,と店の者に言うのであった.

菊村が起きると「2月24日」の9時半になっていた.花もしおれ,パンも腐り, 野菜もしおれ,20日,21日,22日,23日,24日の新聞が揃っていた. テレビでは「今日は2月24日の火曜日」の天気予報を報じていた. そこへタミーが訪れた.菊村は5日間も眠ったことを怪しむが, タミーは発作でも起こしたんじゃないの,と言った. 菊村には心臓病の持病があったのだ. さらに菊村が外の看板を見るとパンの工作が効を奏し, 「ミキ洋品店 本日 2月24日 新装開店いたします!」となっていて, どこから見ても店が新装開店しているようにしか見えなかった. 大喜びする菊村.菊村は東都日報に電話した.それを盗聴したブラックは, 東都日報に菊村の代理と称し,時効成立する前に全てを明らかにしたい, 本日3時にメトロホテルで記者会見を行なうので各方面に伝えてほしい, と伝えた.

その頃,高森はあやの件を立花から聞いて大喜び. だがマイト達が現れ,高森と立花は捕らえられてしまった.
マイト「僕ちゃん,強いんだよ.」

菊村を東都日報のものと称してブラックが迎えに来た. 金は記者会見後に支払うとごまかした.

午後三時前.高森と立花達はメトロホテルの配電室に連れ込まれた.
立花の部下「てめえら,ただじゃおかねえぞ,このやろう.」
マイト「しー.でかい声出すとただじゃおかねえよ.」
マイトは皮ジャンを開き,ダイナマイトを見せつけた.
マイト「おおきいけどさあ,おいしいよ.」
と言ってダイナマイトを一本くわえさせた. そして全員にダイナマイトをくわえさせ,導火線に火をつけた. そしてあやと寺本殺しの真相を吐くように脅した.

そして「洋光海運乗取り事件真相発表」の記者会見が開かれた. ブラックは菊村から得た証拠書類のコピーを記者達に配った. 記者の一人が質問した.
記者「時効直前に洋光海運事件の真相を公表しようと決心なさった動機は?」
この質問に菊村は怪訝な顔.菊村は時効の日だと思っていたが, 今日は2月20日だった.そこへ高森や立花達の声がスピーカーから響いた. 記者に化けたバイクが記者達を誘導した. マイトがくわえさせたダイナマイトは例によって偽物だった. 高森や立花は記者の質問攻めにあうのであった.

あの原宿のレストランでマイトとタミーは食事を取っていた.
タミー「じゃあね.」
マイト「おい,タミー.二人でどっか行こうぜ.」
タミー「それは規則違反.今日はあたしのおごりね.」
マイトは腕時計をすられてないかどうか確認するが,無事だった.
マイト「優秀な俺について来れるかなあ.」
タミーはローラースケートを履いて青山の方へ向かって走るのであった.

解説

タミー登場編であると同時に脚本担当の中村勝行さんお得意の難関突破編です. なお,この回からオープニングが変更されます.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp