第十二回

成田空港―東京間の弾丸道路建設に関する汚職の真相を暴く.
高速道路にコンクリート詰め

脚本:長野洋 監督:小西通雄

ある晩,マンションのアジトでマイトとバイクとジャガーがポーカーをしていた. バイクは5のスリーカード.
マイト「僕ちゃんとはまだ遊べないね.フルハウスって言うんだよ.」
マイトは得意気にA2枚とK3枚のフルハウスを見せた. だがジャガーはダイヤの2から6までのストレートフラッシュだった.
マイト「僕ちゃんの負けー.」
マイトが後ろに寄りかかると停電してしまった.
マイト「どうした?」
雷が鳴る音を聞いてマイトは物陰に隠れた.
マイト「やめろ,やめろ.」
バイク「どうしたんですか,マイトさん?」
加瀬慎一さんはその理由を聞いた.
マイト「拙者は雷が嫌いじゃ.」
脇でジャガーがポーズを取っていた.そこへベニーが戻ってきた. ベニーはヨーロッパから帰ってきたのだが, 成田空港から都心まで2時間もかかってしまった.ちなみに放送当時, 成田エクスプレスやスカイライナーは空港直下へ乗り入れておらず, 成田と東京との便は非常に悪かった.

次の日,ブラックとパンが, 成田空港と東京を結ぶ弾丸道路を作る計画があるという噂について話していた. その頃,弾丸道路計画の担当者であるタケダ局長(久米明)は, 質問攻めをする記者を振り切って個人タクシーを拾ってどこかへ行ってしまった. タケダは運転手新川(草薙幸二郎)に新宿の辺りをぐるぐる回るように指示し, さらに一人の男(須賀不二男)を拾わせた.車中でタケダは男にメモを渡し, 男はタケダにトランクを渡した.タケダは男を降ろさせた. メモには「1兆2千5百億」と書かれていた.またトランクには金が入っていた.

次の日の朝,自宅のある団地の前で妻と一緒に新川は車を洗っていた. 新川には年頃の娘を頭に娘が2人と息子が一人いた. そして新川の妻は車の中でライターを見つけた.それを見た新川は, そのライターが, 前日の夕方に霞ヶ関から乗せた客(タケダ)のものではないかと思い当たった.

調査開始

その頃,タケダがライターを探したが見つからなかった.そして 「新成田道路」の入札が始まり,「第一中島建設」すなわち, 昨日タケダが新川のタクシーの中で会っていた男の経営する会社に落札した. その事件が今度の仕事になった.不正があった形跡があるのだ. 中島建設はここ最近で急に勢力を伸ばしてきた会社だった.

ある晩,建設経理係長の「飛び込み自殺」事件が起きた. 記者会見でタケダ局長は,その事件は第一中島建設内部の問題であり, 成田新道には何の関係もないといけしゃあしゃあと喋っていた. 記者会見に潜り込んだマイトが突っ込む.
マイト「そんな話は聞き厭きましたよ. 真相はもっと深いところにあるんでしょう.えー?」
中島も白を切りとおし,記者に変装したバイクの 「成田新道の工事はどうなります?」という質問にもだんまりを決め込んだ. 結局この事件は自殺として処理されてしまった.

ある晩,タケダはまた新川のタクシーを拾った.バイクが追跡した. 車中で新川は,この前の件のことを聞いた. 新川はライターを警察に届けた話をしたかっただけだったが,タケダは警戒し, 途中で車を降りてしまった. 早速タケダは公衆電話から中島に電話し,新川の話を中島に伝えた. それをバイクは物陰から見届けた.

次の日.中島の手の者(信実一徳)が新川のタクシーの前に飛び出し, 大げさな身振りをして倒れた.新川は急停車して助け起こした. そこへ他の部下が駆けつけ,病院へ運ぼうと言って新川の車に乗り込んだ. そして車中で事故の件をネタにゆすり始めた.

突然帰ってきた新川を見て新川の妻は驚いた. 新川は気分が悪いと言って寝てしまった. 新川はタケダを乗せたことを忘れるように脅迫されたのだ.

都内のある場所にハングマンが集結した. パンは,中島が5日の日にアタッシュケースを持って会社を出たが, 手ぶらで会社に帰ってきたことを,報告した. バイクは10日前に新川が舶来の高級ライターを警察に届けていたことを報告. 新川は警察に,多分前の日に霞ヶ関から高円寺まで乗せた客のものではないか, と言ったこともバイクは報告.高円寺にはタケダの家があった. タケダはヨーロッパ旅行で買ったフランス製の高級ライターを自慢していた, とベニーが報告. マイトはタケダが百円ライターでタバコの火をつけている写真を見せ, そんなライターお持ちじゃないようですなあ,と言った. 10日前といえば成田新道の入札日の直前だ.新川はタケダと中島を乗せ, タケダと中島にとって弱みになるものを見たに違いない.

マイトがタケダを尾行.そして中島をブラックが尾行.バイクは新川を見張った. バイクは渋谷の歩道橋をオートバイで越え,新川のタクシーを追いかけた. そしてブラックは新川のタクシーを拾い, 新川に10日くらい前に霞ヶ関から高円寺まで自分を乗せなかったかなあと聞いた. さらにブラックは外国製の高級ライターを落とさなかったかなあと聞いた. 新川は悪い冗談はやめなさい,と言った. ブラックがさらにタケダの写真を見せると新川は動揺し, 車を止めてブラックを強引に降ろしてしまった. 別の場所でパンが新川のタクシーを拾い,中島の写真を見せた.新川は動揺し, 車を止めて逃げてしまった.パンは一生懸命追いかけ, とある公園で新川に追いついた.
パン「私はねえ,別に怪しいものじゃないんだから.」
新川「あんたがた,いったい何者なんですか?」
パン「あんたがた?」
新川「とぼけないでください. あんたもさっき乗っけたお客と同じ穴の狢なんでしょ? どうしてあんたこんなことするんです. 私だけがどうしてこうやっていじめられなければならないんですか.」
パン「いじめられる?」
新川「私は何も知りません.10日前に乗っけたお客が,ライターを忘れたお客が, どこの何者か,私は一切知らないんです.私には関係がないんですよ. 私は御覧の通りしがない個人タクシーの運転手です. 20年間こつこつと働いてやっと半年前に個人営業の認可が下りたばかりなんです. そんな私が,何一つ悪いことをしていない私がどうして.私はねえ, 何も本当に知らないんです.お願いです.ですから, 私をこのままそうっとしておいてくれませんか.ね.お願いします.お願いです. お願いします.」
パンは新川を黙って見送ることしかできなかった.そこへマイトが,甘いなあ, と言ってやってきた.ブラックもやってきて, 新川が脅迫されているんじゃないかと言った. それに応えてパンは新川が殺されるんじゃないかと言った.

バイクとジャガーが新川を見張ったが, 新川はとある食堂でやくざの喧嘩に見せかけられ,刺殺されてしまった. 早速,犯人を追いかけるバイクは無線で新川が殺されたことをみんなに報告. 犯人は車を止め,バイクとジャガーに向かってきたが,逆に撃退され, バイクに問い詰められてしまった.

新川は手術もむなしく死んでしまった. 霊安室にパンは新川の古い知り合いと称して現れた. 新川の娘と妻はひたすら泣くばかり.
新川の妻「いい人でした.タクシーの運転手して,長年働きづめに働いて, やっと念願の個人営業の許可を取った. これで体が少し楽になると思った矢先に.むごい.むごすぎます.」

アジトに帰ってきたパンは酒を浴びるように飲んでいた. パンは同じ年輩の新川に同情してしまったのだ.ブラックは酒を取り上げた. そこへゴッドから電話がかかってきて,ゴーサインが出た.

ハンギング

弾丸道路起工式の日.現場に大臣も足を運んできた.ハングマンも姿を見せた. そして一生懸命バイクとマイトが穴を掘っていた.
バイク「いやあ,参った,参った.」
マイト「どうやら間に合ったようだなあ.あらちょっと汚れちゃったよ.」
マイトはズボンをはたいた.
バイク「モグラの真似なんかしちゃってさあ.」
バイクはマイトを見て,
バイク「あれ? ずいぶんきれいじゃないですか.」
マイト「僕ちゃん,汚いの嫌い.」
マイトはごまかすためにバイクの頭についた草切れを取ってやった.
マイト「取ってあげよう,ほら.大丈夫か,おい.」

一方,大臣はコンクリートを穴に流し込む装置のリモコンスイッチを手にして, 感心していた.中島が得意気に話していた. それを見たタケダがそろそろ始めてはどうかと中島を促した. 中島はマイクの調子を聞いた.
ブラック「はい.万事Okでございます.」

一方,マイトと(?)バイクが掘った竪穴で,マイトがマイクを握っていた.
マイト「ラー,ラ,ラ,ラー.マイクの調子はどうだ?」
バイク「ええ,ばっちりですよ.」
マイト「(悪乗りして)ラーリーラー.」
バイク「もういいですよ.」
マイト「そうか.」

神官が祝詞を読み上げている最中, ベニーがタケダをマイトと(?)バイクが掘った竪穴の前までおびき寄せた. そしてブラックとジャガーが現れ,タケダを気絶させた. 中島もパンにおびき寄せられ,ジャガーに気絶させられてしまった.

マイトと(?)バイクが掘った竪穴の中でタケダと中島はたたき起こされた.
タケダ「いったい君達は何者なんだ,いったい?」
ブラック「死刑執行人だよ.」
タケダ「死刑執行人?」
ブラック「ああ.ついでに言っとくが, ここがお前さん達のはかあなってわけだ.」
中島「何言ってやんだ.君達はいったい何を企んでんだ.」
マイト「でっかい声出しちゃだめ. せっかくの大臣の演説が聞こえねえじゃないかよ.」
外では大臣が挨拶していた.
中島「運転手殺し?」
ブラック「そうだ.お前達は今度の公示の入札に絡んで, 新川という個人タクシーを舞台に裏取引をした.そうだな?」
タケダは中島のほうを見た.
ブラック「挙句の果てに脅しをかけるだけじゃ済まず, 小汚い芝居を組んで殺したんだ.」
中島「知らん.そんなことは知るもんか!」
マイト「とぼけちゃ駄目.自殺した経理係長も本当は殺したんじゃねえのか?」
中島「何を言うか.言いがかりもたいがいにしろ!」
マイト「ほー,いいのかね,そんなに突っ張っても. もうすぐ死刑執行の時間になるんだぜ.」
タケダ「君達,馬鹿な真似はやめろ.金が要るんだったら…」
ブラック「中島からもらった金をそっくり渡すか?」
タケダ「知らん.私は本当に何も知らないんだ.」
ブラック「おい,しょうがねえなあ. じゃああきらめて,高速道路の人柱にでもなってもらうか.」
マイト「君,それいいねえ.」
タケダと中島はびびり始めた.
タケダ「高速道路?」
中島「じゃあ,この穴は…」
マイト「そうよ.気がついたあ? もうすぐねえ,ここにコンクリートがドカーン, ドカーンと落ちてくる寸法なんだよ.来るぞ,来るぞー.」
ブラック「ごきげんよう.」
マイト「さようなら.」
ブラックとマイトは立ち去った.中島は脅しだと強がりを言ったが, ミキサー車の走る音を聞いてタケダと一緒にびびりまくった. そして大臣がリモコンスイッチを押すと同時に, マイトと(?)バイクが掘った竪穴の中にコンクリートが流し込まれた. やめてくれえと叫ぶタケダと中島.助けてくれえと叫ぶタケダと中島. だがコンクリートはマイトと(?)バイクが掘った竪穴の中に, ドンドン流し込まれた.頃はよしと, ハングマンは竪穴に仕込んだマイクが拾う音をスピーカーに流し始めた. たちまち,タケダと中島が罪をなすりあいながら自白する声が会場に響き渡った. 竪穴に起工式の列席者と警官が駆けつけた.
マイト「さあ,ようこちゃんとデートだ.」
ハングマンは立ち去っていった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp