第十一回

馬鹿息子を溺愛する女傑にブラックの実母が迫る
魔性の母と狼の息子

脚本:石松愛弘 監督:小西通雄

午後のワイドショーの「家出人探し帰ってらっしゃい」で, 家出した今井幸子の両親が帰ってくるように涙を浮かべて訴えていた. 高校二年生で学校を出てから一ヶ月も帰ってこなかったのだ. 帰ってくるよう呼びかける司会者(沼田曝).

その頃,幸子はブラックの実母春代(桜むつ子)の営む風俗店で, ストリップショーをしていた.そこへ男(松橋登)がやって来て, 幸子をお金で借り切って行った.幸子は男と部下達(大下哲矢ら)に輪姦され, 挙句の果てに殴り殺されてしまった.男は母親に電話を入れ, 幸子の処理を依頼した.そしてビルの屋上から幸子は落とされてしまった. 警察署の霊安室で春代は殺人だと警官に訴えたが, 警官は自殺だと言って取り合わなかった.

調査開始

ゴッドのオフィスにハングマンが集まり,事件の説明をゴッドから受けていた. 幸子を殺した男の名は鮫島りゅうへい,母親の名はたつ(荒木道子). たつは別名人食い鮫のたつ. 日本の影の総理と言われる男の二号で政財界の女王と呼ばれる女傑で年齢は54歳. パンは息子の殺しの始末まですることに驚いた.ゴッドは, 息子が可愛いんだよ,馬鹿息子ほど可愛いからな,と付け加え,さらに, 驚くべき事実を伝えた.たつは夫まで殺していたのだ. たつの夫は元海軍の子弟将校で, 終戦のドサクサに軍関係の供出ダイヤを持ち出していた. たつはそのダイヤに目をつけて結婚した. 夫が死んだのはりゅうへいが生まれて間もなくだったが, たつがダイヤ目当てに殺したと言う説が一部にあった. だが殺人の件は証人がいないのでうやむやになってしまった. ゴッドは注意するように伝えた.

一方,春代は幸子を連れ出した男が鮫島りゅうへいであることに気がついた. 鮫島たつの屋敷を見張るブラックとパンの目の前で鮫島たつの乗る車に迫る春代. だがたつは無視して行ってしまった.思わずブラックは飛び出そうとしたが, パンが制止した.春代は屋敷から出てきた男達に殺されそうになったが, すんでのところでバイクとジャガーとブラックに助けられた.

ブラックのワゴンの中で春代にパンは忠告した.
パン「やばいことはやめたほうがいいよ.」
春代「余計なお世話だよ.誰も助けてくれる奴なんていやしない.」
パン「そんなに早死にしたいのかねえ.」
春代「生きてたってしょうがないからねえ.悪党ばっかりだよ. 楽しい思いするのは.」
ブラック「そうかもしれん. しかし,生きようと必死に努力している人間だっているんだよ.」
ブラックはゆきのことを思い出していた.そして春代が金策を断ったことも.

春代は知り合いの女しのが営む屋台で襲われたことをこぼしていた. 遠くで見張るブラック.しのの娘京子を春代は誉めていた. 京子は昼間はタイピストとして働いて夜はしのの屋台を手伝っていたからだ.

しのに送られた春代は幸子の位牌に線香をたむけていた. 春代の家で週刊誌に載っていた鮫島たつの写真を見てしのは驚いた. たつは女が昔働いていた浜松の小女郎屋のおかみさんだったのだ. 春代が,幸子を殺したのはこの親子だよ,と言うと,しのは,また殺したのか, と驚いた.しのはたつが夫を崖からつき落とした現場を見ていたのだ. しのは恐ろしくて警察に証言できなかった. 春代はいいことを聞いたと喜んでいた.

一方,マイトはたつの事務所に潜り込んでいた. 大勢の部下達とともに「おかえりなさいませ」 とりゅうへいを直立不動で迎えるマイト. りゅうへいは「ご苦労様」と言って通り過ぎた. その後でマイトはりゅうへいの方を向いて
マイト「僕ちゃん,馬鹿,だ〜いっ嫌い.」

りゅうへいが事務所に入った直後,たつのところに電話が入った. 春代がしのに電話を入れさせたのだ.夫とたつのことで大事な話があると伝えた. 傍らで電話をしたことを知るブラック.

新宿のとあるホテルのレストランへたつが部下を連れてやってきた. レストランにはブラック,パン,マイトも来ていた. たつのところへ春代がやってきた. 春代は幸子がうかばれるようにしてもらいたいことと, 夫殺しをネタにたつを強請ったが,たつはしらを切った.

その帰りに春代はたつの部下に襲われた. 部下をバイクとジャガーが撃退している隙にパンとブラックがたつを助け出した.

その夜,ベニーは春代の営む紅花スタジオを見張っていた. たつの息がかかった弁護士楢崎が紅花スタジオへお金を持ってやってきた. 弁護士はお金を持ってきて,さらに娘の治療費も一生出すと言ってきた. だが二つ条件があると言い,邪魔をした連中は誰かと尋ねてきた. 春代は知らないと答えた.弁護士は, もう一つの条件として,何が起こっても黙っているように言った.

その頃,ブラックはしのの屋台にいた.ブラックが去ろうとした瞬間, しのの屋台は車に轢かれ,しのは死んでしまった. 京子は出前で外に出ていたため,無事だった.

しのの葬儀をさりげなく見張るブラック. りゅうへいとたつの部下もしのの葬儀を見ていた. りゅうへいは京子に目をつけ,散々邪魔をしたブラックの姿も見つけた. りゅうへい達はブラックを連れ去り,ブラックを拷問した. がブラックは由紀のことを思い出し,拷問に耐えていた.

マイトの知らせでブラックが拉致されたことを知るパン達.マイト,パン, ジャガー,バイクはたつの部下楢崎を拉致し,ブラックの行方を聞く.そして, ブラックのところへ案内させた.見事,ブラックを救い出すマイト達. そこへ他の部下もやってきた.パンは楢崎に銃を向けるが,ひるまない. そこでマイトが奥の手,皮ジャンにしこんだダイナマイトを見せた. たつの部下が銃を捨てている隙にマイト達はブラックを連れて帰った.

ハンギング

しのの家で春代は悔やんでいた.そこへりゅうへいが乗り込み, 刑事と称して京子を連れ出してしまった.春代は外へ向かって叫ぶ.
春代「そいつは偽者なんだよ.」
逃げる京子.追いかけるりゅうへいたち.さりげなく,ベニーが邪魔をした. りゅうへいはベニーを見て,あの女より上玉じゃないかと連れ去ってしまった. その様子をブラックが見届けた.

一方たつのところへ,マイトとジャガーに脅された楢崎から電話が入った. りゅうへいがさらわれ,たつ一人で来いと. パンが運転する迎えの車で「りゅうへいの所」へ向かうたつ.

その頃,りゅうへいはベニーを襲おうとしていた.抵抗するベニー. そこへバイクとジャガーが入って来て,りゅうへい達をぶん殴った.

たつをマイトが出迎えた.
マイト「ご苦労様でした.わたくし,ハングマン,ナンバーファイブ.」
息子はどこだというたつに, マイトはベニーを襲っているりゅうへいを撮影したビデオを見せた. なおもりゅうへいはどこだと問うたつにマイトは答えた.
マイト「別の部屋ですよ. こないだもあんたの息子さんはああやって罪もない少女を殺した. そして,あ・ん・たがもみ消した.」
たつ「止めなさい,りゅうへいを.」
マイト「今度はビデオにちゃんと記録して世間に公表しますよ.」
たつ「馬鹿な.何がほしいの,言いなさいよ,あんた達のほしいの.」
マイト「我々は何もほしくありません.お金はいっぱい持ってます. 世間の悪い奴らを抹殺する.ザ・ハングマン.」
ビデオではなおもりゅうへいがベニーを襲う様子を流していた.冷笑するマイト.
たつ「りゅうへい,やめなさい.りゅうへいを止めなさい. あなた方はなんでもおっしゃい,地位でもお金でも. 私の後ろに誰がついていると思っているの. 知ってるでしょ,そのくらいのこと.わたしは,わたしは, りゅうへいに恥をかかせるようなことはさせません. りゅうへいが殺した女の償いはちゃんとお金で済んでいます.もういいわ. ビデオを流すなんて,恥をかかせることは私はさせません. 後ろ指なんて指させません.りゅうへいはどこ,どこ,どこの 部屋にいるの.言いなさい.」
冷たくパンが言った.
パン「廊下の突き当たりの部屋ですよ.」
たつがりゅうへいを助け起こした.そこへブラックがやって来て言った.
ブラック「夫を殺し,少女を殺し,おでん屋のおかみさんまで殺した. その罪は消えん.償ってもらうぞ.」
そしてブラックは出て行った.びびりまくるりゅうへい. その後の様子をハングマン達は撮影し,後日, 開き直るたつの姿をテレビに流した. テレビを見て大笑いする春代をブラックは冷ややかに見て帰るのであった.

解説

この話では二組の母子の関係が描かれています. 一組は鮫島たつとりゅうへいの母子, もう一組はブラックとその実母都築春代です. たつが息子を溺愛するのに対し,ブラックは春代とは距離を置いて接しています. ブラックが春代とはあまり仲がよくなかったことは #1 で語られており, また春代が金にがめついことも #1 で語られています. この話は実はブラックにも焦点が当てられた話でもあるのです.

なお,鮫島りゅうへい役の松橋登さんは#39でも, 同じようなどら息子役を演じています.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp