第十回

パン,妻子の巻き込まれた事件に苦悩する.
横領結婚

脚本:山田隆之 監督:小澤啓一

青山の結婚式場で竹原友子(山口果林)が結婚式の申し込みをしていた. その後で婚約者の西本明のマンションへ向かったが, 西本は引越ししたと隣りの人から告げられた.家に帰り,呆然とする友子.

次の日の朝,パンは自分の妻子が経営するパン屋を訪れた. そこには友子が下宿していた. 新聞を見て友子は西本が結婚詐欺で捕まったことを知った. 勤め先の銀行へ向かう友子にパンは声をかけたが,友子は元気なく歩いていった. それを見ながら,パンは何かあったのかなあと思うのであった.

友子が勤める東都銀行では友子の横領がばれ, 支店長の吉村から謹慎を命じられていた.友子は出納主任を勤めていた. そこへやってきた藤田賢一(三景啓司)に,帳簿を照合したいので残業するよう, 吉村は命じた.

パンの妻子が経営するパン屋に電話が友子へかかってきた.友子は電話に出た. 電話は吉村からのもので,車を迎えにやること, 極秘で行動することを友子に伝えていた.その晩, 娘の誕生プレゼントを買おうとしていたパンは, 友子が暴漢達(沖田駿一ら)によって車に連れ去られるのをみかけた.

次の日,都銀行に警察がかけつけた.吉村は友子の横領の証拠として, 昨日尋問したときのビデオを刑事の砂川孫八(武田文平)に見せていた. 被害額は800万円ですか,と問う刑事に吉村は,いえ一億二千万円だ,と答えた. 砂川はビデオでは800万円と言っていることに疑念を抱いたが, 吉村は,あの段階では800万円しか判明していなかったが, 帳簿を調べた結果,続々と横領金額が明るみになったと答えた. さらに,友子が行方をくらませたことも付け加えた.

その頃パンはパンの妻子が経営するパン屋を訪れていた. パンはごめんくださいと言ったが誰も出てこなかった.それもそのはず, 友子の部屋を警察が家宅捜索していたのだ.そこへパンが顔を出した. パンは刑事に尋問されてしまった.本籍を聞かれてパンは困ったが, そこへ新聞記者が現れて砂川孫八を質問攻めにした.その隙にパンは立ち去った.
パン「冗談じゃねえ.死人に本籍あるわけねえじゃねえか.」

一方,鷹取が友子の横領事件を報じた新聞記事を読んでいた. そこへ吉村から電話が入った.実は鷹取に闇融資され, 吉村がそっくりそのまま横領した1億1200万円分も友子の犯行にされていたのだ. そして友子は鷹取のところに閉じ込められていたのだ. 友子は何も知らず,吉村が来るのを待っていた. 鷹取はそ知らぬ顔で友子に新聞記事を見せ,1億2000万円を横領したのか, と聞いていた.だが友子は横領したのは800万円だと答えた. 友子は東京に帰って吉村に尋ねると言ったが, 鷹取は乱暴して友子をだまらせた.

その頃,パンは自宅からパン屋を覗き込みながらブラック達に電話していた.
パン「事件以来,パン屋の客足はパッタリなんだよ.なあブラック,頼むよ. 娘はかわいそうなんだ.このままじゃあ,パン屋つぶれちまうよ.」
ブラック「あんたの気持ちはよくわかる.しかし横領事件なんてえのは, 俺達の仕事じゃねえんだ.そんな仕事はサツに任せればいい.」
パン「そんなことは俺だってわかってるよ.だけどなあ,ブラック.」
ブラック「おっさん.竹原友子もいずれはサツにパクられんだ.そしたら, パン屋だって元通り客も来るようになるし,万事解決するんだから.え, そんな心配することはねえんだよ.」
傍らで聞いていたマイトが受話器を奪って言った.
マイト「とっつぁん,ハングマンはなあ,過去に深入りしちゃ, まずいんだよ.おめえさんにはかあちゃんも娘さんもいねえんだ.わかったか.
マイトは電話を切ってしまった.
ベニー「冷たいのねえ.」
マイト「ベニー,ハングマンは死人なんだ. 過去に深入りしちゃまずいんだよ.わかったね.」

だがパンはパン屋を覗いていた.パンの妻が途方にくれていた. パンの妻は,こんなときお父さんがいきてくれたらねえ,とぼやいた. パンは窓から娘に誕生日プレゼントを渡してやった. パンがアパートに戻ると東都銀行の藤田が来ていた. 友子から安中(パン)のことを聞いていたのだ. 藤田は友子が一億二千万円も横領したことが信じられなかった. パンは友子が車で連れ去られたことを藤田に教えた. パンは何かからくりがありそうだと言い, 藤田に銀行を当たってくれと頼んだ.立ち去ろうとする藤田. 窓から外を見たパンが刑事の存在に気がついた.パンは,自分が囮になるから, 刑事がパンを追いかけるのを見届けてから外へ出るように,藤田に言った. パンが刑事の目をひきつけている隙に藤田は銀行に戻った. そしてパンが逃げているところへバイクがやってきて, パンを乗せて逃げていった.

ゴッドからの指令

マイトはパンが刑事に追われたことを聞いてパンをぶん殴った. ブラックが止め,マイトをぶん殴り,マイトがブラックをぶん殴った.
ブラック「俺達だっていつ消されるかわかんねえ.おっさん,掟は掟だよ.」
そこへ電話がかかってきた.ゴッドからなのか?
ベニー「力うどんありますか,だって.」
間違い電話だったのだ.
マイト「とっつぁん,葉巻は傷口にいいんだってさあ.」
マイトはパンに葉巻を勧め,パンは感謝の意味をこめてマイトを叩くのであった.

支店長室で藤田が吉村に横領された一億二千万円の伝票を見せていた. そして藤田は,最初の800万円と次からの分の筆跡が違うことを証拠に, 友子に一億1200万円の分の罪がなすりつけられたと吉村に言うのだった. 吉村は藤田に,後で別の場所で二人っきりで会おうと言うのであった.

警察はパンが怪しいと思っていた.砂川はパンの家を家捜ししていた. 砂川孫八はブラックの先輩だった.万年平の真面目一方の刑事だったが, ブラックが一番尊敬していた人物でもあった.こうなったら, 警察より先に真犯人を見つけるしか手はない.ブラックはベニーに, ゴッドへ許可を頼むと言った.一方,パンはアジトでジャガーに監視され, アジトに足止めされていた.

その夜,吉村は藤田を鷹取のところへ連れてきた.藤田は友子に会い, 吉村の車に一緒に乗せた.自首すると言う友子を吉村は言葉巧みにだまし, 安心して自分に任せろと言った.友子と藤田は大喜びするが, 睡眠薬入りのコーヒーとサンドイッチを食べさせられ, 「追い詰められて排気ガスで心中死」してしまった.

「竹原友子が横領した」一億二千万円は保険で東都銀行に補填された. その頃,ベニーはゴッドからの電話を受けていた.
ベニー「ゴッドからの指令が出たわ.」
パンは張り切って出動するのであった.

ハンギング

ベニーは立花の秘書と称して吉村を連れ出した.車に乗った途端, 座席の下に設けられた落とし穴によって, 吉村はマンホールに落とされてしまった. 下水道で気がついた吉村をマイトがぶん殴った.
吉村「これはどういうことだ.君は誰だ.」
マイト「デカだよ.」
吉村「警察?」
マイト「ああ.地獄から舞い戻った死人のデカだ.」
と言って,マイトは壁に鎖でつながれた手錠に吉村をかけた. マンホールには工員に扮したパンがいて伊奈井土建という看板を立てた.

一方,鷹取商事株式会社の社長室で鷹取のところに, 吉村の紹介と称して「香港ルートの麻薬」をベニーとジャガーが持ち込んでいた. ベニーは鷹取を眠らせ,雑魚をジャガーと一緒に片付けた. そして金庫に入っていた一億1200万円を取り出し, 鷹取達を吉岡のいるマンホールに連れ込んだ. マイトとバイクにぶん殴られる鷹取達.
鷹取「ちょっと待ってくれ.いったいこれはどういうことなんだ.」
マイト「この悪.てめえの胸に聞いてみろ.」
鷹取達も手錠につながれた.そしてビニール袋に一億1200万円が詰められて, ぶら下げられた.そこへ防毒ガスマスクをつけたパンがやってきた. 助けてくれえと叫ぶ吉岡達.
パン「エアーコンプレッサーが故障したんで, 酸欠とメタンガス中毒でマスクなしじゃあ死ぬかもしれないなあ.」
これを聞き,吉岡達はびびりまくった.吉岡達は, 金を払うから助けてくれと叫んだ.その金は横領して作った金だ, と鷹取達は叫んでしまった.
パン「は,はあ.これが銀行の金横領して作った金か.1億2000万ねえ.」
それを受けて吉岡達はうっかり犯罪の全貌を喋ってしまった. 吉岡が鷹取に闇融資していた事.竹原友子の告白ビデオを利用して, 闇融資の分も竹原友子が横領した事にしてしまった事.そして, 竹原友子と藤田を心中に見せかけて殺した事. その様子は隠しカメラによって撮影され, 新宿アルタのスクリーンに映し出された.新宿アルタのスクリーンを砂川も見た.

事件解決後,パンの妻子が経営するパン屋にも客が戻った.
パン「良かった,良かった. 父ちゃんはなあ,いつも天国から見守ってるからなあ.」

解説

パンの妻子が事件に巻き込まれ,パンが苦悩する話です. マイトがパンに吐く台詞「とっつぁん,ハングマンはなあ, 過去に深入りしちゃあ,まずいんだよ. おめえさんにはかあちゃんも娘さんもいねえんだ.わかったか.」というのは #5 でパンがマイトに吐いた台詞を踏まえたものです.

さてゲストで登場した今井健二さんは東映出身の悪役俳優の第一人者. 三下役の沖田駿一さんは刑事ドラマや時代劇の犯人役でよく出ていた人. 二人とも,後の話で再登場します.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp