2002年9月11日

「太陽にほえろ!」第256話「ロッキー刑事登場!」

脚本は小川英と四十物光男.監督は竹林進.主役はロッキーとゴリさん.

早朝の新宿駅の中央線普通電車から髭モジャの男が降り立った. その男は山から下山してきたばかりらしく,ピッケルやらリュックやらを持ち, 登山帽も被っていた.

さて七曲署では新任の刑事の話で持ちきり.レスキュー隊出身だったのだ. そこへ先程の男がやってきた.男は力任せにドアを反対方向に引っ張ったので, ドアを壊してしまった.ボンは男をなじったが,ある事に気がついた. 彼が新任の刑事,岩城創なのだ.警視庁レスキュー隊から配属された彼は, 休みが取れなくなると思い,十日ほど白馬の雪渓を見てきたという. 創はボスに言った.
創「防弾チョッキの許可証もください.」

丁度その時.矢追町松村銃砲店に二人組の男が忍び込む事件が発生し, ゴリさんは創を連れて出て行った.
ゴリさん「どうしてそんなに防弾チョッキにこだわるんだ. 必要な時は俺達だって着るが,大体あんなもの着てたら, 動きが鈍くなって何も出来んぞ…場所は銃砲店だ. 撃ち合いになるかもしれんからな,拳銃の点検しとけ.」
創はある事件を思い出していた.創は両手を挙げて犯人に近づいた.
犯人「来るなあ.」
創「馬鹿な真似はやめろ.拳銃をよこすんだ.」
犯人「来るなあ.」
そして創は胸を撃たれてしまったのだ. その悪夢のような事件を思い出している内に,現場に到着した. ゴリさんと創が現場に着いた途端,犯人二人組はバイクで逃走. ゴリさんとロッキーは車で追跡した.二人組が工事現場に逃げ込んだため, 二人は車を降りて追いかけた.長さんとボンも合流した. 創がオートバイに乗った男を一人倒した.だがもう一人が拳銃を撃ったのを見て, 創はドラム缶の陰に隠れてしまった.
ゴリさん「岩城,撃て.何してんだ.」
ゴリさんは発砲した.だが創は拳銃を撃つ事が出来無かった. 体がすくんでしまったのだ.
ゴリさん「撃て,岩城.撃つんだ.」
ボンが飛び出した.
ボン「岩城,援護しろ.」
だが創は撃たなかった,いや,撃てなかった.そのため, ボンは足を撃たれてしまった.犯人はバイクで逃げた.創は走って追いかけたが, 交差点で見失ってしまった.そこへゴリさんもやって来た.
ゴリさん「理由を言え,岩城.何故撃たなかった.何故だ. 貴様が撃ってりゃボンだって…」
創「防弾チョッキさえ着てれば撃ってました.」
ゴリさん「何?」
緊張が走った.
創「俺だけじゃありません.何故みんな防弾チョッキを着ないんですか. 撃たれたあの人だって,あの弾が頭に当たってたら死んでました.」
ゴリさんの鉄拳が創に飛んだ.
ゴリさん「そんなに命が惜しけりゃ,くだらん言い訳なんかやめて, さっさと刑事なんか辞めろ!」
創「辞めません!」
またゴリさんは創を殴った.
創「防弾チョッキも着ないで銃弾に向かって行くのが勇気なら, 俺はそんな勇気は欲しくありません.俺はあくまでもチョッキを要求します.」
ゴリさんは思った.
ゴリさんの声「何故.何故なんだ.」

銃砲店からはワルサーオリンピックモデルが盗まれていた. バイクは盗難車だった.内部事情に詳しい者の犯行と思われた. 例の拳銃はその日しか置かれていなかったからだ. 山さんは連中が拳銃を盗んだのは人を殺すのが目的だと睨んでいた. ゴリさんの調べで怪しい男達が浮かんだ.だがその中の一人, 横堀司郎は十日前に死んでいた.

その頃,創はボンを見舞いに行っていた. 創の両親は漁師だったが,かなづちだった.創は北海道出身. 真冬の酷寒の海に落ちたら死んでしまう.それで登山が好きだった. 創はボンにパネルをあげた.
創「カナディアンロッキーです.この山を縦走するのが俺の夢なんです.」
ボン「へえ,この山をな.」
創「はい.」
そこへ看護婦がやって来た.
看護婦「あら,岩城さん.」
看護婦は創と顔見知りだったのだ.
ボン「君,ここへ入った事あるの?」

創が去って暫くしてから,ゴリさんがやって来た.ボンはロッキーを庇った. だがゴリさんはこう言った.
ゴリさん「いいか,俺だってあいつが刑事に成り立てだって事はわかっている. 血気にはやってミスをする.それは若い奴にはありがちの事だ.だがな, あいつは違う.あいつだけは駄目だ.」
ボン「駄目ってどういう意味? 刑事にはなれない男って事ですか?」
ゴリさん「そうだ.その通りだ.」
ゴリさんは思い出していた.「岩城撃て!」とゴリさんが叫んだにも関わらず, 創が拳銃を撃てなかった事を.ボンはある事実を挙げて反論した.
ボン「一度,死にかけてるんです,あいつ.」
ゴリさん「死にかけてる?」
ボン「岩城は一年前に三の輪署の刑事だったんです.その時, 犯人に拳銃で胸を撃たれて…」
ゴリさん「胸を?」
ボン「助かったのが不思議なほどだったそうです.」
これを聞いたゴリさんは絶句した.
ボン「拳銃を恐れるなといっても,今は未だ無理です. 気持ちはどうでも,体が言う事をきかないんじゃないでしょうか.」

ゴリさんは三の輪署へ行き,創が味わった事件の事を聞いた. 創が刑事になって三日目の夜,創は刑事達と一緒にチンピラを追いかけていた. 創は犯人を説得するため,両手を挙げて近づいて行った. 先輩の制止を振り切って…
犯人「来るなあ.」
創「馬鹿な真似は辞めろ.拳銃をよこすんだ.」
犯人「来るなあ.」
創「さあ.」
犯人「来るなあ.」
そして創は胸を撃たれてしまった.入院一ヶ月で署に戻ってはきたが, 創は拳銃恐怖症になってしまい,すっかり自信を喪失してしまったのだ.

翌朝.創は屋上で食事を取っていた.なんと創は住む所がなかったのだ. 創は野宿には慣れているのでどうって事はないとボスに言った. 山さんが横堀司郎の資料を持ってきた.三年前, 大阪の少年院を脱走した三人組の一人だ.残りの二人は浅井安夫と田島恒夫. 横堀は十日前,富士の西湖の辺りで朝の8時に事故死していた. 二人が復讐を狙っての犯行に違いない.ゴリさんは創を連れ, 浅井安夫のアパートに乗り込んだ.浅井は不在だったが, 創は「室井智成新作発表会」のポスターを発見. ポスターには弾の痕が残っていた.

ゴリさんと創は室井のところへ行った.室井は, 横堀の名を出されても「知らない」と言った.だが, 「オートバイに乗った三人組」の話を出された時,動揺した. そして躍起になって三人組や横堀との関係を否定した. 室井は十日前に西湖の別荘に行っていた. 創もゴリさんも室井が怪しいと睨んでいた.ゴリさんは創を置いて署に戻った.

ゴリさんは創を事務系統に回す事をボスに進言した.
ボス「お前の考えはわかる.だがな,俺の考えはちょっと違うぞ.」
ボスは創のレスキュー隊での仕事振りをゴリさんに話した.
ボス「岩城はこの約1年の間に危険を冒して15人もの人命を救っている. しかも今度刑事に復帰したのも彼がそう志願したからだ.ゴリ, 人間の能力ってのはな,生理的な面や心理的な面だけで測りきれるもんじゃない. そう思わなかったら,俺はあの男を引き受けたりはしなかった.」
ゴリさん「しかし…」
そこへ山さんが外から乱入.例の得意技を使ったのか,こう言った.
山さん「こういう事があるんでねえ,ゴリさん.岩城は, 一年前自分を撃った犯人の裁判に欠かさず出かけてるそうだ. 犯人の刑が少しでも軽くなる事を願って.」
ゴリさん「刑が軽くなる事を?」
山さん「これはなかなかできる事ではない.」
ボス「奴がさっき電話を掛けてきた.今夜の当直をするから, 二時間だけ時間をくれってな.その裁判の判決が確か今日の二時にある.」
その時の時刻は午後二時五分.

山さんやボスの言う通り,創は東京地方裁判所にいた.ゴリさんは創に聞いた. 判決は懲役6年だった.
創「俺のミスだったんです.犯人は大した前科のない, 生まれてはじめて拳銃を持ったチンピラでした. そんな男の前に不用意に飛び出した自分が馬鹿だったんです. 法廷の証言台でも俺はそういいました. 彼が殺人未遂を犯したのは警察官たる自分のミスだって.でも判決は重かった. 6年.あれは本当に俺のミスなんです.」
ゴリさん「だから防弾チョッキを着たいんだな.」
創「そうです.」
ゴリさん「お前にとって防弾チョッキはただ身を守るための道具じゃない. 相手に殺人や殺人未遂を犯させないために必要な物だった.」
創「俺,山に登る時はいつも一人なんだ.どんな危ない山でミスをしても, 一人なら自分が死ぬだけで済むからです.でも,刑事の仕事では, それでも足りないって事を,俺はあの事件ではじめて知ったんです.」
ゴリさん「確かにその通りだ.刑事のミスは単に同僚を傷つけるだけでなく, 相手の命や罪にも深く関わってくる.それは一つの立派な意見だ.だがな,岩城. それと,お前が拳銃の前では何も出来無い事とは全く別だ. そんな理屈はただの言い訳に過ぎん.お前はな,実は拳銃が怖いんだよ. 怖いんだよ.」
創は拳を握り締めたが,ゴリさんを殴る事が出来無かった.図星だったからだ.
ゴリさん「殴りたきゃ殴れ.俺が本当に馬鹿な事を言っていると思うなら, 遠慮なく殴れ.岩城,何故素直に怖いって言えないんだ. 自分にまでそれを隠そうとする.俺だって拳銃は怖い. 何度撃ち合いを経験しても,拳銃の音を聞くたんびに心臓がきゅうっと言うんだ. 俺だけじゃないぞ,みんな,そうだ. 俺達ががっちりチームワークを組んで相手にぶつかって行くのは, 一つには怖いからだ.命を落とす危険がいつもそこにはあるからだ. わかるか? 防弾チョッキは多分必要なもんだ. だがな,息の合った仲間のチームワークは,どんなに厚い防弾チョッキよりも, 頼もしく,確実に我々一人一人を守ってくれるんだ. そう信じない限り,俺だって何も出来ん. 富士の西湖へ聞き込みに行け.ボスには話してある. 西湖で何が起こったか,じっくりと調べて来い.」

創は西湖へ車を走らせた.まず派出所で, 三台のオートバイのタイヤの痕が残っていた事を聞き込んだ. そして事故の目撃者を見つけ出す事が出来た. 一人が崖の下に倒れていて,残りの二人はその一人を助けようとしていた. だが結局二人は東京の方へと去って行った. 目撃者の男は青い外車ともすれ違っていた.創には事件のからくりが見えてきた. 横堀,浅井,田島の三人は室井の車を執拗にからかった. そして横堀のバイクと室井の車と接触事故を起こし,横堀は死んでしまった. 浅井と田島は横堀の死を警察に通報しなかった. そして室井の新作発表会の日に復讐するつもりなのだ.

創はその足で山梨県富士五湖警察署に向かった. そしてゴリさんが創を足止めするよう, 所轄署の刑事に頼み込んでいた事を知った. ゴリさんは創が撃ち合いに巻き込まれないようにと思ったのだ. ゴリさんは殿下と室井智成新作発表会の会場を張り込んでいた. それを知った創は車を走らせた.
創「係長,こちら岩城です.」
創は捜査の結果を無線で報告し,そのまま会場へと向かうのであった.

会場にはゴリさんと殿下の他,山さんと長さんもいた. そこへ浅井と田島が検問を突破し,会場に登場. 駆けつけた創は二人を車で追跡.さらに車から降りて追いかけようとしたが, ゴリさんは,俺達に任せろ,と言って創を止めた. 二人はビルの非常階段に立て篭もった. 幸いビルは出来たばかりで入居者はいない.だが出入口はあの階段のみ. ボスも駆けつけた.二人は拳銃を乱射.創は飛び出そうとした.
ボス「岩城,ちょっと来い.念願の防弾チョッキだ.」
創「ありがとうございます.」
だが創は続けてこう言った.
創「でも,これを着てるとロープには重すぎるんです.」
創は防弾チョッキを受け取らず,別のビルの屋上からロープを張り, 浅井と田島の立て篭もっているビルへロープを伝って渡った. 勿論,防弾チョッキなど着ていない.ちなみにそのビルの屋上では, ゴリさんがライフルを構えて待機していた.七曲署の刑事達は, 心配そうにロープで渡る創を見た.
ゴリさんの声「頑張れ,ロッキー.」
その時,浅井と田島が創に気がつき,創を狙って撃った. 創は両手でロープにぶら下がる羽目になった. だがゴリさんのライフルが浅井達の拳銃を跳ね飛ばし, ロッキーはビルに乗り込む事に成功.ジーパンのテーマが流れる中, 長さんと殿下の助けもあり,創は浅井と田島の逮捕に成功した.
ボス「どうだ,ロッキー.七曲チーム第一戦の感想は.」
創「は,ロッキーって…」
こうして創にロッキーという仇名がつき, ロッキーは本当の意味で七曲署の一員となった.
ボス「だがな,お前,正直に言え.あのロープは本当に, 防弾チョッキ着たら重すぎたのか?」
ロッキーは口篭ってしまい,「いや,その,ボス…」と言うのであった.

次回もロッキー主役編.元陸軍のサラリーマンが射殺される事件発生. 凶器は旧陸軍南部14年型拳銃.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp