2002年7月6日

「太陽にほえろ!」第85話「おやじに負けるな」

脚本は田波靖男.監督は竹林進.主役はジーパン.シンコの登場はなし.

久美ちゃんがお弁当を食べているところへジーパンが戻ってきた. よりによってジーパンは,トイレットペーパーを切れたのでもらってきてくれ, と言った.これで久美ちゃんとジーパンが一騒動. ゴリさんがジーパンを止めようとして一騒動.そこへ山さんが戻ってきた. アジアルートの覚醒剤が大量に出回っていると言う. 売人をとっ捕まえようと出ようとした所へ電話が. 坂下町のひかりスーパーに倉庫泥棒が入り, トイレットペーパーと砂糖が大量に盗まれたと言う. ボスはジーパンにスーパーへ行くように命じた. ちなみに当時はオイルショックの真っ最中. なぜかトイレットペーパーの買占め騒ぎが起きていた.

泥棒の手際は鮮やかで鍵を開けて中に入った後,また鍵を閉めて出て行った. しかも堂々と車を乗り付けて持ち出したのだ.深夜まで営業しているので, 物音がしても店員は気にしなかったのだ. 荒らされた倉庫を検分したジーパンは, マッチ箱の箱が破かれているのに気がついた.
店長「ああ,それは4月が開店3周年なので, サービスと宣伝を兼ねてお客さんに配ろうと思って作ったんですよ.」

ジーパンは狂言だと睨んだ.買い占めたものを隠すのが目的だと考えたのだ. だがボスは異議を唱えた.
ボス「しかし狂言だとしたら,わざと倉庫の中を荒らしたり, 鍵を壊したりした筈だな.長さん,こんな手口,覚えてないか. 鍵を開けて泥棒に入ってもその後は元通りにしとく. うちの中に土足で上がったり,ちらかしたりしない.だから, 入られた方もしばらくの間,何を盗まれたか気がつかない.」
長さん「山吉だ.山吉の親父の親父の手口ですな.」
ジーパン「山吉?」
山吉とは,昔,留守番小僧の山吉と言われた泥棒の名人の事だ. 空き巣で入っても,その後留守番がいたみたいにきちんとして出て行くから, そう異名をとったのだ.山吉をジーパンの父親が何度か捕まえた事があるという.
ジーパン「親父が…」

早速ジーパンは山吉こと山本吉三(有島一郎)の元を訪れた.
ジーパン「山本吉三さんのお宅ですか? すいませーん.」
山吉「はい.そうだよ.」
ジーパン「どうも.ちょっとお聞きしたい事があるんですが.」
山吉「他人に物を訊く時はなあ,まずてめえの名前を名乗ってから, 用件言うもんだよ.おい,それから,押し売りだったら, お門違いだよ.」
ジーパンは山吉にチンピラに間違われていた.ジーパンは咳払いをし, 警察手帳を出した.
ジーパン「俺はこういう者です.」
山吉「刑事さんかい.ふーん.世の中,変わりゃあ,変わるもんだねえ. なめえは?」
ジーパン「柴田.七曲署の柴田です.」
山吉「え? 柴田?」
ジーパン「ええ.親父,ご存知でしょう.」
山吉「するってえと,あの柴田の旦那の…」
ジーパン「息子の純です.」
懐かしい名前を聞いて山吉は大喜び.
山吉「ほう,あんたが.おお,いつの間にやら大きくなっちゃってえ. そうですかい.いや,まあ,旦那が亡くなってからすっかりご無沙汰しちゃって. お母さん,お元気ですか?」
ジーパン「ええ.もうお蔭様でねえ,長生きしてますよ.」
とまあ,世間話が続きそうになったので
ジーパン「いやあ,いやあ,そうじゃないですよ.ちょっとあのう, 訊きたい事ありまして.」
山吉「ああ,そうですか.」
ジーパン「お邪魔してよろしいですか?」
山吉はジーパンを家に上げた. 上がりこんだジーパンは前の夜にひかりスーパーが荒らされた話をした. そして山吉のアリバイを尋ねた.山吉はずっと家にいたと主張. だが証明する者は誰もいない.
山吉「なんですかい.その倉庫荒らしをあっしがやったとでも言いなさるんで?」
ジーパンはそうじゃないと適当に誤魔化した.
山吉「あっしは18年前,あんたの親父さんに捕まったのを最後に, きっぱり足を洗ったんです.」
ジーパン「いやあ,ただ手口がね,昔の親父さんの手口にそっくりなんですよ.」
山吉「ええ,そうですかい.警察ってところも随分と古い事を覚えてるもんだね. まあ,いくら足を洗ったっても前科もんだ.何かあると疑われるのは, 仕方がないがねえ.ま,お好きなようにお調べなさい.ね.」
こうして「家宅捜索」が始まった. この時の山吉とジーパンとのやり取りは非常に面白いのだが, 書いていると長くなるので省略. さて一調べ終わったジーパンは「お茶」を出され,飲んでみたがむせてしまった.
ジーパン「これ,酒じゃないですか,もう.」
山吉「柴田の旦那ともこうやってもう呑んだもんですよ. さあ,さあ,ご遠慮なく,どうぞ.」
ジーパン「結構ですよ.勤務中ですからね.」
山吉「親父さんは,いくら酒を呑んでも捜査の目に狂いは無かったねえ. あっしが足を洗う前だった.旦那と呑んでてちょろっと喋った事, 咎められちゃってねえ.踏んだばかりの山,白状させられた事あったっけ. へ,へ.懐かしいなあ.」

ジーパンは山吉が本ボシではなさそうだと報告した. ジーパンが遠く離れてしかも横を向きながら喋ったので, ボスはジーパンが酒を呑んだ事を見抜いた.
ボス「馬鹿者! 被疑者のうち行って酒呑まされて帰ってくる奴あるか!」
ジーパン「すいません.親父もそうしたって言われたもんで,つい.」
ボス「親父さんが? おい,長さん. ジーパンの親父さんが仕事中に酒を呑んだ話,聞いた事あるか?」
長さん「いいえ.親父さんは酒どころか,水一杯飲んだ事ありませんでした.」
驚くジーパン.
山さん「捜査に行った先で番茶を勧められても一切口をつけなかったなあ.」
ジーパン「本当ですか?」
山さん「ああ.湯飲みにお茶に見せかけて酒を出す奴がいるから気をつけろって, よく注意してくれたっけ.」
長さん「やましい気持ちの奴に限って,そういう事をするんだ.」
そこへ殿下とゴリさんが覚醒剤の売人を捕まえて戻ってきた. 捕まえたのは猿楽町のドヤ.ゴリさんはジーパンが酒を呑んだ事に気がついた.
ゴリさん「おお,こりゃいい酒だぞ,おい. こっちは泊まり込み続きだって言うのに,寝酒にも事欠いてるんだよ.」
仕方なくジーパンは宿直のゴリさんにスコッチを差し入れる事にした.

さて山吉はジーパンの父親の墓参りをした.
山吉「旦那,随分ご無沙汰しちまったね.でも, 昨日は息子さんにお目にかかりましたよ.ああ, もうすっかり大きくなっちゃって.ええ,でもねえ, 刑事としてはまだまだ物足りねえなあ.旦那もそう思うでしょう? でも大丈夫ですよ.ご命日の前の日に尋ねて来るなんて,旦那のお引き合わせだ. あっしもおよばすながらねえ,ええ,まあ俺は泥棒だから…」
その時
ジーパン「母さん,早くしろよ.」
慌てて山吉は物陰に隠れた.ジーパンがたきを連れて墓参りに来たのだ. たきは花が供えてある事に気がついた. そしてガスをつけっ放しで出かけた事を思い出した. ジーパンは大丈夫だと言ったが,たきは戻る事にした.

慌ててジーパンとたきは家に戻った.だが火は「消えて」いた. ジーパンはゴリさんに差し入れる為にスコッチを探したが見つからなかった. 玄関にはちゃんと鍵が掛かっていた.
ジーパン「吉三かあ.」

ジーパンは山吉の家に乗り込んだ.山吉はジーパンの詰問に, のらりくらりと答えた上に,出かける時には色々と注意するように忠告. さらにどうどうとスコッチを出した. ジーパンは自分の家から盗まれたと確信.だが
山吉「じゃあ,訊くがねえ,何か証拠はあんの?」
ジーパン「いや.しょ,証拠ったってえ…」
山吉「証拠もなしに他人を泥棒呼ばわりしちゃいけないよ.」
仕方なくジーパンは帰る事にしたが…
山吉「馬鹿にあっさりしてんだなあ.あんたの親父さんだったら, ここでしつこく食い下がるところだぜ.例えばだ. これがあんたのところのもんだったら, あんたかお母さんの指紋がついてる筈だな.」
ジーパンは奪ろうとしたが,山吉は素早く布でビンを乾拭きしてしまった.
山吉「ああ,もう遅いや.」

その日の新聞に養老院に大量の寄付があったという記事が載った. 例のスーパー泥棒の仕業らしい.だがスーパー泥棒の目処はついていない. ここでゴリさんは話題を変えた.
ゴリさん「それそうと,スコッチ,どうした?」
ジーパンは具合が悪いと誤魔化した.そこへ山さんが入ってきた. ゴリさんが捕まえた売人を尋問したところ, 中光貿易という会社が怪しそうだと言う事がわかったのだ. ボスはスーパーの件は後回しにし,中光貿易を当たるように命じた.

七曲署にジーパンあての電話が掛かってきた. だが久美ちゃんが出たので切れてしまった.
山吉「柴田の若旦那,どうしたんだ.」
電話を掛けたのは山吉だった.

ジーパンは中光商事から出てきた男を尾行した. 男は外国船の中に入っていった. ゴリさんと長さんは中光貿易の社長の田中(森塚敏)が会社から出てきたので, 尾行を開始.社長は戸川組の幹部中原(外山高士)と会っていた. どうやら中光貿易が覚醒剤を密輸入し,おろしもとが戸川組らしい.

捜査を終えたジーパンが帰ってくると客が来ていた.客と言うのは
山吉「あ,お邪魔してます.」
ジーパン「何か,用ですか?」
山吉「え,ええいやあ.あれからぷっつり見えなくなったんで, どうしてらっしゃるかと思ってねえ.あんたが追っかけてる, あのスーパー荒らしの,なかなか味なことやるじゃないか. ねえ,盗んだトイレットペーパーや砂糖を養老院へ寄付したってねえ.」
ジーパン「そんなこと,わざわざ言いに来たんですか?」
山吉「買占めや値段の吊り上げする奴にはこりゃいい薬だぜ. こんな泥棒ならお天道様も許してくださるんじゃねえかなあ.」
ジーパン「泥棒は泥棒さ.義賊ぶったところで言い訳にはならないんだよ.」
山吉「へ,へ.こりゃまた厳しい. でも世間はまた悪徳商人がやっつけられるかと思って, 期待してるんじゃねえかなあ.」
ジーパン「またやるつもりかい?」
山吉「あっしに訊かれたって何とも言えねえなあ. あっしが犯人じゃねえんだ.」
ジーパン「隠したって判ってんだよ.」
山吉「そんならあっしの跡つけまわしたらいいじゃねえか. またいつ盗みをするか判らないぜ.」
ジーパン「そんな暇ないの.」
山吉「え?」
ジーパン「もっと重大な仕事があってねえ, あんたと泥棒ごっこしてる暇ねえんだ.」
そこへたきがスコッチを持ってやって来た.山吉が持って来たという.
山吉「昔ねえ,親父さんとよく呑んだの思い出しましてねえ. 今,仕事中じゃないんでしょ.さ,どうぞ.」
ちなみに山吉はスコッチを注ぎながら「オンザ氷?」というギャグを披露.

翌日も中光貿易をジーパンが見張っていた.だがジーパンは気づいていなかった. 山吉がジーパンを見張っていた事を.ジーパンが田中の尾行を開始したのを見て, 山吉は中光貿易の前まで来た.
山吉「中光貿易か.」
ジーパンはゴリさんと交代.ボスに無線で連絡した.
ジーパン「ボス,留守の間に捜査に入ったら駄目なんですかねえ.」
ボス「令状がなければどうにもならんよ.警察は泥棒じゃないんだぞ.」

その頃,山吉は中光貿易の中に忍び込んでいた.そして隠し金庫の鍵を開け, 覚醒剤の包を発見.

その夜.寝ていたジーパンは物音がするのに気がつき,飛び起きた. ジーパンが出たのと入れ替わりに山吉が侵入.たきも起きてきた. ジーパンが戻ってきた時には山吉はいなかった.だが
ジーパン「3月1日3時中央公園にて取引あり」
と新聞の活字を貼り付けてあった封筒が置かれていた. 封筒の中に入っていたのは覚醒剤らしきものが入っている袋だった.

翌日.山吉は中光貿易に電話し,覚醒剤を買い戻すように要求していた.

分析した結果,ジーパンのところに入っていた袋の中身は覚醒剤と判明. ボスはジーパンが誰かに喋ったかどうか訊いたが, ジーパンには心当たりが無かった.封筒を置いた手口は山吉に似ているが. 兎に角,ボスは張りこんでみる事にした.

さて山吉は中央公園におでんの屋台を出していた.そこへ高田がやってきた. 山吉はしらばくれて待ち合わせかと田中と話をした.田中の部下達(加藤寿ら), そしてジーパンも中央公園に来ていた.ジーパンは山吉の屋台を発見. それを知りながら山吉は平然と田中に言った.
山吉「あの人じゃなかったんですかい?」
ジーパンはゴリさんと合流し, 山吉が仕組んだらしい事と田中が来ている事を伝えた. さてジーパンが戻って来たのを確認してから
山吉「あんた,田中さんかい.」
田中「え?」
山吉「さっき来たお客さんに頼まれたんですよ.田中って人が来たら, 持って来た物を預かるようにって.」
田中「どんな奴だ?」
山吉「あんまり見ないで下さいよ.ずーっと見張ってるから妙な事するなって, 脅かされてるんですから.」
田中「あのひょろ長い奴か?」
まんまと騙された田中は部下にジーパン襲撃を指示. ジーパンと田中の部下達の立ち回りの物音を聞きつけ,ゴリさん達もやってきた. 田中達が立ち回りを演じている隙に山吉は札束入りの革鞄を持ち逃げした.
ジーパン「山吉の奴.」
その頃,山吉は
山吉「へ,へ,へ.悪い奴は坊っちゃんに捕まっちゃったし, 金は手にへえったし,一石二鳥とはこの事だ.」
だがそうは問屋が卸さない.
中原「おい,爺さん.顔貸してくんねえか.」
山吉は連れ去られてしまった.ジーパンが駆けつけた時は,車が発進した後.

戸川組に連れ込まれた山吉は覚醒剤の在処や,刑事が来た事などを詰問された. 山吉はのらりくらりとかわそうとした.
中原「なんで中光貿易が覚醒剤を取引してる事を知った.」
山吉「へ,中古? いってえ何の事だかさっぱり.」
中原「とぼけるのもいいかげんにしろ!」
山吉「いじめるのもいいかげんにしなよ.」
山吉は組員にしぼられて酷い目に.その頃, ジーパンは山吉をさらった車を発見.ジーパンのテーマに乗って, 山吉を助けに乗り込んだ.
ジーパン「山吉さん,大丈夫ですか?」
山吉「ああ.畜生.」
ジーパンは一人で連中をボコボコにした.殿下も乗り込み, さらに山吉の機転により
山吉「やった.でかした坊っちゃん.」
ジーパンは中原を問い詰めた.
ジーパン「おい.田中と取引した覚醒剤はどこにある.」
山吉「いや,覚醒剤の在処はこいつに訊いたって判りません.」
ジーパン「え?」
山吉「物はちゃんと田中の事務所にあります.」
中原「何?」
ジーパン「事務所?」
山吉「金庫から出して,田中のデスクの引き出しに隠しといたんですよ. 奴等の手元から出てこねえと証拠にならないでしょう.」
ジーパンは肯いた.

七曲署一係室で長さんは山吉に礼を言ったが,山吉はジーパンのお蔭だと言った. その様子を見て山さんは,山吉がジーパンに手柄を立てさせようとしたと睨んだ. ゴリさんと殿下は持って行った札束をどうするつもりだったと訊いた.
ボス「一石二鳥を狙ったな,爺さん.」
山吉は後で交番に届けるつもりだったと誤魔化した. ジーパンはタバコを吸おうとしたがマッチがなかった. そこで山吉がマッチ箱をポケットから出した.山吉が持っていたマッチには 「ひかりスーパー 開店三周年記念」と書かれていた.
店長の声「ああ,それは4月が開店3周年なので, サービスと宣伝を兼ねてお客さんに配ろうと思って作ったんですよ.」
ジーパン「山吉さん,このマッチはどこで手に入れたんですか?」
山吉「え?」
ジーパン「これはひかりスーパーのマッチでしょう.」
山吉「持ってちゃいけないんですかな.これ, 買い物に行った時にもらったんですよ.」
ジーパン「そうかな?」
山吉「え?」
ジーパン「これは来月の開店記念に配る筈のマッチだ. まだ倉庫にしまってあって客には出していないんだよ. このマッチを持っているという事はな,あの倉庫に入ったって言う証拠だ.」
山吉はすんなりと自首.両手を出した. だがジーパンは山吉に手錠をかけるのをためらった.
山吉「どうしたんです,若旦那.」
ジーパンは山吉に手錠を掛けた.
山吉「さすがは柴田の若旦那だ.親父さんに似ていいデカになったねえ.」
連行される山吉を見てゴリさんは変な奴だと言った.
ボス「あれでいいんだよ.山吉はジーパン試したんだ. ジーパンがあのマッチに気づかなかったら,あの爺さん,がっかりしたろう. そういう奴なんだ.」

次回はボスとジーパンの主役編.ボスが打った「勇気ある賭け」の結果はいかに?

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp