2002年6月8日

「太陽にほえろ!」第81話「おやじバンザイ!」

脚本は小川英と今村明男.監督は澤田幸弘.主役は長さん.シンコの登場はなし.

長さんとジーパンが犯人(松平健)を追いかけていた. 犯人は工事中のビルの中に逃げ込み,階段を上へ上へと上がっていった. 追い詰められた犯人は拳銃をぶっ放した. 犯人の小野は喧嘩のはずみで人を一人殺していた.上からガソリンを撒き, さらに小野は自分にもガソリンをかけた.そして一歩でも動いたら, 火をつけて自殺すると言って長さんとジーパンを威嚇. 結局小野は逃走してしまった.

長さんとジーパンはボスに逃げられた事を謝っていた. 長さんはがっかりしていた.小野は長さんが一度捕まえた事のある男. 小野は頭にすぐ血が上る性格だった.前の事件は傷害事件で済んでいた. が,今度の事件は間の悪い事に,喧嘩相手が拳銃を持っていたため,小野は逆上. 拳銃を奪って逃走していた.山さんは長さんをねぎらった. 更正した筈の男がまた同じ犯罪を重ねるのはショックだろうと. ボスは小野が凶悪犯である事を指摘し,小野を捕まえるように命じた. 早速長さんが外へ出ようとすると緑川署から電話が掛かってきた. 何と電話を掛けて来たのは長さんの奥さんの康江.息子の俊一が喧嘩し, 相手に怪我をさせてしまったというのだ. 怪我の具合はめじりを切って血が出た程度で大した事はなかった. 長さんは康江に担当の者に変わるよう命じた.そして担当の平井と話をした. 平井は怪我は大した事はないと言い, さらに「頑固なお子さんですな.」と言った.長さんは平身低頭し, 仕事で手が離せない,等,色々話してから電話を切った.
ボス「長さん,息子さん,いくつになった?」
長さん「いやあ,中三です.」
山さん「ほう,速いもんだねえ.もう中三か.」
ジーパン「もう一人前じゃないですか.断絶の世代ですね.」
長さん「おいおい.断絶なんてのはね,子供を変に甘やかすから起こすんだ. 俺んとこはそうじゃないよ.何せ,親父がデカなんだから.」
長さんは笑いながら出て行った.ジーパンも山さんも後をついていった.
ボス「中学三年か.」

捜査は続いたがその日は収穫がなかった.殿下は小野のアパートに行ってみたが, 車もなく,小野の妻も不在だった.小野と妻は, 妻の実家のある下田の方へ行ったかもしれない.その夜, ボスは殿下に小野のアパートの張り込みを続けるように命じた.長さんには, 翌朝早くジーパンと一緒に下田の方へ行く事を命じ, 今日はもう帰っていいと言った.ゴリさんを交代に行かせるからだ.だが
長さん「いえ,勿論下田には行きますが,今夜は私もずっとここに.」
ボスは命じた.
ボス「いいから,家に帰るんだ,長さん.徹夜明けの出張じゃ仕事にならんぞ. いいな.これは命令だ.」
ボスは昼間の事を気にかけていたのだ.

仕方なく長さんは家に帰った.勉強中の俊一はテレビがうるさい, と姉の良子に言った.おかえりなさいと長さんにいう康江と良子. だが俊一だけは言わなかった.康江は今日は大変だった, 少しは子供の事も考えてくださいとこぼした. 長さんは下田出張の件を妻に言い,さらに俊一を呼んだ.だが俊一は, 今勉強中だよ,と言って部屋を出ようとしなかった.長さんはさらに呼んだが, 話なら後にしてくれ,と出ようとはしなかった.怒る長さんを康江がたしなめた.
康江「あなた.あんまりきつい事言わないで下さいよ.反抗期なんだから.」
長さん「馬鹿.そんなこと言ってるからつけあがるんだ.」
長さんは強引に俊一の部屋に入った.俊一は机の方を向いたままだった.
長さん「何で喧嘩をした…返事をしなさい.」
俊一「したくないよ.」
長さん「なぜ言えないんだ.お父さんにも話せないほどやましい事なのか.」
俊一「言いたくないから言いたくないんだよ.」
長さん「やかましい.こっちを向きなさい.」
俊一はやっと振り返ってこう言い放った.
俊一「何だよ,喧嘩したぐらいで.お父さん,いつも言ってたじゃないか. 男なら喧嘩ぐらいしろ,それ以上負けるなって.だからやったんだよ. そして勝ったんだよ.誉めてくれよ.」
長さん「うん.それは正当な理由があった時の話だ.」
俊一「喧嘩に正当な理由なんてあるもんか!」
俊一はまた机に向かってしまった.
俊一「手抜かりがあったんだ.それが何でいけないんだよ!」
長さん「いかん.そんな下らん事で相手に怪我をさせて,警察の世話になって, それでいいとお前は本当に思っているのか.」
俊一「へえだ.本音が出たね,父さん.」
長さん「ん? 本音とは何だ.」
俊一は振り返って言った.
俊一「隠さなくたっていいよ.要するにお父さんが一番怒ってるのは, 刑事の息子の俺が警察の世話になったって事だろう. 下手したら恥辱者で恩金がぶっ飛んじまうからだろう!」
長さんは激怒し,俊一の頬を叩いた.
俊一「何すんだよ.本当の事言われたからって殴ることないだろう!」
長さん「貴様,まだ言うか! それが親に向かって言う言葉か!」
長さんは俊一の胸倉をつかんだ.思わず康江が仲裁に入った. だが俊一は謝ろうとはしなかった.がっかりした長さんは, 俊一の部屋に飾ってある,日本各地の城の写真を見た.そして炬燵に座り, 寂しくタバコを吸うのであった.

翌日.特急あまぎの中で長さんは俊一が小さかった頃の事を思い出していた. 夕日の中,長さんは俊一をおんぶした事を思い出したが…
俊一の声「隠さなくたっていいよ.要するにお父さんが一番怒ってるのは, 刑事の息子の俺が警察の世話になったって事だろう. 下手したら恥辱者で恩金がぶっ飛んじまうからだろう!」
そんな長さんをジーパンが声をかけた.長さんは俊一を殴った事を話した.
長さん「落ち着いて考えてみるとなあ,倅の言う事にも一理ある. あいつ,いつの間にか大人になったって思ってなあ.なんだかおかしくてなあ. 君の言う通り,やっぱり断絶って奴かなあ.」
ジーパン「え?」
二人は笑った.
長さん「長年の刑事生活で俺の頭が固くなり過ぎているのかもしれんなあ.」
ジーパン「ま,いいじゃないですか.」

下田に着いた二人はタクシーに乗り,小野の妻の実家のある村へ向かった. 小さな港の岸壁には釣り人が何人かいた.実は釣り人は下田の警察署の刑事. 小野の妻の実家は民宿を営んでいた. この辺りは民宿が多くて人の出入りが激しく,身を隠すには絶好の場所だと言う. その時,長さんとジーパンは小野の車を見かけ,追跡を開始した. 車は東海汽船の船着場に駐まった.小野を出迎えるのか.だが, 小野の妻が出迎えたのは客だった.

その晩.長さんは小野が現れなかった事を電話で報告. ボスは長さんをねぎらい,小野一人で高飛びした可能性がある事を示唆した. だが長さんは頑固に,小野は見知らぬ土地になど現れない,と力説. ボスはしばらくしたら誰かを寄越すので交代してくれと言ったが
長さん「あたしなら大丈夫です,ボス.最後までやらせてください.」
ボス「長さん,それじゃ身が持たんよ.そう俺を困らすな.」
長さん「しかしですね,ボス.」
ボス「兎に角様子を見よう.小野のはじきにはくれぐれも気をつけてくれよ.」
ボスはそう言って電話を切った.
ボス「相変わらず長さん,強情だからねえ. 小野が現れるまではテコでも動かん気らしい.」
殿下「息子さんの事も心配だろうになあ.」
ゴリさん「なあに,そのうち俺が行ってねえ,強引に列車に乗せてしまうよ.」
山さん「さあて,長さんが列車に乗るか.そいつは見物だね.」
調子に乗って
久美ちゃん「みたいなあ,あたしも.ゴリさんと長さんの喧嘩.」
冷たい視線を感じて
久美ちゃん「すいません.お茶でも入れましょうね.」

翌日も小野は現れなかった.その翌日も.三日も経ったのに小野は現れなかった. 長さんは,ゴリさんが来たらお前が帰れ,とジーパンに言った.
ジーパン「長さん,ボスは長さんに帰ってくるように言ってるんですよ.」
長さん「いいからお前が帰れ.」
ジーパン「でも…」
長さん「小野の気性を良く知ってるのはこの俺だけだ.」
ジーパン「しかし,息子さんの事もあるでしょう.」
沈黙が流れた.長さんは立ち上がっていった.
長さん「小野はなあ,二年前,あの夏子と結婚する時,署まで来て俺に報告した. 嬉しそうにニコニコ笑ってなあ.根はいい奴なんだ.甘えん坊で寂しがり屋でな. ただやたらと粋がる癖がある.本当はひどく臆病なんだ. あいつがこんな事をしでかしたのも結局はこのためなんだ. そのあいつが見知らぬ刑事や武装警官に取り囲まれて, 無闇と拳銃を振り回したら,どうなる?」
ジーパンは何も言えなくなってしまった.
長さん「俺はここにいなきゃならんのだ.どうしてもな.」

結局ジーパンは七曲署に帰ってきた.今日は帰っていいというボスに, ジーパンは土産を渡して出て行った.その行先は…

その頃,俊一の友達は高校生に殴られていた.それを知った俊一は憤った. 彼らの目的は俊一なのだ.俊一の喧嘩相手が兄に告げ口し,お礼参りに来たのだ. 一方,ジーパンは長さんの部屋に来ていた.だが俊一は帰っていなかった. 俊一はずっと友達のところにいたのだ.ジーパンは俊一の姉の良子に頼み, 俊一の所へ連れて行ってもらうことにした.「長さんから言付けがある」からだ.

長さんとゴリさんが見張りを続けている頃,ジーパンは俊一の所へやってきた. そして俊一と二人で話をした.
ジーパン「いやあ,お父さんがさあ,君のことを心配してたからねえ, ちょっと会ってみようかと思って来たんだ.」
俊一「嘘ついて呼び出したんですか!」
俊一は怒って去ってしまった.
ジーパン「年代の相違だな,これは.」

その頃,長さんとゴリさんは小野の妻夏子の車を追跡していた. 夏子はガソリンスタンドで給油.給油の合間に夏子は荷物を持ち, ガソリンスタンドの中に入った.そして出てきた時は荷物が減っていた. そして車は発進.しばらく追跡をしてから,長さんはその事を思い出し, ガソリンスタンドへ引き返すようにゴリさんに言った. そして長さんとゴリさんはガソリンスタンドにいた小野を追跡. 小野は山の中に入り,幼児を人質にとって逃げようとした. ゴリさんは幼児の親の世話を頼んだ.

ジーパンのポケットベルが鳴った.七曲署に電話したジーパンは, 小野が姿を現した事を知った.小田急に乗ろうとするジーパンのところに, 良子がやってきた.俊一が河原へ決闘しに行ったと言うのだ. 俊一は喧嘩相手の三人組に殴られていた.ジーパンは俊一を庇い, 「喧嘩」の理由を尋ねた.
喧嘩相手「こいつにやられた仕返しと,そいつが生意気なんだよ. 親父がデカだからっていい気になりやがって.」
仲間「いい気味.デカの息子だからしょうがねえけどよ.」
仲間「デカなんて権力をかさに着て威張ってるだけじゃねえかよ.」
俊一を殴ろうとした俊一の敵を殴り,ジーパンは言った.
ジーパン「俺もデカだ.」
俊一は言った.
俊一「堀田.俺と一対一で決闘しろ!」
ジーパン「よせ.」
俊一「これは俺の喧嘩だ.親父とあんたも関係ないんだ.」
ジーパンは俊一の気持ちを理解し,言った.
ジーパン「気が済むまでやれ.」
俊一は堀田とサシで決闘を開始した.現場へ向かうボスと山さん. 堀田と一対一で戦う俊一.それを見守るジーパン. 小野は南伊豆ゴールドタウンに立て篭もっていた.一方
俊一「俺は親父とは関係がないんだよ.」
ジーパン「もういいだろう.」
ジーパンは喧嘩をやめさせた.
ジーパン「親父が刑事だと言うのがそんなに嫌なのか.」
俊一「そうだよ.だってそうじゃないか.あいつらだけじゃない. みんなが色眼鏡で見るんだよ.警官の息子だから大きな顔してる. 親父をかさに着てる.何をしてもそんな目で見るんだよ!」
駆けつけた良子が言った.
良子「そんなことないわよ.それはあんたのひがみよ.」
だがジーパンの意見は違っていた.
ジーパン「君の言う通りだ.友達だけじゃない.世間の人はねえ, 何となく警察官を嫌うんだよ.何となくだよ.俺の親父も刑事だったからねえ, 良く判るんだよ.」
その時,康江がやってきた.長さんがテレビに出ていると言うのだ.

テレビには小野が金山の廃坑に立て篭もっている様子が映っていた. それを食い入るように見る,康江,良子,ジーパン. 俊一は遠くからテレビを見ていた.長さんは夏子にハンドマイクを渡した.
夏子「あなた,お願い.拳銃を捨てて出てきてえ. 子供をお母さんに返してあげて.あなた〜お願い.あなた〜」
長さん「小野〜.これが最後だ.出て来なさい.銃を捨てて出て来なさい. 俺が約束する.君の生命は保証する.銃を捨てて出て来なさ〜い.」
だが銃がぶっぱなされた.アナウンサーは, 警察が夜には突入する事にしたと報じた.長さんは突入を懇願していた. だがボスは許さなかった.長さんは独りで行く事にした.コートを脱ぎ, ネクタイを外し,長さんは小野の所へ向かった.ボスは慌てたが後の祭り. アナウンサーはその事を報じた.
ジーパン「長さん.」
俊一も身を乗り出した.長さんは両手を広げ,こう言って近づいた.
長さん「小野,俺が人質になるから,子供を返してくれ.聞こえるか,小野. このままでは子供が参ってしまう.小野,子供を返してくれ.頼むよ.小野.」
近づく長さん.アナウンサーは危険だと報じた.小野が一発撃った. 長さんの左腕に弾が当たった.だが長さんは向かっていく.ジーパンが, そして俊一が心配そうにテレビを見た.
長さん「小野,俺を忘れたのか.俺が殺せるか,お前に.小野.」
心配するボス,山さん,殿下.長さんは黙って近づいた.
小野「来るな.それ以上,来るな.」
長さん「小野,俺は何もしやせんよ.それはお前が一番よく知っているだろう. さあ,戸を開けて.子供を渡しなさい.さあ.」
遂に長さんは戸を開け,小野の目の前まで来た.その気迫に小野は負けた. 幼児を助け出した後,長さんは小野の頬を叩いた.あの時, 俊一を叩いた時のように.こうして事件は解決した. ボスは長さんの傷口にハンカチを巻いてやった.
良子「よかった.お父さんが子供を助けたのよ.お父さんが.」
テレビは母親と子供を映していた.心配する良子.俊一は外へ出て太陽を見た.
ジーパン「俊一君,どうした.」
俊一「親父ってそうなんだよな.泥だらけで命がけで人の為に働いて. 終わってしまえば誰も見向きもしない.テレビの画面にも出ない. それでも必死にむきになって犯人を追っかける.俺,そういう親父が好きだ. 大好きだよ.」
ジーパン「判ってるよ.」

しばらく経ってジーパンは俊一と遊んでいた. ボスに呼ばれてジーパンが返事した隙を突き,俊一はジーパンを倒してしまった.
ボス「こら,ジーパン.お前,中学生にもかなわんのか. 七曲署の沽券にかかわるぞ.」
ジーパンは油断しただけだと言った.それを見てボスは言った.
ボス「何とか断絶の方も解消しそうだな.」
長さん「ええ,まあ.先の事は判りませんがねえ.しかし, それよりも目下の心配は,あいつも刑事になるなんかと言い出すんじゃないか, と思って.」
ボス「ほう,長さん.息子を刑事にしたくないのか?」
長さん「え.いや,いや,いや.そんな事ないですよ.絶対ないですよ. ただそのう,ボスみたいな上司がいてくれないと, あいつも私と同じような性格なもんですから…そのう.」
ボス「うまく逃げたな.」
良子と康江も,ジーパンと俊一が遊ぶのを見るのであった.

次回,ジーパンが拳銃の神様根来について拳銃を特訓. 丁度その頃,謎の連続拳銃射殺事件が発生.その犯人は…

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp