2002年5月15日

「がんばれ! レッドビッキーズ」第48話「ビッキーズよ永遠に」

脚本は上原正三.監督は田中秀夫.

遂にビューティースターズと雌雄を決する時が来た. ノミさんがユリカボールを投げてやる特訓のかいもあり, カリカリも太郎もユリカボールが打てるようになった. 令子もコーチもユリカボールに的を絞る事を決意していた. そこへゆりかと美鈴がやってきた.美鈴は宣言した.ゆりかは変身中だと. そして「ニューゆりか」をお目にかけると.

さて練習が終わり,明日の前祝としてパーティーが開かれた. 試合に勝てば全国大会出場だ.ブラザーは夢みたいだと頬をつねった. そこへ幸一郎から電話がかかってきた.明日は優勝戦だと言う令子に, 幸一郎は日本に着くのが夜になりそうだと言った.
令子「駄目,駄目.試合に間に合わせてよ.お父さんにも見せたいのよ, レッドビッキーズの優勝を.そりゃあ,もう絶対自信あるのよ.」
幸一郎「ほう,凄い自信だねえ.その心意気はいいけれども…」
令子「いいえ.何が何でも優勝してみせます.確信してるの,あたし.」
幸一郎「令子,レッドビッキーズはレッドビッキーズらしい試合をな.」
令子「OK! OK! じゃ,明日,きっと間に合わせてよ.うん.じゃあね. ばいばい.」
オーナーが音頭を取り,「♪ビッキー,ビッキー,赤蛙. か〜ってみせるぞ,赤蛙」と掛け声を掛けた.

試合当日の朝.八幡神社で令子とオーナーが願を掛けていた. オーナーは眠れなかったと言う.そこへコーチもやってきた. コーチも不安で願を掛けていた.

さて試合の会場.恵子が北原と一緒にやってきた.幸一郎は一便早めたが, 間に合うかどうかは微妙だと言う.ペロペロの母もやってきた. ペロペロは令子の胴上げには自信があると母に言っていたのだ. 親馬鹿な魚八はこれまた親馬鹿なオーナーとまたまた大喧嘩し,よし子が仲裁. さらに西郷父子もやってきた.そしてプレイボール.ブラザーは, 飛んでくるなよ,と呟いていた.太郎は「西郷隆盛はおいらが兄貴よ.」と, 落ち着いていた.先発投手はノミさん.ノミさんは緊張したのか, ストレートのフォアボールを出してしまった.次の打者の時, シゲはお手玉して一塁への送球が遅れ,アウトを取ることはできなかった. 次の打球はショートへ飛んだ.二塁ではアウトにしたが, ダブルプレーを焦ったスタイルが一塁へ悪送球.一点入ってしまった. アウトを取ったもののナッツの送球もぎこちなかった.
令子の声「ぎこちないわ.みんな,動きが.」
ゆりかは三塁まで走った.だが三塁への送球が悪送球. ゆりかもそのまま本塁へ帰り,結局,初回に3点入ってしまった.

CMが開け,裏の攻撃.コーチは「ニューユリカボール」に狙いを絞れ, と檄を飛ばした.先頭打者のナッツは「ニューユリカボール」に狙いを絞ったが, ゆりかは一球もユリカボールを投げなかった.そのため, ナッツは全球見送ってしまい,三球三振.ゆりかの直球はとても速かった. センターがフォアボールで出塁した.だが令子の采配はどこかおかしかった. 初球はバントのサイン.二球目はセンターに盗塁のサイン. 三球目はスリーバントのサイン.シゲはスリーバントをしようとしたが, 美鈴はそれを見透かしていた.そのため,大きく外され,シゲは三振. センターもアウトになった.
コーチ「焦ってるぜ.いつもの監督と違うよ.」
令子「そうかしら.」
令子は迷っていた.
令子の声「焦ってるのかしら.」

ゆりかは速球しか投げなかった.コーチの進言で途中から速球に的を絞ったが, 変化球打ちが身に着いたレッドビッキーズナインはゆりかを打ち崩す事ができず, 凡打や三振の山を築くばかり.ここでやっと令子は気がついた.
令子「ニューユリカとは速球派への変身を意味していたのね.」
コーチ「うん.まんまと乗せられたなあ.狙い球変更しよう.速球狙いだ.」
だが変化球打ちが身に着いたレッドビッキーズナインは, 速球に切り切り舞いさせられるばかりだった.5回表.ノミさんもへばってきた. 令子はジュリに交代させた.5回表終了時点で4対0.そして7回裏. ブラザーもスタイルも凡退した.二死になった.遂に令子は負けを意識した. そのとき,令子は幸一郎が来ている事に気がついた.
令子の声「父さん.」
幸一郎の声「試合の経過はお母さんから聞いたよ.」
令子の声「ごめんなさい.優勝するなんて大きなこと言っちゃって.」
幸一郎の声「令子,今迄やってきたね…レッドビッキーズは, レッドビッキーズらしい試合を.」
令子の声「レッドビッキーズらしい試合.」
幸一郎の声「レッドビッキーズ精神とは…」
令子の声「レッドビッキーズ精神とは柳に跳びつく蛙.つまり, 最後まで諦めずに食らいついて行く.それがレッドビッキーズ精神なんだ. 私は勝つための勝負をしていた.そのために無心の心を忘れていた.」
令子はベンチを見た.トータスとペロペロが遊んでいた.令子はナッツに代え, トータスを代打に送った.なんとトータスは極端なクラウチングスタイル. ゆりかはボールを二球続けた.
キャッチャー「ちゃんと立って打ちなさいよ.」
だがトータスには蛙の面に小便.ゆりかはストレートの四球を与えてしまった. 続けて令子はセンターの代打にペロペロを送った.
令子「ペロペロ,エリートスターズとの試合を思い出すのよ.」
ペロペロ「はい.」
ペロペロは死球で出塁.ペロペロの母は「痛くないわよね.痛くないわよね.」 と喜んだ.そしてシゲ,カリカリ,太郎も続いた. カリカリのヒットでトータス生還.太郎の二塁打でペロペロとシゲが生還. ここで美鈴はゆりかを呼び寄せた.ストレートの球威が落ちてきたので, ユリカボールを投げろと言うのだ.それを令子は見抜いていた. 令子はジュリにユリカボールを投げるよう指示.ジュリは見事にヒットを放ち, つないだ.これでカリカリが生還.同点だ.次はジュクだ.令子のサインは
令子の声「ユリカボールを狙え.」
ジュクは肯いた.ツーストライクノーボール.
ジュクの声「来る.必ず来る.」
そして
ジュクの声「来たあ!」
ジュクはユリカボールをジャストミート.外野からボールが帰ってきた. だが太郎のヘッドスライディングが一瞬速かった.
太郎「やったあ.」
皆,大喜び.ナインもそして親達も. レッドビッキーズの面々はここまでの道のりを思い出していた. 初戦で1アウトもとれず,30点も取られてバイキングに負けたこと. 令子がノックを打てなかったので石黒をコーチに迎えたこと.荒川先輩の指導. 案山子作戦.だんだんと勝てるようになったこと. 受験勉強を控えた令子を気遣って監督から外したこと. ノミさんのコントロール矯正の特訓.浜名湖でのキャンプ.
令子の声「勝った.勝った.レッドビッキーズは勝った.」
令子は涙を流していた.
コーチ「長かったなあ.」
オーナーはこう言った.
オーナー「勝ったねえ.」
令子は泣きながらオーナーの胸に飛び込んだ.
オーナー「よかった.よかったねえ.」
そして令子は言った.
令子「お父さん.お母さん.」
オーナーも感極まって泣いていた.
幸一郎「おめでとう.」
恵子「令ちゃん.」
胴上げされる令子.それを見て幸一郎は拍手し,恵子は涙を流した. 負けたビューティースターズの面々は泣いていた. ゆりかは美鈴にすがって泣いた. 美鈴は口惜しそうに胴上げされる令子を見ていた.
ナレーター「レッドビッキーズ精神とはどんなに辛くてもこつこつと努力を重ね, そして目標に進む事である.令子を中心に全選手が手を取り合って, 歩み始める筈である.一歩一歩,こつこつと,全国制覇の遠い道のりを.」

余談ですが, 準備稿の段階ではシゲがサヨナラヒットを打つ事になっていたそうです. そのため,シゲを演じた鈴木雅之さんは当時がっかりしたとの事です.

「太陽にほえろ!」第239話「挑発」

脚本は杉村のぼると小川英.監督は児玉進.主役は殿下.

ここは横浜港である.市営バスから一人の男(富川よし夫)が降りた. そしてグランドの傍を歩いていると野球のボールが男に当たった.
少年「すいません,取ってください.」
だが男は取ってやらなかった.しかも,ボールの上に足を置いた.さらに, ボールを取ろうと柵越しにボールに手を伸ばした少年の手を踏んづけた. 男はその足で加賀町警察署へ行った. そしてそこに勤務していた島公之の居場所を訊いた. 6年前に転属し,現在は七曲署捜査第一係に勤務していた.つまり, 島公之とは殿下のことだ.

その夜.男は殿下のアパートの前で殿下と会った. 刑期を1年縮めてもらって9年で出所したばかり.殿下は再会を喜び, 部屋にあげてやった.男は風呂に入りたいと言った. 「9年間の垢」を落としたいと言う.男はそう言って風呂に入った. 殿下はカーテンを締めながら思い出していた.9年前, 男こと長尾は何も抵抗できない赤ん坊を盾にした.殿下の怒りが爆発. 長尾は赤ん坊を殺そうとナイフを振り上げた…ように殿下には見えたからだ. 殿下は長尾に飛び掛り,散々殴って逮捕した.その事を思い出していると, 長尾が風呂から上がってきた.長尾は勝手にビールを開けて呑んだ.
殿下「どうして俺のところへ来た.」
長尾は出所報告だと言い,さらに二,三日世話になるつもりだと言った. 長尾は部屋のサボテンに気がついた.
殿下「友達の刑事からもらったんだ.滅多に花は咲かないそうだ.」
長尾はサボテンの鉢を手に持ったが落としてしまった. 長尾はしきりに謝った.悪気はなかったと言って.

その夜.ベッドで寝ていた殿下は物音に気づき,目を覚ました. 見るとテーブルの上にビール瓶が何本も転がっていた.

翌日.殿下はボスに長尾に仕事を世話してくれと頼んでいた. ゴリさんもボンも長さんも怪しんだが,ボスは承諾した.

その晩.長尾が夕食を作っている間,殿下はあのサボテンを植え替えていた. だが長尾はわざとベランダから鉢を落とした.
長尾「すいません.またやっちゃって.」
さすがに殿下は怪しんだ.
殿下「長尾.」
長尾「すいません.」
長尾はタバコを吸いながらそう言い放った. 下からサボテンを拾ってきた後,殿下は長尾をじっと見て考えた.
殿下の声「どういうつもりなんだ.嫌がらせで俺を苦しめたいのか?」
長尾は「顔に何か着いてますか.」と訊いた.

翌朝.殿下は午前中遅れるとボスに電話で連絡した.理由を尋ねるボスに, 殿下は何も答えず,電話を切ってしまった.それを知り, ボンもゴリさんもスコッチも,そしてボスも同じ事を考えていた.
ボン「あの,例えば復讐ですか.」
ボス「多分な.」

ボスの予想通り,殿下は歩道橋で長尾に突き飛ばされた. 白々しく長尾は「誰だ,この人,突き飛ばしたのは?」と叫んだ. それを聞いたゴリさんは,長尾を追い出せと言った.だが殿下はこう言った.
殿下「大丈夫ですよ.僕を殺す気まではないようですし.」
ゴリさん「しかしなあ,殿下.」
殿下「ゴリさん.もしかすると長尾の主張の方が, 正しかったかもしれないんです.」
ゴリさんは「主張?」と訊いた.
殿下「ええ.長尾が営利誘拐で挙げられた9年前の公判の時の事です.」
長尾の声「俺は赤ん坊を殺そうなんてこれっぽっちも思ってなかったんだ. それをあの刑事が急に飛び込んできたんで,逃げるために咄嗟に. 信じてくれえ.」
殿下「刑の重さを決める決め手は長尾に子供を殺す意思があったかどうか, その一点に絞られました.そしてそれを証言できる人間は僕だけでした.」
殿下は9年前にこう証言していた.
殿下の声「彼には子供を殺す意思がありました.」
長尾の声「嘘だあ.嘘だ.あいつは嘘言っている.てめえ, 俺の心の中が読めるって言うのかよう.」
長尾は裁判所で暴れ,衛視に取り押さえられてしまった.
殿下「判決はこちらの主張が通って殺人未遂も加算されました. 僕への憎しみが刑務所での9年間で収まらなかったとしたら,後はやっぱり, 僕が何とかしなきゃいけないと思うんです.」
ゴリさん「殿下.」
殿下「大丈夫ですよ.彼に向く仕事さえ見つかれば, きっと落ち着くと思います.」
ボスもゴリさんも山さんも長さんもスコッチも,そしてボンも心配した.

ボンのテーマの変調曲が流れる中,殿下は長尾と一緒に歩き回っていた. 長尾に仕事を世話してやるためだ. そして殿下は製材所で倒れてきた木材の下敷に. 病院にゴリさんとボンが急行したが, 殿下は軽い脳振盪と打撲だけだと答えていた. その足で殿下はゴリさんとボンと一緒に帰宅すると,長尾は女達を連れ込み, 乱痴気騒ぎをしていた.ゴリさんは怒り,女をたたき出した. ゴリさんは長尾も追い出そうとしたが,殿下が止めた. そして殿下はゴリさんとボンに帰ってくれと言った.
長尾「さあ,どうぞ.お帰りはあちらですよ.」
ボン「長尾,お前には島さんの気持ちがわからないのか!」
長尾「威勢がいいじゃねえか,あんちゃん.」
怒ったボンは長尾を殴ろうとしたが,ゴリさんに止められた.
ゴリさん「殿下,判った,帰る.だがなあ,何かあったらすぐ連絡してくれえ.」
ゴリさんはボンと一緒に出て行った.高笑いする長尾.
殿下「長尾.他の刑事にまで悪態をつくのはよせ.」
長尾「何のことだかわかんねえなあ.」
殿下は長尾の胸倉をつかんだ.
殿下「長尾.もしも俺以外の誰かを傷つけたら,その場で君を逮捕するぞ.」
長尾は殿下を殴りつけた.
長尾「でけえ口叩くんじゃねえよ.」
また長尾は殿下を殴った.その音を聞き,ボンは中に入ろうとしたが, ゴリさんが止めた.長尾は叫んだ.
長尾「おお,デカなら何をしてもかまわねえのかよ.」
長尾は殿下を殴った.
長尾「え.出来心で,ほんの出来心でやった人間を重罪人にして, デカなら何の罪にもならねえのかよー.」
外で聞くボンとゴリさんは心配した.殿下の鼻と口からは血が流れ出ていた. 突然,長尾は座り込んでしまった.
長尾「本当なんだよー.本当に俺は, 本当に俺は赤ん坊なんか殺す気はなかったんだよー.」
ボンのテーマの変調曲が流れる中,長尾は心境を吐露した.
長尾「あんたを,あんたを恨むしかなかったんだ. あんたに必ず仕返ししてやろうと,そう思うだけでムショにいても, 妙に気が晴れたんだ.殺す気なんかあろうとなかろうと, 誘拐なんかやった自分が悪いってことは, 自分が悪いって事はよく判ってたんだよー.だけど,だけどさあ,でもよー, でもよー.」
感極まって長尾は泣いてしまった.鼻からも口からも血を流しながら, 殿下は長尾をじっと見ていた.ゴリさんとボンは立ち去ることにした.
ボン「長尾も人の子.安心しました.」
ゴリさん「殿下も良くやったよなあ.どうだ,ボン. 人一人立ち直らせるのはどんなに大変な事か良く判ったろう.」
ボン「ゴリさんだってぶっ飛ばしてやるって息巻いてたじゃないですか.」
ゴリさん「それ言うなって.」
ボンとゴリさんは車で去って行った.だが安心するのは未だ早かった.

さて殿下と長尾は酒を呑みあっていた.二人とも壮快な気分で酒を呑んだ.
長尾「うまいなあ.思い切り腹の中をぶちまけると, 酒がこんなにうまいなんて知りませんでしたよ.」
殿下「俺もだ.正直言ってこの三日間,びくびくのしどおしだったからなあ.」
長尾「すいません.でも俺,本当に苦しかったんです. 人を憎んでることが辛いことなんて,今はじめて判りました.」
殿下は腕時計を見た.時刻は3時25分.二人は寝る事にした. 殿下がカーテンを開けてみると, 遠くで火事がしているようで消防自動車の音が聞こえた.そしてその夜, レストランに強盗が押し入り,主人が殺されていた.時刻は3時27分頃.

翌朝.そのレストランに七曲署の面々がやってきた. 3時32分.派出所に怪しい男がレストランから出るのを見たという電話があった. 被害額は400万円.従業員の給料で,内部事情に詳しい物の犯行に違いない. そして捜査の結果,意外な人物が容疑者としてあがった. レストランに勤めていて,今中野拘置所にいた男の刑務所仲間が長尾だったのだ. ゴリさんとボンは拘置所でそのことを聞き込んでいた. 殿下は長尾のアリバイを主張した.殿下のアパートから現場まで, 車で行ったとしても15分かかる.殿下はその日の11時に,シャワーを浴びた後, テレビの時報で時計を合わせていたのだ.だが
山さん「時報になあ.しかし,偶然とは思えんなあ.」
殿下「は?」
ボスにも緊張が走った.
山さん「シャワーを浴びた時.すると風呂場にいた時, 長尾は時計に触れる事ができたんだ.」
殿下「え? ええ,まあ.それが何か?」
山さん「いや,これは単なる推理だがな,時計の針を進めたんじゃなくて, 時計が早く進むように細工したら,どうなる?」
ゴリさん「え?」
山さん「仮に1時間に10分ほど進むとしたら,例え11時に時計を合わせても, 殿下の時計は3時半を指した時点で45分進んでる勘定だ.12分進むようにすれば, 約1時間進む.」
ボン「とすれば2時半と言うことに…」
殿下「そんなあ.」
スコッチ「長尾が睡眠薬を使ったとすると眠りはかなり深い. そしてそのアリバイ工作を完全にするために自分で通報したとすれば, 名乗り出ない通報者の謎も解けるわけだ.」
長さんとゴリさんは素人にそんな細工が出来る筈がないと考えた.だが
殿下「長尾は刑務所に入る前,時計屋で働いていた事があるんです. でもボス,長尾はもうあの時は心を入れ替えていたんです. ですから,そんなことするはずが…」
ボス「確かに細工をしたという証拠がない. だがこれでアリバイが完全で無くなった事も事実だ.」

殿下は必死に調べた.だが
長尾「何も見つからなかったんですね.いいんですよ,もう. どうせ俺なんかムショ暮らしの方が向いてんだ.」
長尾は取調室で殿下にそう言っていた.殿下は諦めるなと励ましたが
長尾「どうやってですか.時計まで細工されたって言われたんじゃあ, 何やっても無駄ですよ.」
殿下「あの日の事を思い出すんだ.何かある.きっと何かある. あの日は疲労と酒のせいでひどく眠かった…寝室に行こうとして…待てよ, 確かあの時,消防車だ.覚えてないか.あの時,消防車のサイレンが聞こえた.」
長尾「島さん.」

殿下は火事の件を調べてみる事にした.殿下はボス,ゴリさん, 山さんの目の前で矢追消防署に電話を掛けてみた.事件のあった5日の夜, 消防車が出動したのは放火の火事を消すために出動した3時26分だけだった. これで長尾のアリバイは証明された.だが…

それから10日経ったが,手がかりはなかった.殿下はボンと別れ, 長尾の就職先である靴屋へ行ってみることにした. 靴屋で殿下はある女を見かけた.殿下には女に見覚えがあった. だが素性を思い出せなかった.女は長尾の腕につかまり,靴屋を出て行った. 殿下は長尾と女を尾行した.途中,長尾と女は酔っ払い二人にからかわれた. 激昂した長尾は酔っ払いをぶん殴った. それを見て殿下はあの時の事を思い出した.
殿下の声「長尾,お前…まさか.」
長尾と女はゼエロンという店の中に入って行った. ピンと来た殿下は七曲署に電話した.七曲署にはゴリさんとボンがいた. 殿下はある事を調べるようにゴリさんに伝えた.

殿下は店に入り,長尾と女と話をした.女は長尾とは古くからの付合いだと言う. その頃,ゴリさんとボンは隣町の美鈴消防署へ行き, 火事の正確な時間を訊いていた.その結果, 2時半に火事で消防車が出動していた事が判った. 殿下に聞こえたサイレンの音はその消防車の物だった可能性がある. しかも通報は出鱈目.火事などなかった.通報したのは女の声. 電話を掛けてきた場所は女の店の近く.早速ゴリさんは店に電話をし, 殿下にその事を伝えた.殿下は長尾に言った.
殿下「何もかも芝居だったんだね.」
長尾「え?」
殿下「俺のところに現れたのも,復讐するかに見えたのも, みんな強盗のアリバイ工作のための芝居だったんだね.」
長尾は殿下から目を外らし,女の顔には緊張が走っていた.
殿下「散々,嫌がらせした挙句,改心して俺を安心させ, 時計が進むように細工をした. そしてその人が二時半に美鈴署の消防車を呼び出して, それを三時半だと思い込ませた.犯行現場に行く途中, 放火をして矢追町の消防車を出動させ,犯行を犯して戻ってきたお前は, ちゃんと時計を元に戻しておく事も忘れなかった.よく考えたなあ. 俺には見抜けなかった.だけど,どうしてだ,長尾.人をそうまで騙して, そんなことをして何が楽しいんだ.長尾.」
長尾は何も答えずに走って逃げた.ジーパンのテーマが響く中, 殿下が,ゴリさんが,ボンが長尾を追いかけた.そして打ちっ放しの中に入り, 長尾と殿下は格闘を開始.激しい格闘の末,長尾に殿下が手錠を掛けた. ボンとゴリさんが駆けつけた時は全て終わっていた.
長尾「ばれりゃあ,元々よ.」
笑いながら連行されていく長尾を殿下は寂しそうに見ていた.

翌朝.屋上でボーっとしている殿下にボスが言った.
ボス「未だ長尾のことを考えてるのか.なあ,殿下.いいか.世の中には, 長尾のような奴はいっぱいいる.どんな善意も通じない男がな.だがな, 殿下のしたことは決して無駄じゃない筈だ.この先いつか, 長尾がまともな気持ちになる時が来たら,その時,奴の気持ちを動かすのは, 殿下,お前だ.お前のした事だ.俺はそう思う.」
殿下「ボス.」
ボス「そろそろ下へ戻るか.実はな, ゴリやボン達の方がお前よりも参ってるんだよ.全く子供みたいな奴ばっかりで, 俺は堪らんよ.」
殿下「それは仕方がないですよ.」
ボス「え?」
殿下「ボスがボスですからねえ.」
照れ隠しにボスは殿下の背中を叩くのであった.

次回は長さんと寂しい老人との交流が描かれます.

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