2002年4月6日

「太陽にほえろ!」第72話「海を撃て!!ジーパン」

脚本は鎌田敏夫.監督は竹林進.題名からわかる通り,主役はジーパン.

ジーパンはボスとともに射撃練習場にいた. ジーパンは何発も何発も撃っていたが弾は命中しなかった.
ボス「拳銃にだって心はあるんだぞ,ジーパン.」
ジーパン「え?」
ボス「お前が拳銃を嫌っていれば,拳銃の方だってお前を嫌うよ.」
ジーパンはこう言った.
ジーパン「はい.別に嫌っているわけではありませんが, 俺はただこんなちっぽけな道具が呆気なく人間の命を奪ってしまうということを, やりきれなくなるだけですよ.その人間の何十年と言う命を, あっと言う間に奪い取ってしまうんですからね.」
それを受け,ボスが言った.
ボス「拳銃嫌いの親父さんが拳銃で殺されたから, 拳銃を持ちたくないというお前の気持ちはわかるが,いいか,ジーパン, こいつだけは覚えとけ.俺たちはな, ただのアクセサリーで拳銃をぶら下げてるわけじゃないんだ.」
ジーパンは無言だ.
ボス「丁度お前ぐらいの頃,俺は射撃が下手くそだった.」
ボスは拳銃を手に持ち,引き金を引き,一発撃った.球は見事に真中に命中した.
ボス「教官によく怒鳴られたが,俺はタカをくくってた. こんなものをぶっ放す事件なんて,そう滅多にない. 例えあったとしても脅かしの一発ぐらいだろうってな.」
またボスは一発撃ち,真中に命中させた.
ボス「あるとき犯人を追い詰めた.奴は銃をぶっ放してきている. こっちも銃を撃ち返さなければ撃たれてしまう.俺はそいつを狙った. そいつの肩を撃って銃を落とすつもりだった. しかし俺が撃った弾は,そいつの胸部を貫いて殺してしまったんだ.」
そしてボスは一発撃ち,真中に命中させた.
ボス「そいつは凶悪な殺人犯なので誰にも非難されなかった. しかし,あの時,もし俺の腕が正確だったら, 俺は一人の人間の命を奪わずに済んだんだ.」
ボスは4発目も真中に命中させた.
ボス「俺が死に物狂いで拳銃の練習をし始めたのは,その時からだ.」
ボスは5発目も命中させた.
ボス「デカの拳銃に狂いは許されない.もしこの腕に狂いが来た時は, 俺は拳銃を捨てるよ.」
そしてボスは6発目も命中させた. ジーパンは手に持つ拳銃をじっと見るのであった.

ボスとジーパンが一係室に戻ってくると, ちょうど九州の女子高の先生が来ている所だった. その教師金森は九州の清心女子高校の修学旅行の引率で東京へ来ていたが, 生徒の一人が未だ宿に帰って来なかったというのだ. 何の連絡もなく,しかも今日の夜に九州へ帰る事になっていたのだ.
シンコ「昨日は最後の自由時間で, 生徒さん達はそれぞれ都内見物に出かけたんですって. その宮野ゆかりさんだけがそれっきり帰って来てないらしいんです.」
今のところそれらしい事件は起きていないとボスは言った.金森は一安心. 念のためボスは調べてみる事にした.

そこでジーパンとシンコは清心女子高校の宿へ行き,生徒から話を聞いた. 宮野ゆかりは銀座の一光デパートで,疲れたから先に帰る,と言い, 友人と2時頃にわかれた.デパートからどこかへ電話をしていたが, 宮野はおとなしい性格で自分の事をよく話すような人物ではなかったので, 友人達は宮野が誰に電話をしていたかどうかまではわからなかった. そこへボスから電話が.なんと
ジーパン「宮野ゆかり君が死体で発見されたそうだ.」
シンコは驚いた.

現場は川原だった.金森は死体を見て宮野ゆかりに間違いないと言った. 死因は絞殺.首に残っている皮下出血の痕から見て, 犯人は片手で絞め殺したらしい.相手が女だとしても片手で絞め殺すには, 相当の腕力が要る.皮下出血の痕から見ても犯人の手は相当大きいようだ. そこへゴリさんが革鞄を持ってやってきた.水門の向こうの方に流れ着いており, 宮野ゆかりの物に間違いないらしい.中には, 清心女子高校の学生証と宮野ゆかり宛の手紙が入っていた. 手紙の宛名を見る限り,聖心女子高校は長崎県か宮崎県にあるらしい.

宮野ゆかりに手紙を出した加納修(山西道広)の働く工場へ, ジーパンと殿下がやってきた.そして加納を七曲署へ連れて行った.
ボス「君とゆかり君はペンフレンドらしいね.」
加納はその事を認めた.
ボス「今までに会った事はないのかね.」
加納「ないよ.」
山さん「じゃあ,なぜすぐに会いに行かなかった? ペンフレンドのゆかり君が上京してて手紙でも会おうと約束してるくせに, なぜすぐに会いに行かなかったんだ.」
加納「俺,手紙見たんだ.わかるだろう.俺,手紙に出鱈目ばっかり書いたんだ. 高校行ってるとか,いいうちの息子だとか.」
山さん「なぜ出鱈目なんか書いたんだ.」
加納「中学出て修理工場で働いてるなんて言ったら手紙くれないと思ったんだ. 一度出鱈目書いたら,それを押し通すよりしょうがないじゃないか!」
この気持ち,私にはわかるような気がする.閑話休題.これを受け, ボスが言った.
ボス「クラスメイトの話じゃ,彼女は君と会うのを凄く楽しみにしてた. 一緒に買物に行っても落ち着かなかったそうだ. 彼女は君の出鱈目を信じて死んでいった.」
加納「違うよ.」
山さん「どう違うんだ.」
加納「最後の電話の時,俺は本当の事を話した.それでも良かったら会おうって. だから,俺は多摩公園で待っていたんだ.でも彼女,来なかった. やっぱり修理工の俺なんか会いたくなかったんだ.」
山さん「来てたじゃないか,彼女は.来てたからこそ, 多摩公園の近くで殺されたんだ.」
加納「会わなかったんだよ! 公園で待ってたら,来なかったんだ.」
山さんは立ち上がって言った.
山さん「手紙に出鱈目を書き並べてたからって,お前,嘘がうまいな.」
加納「嘘!」
山さん「彼女に全てを話したなんて嘘だ.」
加納「嘘じゃない.」
山さん「彼女に会わなかったと言うのも嘘だ.」
加納「嘘じゃない!」
山さん「お前は彼女に会った.そして本当の事を話した. 彼女は明らかにがっかりした顔をした.それを見てお前はカーッとなって…」
加納「違うよ!」
ボスは椅子に座り,山さんは話を続けた.
山さん「彼女を殺したのは普通の人間じゃないよ. 手のでかい奴じゃないとあんな風には絞め殺せないんだ.」
加納「手のでかい奴?」
山さんは加納の左手をとった.
山さん「お前のような奴だ.」
ボスは加納をジロッと見た.山さんもジロッと見た.
ボス「ゆかり君と会う場所は君が指定したんだね.」
加納「そうです.」
ボス「君は何時に約束の場所に着いた?」
加納「3時過ぎです.」
山さん「彼女が殺されたのは2時から5時までの間だ.」
それを聞いた加納は驚いた.
ボス「君が着いた時,その公園に誰かいたか?」
加納はしばらく考えた.
加納「外人が一人いました.」
ボス「外人?」
加納「僕が来ると同時ぐらいに車で去って行ったんです. 体の大きな外人で歳は40ぐらい.」
ボス「体の大きな?」
加納「ええ.僕より10cmぐらい大きかったと思います.」
山さん「お前はなかなか頭の回転が速いなあ.」
加納「え?」
山さん「俺はさっき手のでかい奴が宮野君を絞め殺したと言った. そしたら早速外人をでっち上げて…」
思わず加納は立ち上がった.
加納「でっち上げた話なんかじゃない!」
山さん「どうしてもっと早く言わなかった.」
加納「聞きもしない事をべらべらと喋れって言うのか.」
山さん「あんまりべらべら喋ると嘘だと言う事がばれるから, 今までとっておいたって訳か.」
加納「嘘じゃない! どうして俺をそんなに犯人扱いしたがるんだ.」
怒り狂った加納は山さんの胸倉を掴んでしまった.
加納「貴様は俺を犯人にしたいのか.」
我に返った加納は山さんから手を離した.
加納「俺じゃない.俺じゃないんだって.どうしてわかんないんだよ. くっそう.くっそう.俺じゃないって.判ってくれよ,俺じゃないんだって.」
山さんもボスも加納を凝と見ていた.

一係室でボスは山さんに意見を求めた.山さんは白だと睨んでいた. 長さんも,やっぱり白かね,と言った.そこでボスはジーパンに言った.
ボス「もしお前にペンフレンドがいたならなあ,出鱈目ばっかり書いたとする. その彼女とはじめて会って,その出鱈目を非難されたら, カッとなって絞め殺すか?」
ジーパン「はあ,成り行きでそういう風になることもあるかと思いますが.」
長さん「はあ,ただそれだけの事でか?」
ジーパン「ええ.おそらく加納にとって宮野ゆかりさんは, 生活の中で一番大切なものだったんではないでしょうか.」
長さん「顔も見た事もないペンフレンドなんだぞ.そんな馬鹿な事がお前…」
そこへ殿下が宮野ゆかりの衣服に付着していた体毛の顕微鏡写真を持って来た. 同じようなものが数本発見されていた.宮野ゆかりと争った時に, ついたものだろう.鑑識の意見では日本人の物ではないらしい. その体毛は腕毛もしくは胸毛らしかったが,かなり長く, 日本人だとすればかなり特殊だろう.
山さん「外人か.加納が見たと言っているのは…」
ボス「本当かもしれんなあ.」

その晩,こうして加納は釈放された. 長さんとゴリさんが尾行に出て行くのと入れ替わりにジーパンとシンコが登場. ジーパンは加納が犯人に間違いないのに釈放するのかと詰め寄ったが, ボスは新しい証拠が出てこない限り拘留期限と言うものがある,と答えた.
ジーパン「そんなものはどうだってなるじゃないですか.」
ボス「ジーパン,捜査にはルールって物があるんだ. そのルールを破って手柄を立てたかった奴がいるかもしれんが, 俺のところではルールは守る.よーく覚えとけ.」
ジーパンは渋々肯いた.

ゴリさんと長さんの張り込みは続いた.翌朝まで加納は一歩も外を出なかった. 加納の張り込みはジーパンと殿下に交代. 加納は宮寺モータースと言う工場で働いていた. 食事に出たジーパンが戻ってきて拉麺がまずかったと殿下に話していると, 加納が外へ出ようとするのが見えた.何を考えたのか, 加納は米軍基地の辺りを歩いていた.ジーパンと殿下は尾行を続けていた. そして加納は「くらぶシャングリーラ」という店の中に入った. 殿下が表口を見張り,ジーパンが裏口へ回ろうとすると 「助けてえ」という女の叫び声が.慌てて殿下とジーパンが中に入った. 加納は拳銃を手に持ち,ママの頭を狙っていた.入って来た殿下とジーパンに
加納「来るなあ.来るなら撃つ.」
ママ「弾が入ってるのよ.」
殿下とジーパンは近づこうとしたが,加納は手錠を出せと要求.
加納「デカなら手錠ぐらい持ってるだろう! 出せ.早く出せ.」
仕方無く殿下は手錠を取り出した.加納は自分の手に手錠を掛ける事を要求. 殿下は右手に手錠をかけた.さらにカウンターに右手を通す事を殿下に要求. 言われるままに殿下はカウンターに手を通した.さらに
加納「そいつの手に掛けろ!」
ジーパンは怒ったが
加納「女を殺したいのか?」
仕方無くジーパンは左手に殿下の手錠をかけた.加納は裏口から出てしまった.

ママは七曲署で取調べを受けた.加納は包丁を突きつけて拳銃を要求したと言う. 店の客の半分は米軍基地の兵隊で呑み代の片に拳銃を置いていくのがいるのだ. ママは一度加納に拳銃を見せてやった事があった. ゴリさんとジーパンの聞き込みによると, 加納は修理工場で朝から何事か考え込んでいたらしい. それで突然仕事を放り出して出て行ったらしい. 今更拳銃を手に入れて加納は何をするつもりなのだろうか?
ジーパン「もし加納が犯人なら, 自棄っぱちになったって事も考えられます.」
山さんはその説を否定した.わざわざ拳銃を手に入れようとして押し入っている. 自棄っぱちにしては念が入りすぎている.ボスは, 加納が外人の名前を調べ上げ,復讐しようとしている,と考えた.
長さん「一度も会ったこともないペンフレンドのためにですか?」
ボス「そういうもんだよ.若い時はな.」
山さんは,どうやって外人の名前を知ったのか,不思議に思った. そこでボスは加納の周囲を徹底的に調べろと命じた.

山さんと殿下は加納のアパートを家捜しした.その頃, 一係室に特命の電話が掛かって来た.多摩川のボートの前で加納らしき男を見た, という.ボスはジーパンそこへ行くように命じた. 出て行こうとするジーパンにボスは言った.
ボス「あ,ジーパン,拳銃を持っていくんだ.」
ジーパン「え?」
ボス「もし相手が加納だとしたら,相手は拳銃を持ってるぞ.」
だが
ジーパン「大丈夫ですよ.拳銃を持たなければ何にも出来ないんですかね. この手で捕まえてみせます.」
ジーパンは制止を振り切って出てしまった.
シンコ「ボス,あたしも行きます.」
ボス「シンコはいい.」
シンコ「あたしだって一人前の刑事なんです. 女だからって差別しないで下さい.」
ボスは無言だ.
シンコ「それに(拳銃を手に持ち)ちゃんと拳銃だって持ってます.」
シンコは出て行った.

ジーパンとシンコは多摩川の貸ボートの小屋へ向かった.
ジーパン「危ないからここにいろよ.」
シンコ「危ないのはどっちよ.」
かまわずシンコは先に行ってしまった.後からジーパンが追いかけた. シンコはジーパンに拳銃を持たせようとしたが,ジーパンは断った. なおもシンコはジーパンに拳銃を持たせようとしたが
ジーパン「要らないんだよ,俺は.」
シンコ「意地っ張り.」
ジーパン「意地っ張りはどっちだ.」
ジーパンは丸腰で近づいて行った.
ジーパン「ここにいろよ.」
シンコ「私は横に回るわ.見物するためにここに来たんじゃないのよ.」
そう言って強引にシンコは横に回った.ジーパンは小屋に近づいた. シンコも小屋に近づいた.その時,ジーパンは見た.シンコを狙う拳銃を. その時,ジーパンは小屋から少し離れた位置にいた.
ジーパン「シンコ!」
ジーパンはシンコの方へ駆け寄った.
ジーパン「伏せろ!」
だが一発の弾丸がシンコに当たってしまった.ジーパンに出来ることは, シンコをかばい,伏せる事だけだった.
ジーパン「大丈夫か?」
シンコ「大丈夫.」
だがシンコは苦しそうだった.
ジーパン「シンコ.」
ジーパンのテーマが流れる中,ジーパンは小屋に走って近づいた.
シンコ「柴田君!」
ジーパンは叫び声を挙げてドアを破った.拳銃を手に持ち, 柱にもたれ,座り込んだ加納が見えた.
ジーパン「撃ってみろ.撃ってみろよ.」
だが答えはなかった.加納は額を撃ち抜かれて死んでいたからだ. 加納は倒れこんでしまった.シンコも倒れこんでしまった. 小屋の外へ出たジーパンはシンコを助け起こして言った.
ジーパン「シンコ,シンコ,シンコ,死ぬなよ.死ぬなよ!」
シンコ「大丈夫よ.」
ジーパン「シンコ!」
そこへゴリさんと長さんが駆けつけた.
長さん「どうした?」
ジーパン「シンコが加納に撃たれたんです.」
長さん「で,加納は?」
ジーパン「小屋で自殺してました.」

手術室へ運ばれるシンコ.ジーパンは手術室の前まで着いていった. 手術中,ジーパンはじっと考え込んでいた.そして思い出していた. シンコを狙う拳銃を見た事,自分が何も出来ずにシンコが撃たれてしまった事. ジーパンは拳を握っていた.

それからのジーパンは射撃練習場で狂ったように拳銃を撃つ練習をした. はじめは片手で.次は両手で.だが的の真中には当たらなかった. そこへボスがやってきた.
ボス「ジーパン.」
ジーパンは振り返った.ジーパンとボスはお互いを見合った後,言った
ジーパン「俺達の拳銃はアクセサリーじゃないってボスは言った.」
ジーパンは拳銃に弾を込めた.
ジーパン「もし,俺があん時拳銃を持っていたら,加納の拳銃を見つけた時, すぐに撃ち返す事が出来ていたら,シンコは撃たれずに済んだかもしれません. もし俺が拳銃を持っていたら…」
ボスは黙ってジーパンを見た.ジーパンの腕は相変わらず悪かった. それでもジーパンは拳銃を撃ち続けた.
ボス「まだ事件は終わったわけじゃないぞ,ジーパン.」
ジーパン「ボス.」
ボスは拳銃を取り出し,何発も撃って全弾真中に命中させた. 二人は拳銃を撃ち続けた.やっとジーパンの弾が真中付近に当たった.

長さんは小屋を調べ直していた.加納がもたれこんでいた柱と, 拳銃が出ていた窓とはかなり距離があった.それを長さんは気にした. 続けざまに拳銃は撃たれていた.最後の一発も間がなかった. と言う事は,加納が拳銃を窓から撃ち,最後の一発で自殺したと考えると, 矛盾が生じる.よろめいて窓から柱まで行ったとしても, ジーパンが飛び込むまでの2,3秒の間にあんな遠くまで行けるはずがない. しかもジーパンが飛び込んだ時,加納は既に息を引き取っていた. だから誰かもう一人いたことになる.

足跡を検証した結果
ボス「どうやら長さんの推理が当たったようだな.」
長さん「拳銃を撃ってきたのは加納じゃありません.加納はその時, 既に殺されていたんです.」
なぜかジーパンはこう言った.
ジーパン「すいませんでした.」
ボス「は?」
ジーパン「俺,シンコが撃たれた時,カアッとなって, 現場を冷静に見る余裕がなかったんです.」
長さんはジーパンの肩を叩いて慰めた.そこへ山さんとゴリさんが入って来た. 加納はテレビも持っていなかったし新聞もとっていなかった. 情報を得るとすれば,部屋にあった週刊誌からだろう. どうやら近所の飯屋から持ってきたらしく, 加納の部屋には週刊誌がたくさんあった. 加納の部屋にあった週刊誌に載っていて体の大きい男は一人しかいない. それはジョン・スミスという1m90cmもあるバイヤーだった. 彼は香港でも一度女のことで問題を起こしていた. 大変な女好きで人気のない公園で美人高校生の宮野ゆかりを見たら, 言い寄るくらいの事はやりかねない男だった.
ジーパン「そして抵抗され,殺したんですね.」
長さん「押さえますか,ボス.」
ジーパン「もしスミスが拳銃を撃っていたら硝煙反応が残っているはずです.」
だが
ボス「週刊誌のグラビアに載ってただけで逮捕するわけには行かんよ.」
ジーパンは黙って出て行った.

ジーパンのテーマの変調曲が流れる中,ジーパンはあの貸ボート屋へ戻り, 現場を調べなおした.そして近所で聞き込みをした.その結果
ジーパン「ボス,スミスらしい男を見たという人間がいました.」
ゴリさん「おい,本当か.」
ジーパン「ええ.シンコが撃たれた日, 川の上流で魚釣りをしていた子がいたんです.でその話によると, 川の中から体の大きな外人がいきなりあがって来たと言うんです.」
ボス「何?」
ジーパン「子供がビックリして立ち尽くしていると,その外人, いきなり子供を殴り倒して走っていったんです.」
ボス「スミスの写真は見せたのか?」
ジーパン「はあ.見せましたが,全身ずぶ濡れになっていて, よくわからないそうです.」
ゴリさん「あの小屋から川へ飛び込んで逃げた.」
ジーパン「ああ.しかし,その外人が乗っていた車ははっきりと覚えています. 黄色っぽくて比較的新しいカメロって言う外車です.」
ゴリさん「そうか.そいつはスミスの乗っているのと同じ車です.」
ボスは決断した.

ボスとゴリさんはスミスと会って話した.だがスミスにはアリバイがあった. シンコが撃たれた時間,会議に出席していたと言うのだ. 宮野ゆかりが殺された日にもアリバイがあったと言う. 一緒にいた光貿易の社長が証言したのだ.他の部長や課長も同じ証言をしていた. だがゴリさんの調べにより,新事実が判明した. 光貿易とスミスとの間には大量の買い付け契約が結ばれていた. それもここ一日,二日の間にばたばたと決まっていた. アリバイを作ってやった代わりに物を買わせたとも考えられる. ジーパンは憤った.山さんは会議に出席していた部課長の中で, 一番気の弱そうな人物を尋問する事を提案した.その結果…

山さんと殿下は光貿易の野田の元を訪れ,犯人隠匿罪になる事を示唆. あなたの発案らしいですなあ,殺人犯を庇うと罪は重いですよ,と言うと, 野田はまんまと引っかかり,アリバイ発案は沢本部長だ, と口を滑らせてしまった.こうしてスミスのアリバイは崩れ去った.

スミスの止まるホテルを長さん,ゴリさん,ジーパンが見張っていた. 無線でボスからスミスのアリバイが崩れた事をしらされ, ゴリさんは本当かと聞き返した.
ボス「ああ.人の命令に簡単に従う奴ほど, 裏切るのも速いって山さんが言ってた. 逮捕状届くまでしっかりと見張ってろよ.」
スミスの車が発進した.早速ジーパン達は追いかけた. 猛スピードで走るスミス.スミスの車は海岸を走った.尾行する車を見かけ, スミスはスピードを上げた.
ジーパン「行先は港じゃないですか?」
長さん「急ぐんだ,ゴリさん.沖にいる外国船に乗り込まれたら, 仕掛けようがないぞ.」
焦る三人.スミスは港に入り込んだが, ゴリさん達の車はトラックにぶつかりそうになり, 一瞬見失ってしまった.ジーパン達がスミスの車を見つけた時, スミスがモーターボートに乗って沖へと向かうのが見えた. ゴリさんと長さんはモーターボートを探そうとした.そのとき, ジーパンが長さんに言った.
ジーパン「貸して下さい,銃.」
長さんから銃を受け取り,ジーパンのテーマが流れる中, ジーパンは走る,走る,走る.兎に角,岸壁を走ってスミスを追いかけた. ジーパンは走る.スミスのモーターボートも走る. そしてジーパンはスミスを狙って銃を撃った.何発も,何発も撃った. スミスのモーターボートが止まった.スミスは叫んだ.
スミス「Don't shoot! I give up!」
スミスは何度も何度も叫んだ.ジーパンは銃を下ろした. 長さん達のモーターボートがスミスに近づくのを見た.

ボスがシンコを見舞った.シンコがもう大丈夫だと言うと
ボス「ジーパンがシンコの仇を討ったぞ.」
シンコ「え.本当ですか?」
ボス「で,ジーパン来なかったか?」
シンコ「ええ.」
ボス「シンコに真っ先に報せたいって部屋を飛び出していったんだがなあ.」
そのとき,ノックの音が.ジーパンがバラの花束を持ってやってきたのだ. ジーパンはボスを見て驚いた.
ジーパン「来てたんですか,ボス.」
シンコ「どうしたの,それ.」
ジーパン「いやあ,女の子見舞いに行くんだから花ぐらい買ってけなんて, 島さんに言われちゃったもんだから.」
シンコ「こんなに沢山?」
ジーパン「いやあ,どのぐらい買ってけばいいかわからないからさあ, その,店の中にあるバラの花,全部くれなんて言っちゃって.」
それ程沢山買ったのだ.
シンコ「いくらした?」
照れくさそうにジーパンが答えた.
ジーパン「うん.負けてくれてさあ,その,一万円.高いなあ.高いね.」
シンコ「馬鹿ね,こんなにたくさん.バラってねえ,すぐ枯れるのよ. 勿体ないわ,一万円も.でも嬉しい.あたし, こんなにたくさんのバラの花貰ったの,はじめて.」
ジーパン「そう.」
シンコ「ありがとう.」
ジーパン「いいえ.」

ジーパンはボスと一緒に出て行った.そして外で
ジーパン「ボス.」
ボス「は?」
ジーパン「あのう,お願いがあるのですが.」
ボス「何だ?」
ジーパン「ちょっと500円貸して下さい.」
ボス「500円?」
ジーパン「ええ.あのう,花,全部使っちゃって,飯食う金無いんですよ. 腹減っちゃって…」
ボスは苦笑し,一万円札を出した.
ボス「月末払いだぞ.」
ジーパンは一万円札を嬉しそうに持って去り,それをボスは見送るのであった.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp