2002年2月27日

「がんばれ! レッドビッキーズ」第37話「おれはホームラン太郎」

脚本は上原正三.監督は奥中惇夫.

今日もレッドビッキーズの練習が行なわれていた.ジュリの背番号は11番. ジュリの投球フォームを見て皆感心.
カリカリ「それに可愛いなあ.」
ナッツは少し嫉妬していた.これは来週の伏線です.閑話休題. ノミさんも相乗効果で気合が入っていた.ジュリは途中で帰った.
ナッツ「監督,なぜ一人だけ帰るんですか?」
令子「用があるのよ,ジュリさん.」
ナッツは不満そうに帰っていくジュリを見ていた. 投手は二本柱が出来た.後はスラッガーを育てることだ. 令子はペロペロに期待していた.ペロペロにその力は十分あったが, 問題はタイミングが全然合わないことだった.
令子「試合では打ったこともあるのにねえ.」
そのとき,シゲがカリカリの自転車をいじっている者がいることに気付いた. 怒ったカリカリはその少年兄弟二人に詰め寄った. だが彼らは自転車を直して上げていただけだった.皆,礼を言った. それに彼らはレッドビッキーズの服を着ていた. 二人ともレッドビッキーズに憧れていた. オーナーは待望の長距離砲にどうだと兄の方に目をつけたが, 二人とも雑用係で十分,と答えた.兄弟の名前は西郷太郎と西郷次郎だった. レッドビッキーズが練習する傍らで二人はスパイクやグローブを摩いていた. そしておにぎりを頬張った.

翌朝.カリカリとシゲは,西郷兄弟が来るかなあ,来るわけないよ, と言い合っていた.そして皆がグランドへ来てみると, 一足先に西郷兄弟が来ていた.二人はグランドの小石を拾い, グランドをピカピカにしていた.さらに西郷兄弟はカリカリの自転車を修理. レッドビッキーズは練習を開始した.令子は太郎に野球をしないかと誘ったが, 太郎は雑用係で十分と言った.ちなみにこの日の練習にジュリは来ていなかった. ナッツはなぜジュリが来ないんだと令子に詰め寄っていた.

令子が家に帰ると窓ガラスがピカピカになったと恵子が喜んでいた. 「レッドビッキーズの雑用係」が摩いてくれたと言う. なお西郷兄弟は令子の下着まで洗濯し,令子にやり過ぎだと言われてしまった. 二人は兎に角令子のために働きたかったのだ.

しばらくしてよし子が令子のところへやって来た. 何と西郷兄弟が長山庵で働いていたのだ. さらに太郎はノミさんが内角を攻める為の手伝いをするのを令子は目にした. 太郎は自分で申し出たのだ.ノミさんは手が滑って太郎に球を当ててしまった. もうやめろという令子に言うので,太郎はブラザーの方を揉んでやった. 練習が再開された.だがペロペロは手の豆を潰してしまい, バットを握ることができなかった.ボールを洗う西郷兄弟を見て, 令子は「不思議な少年だわ」と思うのであった.

練習終了後,令子は西郷兄弟のあとをつけてみた. 西郷兄弟の父親は自転車屋を開いていた.令子は西郷兄弟の父に声を掛けた. 西郷兄弟は父親の勧めでレッドビッキーズの手伝いをしたのだ. と言うのも太郎は野球をやりたがっていたからだ.
父「いやねえ,私はこう考えるんですよ. 野球も人生も同じく己との闘いであると.」
令子「それで雑用係を.」
父「ええ.辛い事に断え得る精神力がなければ, 野球の辛い訓練にはとてもついていけません.そうじゃありませんか?」
令子は肯いた.西郷兄弟の父は太郎が素振りする様子を令子に見せた. そして西郷兄弟の父は太郎をレッドビッキーズに入れてもらえないかと頼んだ.
令子「でも,どうしてレッドビッキーズを?」
父「ええ.レッドビッキーズは悔しさを知っているチームです. 何度も叩きのめされながらどん底から這い上がってきたチームです. 私はそういうチームが好きですたい.」
令子は快諾した.西郷の父は大喜び.次郎は太郎に頑張れよと言って喜んでいた.

そして向かえたテストの日.ノミさんが第1球目を投げたが太郎は空振りした.
父「ボールから目が離れちょる.」
だが太郎は3球続けてノミさんの球をジャストミートしセンターの頭を超えた.
オーナー「おお,まさしく長距離砲だな.」
投手はジュリに交代.太郎はジュリの初球も打ち,トータスの頭を超えた.
2球目は空振り.
父「顎を退け,顎を.」
3球目はジャストミートし,センターの頭を超えた.
カリカリの声「ノミさんもサウスポーも打たれちまった.参ったなあ.」
オーナー「こりゃ凄いけど,ホームランか三振かだなあ.」
コーチ「でもペロペロと違って手首は柔らかい. 粗削りだけどタイミングの取り方は抜群だ.掘り出し物だぞ.」
こうして太郎はレッドビッキーズの一員になった.
父「さ,一緒に監督や皆さんの前でニックネームを. 自分で考えたニックネームを.」
太郎「うん.俺のニックネームは…」
父「おーい,言うんじゃ.はっきり言わんかい.」
太郎「うん.俺のニックネームは…ホームラン太郎だ.」
オーナー「ホームラン太郎.こりゃいいや.」
オーナーは大笑い.太郎がおにぎりを頬張るのを見て
令子「ホームラン太郎よりおにぎり太郎の方がお似合いだわ.」
と言うのであった.

さて次回はナッツがジュリに対抗意識を燃やし,ちょっとした騒動勃発.

「太陽にほえろ!」第228話「目撃者」

脚本は小川英と中村勝行.監督は澤田幸弘.主役はゴリさん.

夜の街で.女(木内みどり)がビルの玄関にある赤電話から電話をしていた. そのとき,男が出てきて女の緑色のバッグを蹴飛ばして出て行った. しばらくして女がエレベータの方を見ると,男が死んでいるのが見えた. 女は叫び声を挙げて去った.入れ替わりに男がやってきて死体を発見. 警察に通報した.

死体発見者は得意先から帰ってきてエレベータに乗ろうとした時, 死体を発見したと言う.その時刻は午後8時40分頃. 殺された男はそのビルの5階にある海老名商事の営業課長. その日は給料日で給料の30万円が全額盗まれていた.余談だが, この頃は給料は銀行振込ではなく,給料袋に入れて渡されていた.閑話休題. 海老名商事は20日が給料日だった.余談だが,僕ちゃんの会社も20日が給料日だ. 閑話休題.凶器は鋭利な金属,例えば千枚通しとかアイスピックのような物だ. 流しの犯行ではないだろう.長さんが社内関係を洗おう,と言いかけた時, ゴリさんがもう一つ重要な手掛かりがあると言った.
ゴリさん「死体発見者の話によりますと,目撃者がいたらしいんです.」
ボス「目撃者?」
ゴリさん「ええ.玄関奥の赤電話で電話を掛けていた女性がいたらしいんです. 発見者が振り向いた時には,もう出て行くところだったらしいですが, タイミングから考えて犯人を目撃している可能性が非常に強いんです.」
目撃はしたものの係わり合いを恐れて逃げたのかもしれない,と山さんは言った.
ゴリさん「そうなんです.しかし,その女性が証言してくれれば, 犯人は簡単に割れた筈です.」
ボンは逃げた理由を訝しんだ.
スコッチ「で,その女性の特徴は?」
ゴリさん「歳は30前後で黄色っぽい服を着て, 手にロープと書かれたショッピングバッグを下げていたらしいんです.」
ゴリさんは黒板に白墨で「ROPE」と書いた. ゴリさんは都内の電話帳を調べたが,そういう名前の店はみつからなかった. その時,アッコはそれが高級ブティックの「ROPE」ではないかと言った. 手に緑地に白い字で「ROPE」と書かれたショッピングバッグなのだ. ロープではなくロペと読むのだ.

早速ゴリさんとボンが「ROPE」へ行った. 店では服を持ち帰った人を全て控えていた. だがそこの店のショッピングバッグは白地だった. 今月から緑地をやめ,白地に変えていたのだ.

殿下と長さんは被害者の足取りを追っていた. 残業したのは被害者と山田良介という男だけ. 山田は19:00に帰り,被害者は20時半までいたらしい. 次に殿下と長さんは山田の行きつけのスナックへ行った. マスター(山西道広)はこう証言した.山田は事件当夜も姿を現していた. そして20:00頃に帰ったらしい.山田と顔馴染の客は何人かいたらしい. さらに事件の前の晩,アイスピックが失くなっていたことが判明した. 20時頃に氷を割ろうと思って探したのだが, どうしても見つからなかったと言うのだ.

皆が捜査に走り回っている頃,例のスナックに山田がやって来た. その日は土曜日.前の晩に事件があったので残業が禁止になったという. 長さんは山田に声を掛けた.山田は事件当夜は一人で映画を見に行ったと答えた. さてゴリさんは「ROPE」の別の支店へやってきた.その日は休業だったのだが, 岡本澄江と言う主婦がやって来て,服を着替えて出た, ブルーのスーツからサラシのパンタロンスーツに着替え, 着ていた服は緑地のショッピングバッグに入れて行ったと言う. 早速ゴリさんはその岡本澄江の家を訪れた.夫の名前は岡本雄造. 留守だったのでゴリさんがボンと一緒に張り込んでいると, 澄江(木内みどり)が娘を連れて帰ってきた. 早速ゴリさんとボンは澄江に声を掛けた.
ゴリさん「昨日の夜の8時半頃ですが, 新宿5丁目の新宿セブンビルにいらっしゃいましたねえ.」
澄江はゴリさんを睨みつけ,黙り込んでいた.思わず娘が澄江の方を見た. 沈黙が流れた.堪りかねてボンが訊いた.
ボン「奥さん.」
澄江「いいえ.何かのお間違いじゃありません? あたし, そういうビルへは行ったことございません.」
ボン「しかし,そのう,奥さん.あなたを見たと言う人が…」
澄江は門を開けて中に入ろうとしたが,ゴリさんに止められた. だがそれにも関わらず中に入ってしまった. それを見てからゴリさんはしばらく考え込んだ後,引き返した. 慌ててボンがゴリさんを追いかけた.
ボン「偶然の一致だったんですねえ. 背格好なんかも目撃者の証言とぴったりなんだけど.」
ゴリさん「いや,(立ち止まって)間違いとは思えん.」
ゴリさんは車に乗り込んだ.慌ててボンも車に乗った.
ゴリさん「事件のことも知らず,捜査に何の利害関係もない人間は, もう少し捜査に協力的なもんだよ.もう少しな.」
ゴリさんとボンは岡本澄江を見張ることにした.

一方,長さんは山田が友人に借金2万円を返していたことを聞き込んでいた. 競馬で儲けたと言う.殿下の行った銀行でも山田が5万円を返していた. 競馬で儲けたというのは汚い金を得た時の決り文句だから山田は怪しい. だがそれだけでは犯人の決め手にはならない. 後は目撃者の証言さえ取れれば一発で決まるのだが…

ゴリさんは車の中から死体発見者に岡本を見せた.
死体発見者「あの人だと思います.でも確信がありません. 顔は暗くって良く見えなかったから.」

殿下と長さんは山田のアパートを見張っていた. 部屋の中に入った山田はガスコンロにあったアイスピックがあるのを見て, 慌ててアイスピックを新聞紙に包み,外へ出た.殿下は歩いて, 長さんは車で山田を尾行した. そして山田がアイスピックを川へ捨てようとした瞬間
殿下「まて.」
殿下と長さんが山田に襲い掛かった.山田は散々暴れまわった末, 捕まった.だが
山田「こいつは罠だ.誰かが俺をはめようとしたんだ.信じてくれよ.」

アイスピックについていた血の血液型は被害者の物と一致した. 状況証拠も揃っている.だが皆釈然としなかった. 殿下の目には山田が「罠だ」と言う叫びが嘘だとは思えなかった. スコッチは,証拠隠滅の手口も幼稚すぎる,と言った.山さんは, 証拠を消す気なら犯行直後に始末するに違いない,と言った. 誰かが山田の部屋に忍び込んでアイスピックを置いたのかもしれない, とゴリさんは考えた.ボスはゴリさんにその線を当たれと言った. ゴリさんと山さんは山田の部屋へ行った.換気扇から投げ込めば, ちょうどガスレンジの上に落ちる.罠かもしれない.だが罠だという証拠もない. 山田の送検期日まであと二日.山さんは二本立てでいくしかないと考えた.

ゴリさんは公園で編物をする澄江に詰め寄った.
ゴリさん「本当のことを話してもらえませんか.」
澄江「何のことでしょう.私本当に何にも…」
ゴリさんは山田の写真を見せた.
ゴリさん「この男,ご存知ですか? 本当にご存知ない?」
澄江「本当ですわ.誰ですの,この人.」
ゴリさん「新宿セブンビル殺人事件の容疑者として逮捕された男です.」
澄江は驚いてそっぽを向いた.
ゴリさん「なぜ吃驚なさった?」
澄江「いえ,そりゃあ,吃驚しますわ,殺人犯だなんて…」
ゴリさん「おや,あなたが目撃した男はこの男じゃなかった. だから吃驚なさったんでしょう.」
澄江は躍起になって否定した.
澄江「失礼ね.この間申し上げた通り, 私はそんな場所へ行った事はないんです.」
ゴリさん「奥さん.奥さんの一言で一人の人間が救われるかもしれないんです. 話してください.」
その傍らで岡本の娘が遊んでいた.
ゴリさん「たった一言でいいんです. 澄江「私,何も隠してなんか.」
ゴリさん「奥さん.じゃ,話してください.20日の夜8時半頃,あなた, どこにいました? 」
澄江はアリバイを主張した.その口調はどこかぎこちなかった.
澄江「その日の事なら,はっきり覚えてますわ.あたし,歌舞伎が好きで, その日は帝国劇場の通し狂言を立見席で見てました.」
ゴリさん「帰ったの何時ですか?」
澄江「9時半です.幕間にうちへ電話したのも覚えてますわ.」
澄江は娘のチーコを呼び,電話したことを覚えているか,と訊いた. チーコはそのことを覚えていた.
澄江「まだお疑いでしたらお芝居の筋なんかお話しましょうか.」
ゴリさん「いえ,結構です.芝居の筋ならプログラムだけ買っても判ります.」
澄江「未だ信じてらっしゃらないんですね.どうしてでしょう.」
ゴリさんはなおも話そうとしたが,チーコの友達の美代ちゃんが来たのを口実に, 澄江達は立ち去ってしまった.
ゴリさんの声「何かある.ただ関わり合いを避けたいだけじゃない. 何かあるんだ.隠したい何か.」

なおも聞き込みは続いた.ゴリさんは帝国劇場へも足を運んだ. 長さん達は山田の友人を洗ったが,ろくな奴はいなかった. 疑い出せばきりのない連中ばかり. 行きつけのスナックで知り合った連中だけでもたくさんいた. 犯行の夜にそのスナックに出入りしたのは七,八人いたらしい. そのうちアリバイが証明できるのは2名だけ. 後の連中は容疑者リストに入れてもいいような者ばかりだった.

翌朝もゴリさんは澄江を見張っていた.そこへボンがやってきた. 山田は俺じゃないの一点張り. だがはっきり容疑者と言える人物は浮かんでこなかった. つまり山田を送検も釈放もできない状態だった. ゴリさんは帝国劇場での聞き込み結果をボンに言った. 帝国劇場の案内係が20日の夕方, 開演して間もなく立見席から出て行った女の客をはっきりと覚えていた. 顔はわからなかったそうだが,ブルーのスーツを着ていたそうだ. そのとき,澄江が夫の雄造を見送りに出た.澄江は雄造に革鞄を手渡し, 雄造は車に乗って出て行った.澄江が家に入った後
ボン「ご主人と何かしっくり行ってないみたいですねえ.」
ゴリさん「外見じゃあ,わからんよ,ボン.」
ボン「ええ.でも,うまく行ってるなら,何で嘘なんてつくんです. 旦那に知られたくないことがあるから…」
ゴリさん「だったらどうだって言うんだ.それを暴けって言うのか,ボン. 一人の人間が必死に隠しているものを暴きたてる権利が俺達にあるのか.」
そのとき澄江が青い服に着替えて出てきた. 早速ゴリさんとボンは澄江の乗るタクシーを尾行. 澄江は常東物産に入っていった.常東物産は雄造が勤める会社だ. つまり澄江は夫に忘れ物を届けに行っただけのようだった.
ゴリさん「ボン,降りて彼女のあとつけてくれ.俺は彼女の過去を洗う.」
ボン「え?」
ゴリさん「暴く暴かないは別だ.俺はどうしても真相が知りたい.」
ボンは澄江を尾行.ゴリさんはあちこち回った.ボンの尾行が続く. 澄江はスーパーで男物の下着を買っていた.それを聞いた長さんは, 澄江が浮気をしているのではないか,と考えた.時間は午後二時. 山田の拘留期限はあと一日に迫っていた.

ゴリさんは岡本夫妻が別れるらしいという噂があることを聞き込んでいた. 原因は澄江にあるらしい.澄江の浮気相手は同じ大学の同じ学年で, 経済を専攻していた田畑直という男だった. 早速ゴリさんは田畑のアパートへ行って話を聞いた.
田畑「20日の夜,私と会ったと,斎藤澄江さん,いや, 岡本澄江さんはそう言ったんですね.彼女がそう言ったんですか? あたしと会ったと」
ゴリさん「いえ.しかし,我々には奥さんの証言が必要なんです. その証言がない限り,ある男の無実を証明することができないんです.」
だが
田畑「私からは何も言えません.」
ゴリさんは思わず田畑を見た.
田畑「事業に失敗しましたので.はじめて澄江さんがどんなに大切な人だったか, それに気がついたんです.身勝手な私のことで, これ以上澄江さんに迷惑掛けられないんです.どうしても.」

屋台で呑んでいるゴリさんのところへボスがやってきた.
ゴリさん「確かに九分通り真相はつかめました. しかし…岡本澄江のプライバシーを侵さずに真相を証明することは, できないんですよ,絶対に.」
ボスは冷酒を飲んだ.
ゴリさん「実はですね,岡本澄江があの晩…」
ボス「話さんでいい.」
ゴリさん「でもボス,しかし…」
ボス「ゴリ.岡本澄江一人が証人じゃない.彼女が駄目だったら, 他の証拠を探すさ.」
ゴリさんはコップを置いて言った.
ゴリさん「ボス.しかし,このままほっとくなんて俺出来ないんですよ. どうしてもできないんだ.申し訳ありません. 下手すりゃプライバシーの侵害でボスが責められるのはわかってます. でも…」
ボス「いいんだよ,俺の事は.このままで山田を釈放したところで, 責められるのは同じだ.なあ,ゴリ. しかしそれで一番傷つくのはおそらくおまえ自身じゃないのか. それでもやるか.」
ゴリさん「はい.」
ボス「わかった.」
ボスはさらにおでんを注文するのであった.

翌朝.夫を見送った澄江にゴリさんは単刀直入に訊いた.
ゴリさん「奥さん.奥さん,あの日あなた,田畑さんと会ってたんですね.」
澄江はゴリさんを家へ上げた.
澄江「田畑さんがそう仰ったんでしょうか,あの日,あたしに会ったって.」
ゴリさん「違います.彼は会ったとは一言も言いませんでした. ただ,もう二度とあなたには迷惑は掛けない.」
澄江「あたしも会ったとは言いませんでしたね.あたしはあの日, 帝国劇場にいたんです.」
沈黙が流れた.
ゴリさん「奥さん.」
澄江「刑事さん.あたしはつまらない女です.大した夢もなく, ただ一日一日を人並みに平和に暮らしたい,そう思ってるだけなんです. でも,それだから,その,毎日の暮らしを守っていきたいんです. どんなことをしても誰にも邪魔されたくないんです.それが悪いことでしょうか?」
ゴリさん「悪くなんかないですよ.誰にだってプライバシーを守る権利がある. 自分の生活を守る権利もある.ですがね,奥さん. 私にはどうしても納得ができないんです.」
澄江は無言だ.
ゴリさん「わずか二日間,俺は奥さんを見て来たんだけれど, でも奥さんがいい人かどうかぐらい俺にだって判りますよ.」
澄江は涙含んでいた.
ゴリさん「なぜです. なぜ善良な人間が無実かもしれない男のための証言を拒むんです. なぜ凶悪な殺人犯を野放しにしようとするんです.その善良さは嘘です. 本当じゃない.そうでなかったら,そんな善良さが本当だったら, 俺達刑事は,いえ,全国の何十万の警察官は,一体何のために働いてるんですか. 毎日,命懸けで,一体何のために駆けずり回ってるんです.」
このゴリさんの真摯な説得が澄江の心を打った.澄江は泣きながら答えた.
澄江「身勝手なのは判ってます.でも,恐いんです,私. 田畑さんと会ったことを知ったら,愛情がないあたし達の生活なんか, きっとその日の内に…」
ゴリさん「愛情がないなんて何を言うんですか.」
チーコは「マッチ売りの少女」の絵本を読んでいた.
ゴリさん「あなた方ほど愛し合ってる夫婦なんて他にはいないですよ.」
澄江「そんな.田畑さんの事を知ってから,主人は私に凄く冷たくて. 私だって同じなんです.本当は私,心の底では未だ田畑さんの事を…」
ゴリさん「奥さん.あなた,毎朝御主人を送り出して,忘れ物があったら, 飛んでって会社へ届けてる.暇さえあれば, ご主人のゴルフのヘッドカバーを編んだりしてる. それが愛情だと思うんです.あなたはただ,それに気がついてないだけです. あなたが本当の事を言っても何も壊れたりはしません. 決して何も失われたりはしません.そう信じてあげませんか. 私はこうしてお願いに来たんです.どうか話してください.」
澄江「刑事さん.」
澄江はゴリさんに証言した.
澄江「あの日,あたしは劇場を途中で抜け出して, 主人には内緒で田畑さんと会ってしまったんです. でも今のあたしには何にも話す事はなく別れました. 急いでうちへ電話した時,あの事件を見てしまった.」
澄江は机に突っ伏してしまった.

ボスはゴリさんから電話を受け,真犯人が顎に傷のある男だと言う事を知った. そしてボスは長さんに,山田の友人に顎に傷のある男はいないかと尋ねた. 長さんは,それは山崎やすじだと答えた.例のスナックの常連だ. ボスは山田を釈放するよう山さんに命じた. そして真犯人山崎は長さんと殿下に逮捕された.

次の日.澄江の家を見張るゴリさんにボンが山崎が捕まったことを話した. だがゴリさんは上の空だった.そのとき, 岡本一家が仲良く出てくるのを見かけた. 三人は仲良く車に乗り家族旅行に出かけていった. 嬉しそうにゴリさんは無線でボスに報告した. 長さんはお祝いに一杯呑もうと言い,ゴリさんは大喜び.
ボス「酒呑んでる暇あったらなあ,帰って嫁さんでも探せ.」
ゴリさん「そりゃあないでしょう.」
ボス「ゴリ,何か言ったか?」
ゴリさん「いえ,何も.」
ボスは自分を指差す山さん達にも「何か言ったか?」と言い,バツが悪そうに
ボス「何時だと思ってるんだ.仕事,仕事.」
と誤魔化すのであった.

次回はボン主役編です.ボンが事件の関係者に淡い想いを抱きます.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp