2002年2月16日

「太陽にほえろ!」第64話「子供の宝・大人の夢」

脚本は小川英.監督は竹林進.主役はボス.シンコの登場はありません.

団地の公園で子供達(松田洋治ら)がおもちゃで遊んでいた.そのとき, 一郎(松田洋治)という子供が目が痛いと泣いた. 驚いた母親は一郎を病院に入院させた.

問題のおもちゃを売っていたのは梅田玩具という会社だった. 山さんとゴリさんは梅田玩具を訪れて事情聴取した. 梅田玩具製のおもちゃに塗られている塗料が原因と見られる事件が, 続発していたからだ.社長の梅田(千秋実)は理由がわからないと答えた. 工場を検査したのだが問題とされる塗料に有毒物質はなかった. 梅田は専務の高木達郎におもちゃの回収を指示した. 危険なおもちゃを作った責任を取るためにだ.高木は無茶だと言ったが
梅田「こんなことで会社は潰れはしないさ.潰してたまるもんか.」
だがこれは梅田に降りかかった災難の始まりに過ぎなかった.

ジーパンは一郎の病室を訪れていた.ジーパンはロボットのおもちゃを手に取り, 動くんだろう,と一郎に言うと,動くさ,と一郎は答えて動かした. だがロボットは下へ落ちて壊れてしまった.ジーパンはロボットを直し, 一郎の目が治った時に持って来てやると約束した. そこへ高木がやって来た.お詫びに来たのだ. だが一郎の母親は「一郎の目を返して.」と叫び,追い返してしまった. 仕方無く高木は立ち去った.その高木の後をつける男がいた…

七曲署でジーパンは一郎のおもちゃのロボットを修理していた. ゴリさんは気は確かかとジーパンをからかった. 一郎は目を手術することになっていた.手術が成功する確率は50%. そこへボスが入ってきた.また梅田玩具の高木専務が「首吊り自殺」したのだ.

高木じゃ遺書を残していた.文面は「大変申し訳ない事をしました 心からお詫びします」ボスはジーパン達に高木の様子を尋ねた. ジーパンもゴリさんも山さんも高木が参っている様子だったと答えた.
ボス「これが本物の遺書だとすれば,つまり,覚悟の自殺だとすれば, 梅田玩具は重大な過失もしくは手抜かりがあったことになる. 梅田社長がどう強談判してもな.」
そこへ梅田がやってきた.梅田は高木の遺体を見て悲しんだ. そして梅田は自殺説に異議を唱えていた.その理由は
梅田「彼は自殺するような男じゃない. どんな苦しい時でも投げ出すような奴じゃない. この20年一緒にやって来た,私が一番良く知ってるんだ.」
ボスは梅田の言葉を聞き,何かピンと来た様子だった.

梅田玩具は痛手をこうむっていた.苦情の電話は鳴りっ放し.倉庫は返品の山. これでは今月の売上は0だ.苦情ばかりで仕事にならない,と社員が言うと
梅田「それに誠実に答えるのが君らの仕事だ. 君達の子供達がこんな目にあった時の気持ちを考えてみなさい.」
居合わせたボスはその言葉をしっかり聞いていた.別の社員がやって来て, 資金が底をついたと報告した.梅田は, 新工場建設資金として借りた銀行からの借入金を回せと命じた.
梅田「金は先でどうにでもできる.兎に角,今はこれ以上, 一人でも被害者を出さないこと. それには全製品を回収するしか方法がないんだ.」
やっと梅田がボスと話す時間ができた.
ボス「高木専務もあなたと同じ気持ちで会社の経営を.」
梅田「ええ.特に工場の管理, 製品の安全性の確保は慎重すぎるほどやってくれていました. それがどうして.金や品物は時間を掛けて努力すれば作れます. しかし人間だけは取り返しがつきません.高木君も傷ついた子供達も.」
梅田がおもちゃ製造について考えていることは, ボスが捜査に当たって考えていることと全く同じだったのだ. そこでボスは恨まれる覚えはないかと尋ねたが,梅田は否定した.
梅田「私が人の恨みを買うような仕事をしていたら, きっとこの十倍の会社に成長していたでしょう.まあ, 気障に聞こえるかもしれませんが,私は儲けることなんかどうでも良かった. ただ一生,子供の夢を作って生きていければ,それで満足なんです.」
それを聞き,ボスは質問を打ち切って立ち去った.梅田は社員から 「高木が自殺」した事件が夕刊に大きく載っていることを告げられた.

ボスは梅田と高木は白だと考えた. 梅田と高木の工場管理にミスがあったとは思えなかったのだ. ましてや利益をあげるためにいい加減な塗料を使うなんて考えられない. 実際,鑑識の結果,梅田玩具のおもちゃからは有毒な塗料は検出されなかった. 誰か会社に悪意を持った者が問屋か小売店などで有毒塗料を塗ったに違いない. 透明な塗料ならどこだって塗れる.長さんと殿下は高木の遺書を問題にした. 筆跡鑑定の結果でも本人が書いた物に間違いがなかったからだ. ボスは高木の遺書には「死ぬ」とは一言も書かれていなかったことを指摘した. 有毒おもちゃの詫び状とも受け取れる文面だ. 病院を出てからの高木の足取りはつかめていなかった. 長さんは犯人の動機をボスに尋ねたが, ボスにはそこまで見当はついていなかった. 梅田の人柄を信じてみようとボスが考えただけだ. 殿下は産業スパイ説を唱えたが,山さんは異議を唱えた. 梅田玩具は業界でもBクラスだった.他社が妨害するほどの規模ではない. そこへ電話が.電話を切った後
山さん「ボス,あれはやはり偽装殺人ですね.」
高木の死亡推定時刻は9時から11時だ.だから自殺なら, その時刻には木に高木がぶら下がっているはずだ. だが夜の11時過ぎに近所に犬を連れて散歩した人の話では, 木に死体がなかった.その近くの交番の警官が聞き込み, 電話してきたと言う訳だ.ボスはわざと新聞には 「高木の死は自殺と断定.捜査は打ち切り」と流すことにした. 真犯人を油断させるためだ.ボスは子供を無差別に狙ったことが許せなかった. だからどんな手段を使ってもいいと言った.

一郎の手術が終わった. ジーパンのテーマのスローバージョン(トランペット版)が流れる中, ジーパンはロボットのおもちゃを持って病室へ行った. そして一郎の手術がうまく行かなかったことを知った. 医者はもう一度やると言っていたが,一郎の母はもう駄目だと思っていた.
ジーパン「諦めちゃ駄目ですよ.こいつ(ロボット)だって待ってるんです. 一郎君の目が見えるようになるのを.お母さん, あなたがしっかりしなくちゃ駄目ですよ.もう一度やってみるんです,手術を.」

その頃,あの時高木を追いかけていた男が, 公衆電話から電話を梅田玩具へ掛けていた. 男は梅田に責任を取るように言った.責任は取る,と梅田は言ったが
男「逃げ口上はよせよ.あんたが取らないんなら, そこの社員達に責任はとってもらうぞ.」
梅田は意味がわからず聞き返した.
男「いいかい,梅田さん.社員達がかわいかったらねえ, みんなにこれだけは伝えておくんだな. いつまでもそんな会社に勤めてると,いつどんな目に遭うかわからんとな.」
男は笑って電話を切った.梅田にはどういうことか,さっぱりわからなかった.

梅田玩具の女性社員が郵便局へ行った.その後をあの男がつけていた. そして女性社員が交差点で信号待ちしていたところを背中を押され, トラックに轢かれてしまった.病院に駆けつけたボスに梅田は電話の件を話した. その夜.梅田玩具の社員がビルの工事現場のそばを歩いていると, すぐそばに鉄骨が落ちてきた.だが運良く鉄骨は社員には当たらなかった. それを電話で梅田は聞かされた.トラックに轢かれた女性社員は一命を取り留め, 後ろから押されたと証言していた.
梅田「なぜだ.狙うなら,なぜこの私を狙わないんだ.」
ボス「犯人はあなたを苦しめようとしている.それが奴の狙いかもしれません. とすれば,必ずもう一度電話が掛かってくる.そいつを待つんです.」

翌日から山さんが梅田玩具に張り付くことになった. 梅田は社員全員に休むように命じたのだが,欠勤者は一人もいなかった. そこへ男が電話を掛けてきた. その日の午後4時にあけぼの公園へ現金500万円を持って来いというのだ. 山さんは自分達の指示に従うように梅田に言った. 梅田はそのことを承知した.さらに山さんは現金を用意する必要はないと言った.

あけぼの公園には山さんと長さんが張り付くことになった. ゴリさん達は自分も行くと言ったが,ボスはこう言った.
ボス「駄目だ.今,こっちの手口をさらす訳には行かん.」
殿下「なぜですか.」
ボス「これは敵の本当の狙いではないからだ.」
さてあけぼの公園では一人の男が梅田に近づいた. 早速長さんと山さんが男を締め上げたが,男は犯人ではなかった. 犯人に頼まれた男にパチンコ屋で千円貰って頼まれ,やってきただけだったのだ. 山さんはボスに合図.犯人はあけぼの公園を双眼鏡で覗いていた.

遂に梅田は会社の経営から手を退く事を決意した.だがボスはこう言った.
ボス「それが犯人の狙いであってもですか?」
梅田「狙い.それが?」
ボス「それ以外,何がありますか.会社の信用を失墜させ,あなたを脅し, 社員を傷つける.全てあなたを窮地に追いやるための工作としか思えない. 残念ながら証拠は何一つありませんが.」
梅田「例えそうだとしても私の気持ちは変わりません.」
ボス「子供の夢を育てるのが,あなたの一生の夢だったはずでしょう. それを今投げ出したら.」
梅田「投げ出したくはない.私が責められて済むことなら, 石に噛りついてでも続けたいです.しかし私のために社員が傷つくのも, 黙ってみていることはできません.例え警察の力にすがっても, 全従業員80名全てを守りきることは不可能でしょう.」
ボス「その通りです,梅田さん.」
ボスは驚くべき作戦を発案した.
ボス「しかし,一つだけ手があります.全社員が蒸発するんですよ.」

翌日から梅田玩具の社員が全員いなくなった.新聞は大々的に報道した. その件について西山署長は理由をボスに尋ねた. ボスは梅田玩具の社員を守るために行なったと答えた. 西山署長は梅田玩具の社員が襲われたのは有毒行為に憤った者の仕業だと考え, さらに高木専務自殺をボスが秘かに他殺として調べていることを知っていた. ボスはこう開き直った.
ボス「その上さらに一捜査係長である私が独断で, その悪徳会社の社長と社員全員をどこかに蒸発させたことも今やご存知です. 私を首にする条件はこれで十分揃ったわけですね. ご遠慮なくそれを発表してください.そろそろ記者会見の時間です.」
西山は激怒したが,ボスの方が上手だった.記者会見の文面まで考えていたのだ.
ボス「ええ,梅田玩具社員はおそらく何者かを恐れて, 全員一致して姿を消したものと思われる. 我が七曲署は彼らの行方を追及するとともに, 事件の核心をつかむため一係捜査官を数名特殊任務に着かせる事にした. で,記者諸君は街で彼らを見かけても, 決して正体を明かさないよう協力して頂きたい. これがあたしの考えた署長の発言内容なんですがね.」
西山は激怒したが, 何もかも発表すれば梅田玩具社員が九分九厘被害を受ける事をボスは指摘し, さらに,首になってそうなった場合は全責任が西山にあるとマスコミに発表する, とボスは開き直った.そこへジーパンが入ってきた. 記者会見の時間になったからだ.仕方なく西山はボスの言う通りに話した.

捜査一係室に戻ってきたボスに長さんと山さんが調査結果を話した. 山さんの調べでは梅田玩具を恨んでいる人間はほとんどいなかった. 今度の塗料事件以外に事故らしい事故はなかったし, 20年前の会社創立時に共同経営者だった男がすぐに辞めていたが, その男は今は南米で事業に成功して今も南米にいるらしい.
ボス「南米とはまた遠いなあ.しかし誰かいるはずだ.必ずいる. 梅田社長と社員の行方を絶対探さずにはいられない誰かがな.」

梅田玩具には取引相手の者(うち二人はゴリさんと殿下の変装)が押しかけていた. 梅田玩具の事務室には電話番(ジーパンと久美ちゃんの変装)がいるだけ. そのとき,一人の男(武藤英司)がジーパン達に質問した.
男「誰に雇われたんだね.」
ジーパン「いえ,あのう,誰って,アルバイト協会の紹介で来たんです.」
久美ちゃん「昨日,ここの会社の人に面接されて,一週間分,前金で貰ったの.」
男「ふーん.じゃあ,社長の居場所は知らないというのかね.」
久美ちゃん「知るわけないでしょう.ねえ.」
ジーパンは肯いた.
男「ほう.」
ジーパンは肯いた.ゴリさんと殿下は一芝居打ち,ジーパン達に詰め寄った.

殿下がボスに首尾を報告した.ボスはもっとねばれと命じた. 犯人はボス達よりも焦っているはずだ.夜になった. ゴリさんはずっと座り込んでいた.朝が来て,犯人(武藤英司)が現れた. 犯人はゴリさんに協力しないかと話を持ちかけた. 座り込みよりも確実な方法があるのだ.余談だが, 今週のスコッチ編も武藤英司さんが犯人だった.偶然とは言え,面白い.

ジーパンと久美ちゃんが出勤してきた.そこへゴリさんが登場. ゴリさんはジーパンと久美ちゃんを連れ出し,思いっきり脅した.そこへ
犯人「学生さん,その人の言う通りだ.私達はどんな事をしてでも, 梅田さんに会いたいんだ.逆らわない方がいいねえ.」
ジーパン「知らないと言ったでしょう.社長の居場所なんか.」
犯人「いいや.君は知ってるよ.いいかね,君は我々債権者が押しかけた時も, 驚いた顔一つしなかった.ということはつまり, ある程度後の事は任せられている証拠だ. 当然何かの時には社長に連絡を取るように頼まれてるはずだな.違うかな.」
ここぞとばかりに
ゴリさん「さあ,言えよ.」
ジーパンが渋ったのでゴリさんがジーパンを殴った. 「ゴリさんの剣幕に負けて」久美ちゃんが梅田の居場所を話した. ゴリさんと犯人はジーパンと久美ちゃんを縛り上げ, 梅田のいるところへ向かった.

犯人が中に入ると,一人の男が後ろ向きになってソファーに座っていた. 犯人はその男が梅田だと信じ込んでいた.
犯人「梅田,私が誰だかわかるかい.」
ボス「ああ,わかるよ.牧村聖一郎.」
犯人の牧村は驚いた.ソファーに座っていたのが梅田ではなく, ボスだったからだ.
牧村「あ,あんた.」
ボス「七曲署の藤堂だ.」
牧村「そ,そんな.どうして.」
ボス「梅田社長個人を恨んでいるのは, いくら探しても他にいなかったんでねえ. 念のため,あんたが事業で成功したと言う国の警察に問い合わしたんだ. 成功どころか札付きの悪党で,未だに行方不明だと聞いた時, 俺にはその大筋が読めたんだ.」
牧村はゴリさんを盾に抵抗しようとしたが,ゴリさん, ジーパンが正体を現した.長さんも山さんも現れた.そして梅田も現れた.
梅田「なぜだ,牧村.20年前私は,お前が会社の金を使い込んで, 悪態をついて出て行った時も,やる気になったら戻って来いといった. お前の持ち株はそのままにしとくとも約束した.約束通り, 今でもお前の持ち株は金庫の中に大切にしまってあるよ.私は, 私は昔の友達が戻ってくるのを待っていたんだ.」
ボス「梅田さん.その株券がこの事件を作ったんです. 偽名を使って日本に帰ってきたこの男は,あなたが昔の約束を守って, 株券をそのままにしてるのを知った.会社を傷つけ, あなた方に自殺の動機を作って殺せば,人生がもう一度やり直せる. それがお前の考えたことだ.」
梅田は呆然とした.
ボス「そのためには手段を選ばず, 何の罪もない子供や社員にまで危害を加えた.」
牧村「畜生.」
牧村はボスに襲い掛かったが,ボスの敵ではなかった. ボスが鉄拳を喰らわせた後
ボス「逮捕しろ.」
ボスは梅田に言った.
ボス「これからも子供達のためにいいおもちゃを作ってやってください.」
梅田はボスに礼を言うのであった.

ジーパンのテーマのスローバージョン(ギター版)が流れる中, 一郎の病室をジーパンが訪れた.一郎の二度目の手術は成功していた.
一郎「こんなにもらっちゃったあ.」
梅田社長が一郎にプレゼントしたのだ.

七曲署にも梅田玩具のおもちゃが届いていた. 久美ちゃんはパンダの縫い包みをボスに渡した. ちなみにゴリさんにはゴリラの縫い包みが渡されていた.
ボス「例え人間チョンガーでもいずれは子供が生まれ孫ができる. その連中がきっと梅田のおもちゃをかわいがってくれるに違いない. 梅田玩具健在なりだな.」
みな梅田玩具のおもちゃで遊ぶのだった.

次回はマカロニを殺した奴を捕まえるため,山さん達が頑張ります. 見事犯人が判明し,逮捕しに山さんが出かけますが…

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp