2002年2月12日

「必殺仕業人」第27話「あんたこの逆恨をどう思う」

脚本は松田司.監督は高坂光幸. 話数調整のために制作された話で,その関係で大出俊さんは出演していません.

ある晩.和泉屋に押し込み強盗が入った.赤兎馬組の仕業だ. その頃,主水は屋台で冷酒を呑んでいた.その時,捕り物の笛の音が. 仕方無く主水は屋台を後にした.だが一人でも捕まえてみろ, 牢屋見回りから足が洗えるぜ,と同心から言われ,興が冷めてしまった. とは言うものの主水は赤兎馬組の一人(大竹修造)を見つけ出した. 主水は見逃そうとしたが,同僚(不破潤)が捕まえてしまった.
盗賊「畜生.覚えてやがれ.」
主水「捕まえたのは俺じゃねえぞ.恨むなよ.」
盗賊「覚えてろ.」
主水「恨むなよ.」
これが主水に降りかかった災難の始まりだった.今回はここでタイトル表示.

翌日牢屋敷で.主水は銀次から身辺に気をつけるよう忠告された. 昨日の盗賊は赤兎馬組の頭羽三(浜村純)の息子三蔵で, 三蔵を捕まえた同心岡田と主水をただじゃ置かないとわめいていたと言う. 三蔵はその日打ち首にされた.

さてせんとりつはスイカが冷えたと大喜び. 剣之介とお歌はスイカを割る芸を見せたが相変わらず不評だった. 主水が歩いていると同心の岡田が殺されたと岡引から知らされた. スイカに毒が仕込んであり,奥方は散々犯された. さらに小塚原にさらされていた三蔵の首がなくなったという.

主水は早速自宅に帰った.千勢は出かけていった.明日には帰ると言う. 主水は,赤兎馬組が襲ってくるかもしれない,という話をしようとしたが, せんとりつが大袈裟に騒ぐかもしれないと考え,やめにした. せんとりつはスイカを出そうとしたが,主水は岡田のことを思い出し, まず毒見をしてから,と言い出した.結局主水はスイカを食べず, せんとりつがうまそうに全部食べた. せんは「婿殿に似て種がなくて」と言い出す始末. その晩.りつはスイカの食べすぎでお腹を痛めてしまった.

翌朝.主水は赤兎馬組が襲ってくるかもしれないと上役に申し出ていたが, 素気なく断られた.主水は剣之介とお歌に赤兎馬組の話をした. お歌は赤兎馬とは何だと聞いた.赤兎馬とは三国志に出てくる馬だ. 捨三の話だと,やいと屋はちょっとした仕事で出かけていた. やいと屋は神棚に手紙を置いていた.手紙の文面は
剣之介「ちょっとした仕事で姿を消さしてもらう. ほんの二日か三日,いやもっと長くなるかもしれない. 用事が済めばいつものところへ顔を出す.もう一つ.八丁堀へ. 赤い馬が酷くお前のことを恨んでいるらしい.気を付けな.又. 八丁堀,お前の言っていることも案外杞憂ではないらしいなあ.」
お歌「杞憂って何?」
剣之介「心配し過ぎって事だ.」
主水は婆を守ってくれないかと剣之介に頼んだ.だが剣之介は渋った. 剣之介はお尋ね者なので八丁堀界隈に昼間行くわけにはいかない. 捨三は金さえもらえばと答えた.

その頃,中村家にスイカ売りが来ていた.せんはおいしそうと一つ取った.
主人「これもおいしいですよ.」
何と主人が見せたのは三蔵の首だった.そう. 赤兎馬組が中村家を襲撃しに来たのだ.スイカ売りの主人は赤兎馬組の頭羽三. 羽三の妻お駒は三蔵の首を仏壇に供えた.

羽三とお駒はせんとりつに襲った理由を話した. そしてお駒は三蔵の首に頬擦りしながら言った.
お駒「慌てるんじゃないよ.今すぐには殺しゃしないよ. 主水が帰ってきて三人並べてこの子の前でゆっくりと恨みを晴らさせてもらうよ. 三蔵.もう少しだからねえ.お前の仇は取ってやるからね. お前が牢の中から仲間にことづけてくれた手紙には, 中村主水さえ見逃してくれれば俺は助かったんだって, 何度も何度も書いてあったからねえ.本当に悔しかっただろうねえ. おっかさんはねえ,捕まえやがった同心よりも中村主水の方に腹が立つんだよ. きっと主水の奴,むごたらしく殺してやるからねえ.」
スイカの食べすぎでりつは厠へ行きたがったが,我慢しろとお駒は言った. そこへ魚屋や大根売りに化けた赤兎馬組の連中が続々とやって来た.

ああは言ったものの捨三は中村家へとやって来た. 何となく様子が変なので裏へ回ってみるとせんが掃除をしているのが見えた. そこへ千勢が帰ってきた.捨三は相変わらず様子を伺っていた. 千勢も赤兎馬組の連中に監禁されてしまった.羽三は千勢を見て
羽三「この女,向こうの女どもと違って土断場には死に物狂いになる女だ. 騒がれちゃ元もこもなくなる.」
手下はなおも千勢を欲しがったが
羽三「馬鹿.ここは八丁堀だ.」

主水は気が気でなかった.剣之介の背中を拭くお歌に剣之介は, 暗くなったら八丁堀の家へ行ってみようと言った.

暮六つになった.寺子屋の生徒達がやってきた. 赤兎馬組の面々は千勢に今日は気分が悪いのでお休みだと言わせた. 捨三は喜んで帰る生徒達から話を聞いた. 千勢は生徒達を部屋へ入れようとせず, 恐い調子で「今日は気分が悪い」と言ったと言う. これを聞いた捨三は異変を察知した.

牢屋敷を出た主水に捨三は異変を伝えた.主水は早退を申し出,帰った. 捨三は奉行所の助けを借りないのを訝しんだ.主水はこう答えた. 事務手続きで二,三日かかるので間に合わないのだ. そこへ赤兎馬組の連中がスイカ売りに化けて出てきた. 捨三からそれを教わった主水は赤兎馬組の連中を殴り倒した.

捨三がスイカ売りに化けているのを見て剣之介は急ぐぞとお歌に言った. 捨三は合言葉を言って見張りを誘きよせ,主水が叩き斬った. そこへ剣之介が登場.主水は中村家へ乗り込み,羽三を刺した. 剣之介は千勢に襲い掛かった赤兎馬組の二人を次々とやった.その頃
お駒「三蔵.お前が生きてた時は毎朝こうやって髪をすいてやってたねえ. もうすぐだよ.もうすぐ恨みを晴らしてあげるからねえ.」
何と天井裏から赤い光が.お駒は額に鍼を刺され,絶命. それを見てせんとりつは叫び声をあげて外へ出た.
千勢「それはもう素敵な男性でございましたわ,虚無的で.低い声で, 名乗るほどじゃねえ.あんな男性,世の中にいたんですね.」
りつ「あたくしの方にいらした方もいい男. きびきびして若くてまだ前髪立ちで.」
せん「いいえ.前髪ではございません.立派な殿方でございましたよ.」
だが千勢もせんもりつも赤兎馬組の連中をやった者の顔を, はっきりと見ていなかった.さらにせんとりつから, 主水は赤い光を見たことを聞いた.主水はお駒の死体を見て気がついた.
主水「やいと屋か.」

洗濯屋で主水はやいと屋からの手紙を読んだ.
主水「というわけで今度の仕事は俺一人でやるつもりだった. 赤兎馬のお駒一人消せばよかったんだからな.しかし,お前達がいてくれたんで, 助かった.これは礼金だ.おさめてくれ.私は少し金が入ったから, 温泉にでもつかってくる.しばらく江戸を留守にする.あばよ.」
捨三「ちきしょう,いいかっこうしやがって.それにしても旦那, いってえ,誰に頼まれたんでしょうねえ.」
剣之介「あいつだいぶ貰ったらしいなあ.」
主水「おめえ,なんで二両取るんだよ.」
剣之介「俺は二人やったんだよ.割増貰わなきゃ合わねえ.」
そう言って出て行った.
捨三「あっしも遠慮なく.」
小判を取った捨三は赤兎馬組捕まえたと手柄を立てればまた定町回りに格上げだ, と言ったが
主水「冗談じゃねえや.あんな不思議な死に方した仏さんだ. 一々洗われたらこっちの体が危なくてしょうがねえ. それに牢屋見回りが手柄立てたんじゃ,町奉行所の名折れになる. ま,というところで,赤兎馬組仲間割れというところで一件落着だ.」

主水はスイカを担いでいるところを子供に笑われた. そして家に帰って来ると,せんはスイカを見ると寒気がする,と言うのであった.

「特捜最前線」第103話「帰ってきたスキャンダル刑事! I」

前後編とも脚本は塙五郎,監督は野田幸男,主役は桜井.

横浜で女(山科ゆり)が麻薬を買っていた. さらに一人の男がある男(ジェリー伊藤)の写真を持ち, 写真の男のことを調べ回っていた.クラブで支配人から, 明美なら知っているかもしれない,と聞いた男は踊子の明美に金を見せた. 明美は冒頭で麻薬を買った女だった.

翌朝.横浜の中華街で橘と吉野は情報屋の小原に, ヘロインの売人吉岡(蟹江敬三)の行方を尋ねていた. ニューヨークコネクションのヘロイン密売組織を追っていたのだ. 写真には岡野の他,女と子供も写っていた.小原は調べさせてください, と誤魔化して中座し,トイレへ駆け込んだ. トイレの中でヘロインを射とうとする小原は, 外国人にサイレンサー付拳銃で撃たれてしまった. 死に際に尾花は写真の女が吉岡の妹明美でペイ中であることと, 元町の外人専門のクラブのダンサーである事を言い残した.

小原を撃った拳銃はベレットM1931で日本にはほとんど入ってない代物だ. 東京での仲買人は真栄会の吉岡だが,日本にはこれだけのヘロインの卸元はない. 組織はおそらくニューヨークだろう.津上は, ニューヨーク市警へ行っている桜井に協力をしてみてはどうか,と言った. 船村もそう思って既に連絡してみたのだが所在がはっきりしないと言われていた. そこへ蒲生が登場.ニューヨーク市警の副長官が親善のために来日すると言う. さらに副長官と一緒に桜井も帰ってくると言う.

というわけで特命課の面々は成田空港へ行ってみたが, 副長官のジョセフ・ハーマンに桜井は随行していなかった. その頃,橘と吉野が明美のところに乗り込んでいた. 明美の部屋には男も一緒だった.
吉野「おーい,色男.起きろや.ふーん,一人でいいことして.おーい, 起きろよ.」
吉野はベッドに寝ていた男を足蹴にして叩き起こそうとした. だが男はなおも起きようとしなかった.
吉野「おい,こら.いつまで寝てるんだよ.」
男「うるせえなあ.」
何と男は桜井だった.吉野は吃驚仰天.橘は桜井とは初対面だった. 明美は麻薬を使っていないとほざいて腕を見せたが,桜井が脚を見てみると, 脚には注射の痕がたくさんついていた.さらに桜井は注射器を発見. 橘はヘロインをどこに隠していると訊いたが明美は話さなかった. だが桜井が明美のブラジャーの内側を検べてみると, 明美のブラジャーの内側にヘロインが入っていた. 橘は吉岡から貰ったのか,と訊いたが,明美は喋らなかった. 桜井は売人が誰か喋ればヘロインを返してやると言うと, 明美は新栄会のチンピラから貰った,兄じゃない,と答えた. 桜井が約束通りヘロインを返してやると, 明美は鉢植えに隠してあった注射器を持ち,トイレへ直行.
橘「何をするんだ.ダメだぞ.おい,開けろ.馬鹿な真似はよせ.」
桜井「どうせパクるんだ.楽しませてやれよ.」
桜井に向かって橘が言った.
橘「違う.お前のやり方は違う.」
桜井「あの女に何かしてやれるのかい.情報屋と同じだろう.」
橘は桜井をジロッと睨んだ.これが長い対立の始まりだった.その頃, 成田空港では,蒲生は恥をかいたと言って桜井の事を船村と津上に話していた. 桜井はニューヨーク市警から国外退去を命じられていたのだ.

特命課で蒲生が桜井のことを説明した.桜井は初めは模範的な刑事だった. ところが突然昨年の夏ごろからニューヨーク警察の持て余し者になっていた. 市警察の権限が及ばないことをいいことにやりたい放題だった. 警察手帳を見せてただで飲み食い,町のやくざを強請って金を穫る, 市警の幹部に絡んで殴るなど.ハーマンは報告書を蒲生に渡していた. 蒲生は上層部に渡して判断を仰ぐつもりだったが, 船村はまず桜井に事情を尋ねてはどうかと言った.蒲生はこう言った. 桜井は随行の話を蹴って三日前に日本に帰ってきていた.それなのに, 特命課に顔を出さないのはどういうつもりなんだと. そこへ吉野と橘がやって来た.橘は明美を病院に入れていた. そして橘は吉岡の家を見張るつもりだった.吉岡は子煩悩らしいからだ. そのやり方を吉野は生緩いと思っていた.
吉野「桜井さんみたいにビシッとやんないと.」
船村「桜井君?」
吉野「あれ.そういやあ,桜井さんはどこにいるんですか.」
津上は行方不明だと答えた.
吉野「俺,さっき会いましたよ.」
蒲生「どこで?」
吉野「いや,だから吉岡の妹のところで.いや,格好良かったですねえ. あれをアメリカスタイルって言うんですねえ. あっという間に薬をみつけだしてですねえ…」
吉野は桜井に心酔しているようだ.
蒲生「吉野!」
吉野「はい.」
蒲生「桜井,どこだ?」
吉野「いや,どこだって,だから,どっか行っちまったんですよ. ここへ来たんじゃないんですか?」
蒲生「見つけ出せ!」
津上はうんざりしてしまった.
蒲生「あたしゃ責任持たないよ.え.これ以上問題起こしたら,お前.」
座は白けてしまった.
蒲生「はあ.あたしゃ,どうしてこう運が悪いんだろうねえ.」

桜井は両親の元にも帰っていなかった.津上は桜井が乗って来た, パンアメリカン801便の乗客名簿を頼りに桜井の行方を探した. そして清水光枝のマンションを訪れた. 最初に出たのは娘の麻里(ナンシー・チェニー). 英語で話されたので津上は困ってしまった. 部屋に入った津上は光枝(弓恵子)に会い,話を聞いた. 光枝はニューヨークにすき焼きレストランを出している関係で, 日本とアメリカを何度も往復していたのだ. 光枝は桜井を知らない,と答えた.だが津上が帰ろうと車に乗ろうとすると
麻里「刑事さん,桜井を探してるのね.」
津上「え? 知ってるんですか.」
麻里「ママは嘘言っています.桜井の事は良く知ってるんです.」
津上「本当ですか.」
麻里「桜井は悪い人です.私,嫌いです.好きでもないのにママを抱いて, 騙してる.」
津上「何があったか知らんが,桜井さんは悪い人じゃないよ.」
麻里「警察で捕まえればいい.桜井はママの店に来ます. 六本木のハーレムってクラブです.」

その晩.津上はハーレムで桜井と会っていた. 酔っ払った桜井は光枝のヒモになりたい,とほざいていた. 津上は桜井の変わりようを船村に電話で報告し,嘆いていた. 桜井はハーレムの客を片っ端から職務質問していた. 外国専門のクラブの支配人(中田博久)は金を渡し,よそで遊べ,と言った. だが津上は桜井を見るうちに彼の行動の目的がわかってきた. どうやら桜井は誰かを探しているようだった. ニューヨークから追ってきたのだろうか.

翌朝.ホテルから出てきた桜井に津上は一緒に特命課に戻ってくれと頼んだ. そこへ無線が入った.吉岡が自宅に戻ったというのだ.
桜井「山は何だ?」
津上「麻薬です.吉岡って男は東京での麻薬組織の中心人物なんですよ. 奴さえパクればその先の大きな組織のことだってわかるはずなんです.」
結局桜井は津上と一緒に吉岡の家へ行った.特命課の面々と再会した桜井は, 早速乗り込もうとした.だが橘に止められた.拳銃を持っている上に, 妻と子供が一緒だからだ.それでも桜井は乗り込んでいった. 何と桜井は吉岡の妻の春子を盾にとり
桜井「吉岡,撃ってみろ.お前の女房を撃ってみろ.」
吉岡は家を出て逃走したが,結局桜井にしこたまぶん殴られた. そして桜井は例の写真を出して吉岡に見せた.
桜井「知ってるか.」
吉岡は震えながら答えた.
吉岡「し,知らない.」
桜井「良く見ろ.宮本だ.お前に薬をよこすのはこの男か?」
吉岡「ち,違う.」
吉岡をぶん殴る桜井は橘と船村に制止された.吉岡が連行された後, 船村は写真を手にとり
船村「この男を探しているのか?」
慌てて桜井は写真を取り返した.
桜井「あんたには関係のないことだ.」
船村「私達だって仲間じゃないか.」

桜井は船村に連れられて特命課に顔を出した. 吉野は桜井がやったやり方で吉岡を調べると張り切ったが
橘「俺は反対だ.あれじゃ,まるでリンチだ. あいつらにだって人権って奴があるんだぞ.」
吉野「何言ってるんですか.奴らのやってる事は人間のやる事じゃないでしょう. 大体,俺は最近面白くなかったんですよ.何か皆糞真面目になって. 悪い奴は悪いんだから徹底してやりましょうよ.」
橘「吉野,俺達は刑事だぞ.捜査して逮捕する. 俺たちができるのはそこまでだ.人を裁くのは俺達の仕事じゃない.」
吉野「だから面白くないんですよ.面白くないんですよ. 桜井さんは吉岡をパクった.それでいいじゃないですか.」
橘「違う.あれはやりすぎだ.」
吉野「それは相手によりけりでしょう.」
橘「ま,いいだろう.だが俺は違うと思う.」
そのとき桜井が口を開いた.
桜井「アメリカにも同じような刑事がいたよ. 犯罪者を憎めないでどうやって救おうかって思ってる奴だ. みんな奴の事を牛と呼んでいた.俺はそいつが好きだった. しかし結局は殺された.奴が面倒を見てた男になあ.」
橘「おい,おい.死にたかねえぞ.」
桜井「信じないことだ.奴等だって俺達のことは信じちゃいない.」
そこへ蒲生がやってきた.蒲生は事情を訊こうとしたが
桜井「いいようにしてください.何も言う事はありません.」
これを聞いた蒲生は困ったが
船村「次長.桜井君はニューヨークから麻薬組織の男を追ってきたんです. もしかしたらその男が我々の追っている男と同じかもしれない.」
それを聞き
蒲生「本当か?」
桜井「関係ありません.」
桜井はそう言って去って行った.

津上は桜井に昔と同じように一緒にやっていこうと言ったが
桜井「俺には捜査に興味はないんでなあ.」
とうそぶいた.
津上「それなら,刑事を辞めたらいい.なぜ辞めないんです. 刑事を辞めてからあなたの好きなようにやったらいいんだ.」
桜井は津上の胸倉をつかんでいった.
桜井「津上,俺は辞めんよ.こいつ(警察手帳)が使えて銭になる商売, 他にあるか? 何をやったって正義の仕事だ.こんなうまい話はない.」
津上「卑怯だ.あんたは卑怯だ.」

吉岡は組織を恐れて何も話そうとしなかった. そこで船村は吉岡の息子真一を護衛している橘の姿を見せた. そして吉岡の妻春子には所轄の刑事が交代で護衛についている事を話した. 吉岡の家族は必ず守ると船村は明言した.

津上は麻里に桜井と光枝の間に何があったか聞こうとした. だが麻里は知らないと答えた.その代わり,桜井と知り合った切掛けを話した. 光枝は麻里を連れてアメリカへ行った.二人を捨てた男を探しにだ. だが男はみつからなかった.そこで光枝はレストランで働いた. 辛い暮らしだった.そのとき知り合ったのが桜井だったのだ. 桜井は光枝にも麻里にも優しかった. ところが昨年の夏から突然桜井がこなくなった. 光枝は必死に桜井を追いかけたが桜井はどうしても光枝と会おうとしなかった. その理由を麻里は知らなかった.それから光枝は変わってしまった. お金のためなら何でもするようになってしまった. 麻里は桜井が光枝を捨てたと思っていた.

桜井は写真の男宮本を探していた.その翌日. 特命課の面々は吉岡の後を継いだ仲買人の広瀬(中田博久)を追いかけ, 東京モノレールに乗った.そして大井競馬場の駅で広瀬はトイレに入った. 船村は吉岡を追いかけて麻薬取引の現行犯で逮捕した. そのとき,船村は反対側のホームに宮本がいるのを発見した. 船村と紅林は宮本を連行していった.宮本は自分は原口だと否定した.

津上は桜井に宮本を捕まえた事を伝えた.
桜井「どこだ.どこにいる.」
津上「それがアメリカ大使館に身柄を引き取られていきました.」
蒲生のところに電話が入った.なんと桜井がアメリカ大使館へやって来て, 宮本に会わせろとねじ込んでいるというのだ.

橘は真一と春子と一緒にドリームランドへ行った. だが橘が真一と一緒に観覧車に乗った隙を突かれ,春子は殺されてしまった. 吉岡は春子の死体を見て嘆き悲しみ,橘を責めた.
船村「橘君.あんたはできるだけのことをしたんだ. 吉岡だって落ち着けばわかってくれるよ.」
だが吉岡は宮本の写真を見せても知らないと答えなかった. しかも前の供述を全部翻した.そこへ蒲生がやってきた. 宮本の拘留期限が切れるというのだ. 午後三時にアメリカへ向けて出発するという. 蒲生は紅林と吉野に護衛を命じた.吉野は嫌がったが,蒲生は命令だといって, 吉野を叩いた.吉野は叩く真似をしてから出て行った.

桜井はアメリカ大使館の前に座り込んでいた.
吉野「宮本はアメリカに返されますよ.ま, 俺達は奴の用心棒って奴ですがねえ.」
紅林は吉野をたしなめた.
紅林「三時にここを出ると,ちょうど七号線の工事にぶち当たるなあ. それから京葉道路を通る事になるか.」
それを桜井は聞き逃さなかった.さて七号線の工事現場で, タンクローリーに乗った桜井が宮本を連行する車に襲い掛かった. 桜井は拳銃を撃って車を止め,護衛を倒し,宮本を連れ去ってしまった. 紅林は「He's mad.」と言って護衛を制止し, 吉野は「I don't know.」と言ってわからない振りをした. 蒲生はかんかんになって怒った.
紅林「私の責任です.」
紅林はホシはわかっていると言った.
紅林「桜井警部です.」
紅林は上の方に報告してすぐに手配した方がいいと言った.

桜井は宮本を椅子に座らせ,縄で縛って自由を奪っていた.
桜井「探したぞ,宮本.俺はお前を探していたんだ.」
桜井はニューヨークでの事件を思い出していた. 1978年夏,ニューヨーク黒人街 通称「ハーレム」で桜井はバトラーに, 宮本が東京からの麻薬運び人なのは間違いない,と言った. 宮本を逮捕すれば組織の事もわかる.だがバトラーは異議を唱えた. 組織を甘く見てはいけない,第一市警のお偉方がちっともやる気になっていない, と言うのだ.桜井は,だから自分とバトラーがやるんだ, 市警に良く思われていない日本人と黒人の二人でだ,と答えた. そこへバトラーの息子が入って来た. バトラーの息子アリは桜井とボクシングをしにやってきた. アリは桜井になついていた.アリが出て行った後, バトラーと桜井は話を続けた.桜井は国際警察の人間だが, バトラーはニューヨーク市警の人間だ.桜井は自分が責任をとると答えたが, バトラーは,市警の上層部にも組織から金を貰っている奴がいる, と言って渋った.桜井は,だから信頼できるバトラーに頼んだ,と答えた. 宮本は今マンハッタンホテルにいた.バトラーは承知した. 二人が出ようとした瞬間,アリとバトラーの妻が撃たれてしまった. アリは一命を取り留めたものの, 脳に弾丸が止まっているので一生廃人同然の状態になってしまった. そして宮本には逃げられてしまった.市警の誰かが情報を流したに違いない.
桜井「やっと会えたなあ,宮本.」
宮本「I'm Haraguchi. You got a wrong prison.」
桜井は宮本の腹に一発御見舞いした.
宮本「Japanese police has no right to quest me.」
また桜井は一発御見舞いした.

その頃船村は,桜井がやっていることは復讐で, 警察の手におえない巨大組織を相手にしている,と考えた. 津上もその意見に同意した.ニューヨークで何かあったに違いない. そのとき,無線が入った. 木更津市港湾駐車場で外交官ナンバーの車を発見したというのだ.

桜井「お前が自分の知っている事を俺に教えてくれたら自由にしてやる. お前に命令してる奴は誰だ.言わないだろうなあ. お前がみんなにやってる事を自分の体で味わってみるんだ.」
桜井はヘロインを入れた注射器を見せた.宮本は脅えた. そして桜井はヘロインを注射.
桜井「これはお前が日本に持ち込む麻薬だ.何度でも射ってやる.お前, 中毒になる.そして薬が切れて苦しむ.その苦しみをよく味わうんだ. ここには誰も来ん.お前はもう逃げられないんだ.」
そして桜井は心の中で呟いた.
桜井の声「俺はもう刑事じゃない.俺は必ず復讐してやる. この復讐のために俺は何もかも捨ててしまったんだ.」

「特捜最前線」第104話「帰ってきたスキャンダル刑事! II」

前後編とも脚本は塙五郎,監督は野田幸男,主役は桜井.

刑務局長室では蒲生が桜井暴走の件で叱られていた. その場に居合わせたニューヨーク市警副長官ハーマンは桜井の射殺を示唆した.

木更津で捜査する特命課の面々に無線が入った.
吉野「はい,吉野です.」
蒲生「桜井君はまだか.」
怒る蒲生に吉野は嫌味たっぷりにかえした.
吉野「桜井君はまだです.どうぞ.」
蒲生の怒りは倍増した.
蒲生「何をやってるんだ.俺は今刑務局長に説教食らってきたんだ.」
吉野「それがあんたの役目でしょうが.」
蒲生「吉野,聞け.ここだけの話だがな,ハーマン副長官直々の話だ. 桜井君が妨害すれば射殺すると言ってるんだ.」
吉野「射殺? そんな馬鹿な! あんた,それで黙ってたのかね.」
蒲生は一呼吸置いてから言った.
蒲生「わしに何ができる.」
吉野「次長,あんたね…」
船村は吉野から無線をもぎ取って言った.
船村「わかりました.私らの手で何とか見つけます.」
蒲生「頼むよ,親父さん.頼むよ.」
蒲生は無線を切った.船村は,木更津から(今は亡き)日本カーフェリーで渡れば, 川崎だ,川崎なら桜井の庭みたいなものだ,と言い,川崎へ行くことを示唆した. 一か八か船村,吉野,津上は川崎へ行くことにした.

その頃,苦しむ宮本に桜井が言った.
桜井「どうだ.薬の味を思い出したか.お前も昔はこいつをやっていた. 薬が切れた時の辛さはわかってるはずだ.お前は東京でもニューヨークでも, 人を苦しめてきた.」
注射器を手に持つ桜井に宮本が言った.
宮本「やめてくれ.助けてくれ.あ.」
だが桜井はまたヘロインを宮本に射った.
桜井「今度薬が切れた時,お前にもその苦しみが良くわかるさ.」

その頃,紅林は聞き込みを続けていた.
紅林の声「私がわざと桜井警部に宮本を渡したのは, 宮本が運び屋である証拠をつかむ為に, 一日でも長く彼を日本にとどめて置く必要があったからだ. そして一刻も早くジョージ原口が宮本と同一人物であることを, 証明できる人間を探し出さねばならない.」

津上は光枝のマンションを訪れていたが,桜井はここには来ていなかった. 津上は桜井がジョージ原口という男をさらって逃げたことを話した. 光枝は原口と言う人間は知らないと言った.だが津上が, 原口が宮本と同一人物だと桜井が考えている, と話すと光枝の態度が美妙に変わった. さらに桜井が宮本を殺すかもしれないと聞くと
麻里「殺しちゃえばいいんだわ.」

橘は真一と一緒にいた.
橘の声「この子は母親を殺されてから,俺に口を聞いてくれない.」
吉岡も橘に何も話そうとしなかった.
橘の声「みんなは宮本を追っている.俺はこの子を守らなくちゃならん.」

宮本の苦しみは極限に達しようとしていた.
桜井「これから苦しくなる.薬が欲しくなる.お前はその苦しみを味わうんだ. 俺はもう一度出かけてくる.」
桜井は宮本を置いて出て行った.

光枝のところに電話が掛かってきた. 電話の相手は英語で「あなたの御主人の事で話がある.」と言った. さらに「あなたの探している御主人の事だ.」と付け加えた. 親子電話で麻里もそれを聞いた.慌てて出かける光枝を津上が追いかけた. 光枝が会ったのは
津上「ハーマン副長官.」
ハーマンは英語でこう言った.「あなたのご主人の名はミヤモト.そうですね.」 光枝は肯いた.「ミヤモトと,ジョージ原口は同一人物だ.桜井刑事に捕まった. 桜井はミヤモトを捕えるために,あなたに近づいたのです.彼の手から, あなたの御主人を取り返さなければならない.協力して貰えますね.」 光枝は肯いた.

クラブオーシャンで桜井は一人で飲んでいた. 光枝のところに桜井から電話が入った.光枝は会いたいと懇願した. そして光枝は桜井に会いに出かけた.津上は尾行しようとしたが, 外人の乗った車に妨害されてしまった.ホテルの部屋で
桜井の声「俺は何をしようとしてるんだ.何を迷ってる. 俺は奴らに復讐するために日本に帰ってきたんじゃないか.」
橘の声「吉野,俺達は刑事だ.捜査して逮捕する. 俺達が出来るのはそこまでだ.人を裁くのは俺達の仕事じゃない.」
桜井はアリと遊んだ日も思い出した.そのとき,ドアをノックする音が. 桜井は拳銃を手にし,ドアを開けた.来たのは光枝だった.
光枝「宮本のこと聞いたわ.教えて欲しいの.あなたが私に近づいたのは, 宮本のことが知りたかったからなの? 違うわね.違うでしょ.」
桜井「俺は宮本を捕まえるためにあんたを騙したんだ.」
光枝は驚いた.
光枝「嘘よ.」
桜井「奴らの組織を潰すためだったら何でもする.」
光枝「違うわ.あたしとはじめて会った時のあなたは宮本を知らなかった. あたしがあなたに宮本を探してくれって頼んだんじゃないの.」
桜井はバーボンをラッパ飲みした.
光枝「でもあなたが探し出してくれた宮本は麻薬組織の人間だったのよ. だからあなたはあたし達から黙って離れようとしたんでしょ.そうでしょう. そうなんでしょう.」
桜井「同じことだ.俺は君の夫を殺そうとしている.」
光枝「あたしを捨ててった奴のことなんかどうでもいいの. あなたが本当にあたしを捨てたんじゃないことがわかったわ.それが嬉しいの.」
光枝は桜井に抱きついた.桜井も光枝を抱いた.

ベッドの中で
光枝「ハーマン副長官があたしを呼んだわ.桜井の居所を教えてくれって. 宮本殺したの? 殺さないで.」
桜井「奴のことが心配なのか.」
光枝「違うわ.宮本は麻里の父親よ.麻里は何にも知らないの.」
桜井「俺は宮本に喋らせる.」
思わず光枝は起き上がろうとした.
光枝「組織のことがわかったってどうするの. 日本の警察は何もできやしないわ.」
桜井「殺す.警察じゃない.俺がやるんだ.」
光枝「そんなことしてどうなるの.あなたが殺されるだけよ.もうやめて. 今迄の事は忘れるのよ.麻里とあたしと三人で暮らそう.」
桜井「俺は奴らを殺す.」
光枝は驚いた.
桜井「それまでは何も考えん.俺はそうできると思った.」
光枝「あなたと別れてから,いつもあなたのことばかり考えていた. 辛かった.二度と苦しみたくないわ.ねえ,これが最後のチャンスなのよ.」
光枝は桜井に抱きついた.桜井は光枝を愛撫してやった.

翌朝.桜井は拳銃を持ち,光枝を置いて出て行った. 桜井は横浜のホテルに潜伏していた. 桜井が拾ったタクシーを外人の乗った車が追いかけた. 桜井は港の倉庫の中に入った.それを外人は見ていた.
宮本「薬をくれ.苦しい.」
桜井「その前に取り調べだ.」
桜井はナイフで宮本の縄を切った.
桜井「お前の名前は.言え.言え.言え.言え.」
桜井は注射器を踏んづけて壊した.それを見て宮本は叫び声をあげた.
桜井「お前の名を言え.」
宮本は首を左右に振った.
桜井「ミヤモト.」
宮本「宮本だ.」
桜井「よし.お前がやってきたことを全部喋っちまうんだ.」
宮本「俺は麻薬を運んだ.マニラから東京に持ち込んだ. そして三分の一,東京の組織に,ニューヨークに運ぶ.」
桜井「お前を使ってる奴は誰だ.」
宮本「許してくれ.それは言えない.殺されるんだ.助けてください.」
桜井「薬を射って欲しくないのか.」
宮本「た,頼む.苦しい.頼んだよ.」
桜井「ボスの名を言え.」
だが宮本は首を左右に振った.
桜井「きっさまあ.」
桜井は注射器を投げてわった.それを見て宮本は叫び声をあげた.
桜井「バトラー刑事の奥さんと息子を撃った奴だ.そいつの名を言え.」
宮本「俺だあ.俺がやらせたあ.」
桜井は注射器をまた投げてわった.
桜井「お前に命令した奴の名だ.言え.吐いちまうんだ.」
遂に宮本は言った.
宮本「ハーマン.ジョセフ・ハーマン.」
桜井は驚いた.
桜井「ハーマン.市警の副長官のハーマンか.」
宮本「そうだ.だからだ.頼む.全部喋った.全部.」
桜井は注射器からヘロインを噴射した後,注射器を下に落とし, 注射器を踏みわった.そして叫び声をあげる宮本を外に連れ出そうとした瞬間, 宮本は撃たれた.
宮本「畜生.あいつだ. あいつがハーマンの命令でバトラー刑事のうちを襲った.」
そして宮本は倒れた.桜井は外へ出ようとしたが閉じ込められ, さらに火がつけられた.外人とすれ違いに船村と吉野がやってきた. 桜井はフォークリフトを何度もぶつけて脱出.外人に向かって行った.
船村「桜井,やめろ.」
桜井は何発も何発も外人に銃弾を浴びせて射殺した.それを吉野も見た.
船村「桜井君.どうしても一人でやるって言うのか.」
桜井は無言だ.
船村「そうか.やっぱり駄目か.」
船村は桜井に手錠を掛けた.
船村「俺達は刑事だからねえ.刑事には刑事の掟がある.」
桜井は無言だ.
船村「宮本はどこだ.」
桜井「宮本は死にましたよ.」

吉野が車を運転し,桜井は連行された.
船村「なぜ俺達を信用せん.必ず逮捕する.相手は一体何者だ.」
桜井「ハーマン副長官.」
船村「ハーマン!」
桜井「日本の政界にも顔の利く大物だ.逮捕どころかあんた達の首が飛ぶ.」
パトカーのサイレンだけが響いた.

船村は蒲生にハーマンの逮捕状を取るように言ったが, 蒲生は首を縦に振らなかった.証拠はあるのか,という蒲生に船村は, 桜井の証言をあげた.
蒲生「あのねえ,少しは俺の立場になって物を考えろよ. 俺は桜井君を守るだけで精一杯なんだから.わかるだろう,え. 俺よりも遥かな後輩の検事達にだな, ぺこぺこ頭下げて回る俺の身にもなってみろってんだ.」
船村「それがあんたの名誉の勲章だと思いますよ. あたしゃ,そういう人だからあんたを認めてるんだ.」
蒲生「それだけわかってるんならこれ以上俺の立場を悪くすんな!」
船村はこう言った.
船村「怒ったですか.もっと怒ってください.もっと怒って欲しいんだ. 次長だけには泥を被せません.私は肚をくくってるんだ.」
遂に蒲生は折れた.
蒲生「親父さん,ここだけの話なんだけどね, 近々俺はまたどっかへ動かされるらしいんだが,いやだからね, 俺はこの特命にいたって言う証をどっかに残しておきてえんだ.」
蒲生は桜井をハーマンのところへ向かわせることを許可した. そして令状が取れ次第,蒲生もハーマンのところへ向かうこと, さらに桜井に拳銃をつかわせないことを命じた.

ハーマンは光枝に宮本が運ぶ予定だった末端価格20億円のヘロインを渡していた. 光枝は断った.ハーマンは宮本が桜井に殺されたことを光枝に言い, さらに桜井,麻里も殺すこともできると示唆した.これを聞いた光枝は折れた. 一方,ハーマンの泊まるホテルの前で桜井達は車を止めて蒲生を待っていた. だがハーマンが帰国を早めるとの報せが来た.そこへ蒲生がやって来た. ハーマンの逮捕は無理だがアメリカ大使館に身柄を預け, 国外脱出は無理になったというのだ.それを聞いた桜井は車を飛び出し, ハーマンのところへ走った.手錠をはめたままでだ. ハーマンは車を発進させた.桜井はハーマンに飛び掛ったが, 結局振り落とされてしまった.
船村「物を見つけ出すことだ. ハーマンがアメリカに持ち込む麻薬が必ずどっかにある筈だ.」

光枝は物を持ってマンションに戻ってきた.それを紅林が見ていた. 部屋の中で光枝は麻薬を詰めなおした.
麻里「ママ,それは何.」
麻里は薬の包みを手に取った.
麻里「ママ,こんなことしてたの.ママ,どうして,どうしてなの? 私のためなの?」
光枝「私達はねえ,生きていかなきゃいけないのよ. 他人に馬鹿にされないようにね.」
麻里「ママ,桜井が好きじゃないの?」
光枝「桜井はねえ,あたしのことなんかなんとも思ってないのよ.」
麻里「私,知ってる.ハーマンに頼まれたんでしょう. だから桜井を裏切ったのね.」
光枝「あたしはねえ,男なんか信じないの.信じるもんですか.」
麻里「ママ,桜井に会って.本当のこと話すのよ.」
光枝は薬を詰める手を止め,麻里をビンタした.だが
麻里「ママ,あたし,桜井に言うわ.全部話すわ.」
光枝「麻里,桜井が殺した宮本はねえ,麻里の本当の父親なのよ.」
驚く麻里.
麻里「嘘,嘘よ.」
光枝「麻里,すぐ支度して頂戴.今夜の船でアメリカへ行くの. それが一番いい方法なのよ.わかって頂戴.ね.」

ハーマンの麻薬を発見するため,暴力団の事務所が徹底的に洗われたが, 見つからなかった.そこへ紅林がやってきた. ハーマンと光枝の関係を調べ上げたのだ.光枝の年齢は36歳. 16年前,宮本が軍人として日本に来た際, 当時横須賀のバーのホステスだった光枝と関係を持った. そして光枝は麻里を生んだのだ.その後, 宮本は光枝を捨ててアメリカへ帰ったが,3年前, 光枝は宮本を探してアメリカに渡っていた.蒲生は津上に行けと命じたが, 紅林は自分が行くと言った.さらに
紅林「桜井さん,自分と一緒に行って下さい.お願いします.」

橘は真一を長崎へ連れて行くことにした.
真一「おじさん,犯人がみつかったら,ピストルで撃ってくれますか?」
橘「真一君,誰だってねえ,人を殺すのはいけないことだ.」
真一「でも犯人は母ちゃんを殺したんだ.」
橘は絶句した.そして橘は真一と吉岡に接見した. 吉岡は真一に橘を信用するなと言ったが
真一「父ちゃん,犯人のこと,教えてくれよ.」
吉岡「橘さん,あんた,子供まで使って.どこまできたねえんだ.」
真一「お父ちゃん,悔しくないのか.お母ちゃんは殺されたんだぞ.」
吉岡「真一,お前にはまだわからないんだよ.」
真一「僕は,僕は学校で言われたんだ.お父ちゃんは犯人の仲間だって.」
無言の吉岡.
真一「嘘だよね.そんなの嘘だよね.」
それを聞いた吉岡はうなだれてしまった.

部屋に桜井が戻ってきた.部屋には麻里がいた.麻里は光枝がもう来ないと言い, さらに
麻里「桜井,あなたはパパを殺したのね.」
桜井は無言で酒を飲んだ.麻里はナイフを手に持ち
麻里「人殺し.」
桜井の右腕を刺した.桜井の右手から酒の入ったコップが落ちた. それでも桜井は無言だった.
麻里「ごめんなさい.私,私,私,…」
桜井「いいんだ.いいんだ.すまん.」
桜井はナイフを自分で抜き,部屋から出て行った.

外へ出た桜井に橘と紅林は薬が横浜港から運び出されることを話した.
桜井「俺はもう刑事じゃないぞ.」
紅林「ハーマンをアメリカに返していいんですか.」
橘「物を押さえればハーマンを日本の裁判にかけることができる.行こう.」

桜井は紅林と橘と一緒に横浜港へ行った.蒲生は桜井が来たので嫌な顔をした. さらに吉野が桜井に拳銃を渡そうとすると, 蒲生は桜井は拳銃の携帯を禁止されていると言い, 拳銃を持たせようとしなかった.警官達が配置につくのを見ながら
桜井「ここで取引があるとなぜわかった.」
橘「吉岡が全部喋ってくれた.なあ桜井.お前には俺のやり方はできんだろう. 俺もお前のやり方はできんさ.それだけだ.お前が復讐の虎だったら, 俺は,そうだな,牛だ.牛でいいよ.」
時刻は11時過ぎ.光枝の車がやって来た.それを見た桜井は驚いた. 船に乗り込む光枝.物陰から様子を伺う吉野,紅林,津上,蒲生,桜井, そして船村.取引の相手は黒人だった.それを見て吉野が発砲した. 桜井は光枝を抱き起こした.そして桜井は津上から拳銃を奪い, 黒人を追いかけた.黒人の拳銃の弾がつきた.桜井は拳銃を構えて近づいた. そして車のヘッドライトで照らし出された黒人の顔は
桜井「バトラー.」
バトラーは叫んだ.
バトラー「Go away. Go away.」
桜井「Why did it do it?」
バトラー「You've never understand.」
桜井「Battler, why?」
バトラー「I need money. Work for Harman.」
桜井「Why?」
バトラーは桜井に向けて撃った.
桜井「Battler, come on.」
バトラー「No. I would kill you.」
バトラーは拳銃を構えた.
桜井「Come on Battler.」
拳銃を向け合いながら桜井とバトラーは対峙した. そしてバトラーが目をつぶって拳銃を撃った時,倒れたのはバトラーだった. 橘がバトラーを撃ち殺したのだ.桜井と橘はしばらく睨みあった.
桜井「馬鹿野郎.」
桜井は橘を殴った.鼻血を出しながら橘は言った.
橘「でしゃばったな.許せ,桜井.」
桜井は狂ったように銃を乱射した.弾がドラム缶に当たり,燃え出した. それを特命課の面々はいつまでも眺めていた.

船村の声「ハーマンは秘かにアメリカ本国へ移送され, 日本側の捜査は打ち切られた.」
麻里は一人で船に乗って去って行った.桜井はバトラーの遺児, アリ・バトラーのところへ送金した. 「桜井刑事は再び特命捜査課に配属された…警部の肩書を略われて―」

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp