2002年2月9日

「太陽にほえろ!」第63話「大都会の追跡」

脚本は鎌田敏夫.監督は竹林進.主役はボス.

常東信用金庫南町支店で女子行員が気分を悪くし,救急車で運ばれて行った. 入れ替わりに保健所の職員(江守徹)が登場.何とコレラだったと言う. 行員を一箇所に集めて消毒をし,さらに金庫を点検することにした. 保健所の職員は金庫室に一緒に入った支店長を殴り倒した. そう.保健所の職員とは真っ赤な嘘.彼は銀行強盗だったのだ. 彼はどうどうと革鞄の中に札束を詰めた.その額1億2千万円. 彼は警備員にも「店内の物には手を触れないように」と言って堂々と立ち去った.

長さんと殿下の調べにより,次のことがわかった. 女子行員は近くの喫茶店でオレンジジュースを飲んでいた. 同僚は先に帰って一人だったと言う.そして途中でトイレに立ったらしい. その間に何らかの薬物がジュースに混入されたらしい.
ボス「なあ,長さん.矢島義則が三ヶ月前に武蔵野刑務所を出所してるんだ.」
長さん「え!」
ボス「たった一人でこれだけのことをやってのけるのは矢島しかいない.」
長さんも殿下も無言だ.
ボス「今,ジーパンに確認に行かしてる.もし矢島の犯行なら, 女は共犯じゃない.あいつは誰とも組まない.」
そこへジーパンが戻ってきた.やはり矢島の犯行に間違いなかった.

矢島の元恋人美佐子(夏純子)は今は結婚し,調布近郊の新興住宅街に住んでいた. 見張りの交代に向かうジーパンは長さんから矢島のことを聞かされた. いつもたった一人で突拍子もないことをやる.こないだは偽の夜間金庫を作って, 五千万円盗んでいた.そして美佐子と高飛びする寸前に捕まったのだ. 美佐子が矢島の唯一の弱点なのだ.美佐子は矢島が服役中に別の男と結婚. そして美佐子の家の近くに陣取っていたゴリさんと山さんに, 長さんとジーパンは声を掛けた. ゴリさんの話だと夕べから美佐子は出かけていないと言う.
ジーパン「矢島,連絡してこないと思いますねえ. いくら愛し合って高飛びしようとしたとしても,もう5年前のことでしょう. そんなに気持ちは長く続きませんよ.現に女は他の男と結婚してるし, 矢島だって高飛びするなら別の女を見つけますよ.億の金を持ってるんだ.」
山さんの意見は違っていた.
山さん「お前達みたいな若い奴の5年と中年になってしまった男の5年とは, 長さが違うんだよ.青春を過ぎた男にとって,一度惚れた女は, そうそう忘れられるものじゃないんだ.」
長さんとジーパンは交代に入って見張りについた.

美佐子のところへ矢島から電話が掛かってきた.
美佐子「はい,山下でございます.」
矢島「美佐子か.」
美佐子は驚いた.
矢島「俺の声を覚えてくれてたらしいなあ.」
美佐子「やっぱり,あなたがやったのね.」
矢島「ああ.美佐子.お前と逃げたい.」
美佐子は驚きのあまり返事ができなかった.
矢島「美佐子.今度はきっと逃げてみせる.」
美佐子「あたしは結婚したのよ.」
矢島「幸せか?」
美佐子「ええ.」
矢島「嘘だ.」
美佐子は無言だ.
矢島「お前,おんなじことを繰り返してる生活なんて満足できる女じゃない. いいか,美佐子.写真3枚用意しろ.」
美佐子「え?」
矢島「偽造パスポートを手に入れるルートを見つけた. 今度こそはきっと逃げてみせる.お前と一緒にな.」
美佐子「どこへ行くの?」
矢島「お前の好きなところだ.一生遊んで暮らせる.は. それだけの金があるんだ.」
美佐子「駄目よ.行けないわ.あたしの事はもう忘れて頂戴.」
だが矢島は断言した.
矢島「お前,必ず来る.必ず.」
そう言って矢島は電話を切った.電話を手に持ち,美佐子はずっと考えていた.

ジーパン「矢島はあの女を諦めないにしても, もうあの女は着いて行く筈はないですよ.」
長さんはジーパンのほうを見た.
ジーパン「あんな幸せそうな家庭を.」
長さん「そう.着いて行かん方がいい. 地味でも今の生活の方が美佐子には幸せだよ.」
美佐子は買物に出かけた.早速ジーパンと長さんは尾行を開始した. 美佐子は高橋写真館という写真屋の前で立ち止まっていた.
矢島の声「写真3枚用意しろ.偽造パスポートを手に入れるルートを見つけた. 今度こそはきっと逃げてみせる.お前と一緒にな.」
散々悩んだ末,美佐子は写真屋の前から立ち去り,スーパーマーケットへ行った. だがそこでも立ち止まって何か考え込んでいた.
矢島の声「お前, おんなじことを繰り返してる生活なんて満足できる女じゃない.」

夕食でも美佐子は考え込んでいた.美佐子の夫は美佐子に写真を撮ったのか, と訊いた.結局美佐子は写真を撮ったのだ. テレビでプロ野球を見る夫を見ながら美佐子はずっと考えていた.
矢島の声「お前, おんなじことを繰り返してる生活なんて満足できる女じゃない. お前,必ず来る.必ず.」

翌日.殿下とゴリさんが見張っていた.二人とも動くはずはないと考えたが… 美佐子のところへ電話が掛かってきた.
矢島「写真撮ったか.」
美佐子「ええ.」
遂に美佐子は決断したのだ.矢島は刑事に見張られているに違いないので, 撒けるかと訊いた.
美佐子「やれるわ.」
美佐子は家を出た.耳には白いイヤリングをしていた.ここから追跡が始まった. まず殿下が尾行した.ゴリさんが無線で
ゴリさん「美佐子がどっかへ出かけます.」
ボス「よし.連絡を手配する.応援を出す. (無線を切って)やっぱり出かけたか.」
殿下は草が生える造成地で尾行に気付かれてしまった. 美佐子は調布駅前の写真屋に入り,写真を受け取って裏口から出た. 裏口からゴリさんが尾行.調布駅に入ったところで長さんと交代. 美佐子と長さんは新宿行の電車に乗った.ちなみにこの頃の電車は緑色の電車. 釣掛式のもので大きなモーター音を響かせて走る物だ.閑話休題. 美佐子は新宿駅で地下鉄丸の内線に乗り換えた.長さんも電車に乗り換えたが, 発車寸前に美佐子が降りてしまい,撒かれてしまった. 美佐子は反対側の電車に乗り込んだが,そこにはシンコがいた. 余談だがこの当時の丸の内線の電車は赤地で, 白帯とSをかたどった鎖状の模様がついていた.閑話休題. 長さんは撒かれてしまったことを報告した.
ボス「長さんも撒かれたそうだよ.後はシンコ一人になった.」
山さん「なかなかやるね,敵も.」
山さんはジーパンと一緒に出て行った.シンコも三越百貨店で尾行に気付かれ, エレベータで撒かれてしまった.万事休止かと思ったら, そのエレベータにはジーパンと山さんが乗っていた.美佐子は美容院に入った.
ジーパン「どうします?」
山さん「待つより仕方無いよー.」
ジーパン「しかしー,こんな時に美容院に入るなんておかしいと思いませんか?」
山さん「しかし,まさか俺達が中へ入るわけにはいかんだろう.」
ジーパン「じゃあ,俺,入ります.」
何とジーパンは美容院の中に入ってカットを注文. ジーパンがカットしている最中に美佐子は出てしまった. 山さんは一人で美佐子を尾行した.遅れてジーパンもやってきた. 美佐子は女子トイレに入っていた.
ジーパン「どうも遅れてすいません.」
山さん「なんだい,その髪は.」
ジーパン「シャンプーやってもらったんですよ. 時間余っちゃったもんですから.」
山さん「よくやるね.女の美容院で.」
ジーパン「いやあ,最近はねえ,美容院へ行く男多いんですよ.」
とまあ時代を感じさせるやり取りがあった後
ジーパン「トイレですか?」
山さん「まさか今度はお前も中に入るわけにはいかんだろう.」
ジーパン「それもそうですね.」
美佐子はトイレの中で変装して出てきた.危うく騙されるところだったが, 白いイヤリングを見てジーパンも山さんも変装に気がついた. 銀座のマクドナルド日本1号店の前の歩行者天国で
ジーパン「しかし,あんなに服装を変えるなんて思わなかったですね.」
山さん「トイレに入るときはハンドバッグ一つだったな.」
ジーパン「あらかじめ用意してあったんじゃないでしょうか. トイレの中に着替えを.」
そのとき山さんは気がついた.
山さん「おい.美容院で誰かと連絡を取らなかったか.」
ジーパン「そ,そうだ.」
さっきの美容院で山さんとジーパンは,美佐子が店員にメモを渡し, 服を買って1時間後にトイレへ持って来てくれと頼んでいたこと, さらに1階のプレイガイドに預けてある野球の切符を取ってくる事を, 頼んでいたことを聞き込んだ.

という訳でその日の後楽園球場のナイターに七曲署の面々がやって来た. 後楽園球場でジーパン達は美佐子を発見.双眼鏡で矢島を探したが人,人, 人ばかりでなかなか見つからなかった.矢島は双眼鏡で美佐子を確認. すると矢島に戸川組の男(田中浩)が接触した.矢島の逃走を助けようというのだ. 男は金を要求したが,矢島はなかなか話そうとしなかった. 男は鉄砲の名人が1塁側におり, 3塁側の席に座っている美佐子をいつでも撃ち殺せることを示唆. 男は7回の攻防中に考えるように脅迫した.ちなみにこの日の巨人打線は, 6番サード末次,7番セカンド黒江,8番キャッチャー吉田,9番ピッチャー倉田, という布陣.2アウトになった.男は早く決断するよう矢島に促した. 7回裏の攻撃が終わり,8回表, カープの1番ショート三村が打席に入ろうとする頃
矢島「待ってくれ.」
男は合図してライフルを下ろさせた. 矢島は新宿駅西口地下のコインロッカーの鍵を渡した. その頃,1塁側のライトスタンドの端に変な男がいるのをジーパンが発見. ジーパンと山さんは例のライフルの男を追いかけた.
矢島「あんたの大事な子分,いなくなったみたいだぜ. デカに見つかったんだろうよ.この球場はデカだらけだからな.ふ,ふ. コインロッカーに入ってるのは,俺の着替えだよ.ふ,ふ. 俺を撃っちゃ,あんたただの人殺しだ.一銭の儲けにもなりゃしない.」
試合が終わり客が帰っていった.矢島を戸川組の組員, そして七曲署の刑事達が追いかけた.だが矢島は人込みに紛れ, うまく美佐子と合流.下水道から逃走した. 矢島の作戦はこうだ.下水道は御茶ノ水の運河に通じている. 運河には船がある.朝になったら船でヘリポートまで行く. そこから日本海へ出るのだ.金は香港ドルで受け取ることになっている.

戸川組組員はコインロッカーの中の物を持って来た. 中身は矢島の言ったとおり着替えだけだったが, 電話番号(415-2139)の書かれたメモが.男は番号を調べるように命じた.

船の中で
矢島「美佐子,済まなかったなあ.俺はお前の幸せをぶち壊した.」
美佐子「いいのよ.幸せじゃなかったわ. 少なくともあなたとこうしてるよりかはね.(耳に手をやり)覚えてる,これ.」
矢島「どうしてそんな目立つものつけてきたんだ.」
美佐子「だってあなたにもらったのよ.7年前に.結婚した時, 一度捨てようと思った.でもどうしても捨てきれなかったの.」
そのとき,矢島が気がついた.
矢島「もう片っ方どうしたんだ.」

殿下は球場の脇のマンホールの処で美佐子のもう片方のイヤリングを見つけた. それを聞いたボスは矢島の狙いを見抜いた.二人は日本を脱出する気だ. まずジーパン達は下水道の中を走った.殿下はモーターボートを走らせた. ジーパンもモーターボートを走らせた.そしてジーパンはヘリを見かけ, 追跡を始めた.矢島と美佐子がヘリポートの脇に着いた. だがそこには戸川組の面々もいた.遅れてジーパンが到着. 男は拳銃で威嚇.弾が美佐子に当たってしまった.ジーパン,殿下, そしてゴリさんが戸川組の連中と格闘している間, 矢島と美佐子は階段を上がった.だが途中で美佐子は倒れてしまった. ジーパンと殿下が階段を上る頃
美佐子「あたしを置いて一人で行って.一人なら逃げられる.あ,お願い. 一人で逃げて.あ,あたしはもうだめ.」
矢島「美佐子!」
それでも矢島は美佐子を抱きかかえ,ヘリポートまで上がった.
矢島「美佐子.勝った.俺達は勝った.」
だが美佐子は返事をしなかった.
矢島「美佐子.美佐子.」
ジーパンと殿下が上がってきた時,矢島は膝をついてがっくりとしていた. 美佐子の死体を抱きかかえて.

遅れてやってきたボス,長さん,山さんにジーパンが報告した.
ジーパン「矢島は捕らえました.美佐子は死んでます.」
ヘリは矢島とは関係がなかった.何も知らずにチャーターされただけだった. うなだれて連行されていく矢島と,美佐子の遺体を運ぶ救急車を見送りながら
ジーパン「馬鹿な女だ.あんな男のためにあの人は.」
山さん「幸せだったかもしれんよ.」
ジーパン「死んでしまったんですよ.」
山さん「美佐子は自分で選んだんだ.自分の幸せをな.」
ジーパンはやりきれない気持ちになった.
ボス「俺達は犯人を捕まえた.それだけのことだ.行こう.」

次回は玩具会社に降って沸いた災難に七曲署の面々が挑みます.

「2002年2月」へ 「テレビ鑑賞記」へ 「私の好きなテレビ番組」へ 「touheiのホームページ」へ戻る.


東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp