2002年2月2日

「太陽にほえろ!」第62話「プロフェッショナル」

脚本は小川英と長野洋.監督は山本迪夫.主役は殿下とボス. 今回シンコは登場しません.

ジーパンとゴリさんが警邏していると,三輪車に乗った子供が飛び出し, 車が子供を跳ねそうになっているところに出くわした. 車が急停車したので子供は助かったが, ゴリさんは車を運転していた男に心当たりがあった.
ゴリさん「久しぶりだなあ,やまうち.」
男「人違いでしょう.失礼.」
ゴリさんは男がアタッシュケースを車の助手席に載せている事を見逃さなかった. 男は慌てて車を発進させた.跳ねられそうになったゴリさんはジーパンに命じ, 男の運転する車を追いかけさせた.マカロニのテーマが流れる中, ジーパンは疾走.車が急停車したので無事追いつき,取り押さえることができた. 自分は何をしたんだ,と男が言うと,駆けつけたゴリさんが車のキーを抜き, 故意に自分を跳ね飛ばそうとしたので立派な障害未遂と公務執行妨害だ, と主張.男を七曲署まで連れて来た.

男こと山内弘は何も答えようとしなかった.
ボス「黙秘権とは古い手だな,山内弘.そのケースの中のもの, 見せてもらおうか.」
山内「断る.俺はただ車を走らせていただけだ.」
ボス「ゴリ.」
ゴリさん「は.」
ボス「調べろ.」
ゴリさん「いいんですか,ボス?」
ボス「いちいち訊くな.」
という訳で
ゴリさん「おい,ジーパン.こいつを取り押さえろ.」
ジーパン「いいんですか?」
ジーパンにはその理由がさっぱりわからなかった.
ゴリさん「(ジーパンの頭を叩きながら)いちいち訊くな.」
という訳で山内はジーパンに取り押さえられた. ゴリさんが山内の服のポケットから鍵を取り出し,アタッシュケースを開けた. アタッシュケースの中にはドリル一式が入っていた.
ボス「ほう,やっぱりか.これから大仕事ってとこだな.」
ジーパン「ボス,これは?」
ボス「金庫破りの道具一式だ.」

長さんは榎本(郷えい治)という男を見かけたが,見失ってしまった. 麻雀をしていた山さんのところに情報屋(大村千吉)から電話がかかってきた. 尾崎(柳生博)がこの街に現れたという.山内,榎本,尾崎. この3人が揃うのは偶然とは思えない.
ゴリさん「まず山内.現役ばりばりの金庫破り.所謂ハコ師では, まず奴の右に出るものはいない.」
長さん「そして榎本.元はサーカスのブランコノリだから, 身の軽いことは天下一品だ.実は今日も後を追ったんだが, 見事に撒かれた.」
山さん「三人目の尾崎はインテリだな.東都大で電気工学を専攻. この男の手に掛かると,どんなに精巧な警報装置もまるで無用の長物だ.」
話を立ち聞きしていた久美ちゃんが割って入った.
久美ちゃん「すっごーい.超一流のプロフェッショナルばっかり.」
ボス「こら,面白がるな,久美ちゃん.こいつはな, お前さんの大好きなミステリー小説とは違うんだぞ.」
仕方無く久美ちゃんは退散.
ボス「いいな.奴らがどこの金庫を狙ってようと, この町でそんなことをさせてはならん.俺達の面目にかけてもな.」
こうして金庫破りのプロフェッショナルと, 犯罪捜査のプロフェッショナルとの闘いが始まった.

女(三林京子)が榎本と尾崎に標的の説明をスライドでしていた. 表口も裏口も24時間警戒が厳重.非常階段も同じだ.夜はことに警戒が厳重. 入り込める自信があるかと女が訊くと,榎本は, 俺に入り込めないビルがあると思うか,と答えた. 尾崎は,金庫の前に赤外線が走っていることと, 金庫の警報装置が二重になっていることを,スライドを見ただけで見抜いた. 女がそれを受け,普通に電源を切ると別の隠し電源に接続され, 非常ベルが鳴る仕組になっていると説明した. 尾崎は図面さえあればなあと言うと女は図面を持ってきた. 何とビル全体の図面,電源配線図,3階の金庫室の詳細図を手に入れていた. 建設業者に手を回して女が手に入れた物だ.だが一つだけ手違いがあった. もう一人の参加者が約束の時刻から五時間経つというのに未だ到着しないのだ. 榎本は一笑に付し,遅れても限度内に来れば計画通りやるだけだと答えた. 女は遅れた理由がもっともな物ならばと条件をつけた.

その頃,山内はまだ取調べを受けていた. 山内のところには一ヶ月ほど前に女から電話で依頼が来た. 支度金が百万円,報酬が三千万円.ボスは女の正体を訊いたが, 山内はわからないと首を振った. 見知らぬ女に山内が頼まれて出てきたので,ボスは不審に思ったが, 山内は銀行口座にちゃんと100万円振り込まれていたので, 信用して出てきたと答えた.山内は仲間が誰かも知らず, 首謀者の正体も知らなかった.じゃあ,どうやって連絡を取るんだ, とボスが訊くと,ホテルに女から連絡が来ることになっていた, と山内が答えた.三番町ホテル503号室が女から指定されたホテルだという.
ボス「一か八かやってみるか.」

その頃,非番だった殿下はお見合いのデートをしていた.
殿下「遅いから僕がお送りしましょうか.」
そこへゴリさんとジーパン登場.
ジーパン「あのう,もう遅いから,お宅までお送りします.僕が.」
殿下のデートの相手はジーパンをチンピラと間違え, 大声を挙げて逃げ去ってしまった.

金庫の前でボスは殿下に悪いことをしたと謝ったが, 殿下は「お義理ですから」と言った.そしてボスが殿下の使命を説明した. あるプロの集団がこの町の金庫を狙っているが, それを食い止める手段が今のところない.首謀者の正体さえわからなかったが, 一つだけ手があった.それは非番だった為,面が割れていない殿下が潜入する事. 殿下は快諾.山内は丸一日,殿下に金庫破りの特訓をさせることになった. 山内は始めは渋ったが,殿下が道具を扱う手つきを見て快諾した. ボスが殿下に潜入を命じた理由がここにもあった. その話をボスから聞いた長さんは思わず
長さん「殿下にも金庫破りの素質ありですな.」
と言ってしまった.長さんは三人の大物を扱えそうな人物を調べ上げていたが, ほとんどが東京にいない者ばかり.ハコ師の名人糸山源次郎は, 東京刑務所に服役中.まだ刑期が二年残っていた.
ボス「しかし,あの爺さんなら何か知ってるかもしれないなあ.」

翌日.ボスは東京刑務所で糸山(大滝秀治)を尋問した. どういう風の吹き回しだという糸山にボスは昔馴染みに会いに来たと答えた.
糸山「は,は.昔馴染みとは良かった.そういや, あんたには二度捕まったっけかねえ.相性がいいってのか,悪いってのか.」
ボスは糸山の煙草に火をつけてやった.
ボス「ところで昔,山内って男使ってたろう.」
糸山「あ? ああ,思い出した.格好ばかりつけた小生意気な奴だった.」
ボス「その後,どうしてるか知らないか?」
糸山「さあってねえ,関西へ流れたって噂は聞いたが,どこで燻ってやがるか.」
ボス「それが燻ってるどころか今じゃ一人前のハコ師だそうだよ.」
糸山「え? やまのうちが? ハコ師も堕ちたもんだなあ.」
ボス「尾崎って男を知ってるかい?」
糸山「尾崎? 知らないねえ.」
ボス「ああ.じゃあ,榎本は?」
糸山「榎本? ああ,そいつなら知ってらあ.ブランコ上がりだろう. えー,旦那,なんでそんなことあっしに?」
ボス「いや,ちょっと気になる噂聞いたんでねえ. 昔の仲間の話聞くと,血が騒ぐか?」
糸山「いくらあんた血が騒ぐったって,見てくださいよ,こいつを.」
糸山は煙草を持つ右腕を左手で握りながら言った.右腕は震えていた.
糸山「他に身寄りはないし,今度娑婆へ出たら公園の掃除でもして, 雀と一緒に暮らしやすよ.」
ボス「邪魔したな.」
ボスは去って行った.

殿下は例のホテルに入った.盗聴機をつけていたので, 殿下の話はゴリさんと長さんにはつつぬけだ.そのとき,電話が掛かってきた. それはあの女からの物だった.
女「やまのうちさんですね?」
殿下「いや,奴は来られねえ.」
女「え?」
殿下「車の事故に遭って入院しちまってねえ. 俺は奴に代わりを頼まれた島田と言うもんだ.」
女「事故で…病院はどこです?」
殿下「大阪の坂山病院.問い合わせるなら電話番号教えてあげようか?」
女「あなたはやまのうちさんから頼まれたという証拠は?」
殿下「こうやってこの部屋であんたと話しているのが, 何よりの証拠じゃないのかね.」
女「今から30分後,胸にバラを一輪つけて, ホテルの正面から左へ真直ぐ歩いて下さい.」
殿下「左へ? 左へ歩いてそれから?」
女「歩いてくださればわかります.」

殿下は指示に従った.ビルの屋上からジーパンがカメラを持って監視していた. そのとき,車がやってきて止まった.車を運転していたのは榎本だ. 山さんが車のあとをつけることにした.殿下は榎本に行先を訊いたが
榎本「黙ってこいつをかけな.」
榎本はアイマスクを渡した.
殿下「冗談じゃないよ.めくらなんて真っ平だよ.」
なお「めくら」の部分はファミリー劇場放映時にカットされた.閑話休題. 「島田」が信用できるかどうかわからないので, 何も見せるなと榎本は命じられていたのだ.榎本は地下駐車場に入り, 車を止めた.殿下は目隠しをされたまま. 転んだ振りをして隣の車の下に盗聴機を置いた.

殿下はボディチェックされた後,やっと目隠しを取られた. だが女は未だ「島田」を信用していなかった. 早速殿下はハコ師としての腕を見せるため,金庫を破らされた. 特訓の甲斐あって殿下は見事に金庫を破った.
女「はい.そこまでで結構です.さすがにやまのうちさんのお仲間ねえ. そっくり同じ手順.」
殿下は飯を食いに行くと称して外へ出ようとしたが,榎本に障られた. 決行が翌日の早朝に迫っていたからだ.

一方,ジーパンは撮影した写真に写っていた車のナンバーを元に調べたが, そのナンバーの車は一年前に廃車になっていた. 山さんは用心深いなと半ば呆れながら言った.
ボス「それにしても気になるな.奴らの手口だ.やり方がいささか異常だ. まるで端っから刑事と疑って掛かってる.」
さらにボスは電話のテープを再生した.
女の声「やまのうちさんですね?」
ボス「仕事を頼んで来たのもこの女,やまうちはそう言ったのか?」
山さん「ええ.」
女の声「あなたがやまのうちさんから頼まれたという証拠は?」
そのとき,久美ちゃんが気がついた.
久美ちゃん「あら,この人,『やまのうちさん』って言ってますねえ.」
山さんは久美ちゃんをじろっと見た.
久美ちゃん「あたしの友達にもいたわ.人が『やまうち』って言うと, 一々『やまのうち』って言い直すの.」
それを聞いたボスはテープを止め
ボス「山さん,後頼む.」
出て行った.ジーパンはボスに行先を訊いたがボスは答えずに去って行った.
山さん「わからんか,ジーパン.ボスはなあ,殿下にもしものことがあった場合, 一人で責任を取る気なんだ.これ以上, 自分の推理にみんなを巻き込みたくないんだよ.」
ジーパン「しかし.」
ジーパンはボスを追いかけようとしたが山さんに止められた.
山さん「ジーパン.俺達には俺達の仕事がある. 殿下から緊急連絡でも入ったらどうするんだ.」
ジーパン「はあ.」
山さん「取敢えず俺とお前はこの町の目ぼしい金庫をもう一度チェックする. 久美ちゃん,連絡の方,しっかり頼むぞ.」
久美ちゃん「はい.」

その夜.山さんやジーパンが金融機関などを回っている頃, 殿下は標的を聞かされていた. 全日経済会というネズミ講組織で手入れを食うと言う噂の会社だ. 金は底をついているという噂だと殿下が言うと女が説明した. 全日経済会は手入れを逃れるための法の改正をもくろみ, その政治献金として億単位の金を用意していた. 例え警察が勘付いて大金が入った金庫をマークしてもこの金庫だけはノーマーク. しかも盗まれても会社が届け出るわけがない.榎本は殿下に, 自分の指示に従って動けばいい,と言った.殿下は首謀者の正体を尋ねた.
女「あなた.そのこと,やまのうちさんからお聞きにならなかったんですか?」
殿下「ああ.何しろ重傷だったもんでねえ.」
女は,今更気にする必要はないだろう,と言い,自分だと思ってもらえばいい, とも言った.殿下は道具の点検をすると称し,緊急連絡装置のスイッチを入れた. そしてトイレに入り,靴底に発信装置を仕込んだ.遂に夜が明けた. ボスは不在のまま.
久美ちゃん「ボスったら,どこ行っちゃったのかしら?」
その頃,ボスは車で港を走っていた.

出動前.女は靴を履き替えるよう命じた.殿下は,履き慣れた靴の方が, と言いかけたが,女は,その靴ではあやしまれます,と言ったので, 殿下は渋々履き替えた.そして殿下は榎本と尾崎と一緒に出る羽目になった. 女は殿下が履いていた靴に目をつけた.その直後,発信電波が途絶えた.
ジーパン「山さん,なぜ切れたんですか?」
山さん「俺に訊いたってわかるか.もう範囲は限られてる.探せ, 地下駐車場を.」
時刻は朝の5時ちょうど.

一方,殿下は首謀者の正体をつかむまでとことん付き合う決意を固めていた. 榎本は下水道からビルの中に忍び込んだ. 外では電気工事員に化けた尾崎と殿下が車の中で待機. 殿下は小便と称して車から出ようとしたが
尾崎「だめだ.全て決められた通りにやるんだよ.」
榎本が警備員を倒し,尾崎と殿下はそれを見計らってビルの中に入った. 尾崎は警報装置のスイッチを切り,殿下が鍵を開けて金庫室に入った. 尾崎はクリーム状のスプレーを配電盤に噴射して赤外線発射装置の効力をなくし, 金庫の前に榎本と殿下を引き入れた.殿下は金庫の前の鉄格子の扉を開けた. 榎本は金庫を開けろと命じた.殿下は首謀者の素性を訊いたが, 答えようとしなかった.殿下が金庫を破っている頃, ジーパン達が女と榎本達がいたところに突入したが,女はもう去った後. 殿下が金庫を開けようとしなかったので,榎本は殿下を殴り倒した. 実は女は端っから殿下を信用していなかった.だから金庫の鍵を開けるところで, 殴り倒せと榎本は女に命じられていたのだ. 榎本はガスバーナーで穴を開け,尾崎が電気掃除機で札束を全て吸い込んだ.

ジーパンが全日経済会の記事を見つけ,山さんが女の狙いに気付き, ボスと殿下以外の刑事全員が全日経済会へ急行している頃, 榎本は札束を入れた袋をダストボックスに放り込み, 外では清掃員に化けた女が札束を受け取っていた.そのとき,パトカーの音が. 殿下は気付いて榎本と尾崎に襲い掛かり, ゴリさん達も榎本と尾崎に襲い掛かった.だが女は清掃車で一足先に逃げていた. 金の行方を訊いた殿下に榎本はこう答えた.
榎本「へ,へ,へ,へ.あんた達の負けだ. 二億円ちけえ金はまんまとあの女に手に入った. いずれ俺達の口座に振り込まれるさ.」
榎本は笑いながら先を続けた.
榎本「こんな面白え話はねえや. あの小娘一人にサツが手玉に取られたんだからな.」
殿下達はその様子を呆然と見るより他,手がなかった.だが…

さて首尾よく女が自宅に帰ると,なんと中のソファーにボスが座っていた.
ボス「ご苦労だったな,糸山かおる.」
それを聞いた女こと糸山かおるは革鞄を落としてしまった.

さてボスと殿下がかおるを連れ,東京刑務所にやってきて,糸山と接見した.
糸山「かおる.」
かおる「駄目だったの,やっぱり.」
糸山「そうか.やっぱりな.」
かおる「お父さんを責めないで下さい.お父さんはやめろって言ったんです. 俺の名前で一流のプロが集まっても,例え仕事が巧く行っても, どうせ行く末は俺みたいになるって.」
ボスは糸山をじっと見た.
かおる「でもあたし,やめられなかった.全日経済で秘書をしていて, 凄いお金が馬鹿みたいなことに使われるのを見てるうち, どうにも我慢ができなくなって.」
かおるは感極まって泣いてしまった.
糸山「勘弁してください,旦那.娘にそうまで言われると, やっぱりこれは俺の業かなんて気しましてね.」
糸山は苦笑した.
ボス「計画は見事なもんだったなあ.あんたと別れてから,あの女, 娘さんを引き取ったのを思い出さなかったら俺も危ないところだったよ.」
糸山「旦那.」
ボス「公園で雀と一緒に暮らす日はだいぶ先に伸びたようだな.え,爺さん. それまで達者でな.」
去ろうとしたボス達に糸山が聞いた.
糸山「一つだけ聞かせてくんねえ.」
ボス「なんだ.」
糸山「これがあっしと娘の仕事だってどうしてわかったんだ.」
ボス「やまのうちだ.」
糸山「へ?」
ボス「本人でさえ『やまうち』と言ってるのに謎の女は『やまのうち』と言った. 頑固爺さんのあんたそっくりの口調でな.」
それを聞いた糸山はにやりと笑うのであった.

さて来週から2回連続でボス主役編が続きます.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp