2002年1月29日

「必殺仕業人」第20話「あんたこの志をどう思う」

脚本は南谷ヒロミ.監督は渡邊祐介. 夜道を侍の夫婦が歩いていた.二人は服部のところを尋ねる予定だった. 翌朝.剣之介とお歌が寝ている小屋.お歌が外へ出てみると, 外で先ほどの夫婦が寝ていた.お歌は一瞬心中死体と間違え,驚いてしまった. 二人は奥州岩倉藩の浪人小坂栄之進(浜田光夫)とお美緒(吉本真由美)だった. 二人は剣で身を立てるために50俵の禄を捨て, 先輩の服部が開いている道場を訪れるつもりだった.服部の道場を手助けし, いずれは自分も道場を開くつもりだった.だが
剣之介「志だけでうまく行くんなら世話ねえや. 俺は早く国へ帰った方がいいと思う.」
と言った途端,気分を害したのか出てしまった.
お歌「怒っちゃったのかしら.」
剣之介「怒らせた方がいいんだ. 大体いきなり江戸へ出てきて何ができるってんだ.」
お歌「そうねえ,今時剣で身を立てるなんてね.」
剣之介「あの二人,江戸でうろうろしてると破滅するぜ.ま,どうでもいいや. 人のことだ.」
今回はここでタイトル表示.剣之介の台詞が今回のテーマだ.

さて小坂は服部の家を探し当てたのだが,夜逃げした後だった. 高利貸しの手代蔵吉(梅津栄)が小坂に服部の行方を尋ねたが, 小坂に心当たりのある筈がない.

さて神山(今井健二)が高利貸しの吾兵衛(安部徹)のところへやって来て, 元金の三両だけ返した.吾兵衛が利子を返さないつもりか,とねじ込んだので, 神山は情報を売り込んだ.近々奢侈贅沢禁止令が出る.つまり, 装飾品を売ったり身につけることが,御禁制になるというのだ. 吾兵衛はお沢(任田順好)という女に, 日本橋かなぶき町で鈴屋という小間物屋を営ませている. お触れが出れば鈴屋で扱っている金銀,珊瑚,笄,髪飾り,山と抱えたまま, 野垂れ死に同然だ.神山はその情報を売りつけ, 阿漕なことをして売りさばいても見逃してやる,と言い,礼金も要求. 神山と入れ替わりに蔵吉が戻ってきた.服部が夜逃げしたと聞き, 吾兵衛は怒った.
吾兵衛「畜生.野郎,俺をこけにしやがって.侍だ. 商いの邪魔をいつもするのは侍だい.」

やいと屋が鈴屋の女主人お沢にお灸を据えていた. 店を切り盛りしてご立派ですねえ,というやいと屋にお沢がこう言った. お沢はある人から店を任されているという.やいと屋と入れ替わりに, 吾兵衛がやってきた.吾兵衛はこの店をたたむことにしたと言った. どうやって商品を売りさばくつもりだというお沢に, 吾兵衛が良い考えがあると言った.生半可なやり方じゃ売りさばけない. だから女のお沢にも人肌脱いでもらいたいと吾兵衛は言うのであった.

その晩.中村家では千勢が傘を破いてしまった.千勢は弁償すると言ったが, せんもりつもいいんですよ,と言った.そこへ主水が帰ってきた. 主水は内職の納め先の山城屋により,金を貰ってきた. だが52文足りなかった.失敗した分を差し引かれていたのだ. それを聞き,せんとりつはもっと割の良い内職をしようかと言った. それを聞いた千勢は,やっぱり弁償する,と言うのであった.

小坂夫妻は途方に暮れていた.このまま旅籠暮らしでは路銀が足りない. 旅籠を出た小坂夫妻は剣之介とお歌にまた会った. 剣之介は早く国元へ帰った方がいいと言った.小坂はいろいろ回ってみたが, 仕官の口はなかった.そして剣之介達が芸を見せているところに出くわした.
小坂「お主,金のためのとは言え,よくそんなことができるな.」
剣之介「銭のためなら何でもやるさ.それよりまだ国元に帰らんか?」
小坂は立ち去ってしまった.小坂は金,金,金の世の中が嫌になっていた. お美緒は小坂に安い借家を探そうと言っていた.

さて吾兵衛は町方の女を騙して手内職をさせることを考えていた. そして手内職の元締役を誰にしようかと考えていた. 吾兵衛は夜逃げした服部を憎んでいた.30両も踏み倒したからだ.
吾兵衛「侍の恨みは侍で晴らす.」
そこで吾兵衛は,蔵吉が服部のところで出くわした小坂夫妻に目をつけた. 蔵吉は貸間を探している小坂夫妻を探し出した. この辺りの貸間は旅籠代ととんとんだ,と言い, 鈴屋が手内職の元締を探しているので,そこなならただで住める, と言葉巧みに話を持ち込んだ.何も知らないお美緒は喜んで引き受けてしまった.

鈴屋でお沢はお美緒に仕事の内容を説明した. 内職をする人に簪の見本を渡し,一度ばらしてもらった上で, 摘み細工の要領を覚えてもらうのだ.組み立ての手順書もあるので, 四,五日練習すれば誰でも簡単にできるようになるはずだ. 要領を一通り覚えた人に材料を渡し,組み立てて持ってきてもらう. 一本につき100文で買い上げる.お美緒はその取次ぎだけやればよい. ただし,見本と説明書を渡す時に保証金として一人につき1両を受け取る. そのうち100文はお美緒の手数料になる.だから1日に5人来れば2朱になる. そしてお美緒は商売を開始した.なんとせんとりつも内職の客になってしまった.

さて小坂が町を歩いていた.主水が外を歩いていると神山が声を掛けてきた. 二人は酒を一緒に呑んだ.神山の奢りだ. 主水は牢屋見回りになってから金がないとぼやいた. 神山は釣りに金を使っているという.主水が家に帰ってくると, せんとりつと千勢がつまみ細工の手内職をしていた. 1本100文なので40本作れば一両になるという. 塾の先生より率がいいと千勢が言った.

さて小坂が酒屋で飲んでいるところに剣之介とお歌が出くわした. 剣之介はまだ国元に帰らなかったのかと言い,お歌はお美緒のことを聞いた. 気分を害したのか,小坂は何も答えず,さっさと立ち去ってしまった.その頃, お美緒は53口あったので売上が53両になったと喜んでいた.手数料は1両1分3朱. そこでお美緒は51両2分1朱を蔵吉に渡した. お美緒は見本を全て裁いたので鈴屋に取りに行くと蔵吉に言った. 蔵吉は自分が届けるから早速手配しよう,と言い, さらに借り店の家賃半年分として一両取って行った. 蔵吉と入れ替わりに小坂が帰ってきた. 小坂はお美緒の弾いていた算盤を分捕って放り投げ,商売なんてやめちまえ, と言った.その後で小坂は,自分がふがいないばかりに,とお美緒に謝った.

吾兵衛達は目論見通りに簪を全て捌くことができたのでほくそえんでいた. しかも吾兵衛の大嫌いな侍の妻を「元締」にしてだ. お沢は小坂夫妻が乗り込んでこないかと心配したが, 吾兵衛はそのための手をちゃんと打っていた.

翌日.鈴屋は店をたたんでしまった.当然のことながら, せんとりつを含む内職の請負人達が小坂夫妻に保証金を返せとねじ込んでいた. 内職の請負人達が帰った後,小坂は蔵吉のせいだと怒っていた. そして蔵吉の所に小坂が乗り込み,誰の差し金だ,と聞いた. 蔵吉は知らぬ存ぜぬを通した.

吾兵衛は神山の利子を棒引きにし,さらに礼金として三両,神山に渡した. そこへ小坂が乗り込んできた.蔵吉から何もかも聞き出したというのだ. ご禁制になる品物をつまみ細工の見本として裁き,保証金を騙し取る. これが吾兵衛の考えた手口だ.小坂は奉行所に訴え出るので, 儲けた金を返せと言った.だが吾兵衛は居直った.
吾兵衛「お侍さん,どうでもいいが,一体全体,どんな証拠があるんですか?」
小坂「何?」
吾兵衛「下手に藪をつつきますとそっちが蛇に噛まれますぜ.」
小坂「貴様,たった今,罪を認めたじゃないか.」
そこへ神山がやってきた.
神山「小坂.どんなに無実を主張しても, お前に騙された女達が信じると思ってるのか?」
小坂「私は騙さん.あれは吾兵衛の企みだったんだ.」
神山「一歩表に出たら,そんな戯言は通用せんぞ.」
小坂はやっとからくりに気がついた.だが後の祭.
小坂「どこまで卑劣な奴だ.」
吾兵衛「神山さん,あとはよろしく頼みますよ.」
神山「罪なき町人を欺き,その暮らしを脅かした者,捨て置けんなあ.」
神山は十手をちらつかせた.
神山「来い.」

牢屋敷へ小坂が連行されてきた.神山は主水に罪状書を渡した. なんと町家の女から50両を騙し取った罪で直ちに打ち首になるという. お美緒は悲しみに暮れていた.主水は小坂のところへやってきた.
主水「言い残すことがあれば申しなさい.」
小坂「ございます.」
そして小坂は打ち首にされることになった.
小坂「妻紙は無用にございます.」
これが小坂の最期の言葉だった.

その夜.お美緒が剣之介とお歌のところへやってきた. 小坂が蔵吉のところへ行ったきり,戻ってこないというのだ. お美緒は蔵吉に騙されたことを話した.さらに,江戸は不案内の上, 他に知り合いがいないので剣之介のところへやってきた,とお美緒は言った.
剣之介「どういう話か知らねえが, そいつが札付きの男なら八丁堀に聞きゃあ,わかるかもしれねえなあ.」
お歌「あんた,ひとっ走り行ってくれる?」
剣之介「あれほど帰れって言ったのに…」
お美緒「私も参ります.」
剣之介「おめえさんは来ちゃいけねえ.」
剣之介はお美緒に,ここで待っているように言って出て行った.だが…

その頃,せんとりつは小坂が打ち首になったと聞き, 主水には内職で騙されたことを内緒にしておこうと言っていた.

捨三の洗濯屋で主水と剣之介はお互いに小坂のことを話した. やいと屋にはさっぱりわからない. そして小坂が打ち首になったことをお美緒は外で聞いてしまった. 主水は小坂が無実の罪で打ち首になったと言った. そのとき,物音がした.お美緒が簪で喉を突き,自害したのだ.
お美緒「話は全て聞きました.これは何かの時にと思いまして, 残しておきましたこのお金.主人の恨み.」
剣之介がお美緒から金を取った.金額は五両.剣之介の取り分は二両で, 一人一両の筈.だが主水は一両余分に取った.
主水「これはこないだおめえに貸した分だ.」
剣之介「覚えてたのか.」

やいと屋は嫌な予感がしたので, 占い師紅嵐(特別出演の田中佐和)のところへ行った.
紅嵐「お答えいたします. 荒れ果てた古寺の薄暗い軒下に張り巡らされた蜘蛛の巣が, 吹き付ける雨風に大きく揺らめきはためくところが見えます.」
やいと屋「不吉だ.」
だが
紅嵐「が,段々と風は止み,ほのかな日差しの差し込むところが見えます.」
やいと屋「ほう.こいつはついてんな.」
だが
紅嵐「が…」
やいと屋「ああ,ちょっと待って.そこまでで結構です.がの後が恐ろしい. どうもありがとうございました.」
やいと屋はその先が不吉なことかもしれないので,そう言って立ち去った.

まずやいと屋が蔵吉をやった.金を数える吾兵衛とお沢のところに, 剣之介が乗り込み,あっと言う間にお沢を気絶させ,吾兵衛をやった. その頃,主水は神山に呼びかけていた.
主水「今夜,俺が奢る番だ.」
神山「そういうなよ.金はな,たっぷりあるんだ.」
主水「そうか.ま,どうせ汚え金だ.今夜のうちに全部使っちまえ.」
二人は笑った.
神山「は,は,は.それもそうだ.」
主水「酔い覚めの水は三途の川で飲んでもらうぜ.」
神山「どういう意味だ.」
主水「てめみたいな虫けらは生かしておくわけにはいかねえ.」
神山は主水に襲い掛かったが,主水の敵ではなかった.

久しぶりに銀次が戻ってきた.銀次は今度は娑婆で真面目に働くつもりだったが, なんと銀次の「これ」が内職詐欺に遭い, 頭にきたので他の小間物屋で万引きして埋め合わせしようと思ったという.
銀次「ですからあっしはここで頑張りまーす.」
銀次が牢の中に入っていくのを見ながら
主水「考えてみりゃ,この牢屋の中が一番平和なのかもしれねえな.」

「特捜最前線」第101話「拳銃I・狼たちは跳んだ!」

前後編とも脚本は大野靖子,監督は村山三男,主役は橘. 1丁の拳銃を巡って起こる出来事を扱っています.

さて話はいきなりチリアーノの「私だけの十字架」が流れて始まる. 富士五湖の一つ山中湖畔の林の中で取引が行なわれた.取引終了後, 2台は別れた.1台が走っていると通行止めの看板が見え, 交通整理員が声を掛けた.落石なので迂回してくれと言う.車が迂回した途端, 交通整理員は看板を外した.さて迂回させられた車の方は, ぬかるみに車輪が取られ,動けなくなっていた. 男二人(黒部進と南原宏治)が押しているが車は動かない. 泥がはねて男の一人(南原宏治)にかかったので
男「馬鹿野郎.てめえ,どこ見てんだ,この野郎.」
その様子を偶然林の中にいた若者が見ていた. 助けに行こうとするとジープが通りかかって止まった. ジープに乗っていた人達は「助けてやろうか」と言ったが, 突如拳銃を向け,カバンを奪って逃げた. 若者はその一部始終を若者はカメラに収めた.そして車の男達に, 酷いことしますね,証拠になりますよ,とカメラを見せたが, 男(黒部進)はカメラを奪い,フィルムを抜き取り,さらにカメラを叩きつけ, 若者の胸倉をつかんで言った.
男「ここでは何にも起こらなかった.だからお前は何にも見ていねえんだ. だから喋るんなよ.喋ったらもっと酷いことになるんだ.」
男は若者をぶん殴って倒した後,男達は去って行った.

さてジープの連中はドライブインでうまく行ったなあとほくそえんでいたが, カバンの中身を知らなかった.実は「ボス」の指図で動いていただけだったのだ. ジープの連中がカバンを開けてみると中は札束でいっぱいだった. 一億円はありそうだ.さて若者は酷いことしやがって,と怒っていたが, ポケットの中のフィルムが無事だったことに気がついた. ジープの連中はカバンをボスに渡すのをやめて立ち去ってしまった. 数えた結果,1億2千万円の現金が入っていたからだ.

特命課に若者が撮った写真が封筒に入れられ,届けられていた. ただし住所氏名は封筒に書かれていなかった. 管轄の警察署にはそれらしい届が出ていなかった. 犯罪に絡んだものかもしれない.蒲生は調査を指示した.
橘「このとき私には事件の全貌はまだわかっていなかった.それから数時間後, 私はあの男に出会うことになる.事件があの男を呼んだのか, あの男が事件を呼んだのか.いずれにせよ, 津上刑事にとっては最悪の数時間だった.その男,名前は小田島満男.」
バスに津上が乗っていた.その前には小田島(内田良平)が座っていた. バスを降りた津上は二人の男に襲われ,拳銃を奪われた. 津上,そして小田島は男達を追いかけた.小田島は男達から拳銃を奪った. そして小田島は男達に拳銃を向けて威嚇.男達は立ち去った. 小田島は歳のためか,うずくまってしまった.そして小田島は津上に捕まった. 小田島は大久保派出所に連れこまれた.津上に小田島が拳銃を向けた時, 玄人のような手つきだったからだ.そこへ橘がやってきた. 橘は小田島の手錠を外すように命じた.小田島は橘の知り合いの元刑事だった. 小田島は今水原興信所の所員だった.

小田島はある母娘のところに下宿していた.寝ようとした小田島を, 母親が叩き起こした.水原が呼んでいると言うのだ. 小田島は水原(近藤宏)と会った.そして小田島は水原から, 若い男3人を探す仕事を20万円で頼まれた.終わったらもう20万円出すと言う. そして見つけたらすぐ水原に連絡しろ,と言って水原は去った. その三人とはジープの連中,すなわち清水明,倉本清,そして
小田島「田代とおる…とおる? 田代…」
小田島はある事件を思い出していた.雨が降る夜,男が拳銃で撃たれた. 男の妻と子供が男に死なないでと言っていた. その子供が田代とおる(坂本良介)なのだ.
小田島「とおるが何を?」

さて清水達はジープで逃亡を続けていた.相手がどこで網を張っているか, わからない.清水達はカバンを奪えと命じられただけで, 奴らの素性はわからない.だがどうせ犯罪に絡んだものだから, 盗難届が出ていないだろう.だから逃げ回ろうと清水は言った.

その頃,紅林と吉野の調査によって匿名の投書が事実だったことが分かった. 田代達が襲った連中の乗っていた車は盗難車で中平観光の社長中平健の物だった. 中平(南原宏治)は特命課を訪れた. 原宿の「女」のところへ行った時に盗まれたと言う. 中平は原宿の「女」の名前榊あけみとあけみの電話番号を書いた. だがこれは真っ赤な嘘.特命課を出た中平はあけみのところに電話した. あけみは水原とベッドで寝ていたところだった.
中平「いいか.2月22日午前から夕方まで俺はお前と一緒にいた. 誰かに聞かれたらそう答えるんだ.」
中平が電話を切った後,あけみは,大丈夫なの,と水原に聞いた. 水原は大笑い.中平は1億2千万円を取られた挙句,薬の取引で捕まれば, 泣きっ面に蜂だ,と水原は言った.実は水原とあけみが清水達のボスだった. その金を横取りしようと計画したのは水原とあけみだった. あけみはチンピラ3人にとられて逃げられているんじゃないか, と水原に詰め寄った.水原はチンピラに金が扱えるわけがない,と言い, さらに腕のいい調査員をつけて調べているので大丈夫だと言った. 元々二人は中平の悪事に協力していた.あけみは, 中平観光を大きくするためにあけみは頑張った, だから店の一軒でも持たせてくれたっていい筈だ, だが未だに中平の店の雇われマダムだ,と不満を持っていた. 中平は日吉連合と言う暴力団を使っているが, 中平観光を作る時の汚い仕事をしてきたのは水原だったが, 水原は未だに小さな興信所の所長どまり.だから, 中平が資金繰りに困って薬の取引に手を出したと言う話を, あけみから水原が聞いた時,水原は中平と手を切るいいチャンスだと考えたのだ. 二人とも1億2千万円に見合う仕事をしたからだ. そのとき,特命課から電話が掛かって来た.あけみは中平の指示通り, 中平と一緒にいたとアリバイを証言した.

電話を掛けたのは船村だった. 船村はアリバイがあるようだが一応中平を当たってみると蒲生に言った. そこへ津上が戻ってきた.津上から拳銃を奪った二人組は過激派の学生で, 所轄が機敏に動いてくれたお陰で捕まったのだ.皆良かったと津上に言った. 船村は,拳銃が殺人に使われたら始末書どころじゃなかったよ,と言った. 津上は橘に小田島の身元を尋ねた.
橘「拳銃を紛失した.」
津上は息を呑んだ.
橘「しかもその拳銃がある農協の強盗事件に使われてねえ, 関係のない一市民がその弾に当たって死んだ. 7年も前の地方の事件だったから君ら知らんだろうが, 奴は小田島と言って当時奴と俺は同じ長崎県警にいた. 一緒に組んで捜査したこともある.優秀な刑事だった.」
津上「そうですか.」
吉野「で,その拳銃はその後発見されたんですか?」
橘「いや.強盗犯人もあがらなかったし,拳銃も出ない. 川の底で錆付いているかもしれんし, 今でも誰かの手に握られているかもしれん.」

田代とおるの母のところを小田島が訪れた. 田代の母はあの事件を忘れたいと思っていると言い, あなたも忘れてください,と言った.この7年間, 小田島は田代の母に送金していた.本当は手をつけずに返したかったが, とおるの学費などで使ってしまったと言う.だがお金が届くたびに, 死んだ夫のことを思い出すので嫌な気持ちになった, だからそのうち全額返す,と田代の母は言った. 小田島は田代とおるの行方を聞いた. 田代の母は友達と一緒にドライブに出かけたと言いかけ,気がついた.
田代の母「とおるが何,何かあの子の事調べてるんですか?」
小田島「あー,ひょっとすると徹君, 何か面倒なことに巻き込まれてるかもしれないんです.」
田代の母は驚いた.小田島は何か連絡があったら教えてくれ,と言い, 心配要らないですよ,無事に徹君をお返ししますと小田島は言って去って行った.

翌日.津上と紅林は小田島に出会った.津上は小田島に礼を言い,立ち去った. すると小田島のところに情報屋(三角八郎)がやってきた. 情報屋は刑事の手先になったんじゃねえのか,と言った. 小田島は落し物を拾ってやっただけだと言うと, 情報屋は特命課が清水達を探していると言った. 情報屋に聞き込みした刑事の口ぶりだと相当大きな金が絡んでいるらしい. 新聞にもテレビにも出ていない.そして情報屋は, 日吉連合の組員も清水達を探していること,さらに, 田代と一緒に写っている女が2丁目のスナックドンキーにいることを話した. 早速小田島はドンキーに行った.小田島は女に田代達のことを聞いた. 3人はよく話していたと言う.さらに詳しいことを話してくれと聞くと, 女は近くの神社で待っててと言った.そして神社で小田島は女から話を聞いた. ある客が田代達に探偵のようなことをやらせていたと言う. 女はその客のことを知らなかった.小田島は, 徹から連絡があったらすぐに連絡することと他の人間にこのことを話すな, と言って去ろうとした.だが
女「おじさん,あんた,徹さんのお父さん殺した刑事でしょう.」
小田島「知ってたのか.」
女「だって,今でもすごーく恨んでるもん.あたし,その気持ちわかるもん.」
小田島「君,徹君が好きなんだろう.」
女「うん.大好き.だってかわいいんだもん.」

その日の夕方.遂に清水は東京に戻ってボスと取引しようと言った. だが倉本はボスの素性を知らなかった. 連絡する時はいつも一方的にドンキーにしてきたからだ. ところが清水はボスの素性を調べ上げていた.だから,俺に任せろ, と清水は言った.

その夜.中平観光では沢井(黒部進)が中平に, 水原も探していることを話していた.中平は「じかに」水原に聞くことにした. 一方,小田島は水原に依頼人のことを話せと電話で言った. 警察も日吉連合が動いているからだ.小田島は話そうとしなかった. さらに小田島は「ドンキーって店,知ってますか?」と言った. 水原は知らないと答えたが,水原のところに清水が現れた.
清水「やあ,ボス.」
水原「明!」
慌てて水原は電話を切った.だが小田島は水原が「明」と言ったことを, しっかり覚えていた.さて清水は水原に折半を要求した. 金は倉本と田代が持っているので清水を始末すれば行方が分からなくなる, と清水は開き直っていた.外には倉本と田代がいた.そこへ中平がやってきた. 水原は気配を察し,清水を隠した.だが中平と沢井は清水の存在に気づいた.
中平「やっぱりぐるだったな.」
水原は中平に撃ち殺された.清水達3人は慌てて逃走. そのあとを中平が追いかけた.小田島が着いた時は後の祭り. 小田島は電話で警察に事件を通報した. 事件は特命捜査課が担当することになった. 中平の車が現場付近で目撃されたことから, 冒頭の事件,つまり大沢林道の事件と関係があると特命課は判断した. しかも被害者の握っていた拳銃と壊れた椅子から同一指紋が発見され, 犯人の物と思われた.さらに弾丸を調べた結果,思いがけない事実が判明した.

小田島の下宿しているバー「静子」を橘が訪れた.
小田島「俺のところへ来ても何にもないぞ.」
橘「ある.今度の事件に首をつっこまんでくれ.」
何と小田島が盗られた拳銃と水原を撃ち殺した拳銃は同一のものだった. 橘は小田島が復讐心に燃えることを恐れたのだ.だが
小田島「お前は自分の仕事に誇りを持っている. 俺だって昔はデカって仕事に一生懸命誇りを持っていた. だがあの一発の弾丸が俺の誇りを何もかも目茶目茶にしてしまった. それ以来,俺は,どぶの中で僅かだけ息している泡みたいな人間になっちまった. 俺のこの手に拳銃を取り戻すことができる.もう一度やり直す事ができるんだ. 俺は7年間毎日そのことばかり夢見ていたよ.お前, 俺に人間に戻るなって言うのか? あんたには悪いが, 今の申し出は俺には聞こえなかった.」
仕方なく橘は去って行った.
小田島「見つけ出してやる.必ず見つけ出してやる.」

NANニュースの池永アナウンサーが水原たつお殺人事件を報じるのを見て, あけみは焦った.あけみは, 水原が誰かに調査させていると言っていたことを思い出し, 事務所にメモくらい残っているだろうと考えた.一方, 清水達は車を捨てて逃げることを決意していた. あの殺人事件の時,この車を目撃している者がいるに違いない. 翌朝.その車がみつかった.乗り手は3人でそのうちの一つが, 水原事務所から出たものと一致した.
橘の声「この車は七日間何を乗せて走り回っていたか…あのバッグだ. あのバッグに何が詰まっているのか.それがわかれば謎が一気に解ける. だがこの事件は全てが後手に回る.いいさ.全てに先手が打てりゃあ, そんなものは神様だ,くそう.それに今一人,この事件に挑戦する男がいる. 小田島光男だ.」
車が発見された現場に小田島が現れた.次回へと続く.

「特捜最前線」第102話「拳銃II・狼たちの決算!」

前後編とも脚本は大野靖子,監督は村山三男,主役は橘.

清水達は1億2千万円を持ったまま逃走を続けていた.倉本はびびっていたが, 清水は中平殺しを目撃したことを逆手に取ることを考えていた.

さて特命課の面々は清水達3人を追うことにした.現れた小田島に橘は話をした. 何と小田島は3人のことを知っていた.橘は驚いたが, 事件のことは話そうとしなかった.
小田島「わかったよ.あんたらはあんたらでやれよ.俺は俺でやる. あんたらにとっちゃ何千何百の事件の一つかもしれんが, 俺にはたった一つのチャンスなんだ.俺が人間に戻れるな.」
黙って橘は立ち去った.

その晩.清水達はカップラーメンをすすっていた.小田島は満月を見て呟いた.
小田島「俺の頭の中じゃ,7年も雨降りが続いている.」
7年前,小田島の目の前で女が倒れた.だが女は病院へ行きたくないと言い, 女のアパートに入った.その時,疑ってみればよかった, と今の小田島は嘆いていた.女には生活の臭いがなかった. 女は出所したばかりだと言った.小田島は同情して信じてしまったのだ. そして女が出してくれたコーヒーを飲んで眠りこけてしまった.そう. 睡眠薬が入っていたのだ.事件はその夜起きた. 西山町農協に拳銃強盗が押し入った. 強盗は母と息子の前で田代を撃ち殺したのだ.翌日.女はいなくなっていた. アパートは小田島をはめるために借りたものだった.女の名前も偽名だった.

小田島はバー静子のママから懐中電灯を駆り,水原殺しの現場へ行った.
小田島の声「刑事だった頃,捜査が行き詰まると俺はいつも現場へ戻ったものだ. 俺から刑事であることを奪った奴がここにいた.ここに立って,俺の拳銃で.」
小田島は水原の事務所を家捜しした.ドンキーのマッチがたくさんあった. そのとき,ドアを開ける音が.やってきたのは榊あけみだった.
小田島「そうだ.貴様だ.そうだ,お前だ.7年前,俺の拳銃盗んだのは. 俺の拳銃どこへやった.」
あけみは知らないと何度も言ったが,小田島は許さなかった. さらに小田島はあけみが水原を殺したんだろう,と言ったが, あけみは否定した.
小田島「あの拳銃が水原を殺したんだ.」
驚いたあけみは小田島の頭を殴り,逃げ去った.
小田島「畜生.二度も同じ女にやられるとは俺も落ち目だよ.」
だが蝶の印が入り,CLUBと書かれたコンパクトを見つけていた.
小田島「やっぱり水商売か.クラブ蝶.それともパピヨン.」

あけみが逃げる支度を整えているところへ中平が現れた. あけみは旅行へ出かけると言ってごまかそうとしたが
中平「全財産を持ってか.何か隠してるな.何をおびえてるんだ.」
あけみは7年前に中平が使った拳銃をどこへやったと聞いていた. あの事件で強奪した金を元手にして中平観光ができたのだ. あけみは中平にあの時の刑事に会ったことを話した.中平は調べ, 探し回るようなら始末すると言った.電話をする中平を見ながら, あけみは水原を殺したのが中平であると確信した.

ドンキーで小田島は,水原がたびたび現れていたことを聞き込んでいた. 小田島が水原が殺されたことを話すと女は驚いた.小田島と入れ替わりに, 紅林と津上が登場.特命課に帰った紅林は, 水原がドンキーがたびたび現れていたこと,そして, 3人の身元がわかったことを蒲生に報告した.
蒲生「えー,清水明20歳,小寺鉄工所工員.倉本清19歳,岡山機械製作所工員. 田代徹,林修理工場修理工18歳.」
3人は例の大沢林道の事件の前日からドライブに出かけると言って以来, 行方不明だという.津上は橘に言った.ドンキーで小田島とすれ違ったこと, ドンキーのママが妙に口をつぐんでいるがそれは小田島の差し金ではないか,と.
橘「かもしれんな.」
さらに夜が更けた.清水達は眠れずにいた. 手元に大金があるのに自由に使えないことを倉本は嘆いた. 清水は翌日一勝負すると言っていた.

翌日.橘は小田島が動いていると聞いて不安に思っていた. 三人のうちの一人の名前がその不安を大きくした.橘は徹の母に会い, 小田島のことを話した.徹の母はその話をするのを嫌がったが, 4,5日前に小田島がやって来て同じことを聞いたことを話した. 橘はバー静子のママに小田島が何を調べているかを尋ねた. ママは話そうとしなかったが,危険が迫っている,と聞き, 蝶々という名のついているクラブを小田島が探していることを話した.
橘の声「小田島光男が全てをこの段階で我々に話してくれていたら, 小田島の拳銃が次の犠牲者を出すことはなかった.」

清水は中平に赤電話から直接電話していた.清水は水原殺しを見た件を盾に, 金を諦めろと強請った.迂闊なことに清水達は財布を忘れ, しかも中平の電話番号をメモした紙を残していた. 赤電話の店主は中平に電話してみることにした. 忘れ物を届けようと思ったのだが,他に手がかりがなかったからだ.
中平「(慇懃な口調で)財布を.ほう,ほう,ほう,なるほど. 片倉行きのバスに乗ったんですね.これは,これは,どうもご親切に.あ,は, は,は.あのう,もし,戻ったら, 何とか口実を設けてそこへ引き止めといてくださいませんか.」
店主「ええ.」
中平「実は恥をさらすようなんですけれども, あれはあたくしの甥でございましてね.」
店主「ほう.」
中平「あのう,会社の金を持ち出して遊び呆けておりまして.」
店主「そうですか.」
中平「何とか警察沙汰だけにはしたくないと思いまして,はい.はい.はい. あー,助かります.それじゃあ,すぐ,会社の人間を差し向けますから. はい.はい.はい.じゃあ.(電話を切って口調を変え)ばーか野郎. 調子に乗りやがって.そのバスの停留所と沿線をくまなく探せ.」
沢井「は.あの辺りはさくら会の島ですから,すぐ連絡とります.」

バスの中で清水は財布を忘れたことに気づき,引き返すことにした. 金額は1万3千円くらいだったが,死んだお袋の遺品が入っていたのだ. とりあえず倉本と田代は駅で待つことにした.その頃, さくら会の幹部(内田勝正)のところには中平の部下から連絡が入っていた. そうとも知らず,清水は店に戻り,店の主人の引止めにあってしまった. 駅前のラーメン屋で倉本と田代がラーメンを食べている頃, 清水は捕まってしまった.清水が連れ去られるのを倉本と田代も見た.

翌日.川に清水明の死体が見つかった.拳銃で撃ち殺されたのだ. 犯行が行なわれたのは夜釣りをしていた人の証言により午前2時頃と判明. 死体には散々暴行を受けた痕があった.橋の上に血痕が残っていたのと, 証言から,橋の上で撃たれてから川に落ちたものと推定された. そして鑑識の結果,清水明殺害に使われた拳銃は水原殺しと同じ, つまり小田島が奪われた拳銃と同じ物であることが判明した. さらに清水が中平に電話をかけた赤電話の置いてある店も判明した.

バー静子に小田島が戻ってきた.ママが小田島に言った. 何とドンキーの女が倉本と田代を連れてきていたのだ.
小田島「明には気の毒なことしたなあ.でも君達は無事でよかった.」
田代「小田島さん.俺はあんたのところへ来たくて来たんじゃない. 陽子がどうしても言ってくれ,と頼むから.陽子から話を聞いてすぐ判った. あんたは俺の親父を殺した刑事だ.」
小田島の顔に緊張が走った.陽子はたしなめたが
田代「そうじゃないか.7年前,あんたが拳銃盗まれなければ, 俺の親父は殺されなかったんだ.それからお袋と俺がどんな苦労をして, あんたにはわかるか.わからんだろう.」
小田島はタバコを吸いながら聞いた.
田代「あんたから送られた金なんか,生活が苦しいから使っちまったけどよ, あんなもんで罪滅ぼしされた気になられちゃたまらねえんだ.」
小田島はなおもタバコを吸っていた.
田代「こうやってここにいるけどよ,俺は恩になんか着ねえよ. 俺はこれからもずっとあんたを憎むからな.そうさ.」
小田島はまだタバコを吸っていた.
田代「そうさ.こうやって追われてるんだって元はと言えばあの一発が…」
小田島はじろっと田代を見た.
田代「あの一発が俺の人生を狂わしちまったんだ.」
二人の間に沈黙が流れた.
小田島「演説は終わったらしいな.これからのことを考えよう. さ,始めからきちんと話してくれ.」

橘と吉野は清水が使った赤電話の店に来ていた.そして3人の行動を聞き込み, さらに清水を拉致したのがさくら会の幹部小沢(内田勝正)だと聞き込んでいた. さくら会の事務所に吉野と橘が乗り込んだ.大暴れした末,小沢は捕まったが, さくら会は殺しには関わっていないことが判明した. さくら会は清水を捕まえたが,日吉連合の沢井と子分二人に引き渡していた. その後,沢井は裏の物置を借り,清水を痛めつけて何かを聞いていた. だが何を聞いているかを小沢は知ろうとはしていなかった. そして夜になりもう一人の男が加わり,沢井と一緒に清水を連れ出した. 清水の死体発見を小沢はニュースで知った.後から加わった男について, 小沢達は何も知らなかったが,組織の者ではなさそうだと小沢達は皆証言した. 蒲生は日吉連合のスポンサーが中平観光であることを調べ上げていた. 中平観光は7年前に設立され,土地不動産から始めて現在は東南アジアを含む, レジャー施設,クラブ経営まで拡張していた.クラブパピヨンはその一つだ. もう一つ,中平が日吉連合と手を組む前に同じ役割をしていたのが, 殺された水原だ.
橘「そうか,クラブパピヨンだ.小田島光男は蝶を追ってた.いや, 蝶と名のつくクラブの女を追ってた.クラブ蝶.つまりフランス語でいやあ, パピヨンだ.」
船村「君,そのパピヨンのママだよ,中平のアリバイを実証したのは.」
紅林はこう推理した.中平は大沢林道で何かしらの取引をした. その時の金を清水達3人に奪われた.清水達の黒幕は水原だ. 中平は水原を殺した.ところがその現場を清水に見られた. 中平は清水を追及したが吐かなかった.そして逃げようとした清水が撃たれた. 当然中平はバッグの行方を血眼になって追っているに違いない. それを受け,津上はこう推理した.中平は7年前の長崎の強盗事件の犯人だ. 中平観光と金を手に入れた時期が一致する.そして使われた拳銃も一致する. だが船村は物証がないと言った.バッグの中身はなんだろうか. 蒲生はある事件を話した.2日ほど前に神戸で麻薬密売組織が摘発されていた. そのとき,車の中からあまり縁がないと思われる関東の地図が出てきた. 大沢林道の地点に丸がついており,しかも2月22日午後2時と書かれていた. これは強奪事件が起きる少し前だ.中平観光は最近経営がおもわしくなく, おそらくその穴を埋めようとして麻薬に手を出した.バッグの中身は金だろう. おそらく1億以上はあるだろう.

早速特命課は中平観光の関係者を当たろうとした.だが沢井は消えた. 中平も女も小田島も消えていた.さらに陽子が沢井に連れ去られた. 沢井は田代から連絡があったらすぐに報せろと言い, 警察に報せたらあの世行きだと脅した.橘が家に帰ってみると, なんと小田島,倉本,そして田代がいた.金はバッグの中に入っていた. 小田島は橘の友情にすがろうとして橘のところにやってきたのだ. そこへ電話が.陽子がさらわれたと言うのだ.引き換えの場所は
小田島「多摩湖畔北へ,北へ3キロ. 朝霧山荘の手前200メートルの街道沿いの大木の下.」
大沢林道の近くだ.徹はバッグを持ち,バイクで出て行った. 橘は蒲生に連絡し,特命課の面々が大沢林道へと向かった. 雪の中,徹が,橘が走る.一足先に橘と小田島が到着した. 徹のバイクはガス欠し,足で走っていた.小田島は朝霧山荘に乗り込んだ. そして橘も乗り込んだ.小田島は狂ったように中平をぶん殴った. 中平達悪党は外へ出たが,特命課の面々,そして警官達に全員捕まった. 沢井は吉野と船村によって取り押さえられた. 徹は雪の積もる林の中で中平と遭遇した.
中平「貴様か.」
中平は徹を狙って撃った.逃げる徹.中平はなおも撃った. だが弾は徹をかばった小田島に当たった.
徹「小田島さん,しっかり.しっかりしてください.」
中平は駆けつけた橘達によって逮捕された.
小田島「帳消しとは言わんが,このくらいで勘弁しろや.」
そして小田島は這いながら言った.
小田島「俺の,俺の拳銃だ.」
小田島は動かなくなってしまった.橘も徹も小田島の名を呼んだが, 小田島は何も答えなかった.徹は拳銃を拾った. 橘は小田島の死体の手に拳銃を持たせた.
橘「小田島,お前の拳銃だぞ.しかし,貴様って奴は…」
徹「小田島さん,勘弁してください.」
徹は泣いた.
小田島の声「俺のこの手に拳銃を取り戻すことができる. もう一度やり直すことができるんだ.」
傍らにあのバッグが転がっていた.
小田島の声「俺は7年間,そのことばかり考えていたよ. 俺にはたった一つのチャンスなんだ.俺が人間に戻れるな.」

次回は桜井がニューヨークより帰還.しかし何を考えたのか暴走を開始. その行動の裏には麻薬組織を壊滅すると言う目的が隠されていたのです. そして最後の最後に桜井の前に現れた組織の刺客は意外な人物でした. それは再来週のお楽しみ.この前後編も見応えのある話です. 初見の際,後味の悪い最後に私は唖然とさせられました.

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東平 洋史 E-Mail: hangman@basil.freemail.ne.jp